自交労働者No.949、2021年4月15日

ダイナミック・プライシング反対

タクシー運賃への導入検討

利用者にも労働者にも害悪ばかり

発言

  政府の規制改革推進会議は21年2月の会議で、タクシーの規制緩和として、ダイナミック・プライシング(変動運賃制)の導入を提起し、国土交通省も実施するための調査を行おうとしています。
  ダイナミック・プライシングというのは、飛行機のチケット代やホテル代のように、タクシーの運賃を需要が多いときは高く、少ないときは安く変動させようというもので、AIが需給動向を判断して、瞬時に運賃を上下させる方式などが考えられています。


自交総連は声明を発表

 自交総連は3月17日、タクシーのダイナミック・プライシング(変動運賃制)に反対する(声明)を発表、この制度はタクシー利用者にも、労働者にも、業界にも、何ら利益がなく、害悪だけを生じさせるものであるとし、安心・安全かつ安定的に人の移動を担うという公共交通の基本を投げ捨てるものだと表明しました。


変動運賃制ここが問題

1 雨の日は運賃が上がる?

  雨の日はタクシーに乗りたいという人が増えるので運賃が上がる可能性があります。
  台風や事故で電車やバスが止まった時には乗客が殺到するので運賃が急上昇します。ライドシェアの米・ウーバーではサージ・プライシングという同様のしくみがあり、暴風雨で電車が止まった時に運賃が4倍に暴騰し、非難が殺到しました。


2 高齢者や障がい者は困惑

  現在、タクシーを日常的に使っているのは、障がい者や高齢者が病院に通う例が多くなっています。
  バスや鉄道がなくなったり、使いづらいなかで、残された唯一の公共交通機関としてタクシーを頼りにしている人びとが、その通院時に運賃が高くなる時期に当たれば、否応なく余分な出費を強いられることになります。


3 運転者にも利益なし

  タクシー運転者の賃金は、ほぼすべてが歩合給で、運賃収入の多寡に賃金が連動します。運賃が安く設定されている時期に乗客を乗せれば賃金が下がってしまいます。
  また、乗客と直接に接する運転者は、運賃が上がったときに乗った乗客から苦情、不満をぶつけられることが想定されます。その対応による精神的消耗は深刻になると考えられ、安全運転にも影響をおよぼしかねません。




ダイナミック・プライシングについてのコメント

全日本視覚障碍者協議会(全視協)理事 藤原義朗さん
  高知では公共輸送機関が発展していません。要介護の義母を看ていますが、タクシーを使うと値段はかかりますが、大変便利です。事故や災害、天候悪化などで運賃が上がると、タクシー以外に代替手段のないものにとっては大変な問題です。私たちは料金が見えません。ダイナミック・プライシングになり「今は高い料金モードです」と言われても信ずるしかありません。信頼関係にヒビが入りかねません。


障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会(障都連)会長 市橋博さん
  ダイナミック・プライシング制度のことを知った時「料金が安くなると誤解するたいへん危険な制度だな」と思いました。障害者がいちばんタクシーを利用したいのは、雨降りなど非常時です。しかも乗降に時間がかかる。この様な時に乗客と運転手さんとのトラブルを産むような制度導入に断固反対します。ライドシェアで採用されて安全が損なわれていることに危惧しています。運転手さんの労働条件を整備し、安全で、便利な公共交通としてのタクシー制度を確立するために、今後も共同の運動を進めましょう。

変動運賃制導入するな

内閣府・国交省からレク、共産党議員らと懇談

内閣府・国交省からレクを受ける自交総連の代表、(中央列左から2番目)高城委員長、(その奥)武田参院議員=4月2日、東京・参議院議員会館
内閣府・国交省からレクを受ける自交総連の代表、(中央列左から2番目)高城委員長、(その奥)武田参院議員=4月2日、東京・参議院議員会館

