自交労働者No.685、2007年3月1日

地理試験実施する方向に戻せ/「講習のほうが合理的」と居直り/国交省


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運転者登録制度の骨抜き案について追及する自交総連の代表=2月23日、国交省
 タクシー運転者登録制度の骨抜きをめぐって2回目の国交省交渉が2月23日にもたれ、飯沼委員長はじめ三役が出席、国交省からは藤田旅客課長、蔵持課長補佐らが対応しました。

 冒頭、委員長と石垣・権田・緒方副委員長が、地理試験は必要だといっている事業者もいるし、運輸局さえ困惑しているなど地方の実情もふまえて指摘し、地理試験を実施する方向に戻るべきだと要請しました。

 藤田課長は、「安全性を確保するという目的のためには、試験より講習が合理的だと考えた」「講習で知識が身についたか確認できた人を『修了』とする」などと説明しましたが、講習の方が合理的だという根拠や審議会の報告をなぜ変えたのかと追及されると、「試験の方が実効性があるとなぜ言えるのか」「審議会の報告は尊重するが、すべての問題で審議が尽くされたわけではなく、具体策は行政が責任をもって考える」など居直りに終始しました。

 講習「修了」の見極めについても、その基準はこれから決めるし、地方ごとに変わることもあるなど実効性に欠けていることも明らかになり、交渉団は厳しく抗議、今後も追及していくことを表明しました。

運転者登録制案の概要
(タクシー業務適正化特別措置法改正案や国交省説明資料による)
改正案と運用の考え方
問 題 点



 具体的には法律改正後に政令で定める。現時点での考え方としては、タクシー営業の実態等を踏まえ、 札幌、仙台、さいたま、千葉、川崎、横浜、名古屋、京都、神戸、広島、北九州、福岡の各都市及びその周辺地域を新たに指定する。
 新潟、静岡、浜松は当面対象としない。
 流しの比率を根拠としているようだが、小委員会報告が「少なくとも政令指定都市」と明記し、全国的に導入を図る、対象地域の拡大を図るとしていることとは、まったく逆行している。



 輸送の安全・利用者の利便の確保に資する一定の「講習の修了」を追加(法令、接遇、地理、安全等)。
 地理試験の合格は適正化事業を実施する地域に限定。
 小委員会報告が「地理試験の合格を運転者登録の要件とする」としていることに明白に反する骨抜き。講習の「修了」(効果測定をする)としたので実効性が図れるというのは詭弁で、ハードルを少しでも低くしようという意図は明白。




消し
 登録は、現行の氏名・住所・免許の種類の外、運転者ごとの事故・重大違反歴の記録を新たに実施。
 取消しは、現行のタク特法、道運法違反の外、重大な事故、重大違反行為を行ったときを追加。
 運転者の違反行為は摘発するが、事業者の責任はあいまい。アルバイトや名義貸しなど違法な雇用形態の登録拒否を明確にする必要がある。
 個人情報の取り扱いには厳正さが必要で、協会に委託となると問題が生じる。
 取消しの際は公正な審査の保障が必要。




 新指定地域においては適正化事業を実施しない。
 指定地域のうち特に利用者利便を確保する観点から業務の適正化を図る必要がある地域を特定指定地域とし、適正化業務を行えることとする。現時点においては、東京・大阪を特定指定地域とする予定。
 適正化事業を行わない理由は、事業者が車両数に比例した負担金を負担できないというもので、利用者の立場は考慮していない。無駄な車両を保有しておいて負担金はいやだというのは身勝手で、必要なコストを事業者に負担させた上、国の補助も考え、適正化事業を実施する地域を増やす必要がある。



有利な条件生かしすべての職場で奮闘を

各地で要求提出の意思統一

討論集会など議論活発に


 有利な条件生かし、かちとれ! 賃上げ、組織の拡大 07春闘――07春闘が始まり、一職場一重点要求の獲得にむけた闘いが始まり、各地では、討論集会、中央委員会などで、すべての職場で要求を提出し闘おうと、意思固めが行われました。

活発な議論で闘う意思統一

 【東京】東京地連は2月6〜8日の3日間、鬼怒川・グリーンパレスで2007年春闘討論集会をひらきました。

 2日目の分散会では提起された春闘方針案をもとに熱心に討論が行われ、とくに組織拡大の課題では、定時制労働者の組織化と労働条件改善にむけた議論が活発に交わされ、参加者全員が07春闘をがんばる意思統一がなされた討論集会となりました。

運賃改定で労働条件改善を

 【京都】2月19日、京都・かつら荘で京都地連第41回中央委員会がひらかれ、安井委員長は、「運転者登録制度の導入にあたってバックギアが入っているが、京都独自の実効ある制度実現への努力を」とあいさつ。報告提案と討論の後、地連の07年春闘方針として、「地理試験を含む実効ある運転者登録制度の実現」と「京都でも運賃改定で賃金労働条件改善を」の課題を確認しました。

行動・春闘配置などを決定

 【大分】第33回中央委員会が2月14日、大分市の社会福祉会館で行われました。

 冒頭、海老原委員長は「有利な条件生かし、決意をもって闘おう」と地連の仲間へ激励のあいさつをしました。

 07春闘の情勢学習は、本部から副委員長の緒方氏が、「タクシー労働者をとりまくさまざまな情勢」に加え、タクシー運賃値上げ問題について、詳しく解説していただきました。行動・春闘配置なども決定しました。

