自交労働者No.803、2012年7月1日

労働条件改善へ もっと

タクシー減車3万台近くに

消費増税で台無しも

 2012年3月末現在のタクシー台数は24万4643台で、規制緩和後のピーク時から3万台近く減ったことがわかりました。

 タクシー台数は、02年の規制緩和で急増、07年には27万台を超えました。運転者の労働条件の悪化がひどくなり、事故等の弊害も顕著になったため、09年には規制を強化するタクシー活性化法が施行され、減車がすすみはじめました。すでに規制緩和前の台数を下回りましたが、昨年より減少ペースは鈍くなっています。

 【解説】活性化法は、「運転者の労働条件の改善」を目的に、「自主的・協調的」な減車をすすめるものです。減車により、各地で一定の営業収入の回復はみられますが、労働条件の点では、まだまだ規制緩和前の水準にも達していませんし、社会的水準とは大きな差があります。

 ひきつづき減車をすすめるとともに、景気をよくして営収を増やさなればなりませんが、消費増税が行われれば景気は一気に急降下して、減車効果も台無しになってしまいます。

 政治動向に注目するとともに、運転者の数による調整と資質向上の必要性の課題が鮮明になっています。

 (注)車両数の統計は車検での区分から集計されたもので、福祉限定車両なども含まれています。昨年度から営業用の軽四輪の福祉限定車両も含めた統計が発表されるようになりましたが、記事は以前との比較のため軽四輪は除いています。

グラフ


6・23国民大集会

怒りを突きつけよう 増税談合を許すな

デモ行進に出発する東京地連の仲間=6月23日、東京・明治公園
デモ行進に出発する東京地連の仲間=6月23日、東京・明治公園
 「怒・怒・怒」――6月23日、いのちと暮らしを守れ! 怒りの6・23国民大集会が東京・明治公園でひらかれ、全国から2・4万人が結集、自交総連からは東京地連はじめ各地から約180人が参加しました。

 主催者の全労連・大黒議長は、民主・自民・公明党による密室談合で消費増税と社会保障の切捨てが合意されたことを糾弾、国民の声を無視する政党に大きな怒りを突きつけようと訴えました。

 参加者は、怒りのシュプレヒコールを上げながら、都内をデモ行進しました。


少人数でも道は開ける

組合を作りましょう

東京地連多摩で宣伝

雨の中ビラを配る東京地連の仲間=6月6日、昭島駅
雨の中ビラを配る東京地連の仲間=6月6日、昭島駅
 【東京】東京地連三多摩ブロックは6月6〜7日、個人加盟労組と合同でキャラバン方式の未組織宣伝行動を行いました。のべ22人が参加して13の駅頭で自交総連への結集を呼びかけました

 初日は台風3号の影響により雨をついての奮闘でしたが、ほとんどの乗務員が快く窓をあけてビラと機関紙を受け取り、対話にも応じてくれました。昭島駅でつけ待ちをしていた乗務員からは「職場に組合はあるが、委員長の定年退職にともない機能が停止しており、このままでは消滅しかねない状態」といった話も出るなど、どこの駅でも多くの乗務員から地域や職場の実態を聞くことができました。

 カンツリー交通労組の斎藤委員長は「最初は少人数でも、小さな問題から一つひとつ解決しながら職場の仲間に結集を呼びかけていけば必ず道は開けます。組合を作りましょう」と訴えました。


最低賃金以下も多数

高齢の乗務員が多い

高知地連宣伝行動

乗務員と対話する高知地連の仲間=6月6日、高知市はりまや橋付近
乗務員と対話する高知地連の仲間=6月6日、高知市はりまや橋付近
 【高知】高知地連では6月6日、県労連と共同で組織拡大宣伝行動を高知駅その他4か所で行いました。

 地連から4人、県労連から2人が参加し、最低賃金・自交共済・自交労働者のチラシと新聞を配布し、対話を行いました。話を聴くと、賃金は月に12万円程度で最低賃金を割っている人が多いことなどがわかりましたが、60歳以上で嘱託で乗務している人が多く、興味は示しても、「いまさらごたごたしたくない」などの率直な声も聞かれました。中には若い人もいて話を聞いてくれました。


最低賃金を引き上げよう

県労連と協力し組織拡大へ

福岡地連

あいさつする安武副委員長(右端)=6月15日、福岡市中比恵公園
あいさつする安武副委員長(右端)=6月15日、福岡市中比恵公園
 【福岡】福岡地連は6月15日、福岡市博多区中比恵公園で「最低賃金を引き上げよう!6・15集会」を行い、福岡県労働局に対して最低賃金審議会に県労連推薦の委員を擁立していくことや最低賃金を1000円に引き上げることなどを要請しました。

 集会では、安武博子副委員長があいさつし「タクシー業界では1時間695円の最低賃金さえ払っていない事業者がいる。また、ほとんどが歩合給のために、乗務員のなかには最低賃金をもらえる業種と思っていない方もいるので、今後も県労連と協力し、最低賃金の宣伝行動を行っていく。組織拡大につながるよう頑張る」と決意を表明しました。


