自交労働者No.1006、2026年4月15日

運改の賃上げは公約 「合理化」が春闘の争点に

 自交総連2026年春闘は、ヤマ場を迎え労使交渉がはじまっています。庭和田委員長が静岡オルグに駆けつけたり、内田専従オルグが各地で奮戦するなど、本部も活発に動いています。
 また、本部作成の全国統一要求書も、随時提出されています。
(統一要求書)
 今春闘では、多くの組合で、タクシーの運賃改定を背景に、賃下げ「合理化」が大きな争点となっています。

対応は二極化

 会社の対応は二極化傾向にあります。
 1つ目は、運賃改定の増収分が労働者に渡らないように「合理化」する会社です。
 足切額の引き上げ、歩合率・手当等の引き下げ、運収に係数を乗じて減額、迎車料金のカットなど、あらゆる手を使って、賃金の計算方式を変えようとしてきます。
 これは労働条件の不利益変更です。労働者・労働組合の合意がなければ、一方的に実行できません。
 もし「赤字で倒産しかねないから」といわれても、決算書等の経理資料の公開を要求し、必ず事実関係を確認しましょう。
 2つ目は、労働者が辞めることを恐れて、「合理化」したくともできない会社です。
 こうした会社は、人手不足で労務倒産になりかねない事情を抱えています。
 そもそも公共料金のタクシーの値上げが、国から認められているのは、労働条件の改善が前提にあります。
 国民への公約として、タクシーの運賃改定時には、労働者の賃金が増えるようにしなければなりません。
 これを根拠に、「合理化」を許さず労使交渉にあたりましょう。
 単独では難しい場合は、本部へ相談してください。

労働条件改善求める

国交省・厚労省・全タク連交渉

国交省、厚労省、全タク連に要求を伝えた(写真は国交省との交渉)=3月5日、東京・国土交通省内会議室
国交省、厚労省、全タク連に要求を伝えた(写真は国交省との交渉)=3月5日、東京・国土交通省内会議室

 自交総連は3月5日、中央行動を実施しました。
 午前中は、国交省・厚労省へ個人請願行動をおこない、午後からは代表が国交省・厚労省・全タク連との交渉にとりくみました。



見解示しつつ終始逃げ口上

【国土交通省交渉】
 運賃改定時の「合理化」問題について、国交省は、「前後で人件費率が維持されているかどうかのフォローアップ調査を通じて、労働者の処遇改善を促す」と従来どおりの回答に終始。
 自交総連は、「合理化」提案の具体例として、「配車アプリの手数料上昇や、キャッシュレス増加により、経営が厳しいから賃下げしたい」と主張する事業者に対する見解を問いました。
 すると国交省は、「24年度実績にもとづいた運賃改定をする場合、26年度までの増加分も含めて、推定して改定率を算出している。賃下げの理由にならない」と回答。それでも、「賃金は原則として労使協議で決まる」と逃げ口上で、追及をかわしました。


一方的な労働者負担は違法

【厚生労働省交渉】
 事故時の賠償金や修理代など、本来は事業者が負担すべき営業上の経費について質問。
 自交総連が、「事故を起こした際に、賠償の金額や損害の〇〇パーセントを賃金から控除すると決めている場合は、どういう扱いになるのか」と問うと、厚労省は、「書面化されていなくても、そうした実態があれば、労基法第16条により違法」と明言しました。


協定なしの不利益変更NO

【全タク連交渉】
 自交総連は、運賃改定時の労働条件改善を確実におこなうよう要求。それに対して、全タク連は、「賃金については、労使でしっかり話をして協定を締結してほしいと伝えている。その際、協定を結ばず不利益変更や不当労働行為など、組合つぶしのようなことは絶対してはいけないと強調している」と回答しました。

=詳細

タク年収361万円、格差185万円に

全体では上昇も明暗分かれる

賃金構造基本調査

 2025年の「賃金構造基本統計調査」(厚労省調べ)の結果が公表されました。
 この調査は、6月分の賃金をもとに集計されています。

前年から年収22万円アップ

 タクシー労働者の平均年収は、361万2800円となり、前年から21万7000円増加しました。
 産業計男性労働者の平均年収は、545万9300円でした。
 格差はやや縮まり、184万6500円となりました。
(年収の比較)
 依然として地域差が激しく、東京都と石川県では300万円以上の開きがあります。  また、タクシー・バス・トラック労働者の年収推移をみると、どの業種も増加傾向にあるものの、とくにタクシーの上り幅が大きいことがわかります。
(自交労働者の年収推移)
 こうした背景を受けてか、「タクシーは稼げる」と噂が広まり、バス・トラック業界からタクシー業界への労働者の流入がつづいています。

