自交労働者No.671、2006年7月1日

タクシー労働者の奮闘で規制緩和見直しを実現


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報告書のとりまとめなどが行われた第8回小委員会=6月20日、国交省特別会議室
 交通政策審議会の第8回タクシーサービスの将来ビジョン小委員会が6月20日、国土交通省特別会議室で行われ、これまでの審議結果をとりまとめ、「総合生活移動産業」への施策の報告書がまとめられました。(関係記事2面)また、この日は国交省前で東京地連の仲間が座り込み行い、それに合わせ、北海道、神奈川、京都、大阪、福岡からも代表がかけつけました。

交政審小委員会報告

 《解説》この報告書がまとめられた背景には、次のような事情があります。

 新道路運送法施行以降、タクシーは新規参入や増車で供給が増加する一方、需要は減少し、運賃値下げ競争も加わって、1台当たりの売上げが減少、タクシー労働者の賃金は大きく低下しました。低賃金からくる長時間労働や乱暴運転などにより交通事故が増加し、サービスも低下、交通渋滞や環境への悪影響も目に余るようになり、マスコミにも大きく取り上げられるようになりました。

 国土交通省としても、その弊害と社会的な影響を無視できなくなり、事態改善のための方策を本小委員会に諮問したものです。

 自交総連は、規制緩和の計画が具体化されたときから、タクシーの特性を無視した乱暴な規制緩和万能論を強く批判し、規制緩和すれば起りうる弊害を明確に指摘してきました。

 したがって、本小委員会に求められたのは、私たち自交総連をはじめタクシー関係者の反対を押し切って規制緩和を強行した結果、弊害が指摘どおりに現実化してしまった事態についての真剣な分析・検証とタクシーの特性をふまえての改善方策の具体化です。

市場の失敗認める

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交政審開催に合わせ座り込みを行う自交総連の仲間

 報告書では、規制緩和が当初の目的を達成していないことを事実上認め、タクシーにおいては「市場の失敗」が存在することを認め、「政府による適切な対応が必要となる」ことを指摘しています。このことは、従来の規制緩和万能論の立場からの転換を政府に求めるもので、新たな姿勢として注目できるものです。

 さらに、タクシーサービスの質の確保のために、運転者登録制度の全国的導入、タクシー業務適正化特別措置法の適用地域を政令指定都市まで拡大することを提起したことは、タクシー運転免許の制定に至らないまでも、それへの一歩接近として評価できます。

 また、具体的な施策としてあげられた監査強化、労働関係法令違反への対応強化、累進歩合制廃止の徹底、労働力コストを含めた運賃審査などは、従来から自交総連が求めてきたもので、遅きに失したとはいえ、当然の指摘が実現したものといえます。

 一方で、掲げられた課題の具体化は今後の施策にゆだねられており、実行の過程で不十分なものとされる恐れが強く、実効ある施策が実現するように注視していく必要があります。

 以上のように報告書は、不十分な点はあるものの、従来の政府の審議会の立場からは、より一歩踏み込んだ内容になっています。

抗議・運動の反映

 これは、タクシーの規制緩和が強行されて以来、その現実にあきらめるのではなく、不合理を指摘し、異議を申し立ててきた多くのタクシー労働者・関係者の抗議の行動が反映したものといえます。自交総連は規制緩和の弊害の暴露、世論の構築、タクシーにおける規制緩和万能論の誤りを指摘する理論闘争などの面において、規制緩和の誤りを正す先頭に立ってきました。全国の組合員の奮闘が、政府の審議会をして、事実上の規制緩和の見直しという従来にない報告書を出さざるを得ないところまで追い込んできたものであり、運動の正しさを再確認することができます。

 自交総連は引き続き、運転者の質の確保・向上に不可欠なタクシー運転免許法制化の実現をめざすとともに、本報告書に示された施策については、その実効性の確保、不十分な点の改善を求め奮闘するものです。



安心・安全なサービス提供を

国交省

タクシーセンター 登録制を政令指定都市に拡大

公共交通機関として重視


 国土交通省交通政策審議会タクシーサービスの将来ビジョン小委員会は6月20日、タクシーを公共性の高いものへと転換を図るため「総合生活移動産業への転換を目指して」と題する報告書をまとめ、今後の国の具体的な施策として3つの柱を提起しました。