  自交総連は4月2日、日本共産党の武田良介参議院議員の協力で、内閣府・国土交通省からダイナミック・プライシングなどの問題についてレクチャーを受け、その後コロナ問題なども含めて日本共産党国土交通部会と懇談を行いました。
  国交省・内閣府のレクでは、昨年末に河野規制改革担当大臣がテレビでダイナミック・プライシングをやると発言したのを契機に、利用者からの明確な要望などないのに、全タク連の活性化11項目に入っていたのを利用して規制改革推進会議で取り上げられたという状況が分かってきました。
  国交省は、安全を担保しなければならない、利用者に不利にならないように声を聴かなければならないと強調しましたが、需要が増える根拠などについては明確な説明はありませんでした。
  同席した武田議員も質問し、「ダイナミック・プライシングは法改正をしなくてもできる」「実証実験は手を挙げた企業でやる」という答えに、一部の企業だけの考えで簡単に強行されてしまうのではないかと懸念を示し、障がい者や消費者団体など利用者の声も聴き、他の野党にもよびかけて、反対運動を広げる必要があるとの意見を述べました。
  日本共産党国土交通部会との懇談では、ダイナミック・プライシング阻止の課題とともに、コロナ危機への支援などを要請し、貸切バスの軽井沢事故以降の状況などについても意見を交わしました。武田議員から、自交労働者の厳しい状況に寄り添って、現状を打開するため国会でもがんばりたいとの決意が述べられました。(さらなる詳細

最後までたたかう

解雇無効求め申し立て

鹿島タクシー支部

記者会見後報道各社からインタビューを受ける組合員(中央)=3月16日、宮城・仙台市内
記者会見後報道各社からインタビューを受ける組合員(中央)=3月16日、宮城・仙台市内

 【東北】 自交総連ハイタク一般労組鹿島タクシー支部は3月16日、会社がタクシーの廃業にともない強行した解雇の無効を求め、仙台地方裁判所に対し、労働審判の申し立てを行いました。同日に記者会見も行い、テレビや新聞で報道されました。
  会社は、何度も団交で求めた雇用調整助成金の活用を拒否し、10月15日にいきなり全労働者を集めて具体的な説明もなく、タクシーの廃業と全員解雇を通告してきました。
  雇調金も使わず、しかもその後の団交で会社は前年度黒字だったことが判明。何のための廃業なのか、法的手段を使うなかで、今後真実を明らかにしていくことになります。
  記者会見で、鹿島支部の佐々木さんは、「会社からの説明はまったく不十分だし、そもそも解雇をしないための努力がまったくなされていない。最後までたたかうので、ご支援をお願いします」と訴えました。

情報に「ありがとう」の声

駅宣伝行動、労働局交渉を実施

東北地連

 【東北】 東北地連は3月1日、仙台駅タクシープールで宣伝行動を実施し、組合役員5人が参加しました。
  新型コロナの影響で入庫するタクシーの台数が少なく、時間のわりには配布数が少なくなりました。
  チラシを配りながら状況をきくと、どの運転者もコロナのせいで暇になり生活が苦しいと口々に訴えていました。
  チラシを受けとった労働者からは「いつも本当にいろいろな情報をありがとう」との声がかえってきました。
  さらに3月25日には、宮城労働局と休業支援金についての交渉を実施。組合から4人が参加しました。
  昨年11月に宮城労働局と交渉した際に、会社が認めなくとも支援金を支給するということになり、その後、鹿島タクシーの組合員が請求し、支給されました。

協会としての発信を

阪タク協交渉にとりくむ

大阪地連

要請主旨を説明する福井委員長(中央列左側)=3月11日、大阪・大阪タクシー協会内会議室
要請主旨を説明する福井委員長(中央列左側)=3月11日、大阪・大阪タクシー協会内会議室

 【関西】 大阪地連は3月11日、春闘ヤマ場の「大阪大行動」の一環として大阪タクシー協会交渉にとりくみ、コロナ禍のなかで労働者の命と暮らし、タクシー産業を守るために必要な施策、白タク合法化阻止に向けた共同、労働条件改善などを要請しました。
  交渉に組合側は大阪地連三役・執行委員ら9人が参加。協会側は井田信夫専務理事、黒田唯雄常務理事が応対しました。
  要請の趣旨説明を行った福井委員長は、「このコロナ禍でタクシー労働者は本当に生きていけるかどうかの瀬戸際だが、我々の目に映るような協会としての発信が少ない。事業者がコロナを口実に賃下げを図ることがないよう徹底してもらいたい」と訴えました。

