自交労働者No.707、2008年3月1日

08春闘 重点要求獲得にむけ奮闘を

賃上げ・実収入増がカギ

要求提出へ各地で意思固め

 団結と統一で要求実現、なくそう貧困と格差社会――08春闘が始まりました。今春闘は、労働条件改善を主な目的とする新運賃の実施が全国化している中で、賃上げ、実収入増に結実させなければならず、春闘での奮闘が期待されます。また、経団連は、経労委報告で賃上げ容認を明記しているものの、本格的なベア容認の姿勢には踏み込まず、格差是正にも消極的で、春闘解体の攻撃を強める姿勢にある中で、国民的課題も含めて闘われます。各地では、討論集会、中央委員会などで、すべての職場で要求を提出し、一職場一重点要求の獲得にむけ、意思固めが行われています。

春闘に奮闘することを確認

 【中国ブロック】中国ブロック協議会は2月5日、岡山・笠岡市労働福祉会館で春闘学習会をひらきました。

 学習会では、中国ブロックの各地方から春闘方針の提案が行われ、春闘に奮闘することが確認されました。

乗務員負担撤廃めざし奮闘

 【東京】東京地連は2月12日〜14日、鬼怒川・ホテルニュー岡部で56組合234人(共闘組合7組合)が参加して、08年春闘討論集会を開催しました。

 討論集会では、「運賃改定後増収となっていない職場もあり、乗務員負担撤廃と新たな手当獲得、底上げ実現に全力をあげる」=タクシー、「統一要求では、数年ぶりにベースアップ要求を入れる」=ハイヤー、「技職の労働条件改善するために定期昇給を抜本的に増額させ、賃上げも他産業労働者との格差を是正させる」=技職、との意思統一を行いました。

単組・職場で重点要求提出

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3月10日までに要求提出などを確認した大分地連34回中央委=2月14日、大分

 【大分】「団結と統一で要求前進なくそう貧困と格差社会」の、スローガンの下、大分地連第34回中央委員会が、2月14日、大分市で行われました。

 本部からは、緒方副委員長が、来賓をかね参加、徹底した討論学習を行いました。

 とくに、新会社に移行した日田タクシーに議論は集中「労働協約を生かし交渉を忠実に、必要に応じオルグに入る」との的確な指導に「大変勉強になった重視する」と確認。春闘方針も全体で確認しました。春闘要求は3月10日までに可能なかぎり単組・職場で、重点要求書を提出すること、また、3月31日を職場重点要求回答日にすることなどを決めました。

あきらめず闘うことが重要

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神奈川地本討論集会=2月17〜19日、熱海・サンミクラブ

 【神奈川】神奈川地本は、2月17日〜19日の3日間、17支部59人の参加で08春闘学習討論集会を熱海・ホテルサンミクラブにおいて開催しました。

 「08春闘・闘いの焦点と自交総連の役割」と題して今村書記長の基調講演を受け、「あきらめずに追求すれば減車は必ずできる。あきらめずに闘うことによってこそ、道理にかなう方向への軌道修正が可能だ」と宮城、石川の力強いとりくみを報告しました。続いて、中野書記長より春闘方針案が提起され、3日目に久賀前オルグの組織拡大実践報告があり、聴講者から絶賛を受けていました。

保障給1000円をめざす

 【宮城】宮城地連の第29回中央委員会は2月19日、仙台市若林体育館で開催され、40人が参加しました。

 冒頭あいさつで、本間委員長は、「沖縄での米兵による少女暴行事件には、心から怒りを感じ、基地をなくせの闘いを強めよう。08春闘では、有利な条件を生かし、失われた労働条件を回復しよう」と力強く訴えました。今村書記長が「08春闘闘いの焦点と自交総連の役割について」記念講演。

 春闘方針の提起で石垣書記長は、減車闘争と保障給1000円の獲得、当面200人の組合員を拡大することを強調し、確認されました。

政策闘争に全力をあげる

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大阪地連第65回中央委のようす=2月19日、大阪・住之江区

 【大阪】大阪地連は19日、『変えよう現状の大阪 なくそう貧困と格差社会 なかまの団結で要求実現 08春闘』をスローガンに第65回中央委員会を大阪市住之江区内で開催し、「政策闘争に全力をあげる」とする08春闘方針を全会一致で決定しました。

 権田闘争委員長は「昨年に引き続き08春闘も、政策的集団交渉を追求して大阪のタクシーの再生をめざすとともに、観光バスの労働条件を変えていくために全力でがんばっていきたい」と決意表明しました。