最賃1000円求め厚労省前座り込み

厚労省前で座り込む仲間=6月22日
厚労省前で座り込む仲間=6月22日
 全労連は6月22日、中央最低賃金審議会が7月から審議を開始するのを前にして、最低賃金の全国一律1000円以上への引き上げ、生活保護改悪阻止などを求めて、最賃デーの中央行動にとりくみました。

 厚生労働省前に、正午過ぎから民間・公務の労働者約500人が集まり集会の後、座り込みに移り、自交総連の菊池書記次長が最賃割れが広がるタクシーの実態を報告して決意を表明しました。最賃1000円と現在の平均額との差額と同じ263分間、約100人が座り込んでアピールしました。


ツアーバス事故等で審議

国交相 実効性不十分と認める

衆議院国土交通委員会

質問する穀田議員=衆議院インターネット審議中継から
質問する穀田議員=衆議院インターネット審議中継から
 衆議院国土交通委員会は6月20日、羽田新大臣が出席して交通の安全確保について審議を行いました。

 日本共産党の穀田恵二議員は、ツアーバス事故に関して、安全を守るためには労働者の労働条件を保障しなければならないと指摘し、自交総連が出した「見解と要求」の各項目への対処はどうなっているのかと聞きました。

 国交省は、参入・運賃・監査体制など検討をすすめており、自交総連の要望についても検討をしている。交替運転者の配置指針は本日も検討会をひらいていると答えました。

 厚労省は、国交省の検討会に参加し、労使の意見を聞いたうえで協議して対応したいと答えました。

 穀田議員が、規制緩和をバラ色のように描いてすすめてきたことへの反省が必要だと聞いたのに対し、羽田国交相は、安全審査を緩めたわけではないとしながらも、安全対策の実効性が不十分だったと認め、検討会では参入規制のあり方も検討すると答えました。

 国土交通省は、同日開かれた第2回の高速ツアーバス等の過労運転防止検討会で、交替運転者の配置指針を夜間は実車距離400キロとするなどの緊急対策案を示し、夏までに法令改正をするとしています。


事故件数は1186件減少

死亡事故は2年連続で増加

タクシー交通事故

 2011年の交通事故統計を警察庁がまとめました。

 タクシーの事故件数は2万653件で昨年より1186件減、そのうち死亡事故は49件で昨年より4件増でした。

 【解説】自動車全体の事故件数は昨年より4・9%減で、タクシーの事故件数だけがとりわけ減少しているわけではありません。タクシーの事故件数は06年から減少傾向にあるものの、91年の16054件と比べるとまだまだ高止まりな状態にあります。

 死亡事故件数は、自動車全体としての件数は毎年減少していますが、タクシーの件数は2年連続で増加しています。11年度は東京で5件増加、神奈川で4件増加しており、これらの合計は17件で、全国の死亡事故件数の3分の1を占めています。

1台あたりは8倍

 自動車全体としての事故が減っているなかで、タクシー1台あたりの事故件数は自動車全体の8倍以上と、なかなか改善していないのが現状です。原因として、強引な運転や疲労運転などが挙げられています。規制緩和で車両が増えたところへ08年、リーマンショックのあおりを受け、タクシー利用者が減少。タクシーの賃金制度は累進歩合制がほとんどなので、賃金は下がり続け、運転者は売り上げを稼ぐためにスピードを上げ、低賃金を補うために残業や休日出勤を行うようになります。

 09年にタクシー活性化法が施行され、減車が進みはじめましたが、運転者の労働条件は依然として改善されていません。公共交通を担う運転者が適正でない労働条件で働かされているのは大きな問題です。

グラフ

表


職場権利の点検(9)

労働協約があれば改悪できません

 賃金や労働時間などの労働条件は、労使の合意によって決められるもので、経営者が一方的に改悪することはできません(労働契約法9条)。しかし、実際には、一方的に就業規則を変えて押しつけてくるなどの事例が結構あります。

 このような一方的な改悪に対する歯止めとして効果を発揮するのが労働協約です。

文書で労使の署名があれば成立

 労働協約というのは、労使の合意内容を文書にしたもので、双方の代表の署名があれば成立し、法的拘束力をもちます。協定書、確認書、覚書など名前は何であっても構いません。春闘で合意した内容を書面にし、双方が署名をすれば労働協約となります。

 労働協約で決めた内容は、就業規則や労働基準法の最低基準より優先し、使用者は必ず守らなければなりません。破棄する場合は事前に通告して話し合わなければならず、よほどの理由がなければ認められません。

 労働協約に定める内容は、賃金、労働時間をはじめ、労働条件・労使関係に関わるあらゆる事柄が含まれます。このうち、とくに廃業・企業譲渡など重大事項の事前協議・同意条項を協定したものを「同意約款(やっかん」といいます。これがあれば、突然の倒産や身売りを防ぐ効果を発揮します。(連載おわり)

同意約款

労働契約法

 第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。《変更が合理的である場合は別》

労働組合法

 第14条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。

 第16条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。