法案提出に異議唱える
全国から日本維新の会へ抗議FAX
日本維新の会は4月11日、「ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案」を衆議院へ提出しました。
これに対して自交総連は4月末、日本維新の会の国会議員事務所及び都道府県総支部事務所へ抗議文(後述)を全国からいっせいにFAX送信しました。
また、5月14日には中央行動として、東京地連主催の「東京維新の会事務所前宣伝行動」と合流し、宣伝を行います。
ライドシェア法案提出への各所の反応
国交省・鶴田浩久物流・自動車局長=アメリカで行われているようなライドシェアについては、「車とドライバーの安全」「事故が起きた時の責任」「労働環境」の3つが満たされなければ認めない姿勢でぶれずにいきたい。(4月22日の自民党個タク議連総会にて発言)
全タク連・武居利春副会長=タクシー事業者としてしっかり意見を申し上げ、交通空白地は我々がしっかり対応すると意思表示をしていかなければならない。(4月11日の労務委員会にて発言)
新経済連盟・三木谷浩史・代表理事(楽天グループ会長)=同法案には従来からの新経連の主張が盛り込まれている。法案提出を契機に議論が進み、一刻も早くライドシェアの全面解禁が実現することを望む。(4月11日に連盟HPにて公表)
本部顧問弁護団・中村優介弁護士=日本維新の会が衆議院において、議員立法として、「ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案」を提出した(以下、「本法案」という。)。
本法案は、「ライドシェア事業」として、現在実施されている「日本版ライドシェア」と同様のいわゆる「雇用型」のほか、海外で実施されているような「委託型」をも容認し、運転者に二種免許を求めない。また、事業者がライドシェア事業を実施するにあたってはタクシー事業の許可は不要であり、事業者に台数制限も課されない。いわゆるライドシェアの全面解禁を認める内容だ。
そもそも、「日本版ライドシェア」を含めたライドシェア事業は、タクシー運転者に二種免許を要求しておらず、タクシー運転者の地位を低下させるものである。本法案によるライドシェアは台数制限が課されないため、特に都市部においては、タクシー車両の供給過多となり、営収の減少だけでなく、交通渋滞が発生することも懸念される。まさに、規制緩和の再来である本法案を容認してはならない。
ライドシェア法案提出に対する抗議文
日本維新の会は、4月11日に「ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案」を衆議院へ提出した。
これは旅客運送に欠かすことのできない安全規制の本質を全く理解せず、貴政党の無知と無責任を露呈させたものである。さらに、大阪・関西万博が開催され、代表である吉村大阪府知事が注目を集めるタイミングというアピール戦略的な手法に不信を禁じ得ない。
自交総連は、国民の安心・安全な公共交通を担う立場から、同法案に異議を唱え、抗議する。
同法案には、国民や訪日外国人の移動需要を満たし、利便性の向上につながるとして、地域・期間等の限定がないライドシェアと参入要件の緩和、ダイナミック・プライシングの必要性が羅列されている。旅客運送にかかる規制は、地域公共交通の安心・安全の確保と、利用者の生命・身体・財産に直結するものである。これは何よりも優先されなければならない事項であり、利便性の向上等を理由に衰退させることは許されない。
タクシーの業況については、都市部で労働者が増加し供給過剰となりつつあるが、過疎地域では人口減少による供給不足は依然として続いており二極化している。
そこに制限のないライドシェアを導入しても輸送秩序の混乱をきたすだけで、貴政党が強調している利便性の向上とはならない。
ライドシェアの導入は、地域公共交通を破壊するだけでなく、交通事故の増加や交通渋滞など地域社会に様々な弊害を引き起こすものでしかない。
自交総連は、「ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案」の提出に賛成した者の国会議員としての資質を疑う。今後も地域公共交通の役割を果たす安心・安全なタクシーを守る交通政策の確立を求めていく。
ライドシェア解禁を許さない
国会前で抗議行動を実施
4・9中央行動
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シュプレヒコールする仲間=4月9日、東京・国会議事堂前 |
自交総連は4月9日に、国会議事堂前でライドシェア抗議宣伝行動を実施しました。
行動には、庭和田裕之中央執行委員長を始め100人以上の仲間が集結し、国会へ向けて『ライドシェア解禁反対』のプラカードを掲げました。
庭和田裕之中央執行委員長による主催者あいさつの後、全労連の秋山正臣議長、交運共闘の三宅洋幹事、日本共産党の大門実紀史参議院議員から連帯のあいさつを受けました。