格差是正へ再運賃改定必要

 【長崎】長崎地連は2月21日、長崎勤労福祉会館で、本部小林書記次長を講師に学習会を開催しました。

 学習会では、今春闘の有利な条件を再認識しましたが、長崎では、運賃改定で売り上げが落ち込み、県タクシー協会に初乗を短縮した運賃改定の失敗を認めさせ、格差を是正させるためには、再度運賃改定申請をしなければならないということを学びました。


近畿・九州からヒアリング

国交省・WG会議

第2回会合ひらく

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タクシーの諸問題についての検討を開始したWG会議=2月8日、国交省内

 交通政策審議会・自動車交通部会の「タクシー事業諸問題検討ワーキンググループ(WG)」が2月8日より開催され、22日には2回目の会合がひらかれました。

 この会議は、全国的な運賃改定のなか、政府の物価安定政策会議や物価問題関係閣僚会議で、需要がないのに増車が続く矛盾や歩合給に依拠して経営者が労働条件確保の責任を果たしていないのではないかなどが論議になり、地方現場の実態把握を行い、実効ある対案を提起できるかという目的で開催されたものです。

 2回目の会合では、地方現場のヒアリング調査が開始され、第一弾として近畿運輸局と九州運輸局の両運輸局長が需給動向や運賃の多様化など管内の現況輸送実績の推移など詳細なデータ資料をもとに説明しました。

 各務近畿運輸局長はワンコイン方式を例に、「名義貸しと変わらないとの指摘は多く、法的にどこまで線引きすべきか整理していく」、大黒九州運輸局長は「福岡と宮崎は台数も営業収入も伸びているのに、長崎では利用率が一貫して落ち込んでいるように、県ごとでの差が大きい」との見解を示しました。

 質疑では、大阪のワンコインなどの低運賃・名義貸し問題に集中し、今村書記長は「賃金の概念がない露骨なシステム」と批判しました。

 次回は3月6日に開催されます。


運転者人件費割合の維持要請

国交省指導を全乗連が通知

 運賃改定後の大分・長野の労働条件改善状況が各協会から公表され、長野では約半分の会社で運転者人件費割合が低下していたため、国土交通省は、改めて運転者人件費割合の維持を全乗連に口頭で指導。全乗連は2月13日、各協会にその趣旨を通知しました。

 指導の1に「ノースライドや賃金制度の維持を求めるものではなく」との表現がありますが、これは、ノースライドにしなくてもいい、という意味ではなく、仮に歩合給部分でスライドしても、別の部分でその低下分を上回る賃金引上げがされ、全体として「運送収入に占める運転者人件費割合を維持すること」となり、賃金改善がされるのならば、それでも構わないという意味です。ほとんどが歩合給である実際の賃金体系を考えれば、ノースライドが「運転者人件費割合を維持する」一番確実で現実的な方法です。

 また、4に書かれているようにA型賃金等の場合はさらにプラスの調整が必要です。

運送収入に対する運転者人件費割合の維持について

 1 今回の運賃改定における国土交通省の上記通達等の趣旨は、ノースライドや賃金制度の維持を求めるものではなく、あくまでも、運賃改定の結果として運転者の労働条件の改善を図ることを主眼としたものであり、「運送収入に占める運転者人件費割合を維持すること」が、その際の重要なポイントであることを示したものである。

 2 1の趣旨に鑑み、今回の改定率は、従前の査定の考え方とは異なる考え方で査定している。従前の査定方式によれば、人件費について、労働条件の改善を図るに足る十分な増収額を確保することは困難であり、改定率は低くならざるを得ないところであったが、労働条件の改善が必要という今回の改定申請の趣旨に鑑み、運送収入に占める運転者人件費の割合の維持という、従来にない考え方のもと、人件費にかかる所要増収額を確保した上で、改定率の査定を行ったものである。

 3 したがって、運送収入に占める運転者人件費割合を維持することは、今回の運賃改定の趣旨を全うする意味で、重要なポイントである。これは、いわば、国土交通省及びタクシー業界の国民、利用者に対する約束事とも言うべきものと考えている。

 4 特別な事情がある場合を除き、「運賃改定時までに賃金制度が変更できず結果として営業収入に占める運転者人件費割合が低下した」ということは理由にはならず、今回の運賃改定の趣旨に逸脱していると考えざるを得ない。このような場合も、事業者には、例えば、一時金の支払等の対策を講ずることが期待されるとともに、少なくとも、公表時には、そのような努力を行うことを明確に説明することが望まれる。


分野ごとでの違法性を分析

ワンコインタク対策会議

中央行動で行政責任追及

 会社が受けた営業許可を事実上個々のタクシー運転者に名義貸しする形態で、事業拡大を続けるワンコインタクシーの分析と違法行為根絶をめざす第2回対策会議が、2月9日に本部で行われました。

