自交労働者No.968、2023年1月15日

新年への抱負


業界の間違い正す

中央執行委員長・庭和田裕之

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 23年春闘は、コロナ禍と物価高騰という二重苦の下でとりくむことになります。
 昨年の秋ごろから政府のコロナ対策の規制が緩められ徐々に全国的に人流が増え、年末にはひっそりとしていた観光地も賑わいを取り戻しつつあり、そうした影響もあり自交産業で働く労働者の賃金も若干ではあるもののデータでも改善傾向が見えてきました。
 ただ、地方間格差はまだまだあり、厳しい状況から脱しきれない仲間も少なくないと思います。
 自交総連本部として、23年春闘は、全国的な賃上げ状況を形成するためにも、運賃改定要請がすすむ段階から「スライド賃下げは許さない」という闘いを行わなければなりません。市民利用者に対しても目に見える、耳に聞こえる行動、そして、みんなで業界の間違っていることを正していくという原則的な運動をすすめる必要があります。
 自交産業の春闘は他産業と違い実質、歩合給が中心の賃金体系のため営業収入を上げない限り労働者には跳ね返ってこないという構造があります。実質賃金増にこだわり、そして福利厚生も充実させていく闘いを全国の仲間と共にがんばっていきたいと思います。


闘い広げる知恵と力を

副中央執行委員長・石垣敦

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 年末に行った団交で、3月の福島・宮城県地震に関する社会保険問題での自交総連のとりくみに対し、経営者より感謝の言葉がありました。また、国防費での増税より消費税減税が必要との発言もありました。
 23春闘は、タクシー産業の将来を左右する重要なとりくみになります。労働者へ「食える賃金」を保障しないかぎり、産業の未来が消滅します。同時に、この国のあり方を根本的に変えなければなりません。軍事費のために国民生活を犠牲にし、原発にエネルギーを頼る、こんな政策をすすめていたら国の破綻は明らかです。
 私たちは、労働組合の原点にたちかえり、自らの生活を守るためにたたかうと共に、国民の平和・民主主義を守るために、この春闘を全力でたたかわなければなりません。
 コロナがいまだに猛威をふるって、活動も制約されていますが、闘いを広げる知恵と力が試されています。共にがんばりましょう。


全ての自交労働者の組織化を

副中央執行委員長・コ永昌司

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 23春闘の抱負は組織拡大です。要求実現のためには組織拡大が必要で、各単組で過半数以上となることが重要です。
 自交総連はノースライド闘争、規制緩和反対闘争など様々な政策闘争にとりくみ、成果を挙げてきました。一方で労働組合の無い職場や自交総連が過半数を組織しきれていない職場では、産別としてかちとった成果が実感できず不満が募っています。
 昨年から運賃改定の申請が全国で行われており運賃改定が実施されています。東京では運賃改定により日車営収が大幅に改善しました。日車営収の改善は乗務員の賃金に跳ね返り賃金増となりました。一部の経営者の中からスライド賃下げなどの合理化案が出ています。行政も自交総連が掲げてきたノースライドを堅持する通達を出していますが、悪質経営者には通じません。最後は組合と会社との力関係によって、その職場の賃金労働条件が決まります。全国で働く全ての自交労働者を組織化していくために奮闘します。


改善には需給調整と運賃

本部書記長・城政利

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 謹んで新春の喜びを申し上げます。コロナ禍が早期に終息することを衷心より祈念いたします。
 岸田政権は、国家安全保障戦略など安保関連3文書を閣議決定し、国家安保戦略を国家防衛戦略に変え、中国の軍事動向を「わが国と国際社会の深刻な懸念」と位置づけ、「反撃能力」敵基地反撃能力の保有などのために防衛費増額で大軍拡を一気にすすめようとしています。
 専守防衛の範囲を超え戦後日本の基本的姿勢を変えるものとなるだけでなく、財源には、法人税、たばこ税、復興特別所得税を充てることを国民に諮ることなく、一方的に公表しました。戦争する国にしないためにも国民の不断の努力が必要です。
 業界では、全国で運賃改定がすすんでいます。実施された東京では労働者が減少したことで供給調整が図られた形となり、増収が出ています。労働条件改善には、需給調整と運賃が決定的要素だと皆が感じたと思います。このことを運動の推進力に奮闘していきましょう。