 タクシー小委員会報告書の要点
 【タクシーの特性と期待される役割】
 ○タクシーは、地域に密着したドア・ツー・ドアの少量個別輸送を担っている公共交通機関である
 ○多様な利用者のニーズにきめ細かく応え得る交通機関として、過疎地における高齢者等の生活の足として、鉄道やバスとともに総合的な公共交通体系を構築する交通機関として、タクシーの社会的重要性は今後さらに高まる
 【タクシーの現状と課題】
 ○利用者ニーズに即した多様なサービスが提供されるようになるなど、規制緩和の一定の成果が現れつつある。一方で(1)情報の非対称性、(2)利用者による選択可能性の低さ、(3)サービスの提供が1度のみの取引であることが多い、(4)運転者の賃金体系は歩合給が主流となっている、といったタクシーの特性を背景に、「市場の失敗」が生じ、問題のある事業者が市場に温存されてしまうという状況が生じている
 ○(増車のため)さらに運転者の労働環境は悪化し、これがモラルの低下、ひいてはサービスの質や安全性への信頼の低下を招来。また、駅前や繁華街を中心にタクシー車両が集中し、渋滞・環境問題といった外部不経済を引き起こしている
 【今後の望ましいタクシーの将来像】
 ○公共性の高い「総合生活移動産業」への転換を図る
 【具体的な施策】
 1.公共交通機関としての安全・安心なサービスの提供
 ○運転者の要件の見直し=(1)法令の知識や接遇などに関する一定の講習の受講や事故歴を要件化、(2)事故歴等の面で問題のある運転者を雇用してはならないよう措置し雇用者側の責任を明確化、(3)原則として一定年齢以上の者を乗務させないこと
 ○運転者登録制度の導入=(1)タクシー業務適正化特別措置法にもとづく仕組みを改善・強化した上で活用し全国的に導入。当面、政令指定都市について導入することを基本に対象地域を拡大、(その際)運転者登録の要件、地理試験の内容、指定地域の範囲、登録の取り消し要件等についても見直す、(2)現在の東京及び大阪の運転者登録制度のあり方についても見直しを行い仕組みの改善と機能の強化を図る
 ○運行管理の徹底、監査の強化、行政処分の厳格化
 ○労働関係法令などの他法令違反への対応強化
 ○累進歩合制廃止の趣旨徹底=厚生労働省との連携を強化し、その他の過労運転防止措置と併せて徹底を図る
 2.多様化・高度化するニーズに対応したサービス提供の促進(略)3.渋滞・環境問題への対応(略)

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この成果を全国に

大阪・三和交通労組

解雇撤回で勝利和解が成立

十河委員長 「この成果基礎に組織拡大めざす」

 【大阪】三和交通労働組合(委員長=十河広勝)は、組合員3人の解雇撤回と最賃違反の是正を求めた事件で6月9日に勝利的和解をかちとりました。

 和解内容は、(1)3月14日付け解雇を撤回する、(2)未払い賃金を支払う、(3)6月21日から職場復帰させるというものです。

 この事件は、2000年6月に自交総連三和交通労組を結成して以来、同労組に共感した8人の労働者が加盟し組織拡大が進むなか最賃請求した3人を不当解雇。さらに「最賃違反」「社会保険料の不当利益」など法違反を繰り返し、組合との団体交渉には下級職制や弁護士を使い不誠実な対応を繰り返し、まさに組合つぶしの不当労働行為に対する闘いでした。

 三和交通の新家照正社長は、組合が勝利した大阪地裁の「地位保全・最賃全額請求」決定も守らず、自ら上申した中央労働委員会での和解も無視するなど前代未聞の「非常識の社長」でした。しかし組合は粘り強い闘いで勝利しました。

 十河委員長は「組合側主張を認めさせ、3人の現場復帰を果たしたことは大きい。今後は、この成果を基礎に組織拡大と、職場の民主的権利の拡大を求めて闘う」と決意を語りました。



最高裁、地裁判決に従え

大阪地連

第一交通は争議の全面解決を

6・15北九州・福岡行動を展開


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「判決に従い組合員を職場に戻せ」と訴える堀川委員長と組合員ら=6月15日、第一交通本社前
 【大阪】「北九州・福岡行動」の抗議・要請団は6月14日、午後9時前陸路で大阪を出発。支援者、佐野南海労組員ら28人と現地では、全労連久賀オルグや福岡地連のなかま10人の総勢39人が、争議の全面解決を求め奮闘しました。