続いて、東北・東京・神奈川・静岡・福岡の代表者が各地の状況を訴え、最後に、参加者全員でこぶしを突き上げシュプレヒコールを行い、宣伝行動を締めくくりました。
【各地の決意表明】
東北・石垣敦副委員長=政府がライドシェア解禁に躍起になる中、東北ではタクシー会社が倒産する事態が続いている。地域のタクシー会社を守ることがなにより大切だ。
東京・コ永昌司副委員長=過去のタクシーの規制緩和は再規制に向かったにもかかわらず、20年の時を経てまた同じことが繰り返されようとしている。日本維新の会に対し、東京地連は事務所前で抗議行動を行う。
神奈川・冨松達也常執=横浜でもタクシーは空車が目立ち始めている。日本版ライドシェアは都市部では不要になりつつある。インバウンドに偏重しない政策の実施を求める。
静岡・市村直之中執=浜松駅では、新幹線が駅に停車したとき需要が集中し、タクシーが足りない状況が生まれるが、20分も経てば元に戻る。一時的な状況を捉えたライドシェア導入は必要ない。
福岡・内田大亮常執=ライドシェア全面解禁勢力との天王山の闘いが始まった。福岡でも経営が続けられないと倒産・廃業するタクシー会社が数社出ている。これから日本維新の会に対し、猛抗議の運動を進めていく。 →さらに詳細
回答引き出しに全力を
25春闘中間とりまとめ
【報告者=堀井一也書記次長】自交総連2025春闘は4月30日現在、68組合が要求を提出しています(提出率=38・4%)。
うち18組合が回答を引き出し(回答率=26・5%)、16組合が妥結・了解(解決率=23・5%)しています。
いまだ闘争継続中の組合が多く、ほとんどの組合が解決に至っていません。
引き続き、職場の要求を前進させるために、団体交渉を重ねていきましょう。
今春闘の特徴のひとつとして、タクシー車内における利用者の嘔吐問題の進展がありました。
昨年、あるタクシー会社の運送約款に、嘔吐損害について請求規定が明記されました。迷惑行為で営業を中断せざるを得ないような汚れや悪臭が車内に発生した場合、利用者に対してクリーニング代及び営業損害として賠償金を求めるというものです。
嘔吐問題は民事的要素が強く、長らく会社が見解を表明せずに対応が乗務員任せとなっていました。この事例をきっかけに、他の組合が会社に対して同様の要求を行った結果、2組合で獲得に至りました。
ライドシェア全面解禁阻止統一行動
高知、山形、関東B、京都で実施
自交総連は、今年度、「ライドシェア全面解禁阻止」を掲げ、各地連・地本において統一行動を行っています。4月は、高知、東北・山形、関東ブロック、関西・京都で行動がとりくまれました。
全視協も駆けつけて宣伝
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ライドシェア法案阻止を訴える=4月10日、高知・県庁前交差点 |
高知地連は4月10日、県庁前の交差点でライドシェア阻止宣伝行動を実施し、地連から5人、県労連から4人が参加しました。
街頭演説で、「利用者が安心・安全に乗ることができるタクシーを存続させるためには、ライドシェア法案を阻止するしかない」と強調し、ビラ等を配布しました。
全視協の藤原義朗専門領域担当理事も駆けつけ、ライドシェアの危険性を共に訴えました。
RS反対ビラ受け取り良好
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横断幕を広げて通行人へ訴える=4月12日、山形・山形駅前 |
東北地連は4月12日、山形駅前と山形市旧大沼デパート前で宣伝行動を実施しました。
横断幕を広げてビラ等の配布を行い、ハンドマイクで日本維新の会が『ライドシェア新法』を国会へ提出したことを訴えました。
タクシープールには昨年と比べて倍ほどの人がいました。タクシーから出てきて訴えを聞いてくれ、ビラの受け取りも良好でした。
しかし通行人はまばらで、コロナ禍よりは人の動きが増えたものの、かつての賑わいはありませんでした。
3県またがった宣伝を実施
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タクシー乗務員へ機関紙を手渡す=4月18日、静岡・静岡駅前 |
関東ブロックは4月17日〜18日に神奈川・静岡・山梨で宣伝行動を実施しました。各地の主要駅で街頭演説し、ビラ等を2日間で600枚配りました。
タクシー乗務員にはさらに機関紙『自交労働者』も渡しました。
横浜駅前では、石野議長が「大阪・関西万博では日本版ライドシェアが24時間運行され、他方で日本維新の会は『ライドシェア新法』を国に提出した。利用者の安心・安全のために、こうした動きは絶対阻止しなければならない」と強調しました。
その後、冨松事務局長(横浜駅前)、市村副議長・静岡県西部地区労連の堀内議長(浜松駅)、林副議長・静岡県評の菊池議長(静岡駅)、本部の堀井書記次長(甲府駅)がそれぞれ登壇し、地域公共交通を守るように訴えました。
被害受けるのは市民と訴え
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京都では14度目の共同闘争が行われた=4月24日、京都・京都駅烏丸口前 |
