(2011年8月掲載)

 2009年6月19日、タクシーの規制を強化するタクシー活性化法が参議院本会議において全会一致で可決成立しました。規制緩和の道路運送法「改正」が自公民各党の賛成多数で可決されてから9年、実施されてから7年余り後の規制強化への大転換でした。規制緩和反対をたたかい続けてきた自交総連の大きな成果です。

規制緩和の失敗

 タクシー労働者の規制緩和反対の声を無視して強行された規制緩和の結果がどうなったかは、図表1を見ればよくわかります。

 規制緩和後たちまちタクシー台数が増える一方で、活性化するはずだった事業は、営業収入も輸送人員もマイナスとなりました。その結果、1台当たりの売上が急減して、それに比例して運転者の賃金も急減することになりました。低賃金は長時間労働を引き起こし、過労から事故は増え、運転中の急性死に至っては4倍近くに激増しました。

 あふれたタクシーが道をふさいで交通渋滞をまねき、不必要なCO2を撒き散らし、極端な低賃金から運転者の質自体も低下してサービスも悪化してしまいました。

規制緩和を変えた力

国交省前で減車を要求した2008年の中央行動(2008.11.13)

 こうした現実の前に、タクシーの規制緩和は見直しが進められましたが、そこには、規制緩和と闘い続けた現場の労働者の運動が大きく反映しています。

 自交総連は、規制緩和以前からその危険性を指摘し、一貫して反対してきました。組合員の総力をあげて、以下の点を重視して運動を続けてきました。
 (1)規制緩和反対を貫き通した組織の力
 (2)大衆行動で世論を喚起した運動の力
 (3)マスコミ、議会を変えた情報発信の力
 (4)規制緩和論を打ち破った理論・政策の力
 その結果、ついに規制緩和の見直しをかちとったのです。

規制強化の内容

 図表2 タクシー規制の変遷


規制緩和以前
〜2002.1
規制緩和後
2002.2〜09.9
タクシー活性化法施行後
2009.10〜
特定地域 それ以外
参入 認可制
供給が需要に
対し不均衡に
ならないこと
許可制
運行能力の審査等で
認める
許可制
新規需要がない
限り許可しない
許可制
増車 事前届出制 認可制
新規需要がない
限り認可しない
事前届出制
運賃 認可制
(1993年以前
は同一地域同
一運賃を指導)
認可制
上〜下限の幅内(10%)
では自動認可
下限割れでも原価を償
うものなら認可
認可制
上〜下限の幅縮小(5%前後)
下限割れ運賃の審査で労働条
件は標準値を用い、認可後の
状況の報告義務等を付す

 09年10月に施行されたタクシー活性化法により、タクシーの規制は図表2のように強化されました。

 同法は、規制緩和の失敗によって供給過剰に陥った地域を特定地域に指定、増えすぎてしまったタクシーを減らして、正常化をはかることをめざすものです。

 特定地域は、当初141地域、2010年10月までに156地域が指定され、法人タクシー台数の8割を占める地域が指定されました。ここでは、増車は認可制となり、新規参入も事実上禁止されました。減車等を協議する地域協議会が組織され、運輸局がその地域の適正車両数を算出して協議会に提示、労働組合の代表も入って議論し、地域計画が策定されました。

 最低賃金法違反も道路運送法の行政処分の対象となるなど全国的に監査や処分基準が強化され、コストを無視し、労働者の低賃金を前提とした低額運賃も規制が強化されました。

減車の進展

 地域計画に基づいて、2010年1月以降、個別企業が減車を含めた特定事業計画を申請し、認定を受けました。

 2011年5月現在、全国の特定地域(基準車両数19.2万台)において、計2.4万台の減車計画が認定され、すでにかなりの部分が実際に減車されている。その結果、全国のタクシー台数(個人タク等を含む)は2007年3月末の27.4万台をピークに2011年3月末には25.0万台にまで減少し、規制緩和前の水準に戻りました(図表3)。