5月から作戦開始

組織拡大へ調整会議を実施

鹿児島地連

組織拡大のための全労連重点計画の調整会議=3月25日、鹿児島・鴨池公民館
組織拡大のための全労連重点計画の調整会議=3月25日、鹿児島・鴨池公民館

  組織拡大のための全労連重点計画の調整会議が3月25日、鹿児島市でひらかれ、鹿児島地連、本部、鹿児島県労連、全労連が参加、鹿児島のタクシー・バス・自教労働者を対象に重点計画に登録することを確認しました。
  会議には地連から5人が参加、福岡地連の内田書記長も参加して福岡での経験を報告しました。鹿児島の現状を出し合い、◇コロナで困っている労働者がたくさんいて組合に関心が高まっているのは間違いない◇高齢者が多くて組合に入ってくれるか不安◇既存の組合が頑張っている姿を見せないと入ってこない――など率直に意見を交換して、春闘で成果を出して未組織の仲間に宣伝していこうと意思統一しました。
  県労連からも他の組合にもよびかけて一緒に宣伝行動をやっていきたいと決意が表明され、5月から具体的な作戦を進めていくことを決めました。計画が全労連で承認されると70万円の支援がされるので、宣伝資材をつくることにしています。

年収格差は224万円に

タク年収、コロナ禍で38万減少

タクシー労働者労働条件比較

  2020年のタクシー労働者と他産業労働者の労働条件比較がまとまりました。
  タクシー労働者の平均年収は269万9700円、前年より37万7400円減りました。産業計男性労働者の年収も8万1200円減って493万5000円になっていますので、格差は223万5300円で大幅に拡がりました。
  この調査はコロナ禍の最中の昨年6月分の賃金をもとに集計されているものです。営収の減少が著しい時期なので賃金も大幅減となっています。
  1時間当たりの賃金(一時金を含む)は、タクシーが1284円、産業計が2296円で、格差は1012円(56%)でした。
  この統計は、各地方でサンプルを選んでまとめているものです。サンプル数が少ないため極端な数値の変動が出ることがあります。今回、石川の年収が185万円増えるような特異な例がありますが、特定のサンプルをとったためだと考えられます。

  注.資料は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)。厚労省の集計方法が変わったため、タクシー労働者は前回まで「男」でしたが今回から「男女計」になっています。産業計労働者は男性、企業規模10人以上。全国平均は単純平均で出しています。業界紙等で報道される数値(加重平均)と異なります。

→統計表

月賃金総額で計算はだめ

働いた労働時間に応じる

部分休業時の最賃の支払い

  現在、多くの職場で計画休業が実施されていますが、1か月全休ではなく、部分的に休業、部分的に勤務している場合、勤務したときの賃金は、勤務した労働時間に応じて最低賃金を上回っていなければならず、下回っていた場合は最低賃金法違反になります。
  休業手当を含めた1か月の賃金総額で計算して最低賃金以上になっているならいいことにはなりません。
  3月5日の厚生労働省交渉の際、最低賃金(最賃)の計算方法について厚労省側が不正確な回答をしたため、改めて回答を求めていましたが、3月13日に労働基準局賃金課から正確な回答がありました。

最賃

  右の表のような事例の場合、勤務した日については賃金の時間額が最賃を下回っています。しかし、休業手当を含めた1か月の合計賃金で計算すれば最賃を上回っているのだから、最賃法違反ではないと経営者が主張するケースがあります。
  こうした例について、関西地連が大阪労働局に問い合わせたところ、勤務したときの賃金時間額が最賃以上でなければいけないという回答をもらっていましたが、3月5日の交渉時に本省に確認したところ、これと異なる見解が示されたため、正確な回答を求めていたものです。
  その結果、本省としても、勤務した日の最賃違反については、その時の賃金を労働時間で割って時間額を出し、それが最賃額以上でなければだめだということを確認しました。

新型コロナウイルスの影響調査

緊急事態宣言によりタク営収連続悪化

  全タク連が実施した、新型コロナウイルスのタクシー営業収入への影響のサンプル調査の最新結果が発表されました。

営収1

  それによれば、20年10月までは若干の回復傾向だったタクシー営業収入は夜間の会食・外出の自粛や感染再拡大の影響により、11〜1月と連続して悪化しています。
  今年2月はやや持ち直しているものの、依然として苦しい実態が窺えます(上表参照)。

1月営収44%減

営収2

  第3波の感染者拡大を受けた緊急事態宣言の影響等により、1月の営業収入は昨年比で44・1%減、2月は42・6%減となっています。   特に営収が低下した地方は、茨城、京都、長野、山梨、静岡、愛知、栃木、埼玉で、1月の営収が昨年の半分以下にまで落ち込んでいます。   緊急事態宣言は3月で解除されましたが、第4波の感染拡大で「まん延防止等重点措置」が各地で適用されるなど、全国的に需要がどの程度回復していくかは不透明です。