地方公共交通再整備が急務

タクシー労働者の平均年収の上昇は、大都市や観光地の好況を反映したものです。
 明暗がくっきり分かれており、なかには、逆に年収が減少した地方も存在し、この1年間で、多くのタクシー労働者が仕事を辞めていきました。
 そればかりでなく、地方では、スタートアップ企業によるM&A(企業買収)や、タクシー会社の倒産・廃業が相次いでいます。
 過疎化で売上が減りつづけて経営が苦しいところへ、コロナ禍の負債や労働者不足が追い打ちとなりました。
 いまや、多くの過疎地域で、タクシーは事業として独自で採算がとれずにいます。
 こうした危機的状況にあると、運賃や最低賃金を少し上げるだけでは、焼け石に水です。

持続性・安全性ある政策を

 地域公共交通の再整備が急務となります。
 国や地方自治体は、ライドシェアなどの規制緩和策に流れず、既存のタクシー会社や個人タクシー事業者の支援をはかるべきです。
 持続性と安全性を兼ね備えた交通政策が、急がれます。

自転車の交通違反に青切符

4月開始 車道の新ルール

自転車の交通違反

 4月1日から、自転車の交通違反に、青切符が導入されました。
 ただし、運用上の都合から、一部の事案以外は、原則として指導・警告に留まります。
 青切符の対象となるのは、現在113種類です。酒酔い・酒気帯び運転や、あおり運転といった24種類の重めの違反については、ひきつづき赤切符の対象となります。
 自転車の交通違反で、運転免許の点数が付くことはありません。しかし、死亡事故を起こしたなど内容の悪質・危険性によっては、公安委員会が免許停止の判断をくだす可能性もあります。
(自転車の交通違反=上)
 私生活で自転車に乗る方は、よりいっそうの安全運転を心がけましょう。

自転車の追い抜きにご用心

改定道交法
車道の新ルール

 また、車道のクルマと自転車の新しいルールもできました。
(改定道交法、車道の新ルール=右)
 この第18条の内容について、警察庁は次の目安を示しています。
◆「十分な間隔」=少なくとも1b程度の間隔
◆「間隔に応じた安全な速度」=時速20`bから30`b程度
 道路事情の実態に即さないルールとなっています。これを厳密に守ると、クルマの横幅+自転車の横幅+1bよりも狭い道路では、クルマが自転車を追い抜くことができなくなります。場合によっては、そのまま徐行での並走を強いられます。
 対向車との接触事故や、後続の大渋滞を誘発しかねません。
 とくに、車体の大きいバスや福祉タクシーは注意が必要です。
 ちなみに、このルールに背いて青切符が出ると、点数2点、反則金7000円が科されます。追い抜きの際は、ご用心ください。


対話で新しいなかまづくり

一歩踏み込み対話

 東北地連中央委員会に参加し、福岡地連が全労連組織拡大総がかり行動で経験したことを話しました。
 私がなかまに訴えたかったことは、組織拡大は駄目だと決めつけずに一歩踏み込み、対話に打って出ることで新しいなかまをつくっていけること。そして、既存の組合で職場のなかまを増やしていくことで、労働条件をかちとっていけること。職場要求も、制度・政策要求も、実現のために組織拡大は握って離してはならない課題であることです。
 福岡の経験として、吉野ヶ里観光タクシー分会と、庄内観光分会をとりあげました。
 吉野ヶ里観光タクシー分会は、20年間賃上げが一度もないとの相談から10人ほどが集まって自交総連の分会を結成し、団体交渉をおこないました。会社は賃上げに消極的な対応を繰り返したため、要求が実現しなかった場合は金曜日の繁忙な時間帯にストライキをおこなう旨の通知を送ったところ、当日の団体交渉で会社側が賃率を引き上げることで妥結できました。
 庄内観光分会は、35人ほどのバスとタクシーの会社で1人の組合員から現在は20人の組合に拡大したことで毎年賃金を引き上げ、社長の退職勧奨や雇止めがなくなったことで組合員の不安が払しょくされてきました。
 組合は生みの苦しみはありますが、組織が大きくなることで雇用が守られ、暮らしぶりも改善されます。何よりも大事なことは、誇りを持って働ける職場づくりがすすむことです。引き続き、各地連・地本を訪問したいと思います。
(報告=内田大亮組織拡大専従オルグ)

