(2019年3月掲載)

 消費税を2019年10月から10%にすると、安倍首相は表明しています。安倍首相は、経済の動向が順調だから、消費税を上げても大丈夫だと言っていますが、景気は2018年秋から悪化していますし、何より労働者の実質賃金は、統計不正で上乗せされていた分を引くと低下をつづけています。景気が悪くて、賃金が減っている時に消費税を上げれば、消費不況が一気に深刻化して、景気の底が抜けてしまいます。増税の前には参議院選挙があります。選挙で増税勢力に審判を与えれば、増税をストップすることも可能です。消費税が自交労働者にどんな影響を及ぼすのか、よく考えてみましょう。

 1.大幅な営収減、賃金減

 1997年4月、消費税が3%から5%に上がりました。その結果は甚大なもので、当時わずかながら上向きかけていた景気は一気に急降下、深刻な不況に突入してしまいました。

 当時、タクシーの営業収入は、94年から96年までは増収が続いていましたが、97年には消費税分(初乗り10円)の値上げにも関わらず、かつてない乗客の乗り控えが起こって、99年までに14%も減ってしまいました。

 連動して運転者の年収は、消費税引上げ前の367万円が3年で16%減の307万円まで急落しました(図1)。

 2014年4月に消費税が5%から8%に上がった時は、減車と実働率の低下が進行していた時期のため、営収の低下が少しに留まりましたが、それでも、東京の営収を詳しくみると、増税直後から、税抜営収は前年同月比でマイナスとなっています(図2)

 消費税は、収入が少ない人にもかかる税金です。税率がアップすれば、国民の暮らしへの影響は大きく、財布の紐が固くなり、タクシー代などは真っ先に削られる運命にあります。

 会社にとっても、赤字でも否応なく納めなければならない消費税の負担は重く、消費税で倒産の危機に直面する会社が続出しかねません。

 2.税額控除でダブルパンチ

 タクシー運転者の場合は、営収減少に加えて、消費税を控除された上で賃金計算がされるという点でさらに深刻な影響が生じます。

 消費税は今でも運賃の中に含まれていますから、賃金計算をする場合には、総売上から8%分の消費税を控除した税抜きの売上げに対して歩率をかけて賃金を計算しているはずです。もし消費税が8%から10%になったら、控除される額が25%増えるということです

 消費税の増税分を転嫁する運賃値上げがされたとしても、前2回の増税の時にみられるように売上げが増える保障はまったくありません。

 図3のように、40万円の売上げが変わらないとした場合でも、いまは2万9630円だった控除額が3万6364円になり、賃金は3367円も下がってしまうことになります。売上げが1割下がったとすると、控除額は3万2727円で、賃金は2万1549円も下がってしまいます。

 3.消費税増税は企業減税の穴埋め、大企業・富裕層に応分の負担を


 政府は、国の財政を建て直すために増税が必要だといいますが、消費税増税は財政再建に役立っていません。

 消費税が導入された1989年から2018年度までに、消費税による税収は371兆円にのぼりますが、なんとその8割の290兆円は大企業減税の穴埋めに使われています(図4)。

 つまり、大企業の法人税を減税するために、国民から消費税を徴収しているのです。減税のおかげで大企業は、GDPも労働者の実質賃金も上がらないなかで、空前の利益を上げ、内部留保は425兆円(2017年度)にも達しています。

 消費税以外に財源はないのでしょうか? そんなことはありません。

 現在の所得課税は、年収1億円までは負担率が上がっていく累進課税ですが、1億円を超えると逆に負担率が下がっていきます。大資産家が保有する株や証券への課税が異常に優遇されているからで、年収100億円の人の所得税負担率は年収2000万円以下の人(18.8%)より低い17.0%です(図5)。

 こうした富裕層に応分の負担を求めて適切に課税し、大企業には、引き下げすぎた法人税を引き上げて、ため込んだ内部留保をはき出させれば、消費税を上げる必要はありません。しかも、そうすれば、内部留保が労働者の賃金や設備投資に回って景気もよくなります。

 消費税増税の強行にストップをかけまましょう。


自 交 総 連