「ライドシェア全面解禁阻止」の一点共闘で始めた京都の「共同闘争」は第14波となり、4月24日にJR京都駅烏丸口と四条烏丸で宣伝行動が行われました。
今回の行動には、応援に駆けつけた京都総評の柳生事務局長なども含め、関係者15人が参加しました。
自交総連からは庭和田地連書記長(本部委員長)が登壇し、「ライドシェアは、ドライバーの労働者性を否定し、全てを個人請負とする。しかしこれは何もタクシー業界だけの問題ではない。利用者に何か起きた時に保証が得られないことが一番の問題。被害を受けるのは間違いなく市民の皆さん方だ」と訴えました。。
雇用によらない働き方はNO
労基法解体に反対
ライドシェアはギグワーク
コロナ危機から、『ギグワーク』が急速に拡がっています。
ギグワークは、企業と雇用契約を結ばない単発・短時間の働き方(業務委託)を意味し、その働き手をギグワーカーといいます。
海外ではライドシェアが代表的ですが、日本ではフードデリバリーや軽貨物ドライバーが主流となっています。
国内では、本業とは別に副業を前提とした働き方として浸透していますが、今後、労働者を個人事業者扱いにする働かせ方につながる恐れがあります。
こうした「雇用によらない働き方」が進む背景を解説します。
ギグワークは、プラットフォーム(スマホやPCのアプリ)を仲介し、求職者と求人企業がマッチングするしくみです(下図)。
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プラットフォーム会社(運営)は、マッチングごとに求人企業から手数料として上前をはねた上で、求職者へ時間単位の報酬を支払います。
ここで問題となるのは、ギグワーカーが労働者ではなく個人事業者だということです。
最低賃金の保障や社会保険、労災保険の適用などから除外され、無権利状態に置かれてしまいます。そればかりでなく、他の個人事業者が就労先の企業と業務委託契約を直接結ぶのに対し、働き方の契約はプラットフォームの利用規約に従わなくてはなりません。
つまり、報酬の引き下げなど不利益変更を運営の一存で実施される可能性があります。
厚労省が公表しているガイドラインによれば、仲介事業者が合理的な理由なく規約の変更を一方的に行った場合、優越的地位の濫用として独占禁止法上の問題となるとされています。しかし、問題事案が発生したときに、そうしたガイドラインを盾に企業と長期間交渉することは、個人には経済的にも労力的にも困難を極めます。 RS解禁の後押しになる
労働者を個人事業者扱いにするギグワークのような働かせ方が定着すれば、ライドシェア全面解禁の後押しになります。
事実、無制限にライドシェアをやりたい人たちは、「好きな時に柔軟に働くことのできる新たなライフスタイル」としてギグワークを宣伝しています。
こうしたポジティブキャンペーンは、派遣労働やアルバイト就労を定着させた際にも用いられた手法です。
しかし、実際には、マッチングされた乗客を乗せる以外に仕事はできず、運賃も、運行方法もプラットフォームが定めます。完全に企業の支配下に置かれるにもかかわらず、ライドシェアドライバーには労働者に保障されている権利や労働法にもとづく保護は一切ありません。
今、企業に都合のよいギグワークをさらに拡大するために、政府・財界によって「労基法の解体」といえるほどの制度改革が狙われています。
国で行われてきた議論
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「働き方改革関連法」には、国の講ずべき施策に多様な就業形態の普及を位置づける『雇用の柔軟化』が盛り込まれました。それを受けて、国の推進により多くの企業で副業・兼業が解禁されることとなりました。
コロナ危機を経た23年からは物価高騰が家計を圧迫し、生活不安から空いた時間に副業としてギグワークを始める労働者が急増しました。
そして24年1月、厚労省は労働基準法と労働基準行政の在り方について抜本的な見直しを行うとして検討会を立ち上げ、報告書を公表しました。
報告書で示された方向性は、労基法の存在意義であり、重要な機能である「最低労働基準を労使に守らせる」ことを形骸化し、「法定基準を下回る働かせ方・働き方について労使の合意を優先する」原則にとされています。
副業・兼業をさらに拡げるためには、1日8時間・週40時間労働の原則は邪魔になります。そこで、労基法を「契約自由の原則」に改悪し、労使の協議だけで労働者に長時間労働や休日労働をさせようとしているのです。
下図の「働き方の類型」にあるように、現行では雇用契約の有無が労働者か個人事業者かを判断する基準になっています。
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労基法の改定は、26年にも国会へ提出される予定です。
全労連はこうした動きに真っ向から対峙し、街頭宣伝や意見書提出、署名活動を行っています。
自交総連もこれに呼応したアクションを起こしていきましょう。