自交労働者No.669、2006年6月1日


 自交総連は5月10日、第2回中央闘争委員会(第4回常執)をひらき、春闘の最終決着にむけた今後の対策などを決めました。

 会議では、4月22日のタクシーシンポジウムが外部からも高い評価を得て成功したことをふまえ、交通政策審議会タクシー小委員会の報告が出る6月下旬を見据えて、タクシー運転免許の法制化、タクシーセンターの制度改革などの政策を反映させていくために、世論への訴えや共同行動などを前進させていくことを確認しました。

 春闘では、各地の情勢を報告、地域的に「合理化」攻撃が厳しいところがある一方、全体的には、労働者不足が深刻で「これ以上賃金を下げられない」という状況もあり、一時金や解決金で一定の上積みをかちとりつつ現行賃金体系を維持しているところが多くなっています。5月末最終決着にむけて地方ごとに団交促進していくこととしました。

 組織拡大では、3か年計画の最終年であることをふまえ、地方ごとに必ず具体的成果をあげることをめざし、本部は、必要に応じて常執地方以外の地方にオルグに入ることとしました。



報告書骨子を集中審議

第6回交政審

「根本的な対応が必要」


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座り込みでアピールする東京地連の仲間=5月16日、国交省前
 交通政策審議会の第6回タクシーサービスの将来ビジョン小委員会は5月16日にひらかれ、国交省事務局が提示した報告書骨子(素案)にもとづく集中的な審議を行いました。

 骨子(素案)は、規制緩和の現状分析とタクシーの位置付けを明らかにし、具体的な施策では運転者登録・地理試験の導入など運転者の質の確保、悪質事業者の退出を促進するしくみの構築などを取り上げています。

 今村書記長は、素案の中で『市場の失敗』(貧困化、渋滞・環境問題)や『政府の失敗』の問題が指摘されている一方で、「これは需給調整規制によって対処すべきものではない」としていることについて言及。「処分強化など事後チェックに頼るこれまでのやり方の延長線上では、問題解決にならない。根本的な対処が必要であり、タクシー運転免許の法制化もその一つだ。5年後、10年後のタクシー像を見据えた報告書であるべき」との意見を述べました。

 東京地連の仲間は、この日も国交省前で座り込み行動を行いました。小委員会審議はいよいよ正念場。第7回小委員会の開催日は6月6日、6月20日には第8回小委員会がひらかれ、最終報告書を取りまとめる予定です。



タクセン 地域拡大に前むき答弁

仁比参院議員(共) 労働条件改善について質問


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資料を示し政府の対応を質す仁比議員=5月10日
 仁比聡平参議院議員(日本共産党、比例)は5月10日、決算委員会でタクシー労働者の労働条件改善について質問しました。

 仁比議員は、タクシー労働者は規制緩和で異常なまでの低賃金となっていると指摘、福岡県内の累進歩合の実例、会社ごとの輸送実績から長時間労働の実態がわかることなど資料を示して政府の対応を質しました。

 北側国交大臣は、厚労省との相互通報や監督を強化していると答えるとともに、賃金が歩合給であることが既存事業者の増車競争の背景にあるとの認識を示し、「歩合制のありようについても…これで本当にいいのか、そこのところについても厚生労働省とよく連携を取って対応をしなければならない」としました。

 また、タクシーセンターの機能強化について、「指定地域の拡大の問題につきましては、(交政審小委員会で)議論をしていただいている」「(組合の方の)御意見また御提案も踏まえて審議はしていただけるものというふうに認識をしている」と答えました。

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不当捜査の即刻中止を

大阪 奈良西署に要請書を提出


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奈良西警察署に向かう要請団=5月22日、奈良西警察署前
 【大阪】奈良西警察署の署員2人が4月8日、奈良市学園前登美ヶ丘2丁目で三和交通争議(不当解雇事件)支援のビラ貼り宣伝をしていた組合員3人を警告も静止を命じることもなく不当逮捕した事件で、「4・8奈良学園前ビラ貼り不当逮捕弾圧事件支援共闘会議」は5月22日、捜査の即刻中止を求める要請と抗議・宣伝行動を展開し、NHKが取材しました。

 35人の仲間が見守るなか、植田議長をはじめ要請団5人は、「不当捜査の中止を求める要請書」(221団体分)を手に玄関口まで進むと、対応した署員はNHKのカメラに外へ出るように命じ、要請書も受け取ろうとしたので、要請団が責任ある人の回答を求め、6〜7分のやり取りの後、地域課長ほかが別室で対応しました。

 権田事務局長が趣旨を説明し「争議を解決しようとする労働組合の正当な行為にたいして、逮捕しただけでなく家宅捜索までし、逮捕した3人を含む5人に再三、任意出頭を求めるなどの不当捜査を即刻中止してもらいたい」と抗議しました。 地域課長は「要請書は受け取る。貴方たちは不当捜査というが見解の違いであって、捜査をはじめた以上固めなければならない。また要請に回答する義務はない」と終始、不誠実な対応でした。



違法駐車民間取締りがスタート

改正道交法

今後は車の所有者にも違反金


 「違法駐車取締り関係事務の民間委託」と「放置車両についての使用者責任の拡充」を柱とする改正道路交通法が6月1日から全国の270の警察署で重点地域を定め実施されます。これは、04年6月に改正された道路交通法6項目のひとつで、2年以内に施行するとされたものです。