有利な条件生かし春闘闘う

 【埼玉】埼玉地連は2月14、15日に討論集会・中央委員会をひらき春闘方針を決定。

 討議では、団体交渉や組合運営など労働組合の基本を振り返りつつ討論。運転者不足が深刻で会社も労働条件改善に対応せざるをえないなどの情勢はチャンスだ、多すぎるタクシーを減らさないと運賃改定しても賃金は上がらない、などの点も確認し、有利な条件を生かして春闘を闘おうと意思統一しました。

集交成立は要求でなく挑戦

 【大阪】大阪地連は2月15日、ウェルサンピアなにわで第64回中央委員会をひらき、たたかう体制を確立しました。

 決意表明で権田闘争委員長は「正社員だけではなく労供の労働条件と嘱託雇用者の待遇改善・賃率アップを強調したい」と述べ、集交成立をめざすたたかいについて「これは要求ではなく挑戦です。困難な情勢だが失うものはない。あとはやるしかないという構えでたたかっていきたい」と結びました。

3・6中央行動に3人参加

 中国ブロック協議会は2月15日、尾道ふれあいの里で定期総会と今村書記長を招いての春闘学習会をひらき、総会では、翌16日に福山・広島間での未組織宣伝行動と運輸局交渉を行うことや3・6中央行動に3人参加することなどを申し合わせました。

 議長=戸倉伸一郎(山口)▽副議長=切田明(広島)、山上均(岡山)▽事務局長=内谷富雄(広島)

運賃改定問題の情勢を学習

 【神奈川】神奈川地本は2月18〜20日、春闘学習討論集会をひらきました。

 集会では、神奈川でも運賃改定が現実の問題となるなか、ノースライドの意味や経営者の動向など情勢を学び、担保協定などの統一要求や3・6統一行動、組織拡大などの春闘方針を提起。

 分散会では、職場要求、運賃改定での担保協定、春闘体制、組織拡大などのテーマごとに討論しました。

春闘で労働条件改善めざす

 【宮城】宮城地連は2月20日、仙台市勤労者体育館で中央委員会をひらき、統一要求書の確定を含む07春闘方針を決めました。

 今村本部書記長の情勢問題に関する講演と石垣書記長による方針案の提起を受けて、4分散会で討論。この春闘で、労働条件の改善や誇りと働きがいを確保する有利な条件を生かしきることや、月間を設定し組織の拡大をはかることへの決意を固めあいました。

原点にかえり要求提出大切

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運賃改定問題などについて学習する千葉地本の仲間

 【千葉】千葉地本は2月21日に春闘論集会をひらきました。

 小林委員長は、春闘では原点にかえって要求を出し、きちんと交渉することが大切と強調、運賃改定の問題ではノースライドと規制緩和下の改定となることへの対応などを学習しました。

 討論を受けて早速、新加盟の組合から系列事業者の組合にも共闘を呼びかけて闘いたいなどの意見が出されていました。

春闘は怒りをもって闘おう

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提案議案を挙手で採択する福島地連の仲間

 【福島】福島地連は2月22日に中央委員会をひらき、春闘方針をきめました。

 山崎委員長は、規制緩和で労働者は最悪の状態になっていることに怒りをもって闘おうとあいさつしました。

 全単組が発言し、勤務番による条件格差の縮小、基本給アップなど各職場での重点要求を掲げて闘う決意や増税に怒り政治を変えなくてはいけないなどの意見が出されました。



粘り強く闘った成果

大阪・三和交通労組

全従業員の割増賃金支払わせる


 【大阪】三和交通は1月30日、未払いになっていた全従業員の過去2年分の割増賃金600万円を、大阪南労働基準監督署の是正勧告に従って支払いました。

 労組結成以来、さまざまな不当労働行為や新加入組合員の不当解雇などとたたかい労基署への是正勧告も行ってきましたが、充分な指導は行われませんでした。

 しかし同委員長はあきらめず、同僚に会社の不当性を説き続け新たに組合に加入した8人とともにあらためて労基署にも要請し、組合員全員に対する未払い割増賃金を支払わせることができました。

 今回の支払いで、これまでに支払われた分と合わせると総額850万円になり、三和交通労組の粘り強い活動が結実するものとなりました。

 十河委員長は「職場のなかまへの割増賃金の支払いは、組合として粘り強く闘ってきた成果です。会社の抵抗は本当に激しかったが、これを第一歩に賃金体系の改革につなげていきたい」とコメントしています。



規制緩和で家庭も崩壊

宮城地連アンケート

労働者の苦悩を反映


 【宮城】仙台国賠訴訟に「タクシー労働者の生の声」を伝えるために10月に実施したアンケート調査の集計がまとまりました。

 仙台駅や泉中央などの客待ちタクシー労働者に配布したところ、過去に実施したアンケート回収率比では驚異的な187枚の回収率となり、アンケートには「規制緩和のせいでタクシーで飯が食えなくなった」「なんとかして台数を減らしてくれ」などの言葉が添えられていたりと、それだけ労働者の苦悩の実態が反映されていました。

 今回の結果で最も心配されるのが「生活変化」です。規制緩和の弊害が家庭崩壊にまで達しているのはあきらかで、自交総連に集結する仲間たちの今後いっそうの奮闘が必要となりそうです。

グラフ

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自 交 総 連