 戦後、タクシー台数は、規制緩和前を含めて増える一方で大きく減ることは一度もありませんでしたが、今回初めて顕著に減少させることができたのです。

 歴史的な減車をかちとったものの、その規模は、運転者の労働条件改善という目標からみれば、いまだに到底十分とはいえません。

 自交総連では、さらなる減車を求めるとともに、単なる再規制ではなく、運転者にも利用者にも喜ばれる「もうひとつのタクシー」をめざして、タクシー運転免許の制定を高く掲げて、今後の運動をすすめていくことにしています。


 図表4 規制緩和から規制強化への経過

年月日 事     項
1993. 5.11 運政審答申 運賃・需給調整の弾力化を提言
11. 6 運輸省 同一地域同一運賃原則を放棄する通達、11.7にMKの値下げ認可
1996.12. 5 行政改革委員会 需給調整規制廃止を提言
運輸省 「従来の運輸行政の転換」「需給調整規制の抜本的見直し」を表明
1997. 1.24 運輸省 需給調整運用の緩和を通達、一定の幅で新免・増車を認める。以後、段階的に緩和して新免・増車を認める幅を拡大
2.21 運輸省 運賃をゾーン制とする通達、ゾーン内は自動認可
1999. 4. 9 運政審答申 需給調整規制撤廃と撤廃後の対策を提言
2000. 5.19 規制緩和法(道路運送法改正)成立 賛成=自民・公明・保守・民主・自由、反対=共産・社民
@需給調整規制撤廃、A運賃は実質上限価格制
2002. 2. 1 「改正」道路運送法施行
2003. 2. 1 増車・参入1年で1万台突破
2004. 3.19 規制改革・民間開放推進3か年計画閣議決定 @緊急調整措置の発動を限定的にし、A運賃のいっそうの多様化をはかる
9.16 国交省 大口割引など運賃多様化促進通達
2005. 2. 9 仙台にタクシー問題対策協議会設置
4.13 衆院国土交通委員会でタクシー「集中審議」
5.11 国交省と厚労省が連絡調整会議設置 全事業者に労基法遵守の自主点検実施
9.17 NHKスペシャル「タクシードライバーは眠れない」放映、以後、TV・新聞・雑誌のタクシー特集が頻繁になる
10. 4 交政審タクシー将来ビジョン小委員会設置
12. 9 国交省 監査強化方針の通達(参入・増車後監査の徹底など)、以後監査強化の通達相次ぐ
2006. 7. 7 交政審将来ビジョン小委員会報告 @「市場の失敗」明記、A大都市での運転者登録制
2007. 3.28 運賃改定査定方式の変更通達(ノースラ通達)、以後各地で運賃改定
6. 8 タクシー適正化特別措置法改正成立 政令市で運転者登録制導入
12.21 交政審タクシーワーキンググループ設置
2008. 7.11 国交省 緊急調整地域・特別監視地域指定要件の改正、参入・増車抑制
12.18 交政審答申 @供給過剰対策として協調的減車措置、A運賃競争抑制の運賃認可のガイドライン策定などを提起
2009. 6.19 規制強化法(タクシー活性化法)成立 全会一致
@協調的減車措置、A参入・増車の抑制、B低額運賃の適正化、C需給調整など今後検討
10. 1 タクシー活性化法施行、同時に監査・処分強化の通達
12.25 全国で最初に東京のタクシー地域協議会が地域計画策定、減車の必要性を明記、以後各地で策定つづく
2010. 1〜 東京で地域計画に基づく各社の特定事業計画(減車)が申請・認定され、減車が始まる
以後、6月くらいから、各地の特定事業計画(減車)の申請・認定が本格化、減車がすすむ
2011.4.13 国交省が、特定地域で減車非協力事業者を調査・監査する通達、個別にヒアリングし、指導
5現在 全国の特定地域での減車は2万4000台、基準車両(ピーク時)比12%減に


自 交 総 連