 15日午前8時からのJR小倉駅前での宣伝行動を皮切りに、第一交通産業本社前、博多天神の西鉄グランドホテル(タクシー無線の全国総会に田中亮一郎社長が出席、参加者約500人)前で、第一交通産業の無法ぶりを業界関係者や市民に訴えました。

 関係各所への要請行動では、三井住友銀行北九州支店、福岡シティー銀行、福岡証券取引所へ5月22日の最高裁、5月31日の大阪地裁堺支部が下した判決内容(「不当解雇された佐野南海労組員の地位は、御影第一にあると認定し、判決確定まで賃金相当額の損害金の支払いと組合員、単組、上部団体の大阪地連に対して黒土会長、田中社長の共同不法行為責任も認め、損害賠償金を支払うよう命じた」)を伝え、一日も早い争議の全面解決のために、影響力を発揮し第一交通産業を指導するよう求めました。

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市民にビラを配り第一交通の実態を訴える宣伝行動参加者=福岡市内

 福岡証券取引所では、裁判結果が報道された後、第一交通産業に対して、判決に関連する資料の提出を指示したと明かしました。

 申し入れ後、佐野南海労組の堀川委員長は「各申し入れ先の対応を見て最高裁の『決定』がもつ意味は大きい。今後も争議の全面解決と職場の確保に向けた宣伝と抗議行動、申し入れや要請行動をよりいっそう積極的にとりくんでいきたい」と話し、決意を新たにしていました。



運送収入は依然「低迷が続く」

安全運転実態調査 無理しても稼げない深刻な状況


 今年の安全運転実態調査の中間集計をまとめました。一部の地方で集計が遅れているため、仙台・東京・大阪の3都市の分です。

 運送収入は、規制緩和以降は「低迷」が続いています。

 テスト車の運送収入を規制緩和直前の01年と比べてみると、仙台では、3万2189円あったのが年々下がって2万3186円になっています。東京では、4万5092円が4万4442円に。大阪では、規制緩和以前から不況による落ち込みが激しく、3万1159円が2万9158円になっています。

 労働時間を守っているテスト車と通常営業の差をみると、仙台では4793円、東京6189円、大阪364円となっています。この差の分だけ通常営業は残業をするなどの「無理」をしているということです。大阪の差が少ないのは、91年には東京の87%だった運収が06年には66%にまでなってしまったように、無理して走ってもなおかつ稼げないという深刻な状況の現われだと考えられます。



劣悪な労働が安全輸送に影響

宮城・国賠訴訟 76人が傍聴支援

 【宮城】第5回目にあたるタクシー国倍訴訟裁判が6月12日、仙台地裁で開廷され、傍聴支援に本部今村書記長の他、福島地連から4人がかけつけ76人が参加しました。

 法廷では、被告国側が、「道路運送法に関して、広く一般公衆が受ける利益を確保することでありタクシー運転手の労働条件の権利・利益を保護する目的ではない」と書面で主張。

 これに対して原告側である仙台タクシー労組の砂金辰也宮城地連執行委員が「すでに国土交通大臣が国会答弁で明らかにしているように、タクシーを運転しているのは個々のドライバーであり、タクシーの安全輸送のカギはドライバーが握っている。そのドライバーの労働条件(賃金含む)があまりにも劣悪なため、安全輸送の大きな障害になっている」と訴えました。

 次回は、9月25日、午後4時より仙台地裁101号法廷でひらかれます。




新加盟のなかま  (725)高知・県交ハイヤー労組

解雇で組合を結成

 【高知】高知市にある県交ハイヤーで働く仲間は6月1日、県交ハイヤー労組(西村進委員長、6人)を結成、自交総連に加盟しました。

 会社より減車届出に伴い5月22日付けで9人が解雇されたため、県労連に相談し、自交総連への加盟を決めました。

 加盟後、高知地連事務所内にて通知書と団体交渉申し入れ書を単組に渡し、同日に通知書と団体交渉申し入れ書を会社に提出しました。



自 交 総 連