「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」告示の内容

 改善基準告示
 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号、最終改正平成9年労働省告示第4号)は、1989年に制定された労働時間の基準です。法律のように罰則はありませんが、事業者は遵守が求められ、違反していれば、労基署から是正が指導されます。2002年から、この基準の労働時間に関する部分が国土交通省告示ともなり、違反事業者は行政処分の対象になります。

 93号通達
 改善基準告示とともに、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について」(平成元年3月1日基発第93号、改正平成9年3月11日基発第143号)という通達が出されています。そのなかには、累進歩合の廃止等の重要な基準が示されています。労基署にはこの通達に基づいた指導を求めることができます。

改善基準告示の概要(タクシー)

区 分 日勤勤務 条文 隔日勤務 条文
拘 束
時 間
1か月 299時間 2@1 1か月262時間(地域的事情その他の特別な事情がある場合において、労使協定があるときは、1年のうち6か月までは270時間まで延長可) 2A1
1日原則13時間
  最大16時間
2@2
2@2
2暦日21時間 2A1
特 例 1か月の拘束時間の特例
「車庫待ち等」で、かつ、労使協定があれば、1か月322時間まで延長可
2@1 「車庫待ち等」で次の条件を充たせば
2暦日 24時間
1か月 前記拘束時間に20時間を加えた時間まで延長可
・夜間4時間以上の仮眠付与
・21時間超えは労使協定により1か月7回以内
2A1
1日の最大拘束時間の特例
「車庫待ち等」で、かつ、次の条件を満たせば24時間まで延長可
・休息期間継続20時間以上
・16時間超えは1か月7回以内
・18時間超えの場合、夜間に4時間以上の仮眠付与
2@2
休 息
期 間
継続8時間以上 2@3 継続20時間以上 2A2
時間外
労 働
時間外労働協定における一定期間は1か月を協定 2B
休 日
労 働
2週間に1回以内、かつ、1か月の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内 2C

 ハイヤーについては、拘束時間規定の適用はなく、時間外労働は、次の範囲内にするよう努めることと規定されている(2D)。
1か月50時間、3か月140時間、1年450時間。

93号通達の概要

区 分 内  容 条文
労 働
時間の
取扱い
 労働時間は、拘束時間から休憩時間を差し引いたもの。
 事業場外の休憩時間は3時間を超えてはならない。
 客待ちは、労働時間(手待時間という)として取扱う。一定時間車から離れて自由利用が保障されている場合のみ休憩時間。


(1)
休日の
取扱い
 休日は、休息期間に24時間を加算した連続した時間とする。いかなる場合でも30時間を下回ってはならない。
賃 金
制 度
イ 保障給
 歩合給の場合、通常の賃金の6割以上の賃金が保障される保障給を定めること。
 例)1時間当たりの保障給
  =(過去3か月の賃金総額/当該期間の総労働時間)×0.6


(2)
ロ 累進歩合制度
  歩合給制度のうち累進歩合制度は廃止するものとすること。
  累進歩合制度とは、累進歩合給制より広い概念であって、累進歩合給的な効果を生ずる一切の賃金制度をいう。
 例)累進歩合給制=運賃収入を数階級に区分し、階級区分の上昇に応じ逓増する歩率を乗じて歩合給を算定する方式。運賃収入に応じて、その歩合給の額が非連続的に増減するもの。
   トップ賞=運賃収入のトップまたはごく一部の労働者しか達成されない高い運賃収入を達成した者に褒賞的に支給するもの。
   奨励加給=運賃収入を数区分し、その区分に達するごとに、一定額の奨励加給等の名称の手当を支給するもの。
ハ 年次有給休暇の不利益取扱いの是正
  年次有給休暇を取得したとき、不当に賃金額を減少させないものとすること。
  不当とは、労働者の年休取得を抑制する効果をもつ程度に労働者にとって不利益になる取扱いをいう。
  年次有給休暇を取得したことを理由として不利益な取扱い(例えば、精皆勤手当、賞与等の算定に当たって、取得した年次有給休暇の日を欠勤扱いする等)をしてはならない。
 参考)次のような方式も年次有給休暇の賃金の計算の一方式といえる。
  ・足切額を年休取得日数に応じて減額するもの
  ・1勤務あたりの平均営業収入を年休取得日数に応じ加算するもの(いわゆる仮想営収方式)
割 増
賃 金
 歩合給制でも、労働時間の制限を超える労働に対して、割増賃金を支払う必要がある。
 時間外=2割5分、深夜=2割5分、休日=3割5分
例)1か月の総労働時間227.1時間(うち時間外労働50時間、深夜労働20時間)で227,100円の歩合給とすると
  時間外割増賃金
 =227,100円÷227.1時間×0.25×50時間=12,500円
  深夜割増賃金
 =227,100円÷227.1時間×0.25×20時間=5,000円

改善基準告示の概要(バス等)

区 分 バス等 条文
拘 束
時 間
4週平均で1週間当たり 65時間
(貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び高速バスの運転者については、労使協定があるときは、52週のうち16週間までは、4週平均で1週間当たり71.5時間まで延長可)
5@1
1日原則13時間
  最大16時間(15時間超えは1週2回以内)
5@2
5@2
休 息
期 間
継続8時間以上
運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるように努めること
5@3
5A
特 例 分割休息期間、2人勤務、隔日勤務及びフェリー乗船における特例は、労働省労働基準局長通達の定めによる 5B
運 転
時 間
2日平均で1日当たり  9時間
4週平均で1週間当たり 40時間
(貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者、貸切バスに乗務する者及び高速バスの運転者については、労使協定があるときは、52週間についての運転時間が2080時間を超えない範囲内において、52週間のうち16週間までは、4週平均で1週間当たり44時間まで延長可)
5@4
5@4
連続運
転時間
4時間以内(運転の中断には、1回連続10分以上、かつ、合計30分以上の運転離脱が必要) 5@5
時間外
労 働
一定期間は2週間及び1か月以上3か月以内の期間を協定 5C
休 日
労 働
2週間に1回以内、かつ、4週の拘束時間及び最大拘束時間の範囲内 5D