自交労働者No.682、2007年1月1日

仲間を増やし、運賃改定を 労働条件改善につなげる年に


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デモ行進でタクシー労働者の実態をアピールする自交総連の仲間
 あけましておめでとうございます。2007年が始まり、自交労働者にとっては、第2ラウンドともいえる、歴史的な闘いの幕開けとなります。運転者登録制度の導入(今国会に改正法が提出予定)と労働条件改善を主要な理由とする運賃改定の流れが顕著になっている今、要求前進へ組織拡大をめざし、全力をあげ奮闘しましょう。

タクシー運賃改定に対する自交総連の態度(案)(要旨)

 運賃改定は、タクシー労働者の労働条件及び利用者への安全・サービスのあり方にも極めて重要な関わりをもった問題であり、自交総連は、以下のような立場でこの問題に対応していく。

1.基本的な立場――改定率に見合う増収の確保と労働者への確実な還元を
 運賃改定に際しては、(1)増収分が確実に労働者に還元されること、(2)その前提として改定率に見合う増収とするための環境整備を行うこと、の2点が堅持されなければならない。

2.ノースライドプラ ス重点改善要求の獲得
 (1)経営者に対する要求
 運賃改定に当たっては、賃率変更や足切りの引上げなど一切の改悪を許さず、改定前と同一の賃金体系を維持(ノースライド)した上で、重点改善要求の実現を求めていく。
 スライド賃下げやさまざまな理由をつけて、還元率・額を少なくしようとする動きを許さない毅然とした対応を堅持することが大切である。
 (2)行政当局に対する要求
 今回の運賃改定に当たって国土交通省は、査定原価の公開は行う方向としつつも、ノースライドなど労働条件の問題については労使で決めることで行政は関知しないという態度をとっている。
 国土交通省の極めて不当な姿勢を許さず、きちんと責任を果たすよう、本省及び各運輸局・支局を厳しく追及していく。

3.改定率に見合う増収の確保
 (1)運賃改定後は上限運賃が原則
 (2)減車と増車競争の抑制
 運賃が改定されても、タクシーの供給過剰状態が放置されたままなら、必要な増収が得られないことは明らかで、各職場・地域では、個別あるいは集団交渉で、事業者に需要に合わせた減車と増車競争の抑制を求めることが必要・不可欠である。
 (3)行政当局の役割と責任
 個別事業者の運賃額の選択や増減車についての国土交通省の姿勢は、規制緩和されたのだから一切の指導はできない、事業者の自主的判断に任せるというものである。
 しかし、利用者・国民に負担を求める運賃改定に当たって、違法行為を放置することは、結果的に、無駄なコスト負担や安全低下のリスクを利用者に負わせることにつながる。世論の喚起も含めて行政当局が必要な責任を果たすように求めていく。

4.具体的な要求とたたかい方
 以上の目標を実現するために、具体的に次に掲げる方向でとりくむ。
 (1)学習と宣伝、組織拡大
 各地連・地本は、07春闘に合わせて、運賃改定問題の学習にとりくむ。
 また、利用者・国民に対して規制緩和の弊害や劣悪な労働条件の告発とあわせ、運賃改定が労働者の労働条件改善、ひいては安全とサービスの向上に資するものとなるように訴える宣伝をしていく。
 (2)経営者への要求(別掲)
 (3)行政当局への要求(別掲)
 (4)民間公聴会等の開催
 規制緩和による需給バランスの崩壊や非効率的で安全を無視した経営の横行などの実態を明らかにし、運賃改定問題についての利用者・国民の理解を深めて、事業者や行政の姿勢にも影響を与え、事業の健全化・労働者の労働条件改善につなげていくため、民間公聴会等の開催を地方ごとに計画していく。

以 上

経営者への要求基準
1. 運賃改定の前提として、事業の効率化に努め、不必要な遊休車両はもとより適正台数をめざして減車し、増車は行わないこと。
2. 運賃改定に至った申請理由及び労働条件の改善等における概要について説明する場を設けること。
3. 運賃改定時にはノースライド(歩合率、足切り額等の賃金支給基準の変更を行わない)とすること。
 運賃改定の趣旨にしたがって、積極的な労働条件改善につながる手当の増額、負担金の軽減等の改善を行うこと。
4. 改定運賃が公示された際には、上限運賃を申請すること。