2026年春闘
(2)自交総連が重点をおく課題

社会的水準の労働条件をめざす

 第2回目は、自交総連が今春闘で重点をおく課題について解説します。

@RS阻止闘争

 第1の課題は、ライドシェア阻止闘争です。
 自交総連は、白タクであるとして、いずれの形態のライドシェアにも反対する姿勢です。
 積極的なとりくみを全国各地でつづけています。ビラ配りや音源流しなど宣伝行動による世論喚起。各省庁や運輸局への日本版・公共ライドシェア廃止の要請。さらに、タクシー会社に対して、阻止闘争への共同を求めています。

A運賃改定問題

 第2の課題は、タクシーの運賃を値上げする際の対応についてです。
 自交総連は、会社に、ノースライド維持、運賃査定の考え方に基づく人件費率の賃金の支払いを求めています。
 この大原則に加えて、運転者負担の撤廃などのプラスアルファを各職場で盛り込みます。
 タクシー労働者になったばかりの方は普段耳にしない業界用語に、混乱するかもしれません。
 しかし、運賃改定問題は、タクシー労働者の実利に直結します。組合の集まりに参加し、単語の意味を教えてもらうことからはじめましょう。本紙でも、折に触れては記事を出しているので、バックナンバーをご確認ください。

B賃金の底上げ

 第3の課題は、賃金の底上げです。
 自交総連は結成当初から、自交労働者が社会的水準の労働条件を獲得することをめざしています。
 社会的に必要不可欠な職責を担っているにもかかわらず、自交労働者は、過酷な労働環境で働いています。いますぐ実利・実益のある賃上げが必要です。
 タクシーの場合、オール歩合給制度を改善し、固定給部分を設ける賃金制度への変更を求めます。
 ハイヤー、自教、観光バスの場合、賃下げなしの労働時間短縮、あわせて時間額、日額、月額による企業内最低賃金の締結をめざします。

C職場権利確立

 第4の課題は、職場権利の確立です。
 各職場で、雇用、労働時間、賃金に関する「働く権利の総点検」をおこない、法令違反の是正をはかります。

 次号は、各単組がかちとった成果について取り上げます。

きになる交差点

二重運賃と観光公害

解決にはさらに包括的なとりくみ必要

 第9回のきになるテーマは、「二重運賃と観光公害」です。


 京都市は2月25日、市バスで市民優先運賃を導入すると発表しました(2027年度中に実施予定)。
 路線バスの運賃に大規模な二重価格を設けるのは、全国初の試み。市民と市民以外で最大2倍の料金差となります。
 京都市の松井市長は、「懲罰的に値上げをするのが目的ではない。観光と市民生活の両立のため、観光客の負担は高くなるがご理解いただく許容範囲だ」としています。しかし、この市民優先運賃は、実質的に、観光公害対策です。
 京都市内では、観光客の過剰集中による混雑やダイヤ乱れで、公共交通の機能不全が発生しています。かねてから、市民が公共交通を利用できない状況の解消が求められてきました。
 では、この対策で問題は解決するのでしょうか。
 少なくとも現時点で、市外から通勤のためにバスを利用する層から、一時的な観光客と、地域の労働力を同じ枠に入れることへの不満の声があがっています。
 また、あまりに過剰な需要を価格調整だけで抑制できるのか、市民の移動環境改善につながるのか、といった疑問もあります。運行体制の見直しや処遇改善など、担い手への還元なくして、公共交通の品質向上はありません。
 観光公害には、都市計画を含めた包括的なとりくみが必要ですが、政府は、観光公害対策として「二重価格」のガイドラインをつくるとするなど、一辺倒の対策しか示さずにいます。

城書記長コメント

 観光客の集中で、市民生活へ悪影響やマナー問題が生じています。解消には、観光目的の抑制策や渋滞緩和が必要です。必要性に応じて利用される路線バスに運賃格差をつけても効果は期待できません。