 出席は、顧問弁護団の小部正治、須藤正樹、小賀坂徹、田辺幸雄の各弁護士に加え、大阪地連の権田委員長、沢田副委員長、本部小林・菊池書記次長です。

 会議では、道路運送法関係=小部弁護士、オーナーズ制度(企業内個人タクシー)と道路運送法33条=小賀坂弁護士、企業内個人タクシー(労基法)の問題点=須藤弁護士、ワンコインタクシーの違法性・社会保険並びに消費税問題=田辺弁護士など、分野ごとに違法性を分析する議論を交わしました。

 分析は、ワンコインタクシー労働者の勤務実態や月例賃金状況から、労働基準法の27条「出来高払いの保障給」と賃金の累進歩合制、そして道路運送法33条の「名義貸し禁止」に違反していないかなど多義に渡るものとなりました。

 自交総連は、対策会議の結論を2月末までに一定程度まとめて、3・5中央行動で実施する国土交通省交渉で、行政の責任を追及します。


各地の大会

組織拡大に全力をあげる

和歌山第35回大会

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和歌山地連定期大会のようす=2月3日、和歌山市内

 【和歌山】和歌山地連は2月3日、和歌山市内で第35回定期大会をひらきました。昨年の運賃改定で一部会社のスライド賃下げを押し返してノースライドを獲得したことを確認、今後、確実な労働条件の改善をかちとり、組織拡大に全力をあげようと意志統一しました。当日は午前中関西ブロックの支援を受けて宣伝行動を実施しました。

 委員長=寺村正夫▽副委員長=仲睦治、佐野至則▽書記長=杉本孝(いずれも再)

運賃問題での闘い強化確認

青森第11回大会

 【青森】青森地連の第11回定期大会は2月6日、弘前市の中弘教育会館で開催され、11人が参加しました。

 大会では、石垣東北ブロック事務局長が、「緊急調整地域に指定された、仙台のたたかいの教訓」と題して記念講演しました。

 討論では、運賃値上げが2月15日に実施されることになったにもかかわらず、1社が下限運賃をとることにしたため、全社が下限となり、結局、現行運賃とかわらなくなった問題に集中。闘いの強化を確認しました。


運賃改定を確実に労働条件改善につなげる課題(1)

スライド賃下げは論外

人件費割合維持が認可条件

 タクシー運賃改定後、一部の地域でスライド賃下げの動きがあります。今後、燃料費の高騰や予想どおりの増収がないなどの口実をつけて、賃下げをねらう会社が出てくることもありえます。充分警戒して不当な攻撃をはね返すことが大切です。

スライド賃下げ強行も発生

 静岡や香川などで実際にスライド賃下げを強行する会社が出ています。香川の東讃交通では、図々しくも「企業経営の安定健全化を図るため運賃改定を申請し、認可をいただいたもの」「スライドしても労働条件が悪化するわけでもありません」などと賃下げを合理化する文書通告で一方的に実施してきています。

 これは、今回の運賃改定の趣旨をまったく否定するものです。

賃金支給率低下は許されない

 最初に改定がされた大分、長野では賃金改善状況が公表されました。大分では、「営業収入に占める賃金支給率」が上昇した会社が93%でしたが、長野Aでは56%、Bでは48%に留まり、ほぼ半分の会社で賃金支給率が改定前より低下しているという結果になりました。

 このことについて国交省では、本田自交局長が「不快感を示し」(東京交通新聞)たと伝えられています。当然のことで、今回の運賃改定の趣旨は「実績における運送収入に対する運転者人件費の割合(歩合率)を維持した上で健全な経営が成立する水準の運賃を設定するという考え方に基づき査定を行った」ものだからです。

 運賃原価の査定では、改定前と同じ歩合率で賃金を支給することを前提に、そのために必要な労働条件改善の原資をまず算出し、その上に、燃料費や諸経費の増加、適正利潤を上積みして運賃改定率を決めています。ですから、ノースライドにすることで経営改善の原資が食われることはありえないのです。

スライドすれば会社は不当利得

 そもそも、ノースライドとしても、運転者賃金以外の会社に残る分も改定率どおり増えるのですから、会社の利益が減るわけでも何でもありません。

 逆にスライド賃下げをすると、本来、労働条件改善の分として計算された原資が会社の懐に入り「不当利得」になってしまいます。これでは、利用者に対する公約違反です。タクシー業界への不信をまねくという点では犯罪的とも言えます。