行政当局への要求課題
1. 運賃改定申請の概要、改定理由を公表すること。
2. 上限運賃改定に当たっては実績・申請・査定原価を公開すること。
3. 運賃改定申請の趣旨をふまえ、運転者の労働条件改善が申請どおりに実行されるよう、事業者及び事業者団体宛の通達を発すること。
4. 道路運送法上の運賃の趣旨をふまえ、能率的な経営が行われるよう、事業者に対し必要かつ適切な指導・要請を行うこと。
5. 道路運送法や労働基準法等の法令違反を許さず、とくに増車や値下げを行う事業者については、法違反を前提に不当な競争を引き起こすものでないかを厳しく監査・監督し、違法行為を摘発すること。
 とくに、運転者の選任(運輸規則違反)、労働時間(改善基準違反)、累進歩合の禁止(改善基準違反)、低賃金(最低賃金法違反)、名義貸し(道路運送法違反)などについて重点的に摘発すること。
6. 運賃改定のフォローアップとして、改定後の経営内容を調査し、改定の趣旨が実行されているかどうか公表すること。



歴史的な第2ラウンドの闘
いに総力をあげて奮闘を

自交総連中央執行委員長 飯沼 博


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飯沼委員長
 新年あけましておめでとうございます。

 安倍政権は、「構造改革」の歪みが噴出しているにも関らず、さらにそれを加速させようとしています。将来へ対する不安を抱えている多くの国民の声は無視。教育基本法、労働法制の改悪、そして憲法改悪を狙いながら、格差社会の完成を目指しています。その政策を国民のためになるものに転換しない限り、この国は、間違いなく「戦争する」国へと変貌してしまうでしょう。

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第2ラウンドの闘いに向け団結がんばろう

 自交総連は、そのような情勢の中で闘うこととなる歴史的な闘いの第2ラウンドに対し総力をあげて臨みます。構造改革と真正面から対峙し、その政策を転換させ、賃金・労働条件を改善するために、自交総連が闘い続けたからこそ、国交省は事実上規制緩和見直しに着手し、運賃改定の動きが本格化したということに確信を持ち、その闘いの先頭に立ちます。中心となる闘いは、実効ある運転者登録制度の導入と運賃改定に対するものです。

 自交総連は、規制緩和以降、賃金・労働条件改善のためには、適正な需給調整と、運賃改定が不可欠であるという政策を掲げてきました。

 運賃改定に際しては、増収分が確実に労働者に還元されること、改定率に見合う増収となるための環境整備を行うことが、タクシー労働者の資質を向上させ、タクシーを魅力ある仕事へと再生させるためには不可欠なのです。

 重要なのは、利用者・国民の理解を得ること。しかし、申請理由の中心とも言える労働条件の改善が行われなかった場合、世論を敵にし、タクシー産業は本当に崩壊してしまいます。

 一斉地方選挙、参院選挙で国民本位の政治に転換させる政治問題へも全力をあげることを含め、私たち自交総連は大いに奮闘する決意です。



第2回中執

かちとれ賃上げ!

07春闘方針案を討議


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07春闘方針案などを討議した第2回中執=12月20〜21日、東京・入谷区民館
 自交総連は、12月20〜21日に、第2回中央執行委員会を東京でひらき、07春闘方針案、タクシー運賃改定に対する自交総連の態度案などを議論、さらに第29回中央委員会を1月30〜31日に東京・全労連会館で開催することを決定しました。

 07春闘方針案は「有利な条件生かし、かちとれ!賃上げ、組織の拡大 07春闘」をスローガンに、すべての職種で生活実態に根ざした賃上げ要求をすべての組合員の総意によって練り上げ、必ず成果をあげるために組織の強化拡大と結合してとりくむとしました。

 運賃改定問題では、長野、大分、長崎、秋田、東京・特別武三、神奈川・京浜の申請率が許可台数の70%を超え、各運輸局が運賃改定手続きに入っています。

 こうしたもとで、自交総連は過去の改定時の闘争教訓を踏まえ、基本的な立場として(1)増収分が確実に労働者に還元されること、(2)その前提として改定率に見合う増収とするための環境整備を行うこと、の2点が堅持されなければならないこととしました。そして、経営者と行政への要求案を確認しました(1面参照)。