 具体的には、警察官が行ってきた駐車違反車の取締りを、公安委員会から駐車監視員資格の交付を受けた駐車監視員が違反を確認(写真撮影を含む)、運転者に警察署に出頭を求め、反則金納付通告するものです。不出頭の場合、車検証に記載されている使用者(管理者)責任を追及し、放置違反金が課せられ、納付しない場合、車検が受けられないことになります。

 違反確認は、これまでの一定時間の駐車が前提であったものが、違反した時間に関わらず確認されます(法律要綱=違法駐車と認められる車両であって、その運転者がこれを離れて直ちに運転することが出来ない状態のもの)。

 タクシーの場合、常に乗っているから…と安心はできません。警察官が取締る場合は、従来どおりです。食事などを理由に車を離れると監視員からも確認されることになります。

 実施警察署及び重点地域はインターネットで公表しています。



地裁前で規制緩和の弊害訴え

東京・第2回口頭弁論

法廷には溢れるほどの傍聴者


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通行人にビラを手渡す東京地連の仲間=5月25日、東京地裁前
 【東京】東京地連の国家賠償請求裁判の第2回口頭弁論が5月25日、東京地裁第606号法廷でひらかれ、当日は朝から東京地連の仲間103人が地裁前での宣伝行動、裁判傍聴、報告集会を実施しました。

 地裁前での宣伝行動では、ビラと宣伝カーで通行人に規制緩和の弊害を訴え、ビラを手にした通行人からは「タクシーがこんなことになってるなんてビックリしました。利用者としては運賃は安いほうがいいけど、運転手さんのことを考えると規制緩和は失敗なんだと思いました」との声が聞かれました。

 その後の口頭弁論では、組合側が国側の反論予定を聞いたのに対し、国側は当面は原告適格を重点に主張すると答え、次回の裁判は7月31日になりました。また、この口頭弁論には、前回と同じく廊下にあふれるほどの傍聴者が集まり、今後の裁判を進めるうえでの大きな圧力を示すものとなりました。

 口頭弁論後の報告集会は弁護士会館で行われ、宮川弁護士、蒲田弁護士、原告の高城さんから口頭弁論についての報告とこれからの闘いについての話があり、領家委員長が「この国賠訴訟の運動を原告団だけにまかせるのではなく、勝利をめざし、みんなで進めていかなければならない」と決意表明しました。




ハイタク労組組織率40%

全乗連 組合数、結成率とも減少


 ハイタク労組の組織率は40%に低下――全国乗用自動車連合会(全乗連)が行っている労組組織実態調査により05年の全国のハイタク労組の組織率が前回調査に比べ、2・1ポイント低下の40%であることがわかりました。

 この調査は全乗連が労働組合の組織状況を把握するために、傘下事業者を対象に隔年で実施しているもので、昨年10月末現在の調査では、組合員数は全国で15万4508人と前回調査から6000人減少。組織率は40%、2・1ポイントの低下となり、組合がある事業者数も1896→1799社、結成率は28・6%と、いずれも減少しました。

労働組合の結成率・組織率の推移
グラフ



人々の意志と歴史が今日を形成

ロンドンタクシー実態調査感想文

「データ依存症」を反省


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駅のタクシー乗り場で客を待つタクシー
 前回(本紙666号)に続き、ロンドンタクシー実態調査に参加されたかたの感想を紹介します

誇りに満ちてるドライバー

世界に冠たるロンドンタクシーはどういう仕組みか、それを調べるのが今回の最大の目的でしたが、結論からすると、それは単に法や制度によって成り立っているわけではなく、利用者・市民も含めてタクシーに関わる多くの人々の強い意志と歴史が重なりあって今日の姿を形成してきたのではないか、というのが印象です。

 ロンドンタクシーのドライバーは、最低でも2年以上かかるという難関のノリッジテストを突破してくるわけですから、その誇りも半端じゃありません。「パートをしながらの2年半の生活自体がテスト」としつつ、「タクシーは偉大な仕事」「市民の尊敬を集めているので」と、職業選択の理由を率直に語るその顔は、どのドライバーも誇りに満ちており、プロドライバーとしての確信が伝わってきます。取材したあるドライバーの年収は3万7千ポンド(約800万円)で、ロンドンでの一般的な生活費は、持家だと月2000ポンドもあれば事足りるということでしたから、かなりゆとりのある暮らしといえるでしょう

データがないロンドンタク

 私たちが訪問した団体及び施設では、応対していただいたすべての人々から丁重かつ友好的に、必要にして十分な情報を提供していただきました。

 印象に残った彼らの回答及び主張をランダムに紹介します。

 ○「需要」に応じて台数を増やすことは規制緩和ではない。○中央政府の政策は「規制緩和ができる」ということであって、実際にどうするかは自治体が決定する。○労働時間や所得に関するデータはないし、必要ない。○運賃が下がったことは一度もない――いかがでしょうか。分けても強く印象に残ったのは、「データがない」ということでした。ロンドンは個人タクシーということもあり、日本で言う「輸送実績」や労働条件に関するデータは皆無と言っても過言ではありません。

 労働組合のみならず、行政も数字を拾い集めるのが組織の存在目的と化している日本の現状は馬鹿げていると言えなくもありません。今次のロンドンタクシーの調査は、そういう意味で自らの「データ依存症」を省みる良い機会となりました。

闘いの仕切り直しを決意

 新自由主義、サッチャーイズムやレーガノミックスの破綻が明らかにもかかわらず、性懲りもなくその幻想を追い続けるわが日本に帰国し、言いようのない怒りが今も続いていますが、闘いの仕切り直しを決意しているところです。

福岡・緒方満(一部略)



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