行政にも指導を求め反撃を

 千葉では、賃下げ提案してきた会社に対し、陸運支局にも指導を求め、交渉で押し返してノースライドを確認、プラスアルファについても継続審議することにさせました。

 増収が見込みどおりでないのは身勝手に車を増やした(あるいは減車をしない)経営者自身の責任です。そのツケを労働者にまわすことは許されません。

 春闘での職場での闘いが重要です。

運賃改定後の運転者の労働条件改善状況
大分県 長野A 長野B
集計事業者数(社) 83 18 108
平均増収率 2.10% -0.50% 3.90%
1人平均賃金上昇率 5.00% 3.10% 6.70%
改正前1人平均給与月額(円) 183,801 208,288 261,990
改正後1人平均給与月額(円) 174,998 201,999 245,597
賃金改善率 100%以上(上昇) 78% 78% 80%
100%未満(低下) 22% 22% 20%
営業収入に占める賃金支給率の変動状況 100%以上(上昇) 93% 56% 48%
100%未満(低下) 7% 44% 52%


 今回より2回にわけて、1月30日に東京・全労連会館で行われた組織拡大全国交流会での特別・地方報告を紹介します。今回は全労連オルグとして組織拡大にむけた3年間の活動について久賀孝三元全労連オルグ、京都ハイタク共闘会議を通じての組織拡大・強化の教訓と経営再建と組織強化のとりくみについて京都地連・安井暁副委員長です。

蒔いた種を刈り取って

全労連オルグの体験報告

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組織拡大交流会のようす=1月30日、東京・全労連会館

 全労連オルグとして東海ブロックで1年半、中国ブロックで1年半活動、未組織宣伝キャラバンも5回行った。

 種を蒔き、育て、刈り取る、という予定で、多くの人の協力を得て3年間全力をあげた。

 とくに気をつけたことは、自交総連の機関紙、ビラを確実に乗務員に手渡すことに全神経を集中し、独自のビラも作成した。

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久賀さん

 機関紙、ビラは、確実に読んでもらえるように、すべてに赤鉛筆で傍線を引くなど創意・工夫をした。赤鉛筆は203本使い切った。

 ビラには必ず「日曜・祝日、早朝・深夜,いつでも相談受けます」と書いて携帯番号を入れた。3年間で配ったのはキャラバンを除き7万5750枚以上になった。

 宣伝カーから訴えるときも、15〜20秒に集中し、ボールを投げかける感じで訴え、お年寄りなど一般の人にもわかる話題を織り込んで話す工夫をした。

 最初は話を聞いてくれなかったり、わざとビラを投げ捨てられたり、くやしい思いもしたが、あきらめずに何度も配るうちに、ついに受け取って読んでくれたときはうれしかった。また、組合に入ると差別されるのに、それでも加入してくれた人が「あなたたちには道理がある」と言ってくれたときには涙が出た。

 後は蒔いた種を刈り取ってほしい。

地連の方針・運動押し付けはだめ

共闘でのとりくみについて

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安井さん

 地連60年誌の編集を通じて、組織消滅の記録が残っていないということがわかった。「なぜ消滅となったのか」「存続の手立てはなかったのか」という視点での総括をすることは、組織拡大・強化のための糧となるのではないかと思う。

 京都では、86年にハイタク懇談会、93年にハイタク共闘会議を結成して、他産別、中立、個人タクシーも含めて共闘をしている。規制緩和阻止など一致する課題で、デモ・請願、交渉などをしている。

 注意する点は、地連の方針・運動を押し付けないということで、地連の統一行動への合流は求めない。シュプレヒコールでも「地連はがんばるぞ」などは控えるようにしている。

 繰り返し代表者会議をひらいて意志統一を行い、その上で地連の執行委員会で審議している。だからこそ、他産別や中立組合の行動参加が取れている。

 政策の面では、たとえば地理試験を含む運転者登録制度の導入では、京都は全国に先駆けて複数運賃、規制緩和がされた地域であり、中立組合も以前から方針として持っていたこともあり熱心だった。

 そうした中で、数百人の組合の地連に加盟、個人タクシー労組の結成などをかちとってきた。現在進行中の相談もあり、さらに多くの仲間を迎え入れていきたいと思う。


新加盟のなかま  (743)自交総連鹿児島自交一般労組

個人加盟労組結成

 【鹿児島】鹿児島地連は12月20日、自交総連鹿児島自交一般労組(山崎秀文委員長、5人)を結成しました。

 以前から一人加盟の希望者があり、最初県労連に相談があり、鹿児島県労連の有水事務局長が対応していましたが、その後協議し、4役を地連の組合員で組織し、2008年2月15日、山崎委員長、瀬戸山書記長、県労連有水事務局長が対応し加盟、結成することになりました。