 今年の未組織宣伝行動は、2月に九州・山口地方で行うこととしました。



東京地連

「安全への影響必至」

第5回裁判 大口割引の不当性訴える


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裁判後に行われた報告集会でのようす=12月11日
 【東京】大口割引運賃認可の不当性を追及している東京地連の国家賠償訴訟の第5回裁判が12月11日、東京地裁でひらかれ、傍聴席で100人の組合員が見守るなか原告の二人が意見陳述をしました。

 山三交通労組の良元光渡さんは、売上が減り乗務時間を伸ばした結果、脳梗塞で倒れた経験を述べ、「家族を守るために、どんなに疲れが溜まっていようとも、ハンドルを握るしかない」「裁判所には、タクシー運転手が置かれている状況を知ってほしい」と訴えました。

 同盟交通労組の酒谷昌一さんは、「私たちの賃金は足切りを超えるかどうかで天と地の差があります。それが大口割引のおかげで月平均1万5000円も売上が下がってしまう。その分、お客さんを乗せないといけないので、労働時間の延長、結果として安全性への影響が必至の制度です」とその不当性を明らかにしました。

 裁判は、国側がタクシー労働者の原告適格性を問題にしているため、弁護団が詳細な論証を補充し、次回は3月8日になりました。



全国で15組合・支部が奮闘

不法・不当な攻撃で解雇者62人

厳しい情勢のもと争議闘う


 自交総連では、厳しい情勢のもと、不法・不当な経営の攻撃に全国で15組合・支部の仲間が長期争議をたたかい不当に解雇されている組合員も62人にのぼります。(12月25日現在)。

裁判と運動結び奮闘
グリーンキャブ労組委員長 高城政利

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地裁前でビラを配り通行人にアピールする東京地連の仲間

 昨年12月16日に提訴して以来、私たち原告団を中心に国の政策の誤りを世論化し、誤った政策を変えさせる、やめさせる運動を進めてきました。

 交政審の小委員会報告の中に「市場の失敗の存在」を認めさせ、今回の運賃改定時において、大口割引運賃を申請した事業者は出ませんでした。このことは私たち自交総連の運動の正しさが改めて再認識されたといえます。

 現在裁判の中では、「原告適格の存在」を争っています。被告の国側は「運賃の申請権は事業者にある、またそれを利用する者に原告適格があるが、そこで働く乗務員には無い」と反論をしています。今後のとりくみとして、原告適格がタクシー労働者にあるということをあらゆる面から明らかにしていくため、裁判と運動を結びつけて闘っていく必要があると考えます。

 原告適格をかちとることが出来れば、今後の運動が大きく前進することは確かです。

 裁判を通し、安心・安全を保障する労働条件確立に向けてがんばる決意であります。

長期争議組合

北海道 共同タクシー労組 一時金不支給
宮 城 地連 行訴・国賠訴訟
塩釜交通労組 損害賠償請求
埼 玉 初雁交通労組 一方的賃下げ
県南交通労組 未払い賃金請求など
三和交通労組 一時金不支給
東 京 地連 行訴・国賠訴訟
太陽自動車労組 差額賃金請求など
神奈川 三共自校支部 労働協約不履行
大 阪 佐野南海交通労組 不当解雇55人など
奈 良 ビッグ・ナラ支部 残業代不払い
不当処分
高 知 三里ハイヤー支部 不当解雇1人
県交ハイヤー労組 不当解雇6人
県倉庫運送労組 損賠賠償請求
鹿児島 大和交通労組 会社再建

9地方 15組合・支部 解雇者62人



健康と安全の確保へ

いのちと健康を守る全国センター

第9回総会ひらく


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総会での新役員の紹介=12月8日、東京・全労連会館
 働くもののいのちと健康を守る全国センター(福地保馬理事長)の第9回総会が12月8日、全労連会館でひらかれ、新年度方針が決まりました。

 同センターは労働組合・民主団体・学者らが参加して、健康で安全な職場作り、労災の救済などにとりくんでいます。

 総会では、アスベスト(石綿)問題や職場の健康、安全を守るとりくみを進め、労災認定闘争や過労自殺など精神障害の認定基準の改正案を厚労省に申し入れるなどの1年間の活動を総括しました。

 規制緩和で労働条件が悪化し、過労死や過労自殺など労働者の健康破壊が広がるなか、政府・財界がもくろむ労働法制の改悪がすすめば、いっそうの長時間・過密労働になるとして、労働法制改悪反対をはじめ、職場での労働安全衛生活動の推進、活動家づくりなど、今後1年間の方針を決めました。



自 交 総 連