大軍拡、大増税を許さない

春の統一選挙勝利を

本部顧問弁護団小賀坂徹弁護士

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 新年あけましておめでとうございます。
 岸田首相は、昨年12月16日にいわゆる安保関連3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の改定を閣議決定しました。その中で敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を明記し、そのために軍事費を倍増することを決めています。しかし、これは国際法違反の先制攻撃を事実上容認するもので、専守防衛の基本方針の大転換であり、憲法9条を蹂躙するものです。こうした軍事力による威嚇は、周辺国との緊張関係を激化し、わが国の安全を一層危うくするものです。さらにそのために大増税が予定されており、国民の生活を圧迫することは明白です。こうした大軍拡、大増税を許さないためにも、今春の統一地方選挙勝利のため奮闘していきましょう。

賃金補填の和解かちとる

5地方7組合が争議に奮闘

長期争議の紹介

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 自交総連の長期争議組合は昨年10月時点で5地方7組合でした。
 内容は、未払い賃金請求、不当解雇などです(上表)。
 この1年での争議の解決状況をみると、東北・ハイタク一般労組みちのく観光の雇止め事件では、仙台地裁で雇止め期間の賃金分をほぼ補填する和解をかちとりました。
 他にも、東北・ハイタク一般労組鹿島タクシーの全員解雇事件での金銭和解、北海道・ハイタクユニオンの雇止め事件での金銭和解などがありました。
 自交総連では毎年、臨時徴収金から、解雇事件や重大事件に配分しています。


今年も不屈の精神で

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 福岡地連 藤波義久執行委員
 あけましておめでとうございます。
 福岡地連は、有限会社ワーカーズコープタクシー福岡と裁判闘争を行っています。会社は自交総連の組合員であることを理由に残業をさせませんでした。
 残業をさせないことが福岡県労働委員会で不当労働行為と決定され、想定される賃金1人約200万円の支払い命令が下りました。
 会社は県を相手取って取消訴訟を起こしましたが、棄却され最高裁に上告しています。
 また、組合員3人は割増賃金未払訴訟を起こし、地裁で勝訴しました。そのうちの1人は、高裁の判決が出て完全勝訴。会社は最高裁に上告しています。
 残る2人は新年に入って高裁判決が出ます。組合員に対するパワハラも認定され30万円の判決が確定しています。
 この会社は、組合の先輩たちが立ち上げた会社ですが、経営者になったからといって、まともな賃金を払わず、労働組合員に対する差別やパワハラを認めるわけにはいきません。今年も不屈の精神でがんばります。

運転者の労働環境改善が重要

乗務員の労働条件について質問

伊藤岳参院議員(共)

質問する伊藤岳参議院議員=22年12月6日、東京・参議院総務委員会(参議院インターネット中継より)
質問する伊藤岳参議院議員=22年12月6日、東京・参議院総務委員会(参議院インターネット中継より)

 日本共産党の伊藤岳参議院議員が総務委員会で12月6日、実例をあげてタクシー乗務員の賃金体系変更時の賃下げについて質問し、仕事を離れていく人が続出している実態を厚生労働省、国土交通省へ訴えました。
 伊藤議員は、12月に業界大手である埼玉県の飛鳥交通の大宮営業所で累進歩合制廃止・乗務員負担廃止の賃金体系変更時にタクシー乗務員の賃下げが行われたという実例をあげ、厚労省へ賃下げなどの労働条件の不利益変更は労働契約上許されるのか質しました。
 厚労省の審議官は、個別の事案については回答を控えるとした上で、一般的に労働契約法上において賃下げという労働条件の不利益変更は許されないと話しました。
 その回答を受けて伊藤議員は、これまで発出してきた通達は労働条件を改善して賃上げすべきという趣旨であるとの認識を国交省へ改めて確認しました。
 それに対して国交省の審議官は、タクシー運転者の賃金等の労働条件については、基本的に労使間で決定されるべきものと回答してから、新型コロナウイルス感染症の影響により多くの運転者が離職しており、地域における移動の足を確保するには運転者の労働環境の改善が重要と頷きました。そして、国交省としては、運賃改定の申請があった場合にはすみやかに審査を行うと共に、運賃改定後に運転者の労働条件の改善状況について公表するようタクシー事業者に対して指導を行っていると強調しました。
 現在、全国の59運賃ブロックで運賃改定が要請、実施されていることから、改定前、改定後に賃下げ提案する事業者が散見されています。運賃改定の趣旨である労働条件改善は、社会的合意であることから確実に履行させることが重要です。

※全文

まず上限規制を適切に守らせる

厚労省・経産省・国交省と交渉

交運共闘

厚労省交渉=22年12月9日、東京・衆議院第一議員会館
厚労省交渉=22年12月9日、東京・衆議院第一議員会館

 交運共闘は12月9日、11・10中央行動で提出した個人請願書の内容について厚生労働省・経済産業省・国土交通省と交渉を行いました。タクシー・バスにかかわる部分を紹介します。



【厚生労働省交渉】
 〇組合側 残業時間規制について、自動車運転労働者の猶予期間の満了を待つことなく、できる限り早く一般職と同じ規制を適用すること。
 〇厚労省 労働時間を短縮していくためにも、荷主や国民全体の意識の変容が必要だ。まずは上限規制を適切に適用させ守らせていき、社会的変容につなげて行くことが重要。

【経済産業省交渉】
 〇組合側 自動運転車や空飛ぶクルマ、低速・小型の自動配送ロボットなど安全性の確保を軽視して、規制改革一辺倒の政策を推進しないこと。
 〇経産省 仮に道路運送法上の登録や許可など法律違反行為があった場合は国土交通大臣において厳正に対処される。空飛ぶクルマについては、航空法が適用される操縦者の技能も求められる。ヘリコプターの運転技術なども参考に検討しているところ。

【国土交通省交渉】
 〇組合側 オンデマンド交通など新たな規制緩和を行わないこと。
 〇国交省 一部の地域において地元のタクシー事業者が協力して実証運行していることは承知している。既存のバス・タクシー事業者の需要を損なうことにならないか分析していくことが重要と考えており、実証運行の内容を注視していく。

※全文

早期の再改正を求める

厚労省が「改善基準告示」を改正

 厚生労働省は12月23日、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)を改正しました。適用は24年4月1日からとなります。
 厚労省は昨年9月のとりまとめで、「改善基準告示等の改正適用後の運用状況を把握し、24年4月の後3年を目途に、実態調査の設計等を含めて、見直しに向けた検討を開始することが適当である」とし、適用後の見直しに触れています。
 19年12月から開始された今回の改善基準告示見直しの審議は、公・労・使の代表が参加して、バス、ハイヤー・タクシー、トラックの3つの作業部会を設置し、それぞれ内容を議論していきましたが、結果をとりまとめて改正するまで3年間かかりました。休息期間を延ばすことについて事業者の抵抗が強く、議論がすすまないこともあり、運転者の過労死防止や健康問題の是正にむけた姿勢がきちんと反映されたか疑問となる部分も多い改正となったといえます。
 改善基準告示を最低賃金法のように強制法規にしない限り、事業者は努力義務を後回しにすることが想定されます。
 交通運輸事業の場合、長時間労働が解消されずに事故が発生すれば、多くの犠牲者が出る可能性があります。
 自交総連は、早期の再改正を求めていきます。