「運用基準の概要案」に対する
自交総連の評価と意見
2001.7.11 自交総連第6回常任中央執行委員会
 今回内示された「運用基準の概要案」は、昨年春の「改正」道路運送法等の成立にともなう国会答弁や附帯決議を尊重するがごときポーズをとりつつも、その中味は、結局のところ、@競争促進を阻害すると思われるものについては、「骨抜き」をはかる A競争促進に役立つものは、従来の規則の枠組みをこえて、いっそうの緩和をはかる――ものとなっている。
 とくに、運用基準策定の最大の焦点となっている「緊急調整措置の発動要件等」及び「運賃関係の基準」については、この傾向が著しい。安心・安全な輸送の根幹をなすタクシー労働者の労働条件における悪化防止の措置も、「ザル法」的な取扱いをもってしか配慮されていない。 自交総連は、すでにタクシー破壊法ともいうべき「改正」道路運送法成立に至る過程で、「政府が国会審議のなかで強調した安心・安全を担保する万が一の手段である緊急調整措置の方策も、それはいわば『抜かずの宝刀』となる可能性が強く、発動したとしても『後の祭り』となる危険性がきわめて高い」と指摘。大丈夫論を唱えつづける国土交通省及び業界、関係労働団体の動向に警告を発してきたが、その結果は、余りにも歴然たるものがある。
 こうした概要案に示された運用基準にもとづく通達化が行われ、2002年2月の台数規制の廃止が実施されるとすれば、タクシー労働者のくらしと雇用はいっそう悪化し、とり返しのつかない安心・安全にかかわる不測の事態が生じかねない。 自交総連は、今回の「運用基準の概要案」に対し、強い憤りをもって抗議するとともに、以下の事項につき、国土交通省が真しに再検討し、責任ある対応をもって適切な措置をはかるよう求める。

1.緊急調整措置の発動要件等について

 ● 「著しい供給過剰になるおそれのある地域」を各運輸局が営業区単位で、「特別監視地域」に指定するとしているが、絶えず変動する数値(=実車率及び日車営収ともに、前年度より減収し、かつ前5年間の平均値を10%以上下回る)をもって、「著しい供給過剰になるおそれ」を判断する指標とするなどは、現実の実態から離れた数字遊びとしかいいようがない。
 同様のことは、指定される「緊急調整地域」についてもいえ、「当該年度の前5年間の平均値を15%以上下回る」などは、論外の数値である。
 実車率及び日車営収を指標とするのであれば、『適正実車率』及び『適正実車率下の日車営収』など「絶対的指標」にもとづくことこそ必要・不可欠であり、もっとも合理的かつ実効性あるものと考える。

 ● 加えて、緊急調整地域指定のもうひとつの絶対的要件となっている「安全関係の法令違反件数及び苦情件数が、2年連続、前々年度と比較して増加」など含め、しくみの枠組みそのものは、ハードルが異常に高く、「抜かずの宝刀」どころか、「抜かずの“竹光”」に値するしろものとしか評価し得ない。
 緊急調整措置により、供給過剰状態によって生じるおそれのある弊害・混乱を事前に防止できるとの答弁を繰り返してきた、その立証責任は、国土交通省そのものに課せられているのであり、責任逃れは許されない。

2.運賃関係の基準について

 ● 目を引くのは、バラバラ運賃の拡大と大幅な割引制度の導入である。
 認可制の維持には、「原価を償うに足り得る適正な運賃水準の確保」、とくに労働者の賃金・労働条件とのかかわりがあったはずであるが、「もっと安く、もっと安く」だけの競争促進を誘導する制度変質のみが優先されている。
 附帯決議に示された「適正労働条件の確立」及び「人件費等の費用について適正な水準を反映させること」とは矛盾する低運賃競争の是認をどのように説明するのか。

3.その他の基準等について

 ● 運輸局長による乗務距離の最高限度指定地域を、少なくとも政令指定都市まで拡大し、最高限度は隔日勤務、日勤勤務等の拘束時間に合わせて規制するようにすべきである。さらに、運輸規則第23条の、いわゆる「運収ノルマの強制禁止」規定については、乗務距離の最高限度指定地域以外の地域についても適用する措置を講ずるべきである。

 ● 運輸規則第35、36条に規定された「運転者の選任」かかわる事項について、その継続化と指導監督の強化をはかること。また、昭和53.6.15自旅第203号「旅客自動車運送事業における運転者の選任について」と同主旨の通達を発し、いわゆる定時制乗務員の定義の明確化のうえ、違法な臨時・アルバイト雇用等を根絶するようにすべきである。

 ● 「タクシーの適正化のための関係者の話し合いの場」のメンバー構成については、利用者代表、地方公共団体等を「必要に応じ」とする観点ではなく、「必要・不可欠」の観点から発足の当初より正式のメンバーとして協力要請を行うべきである。
4.タクシー運転免許の新設に関する要望意見について

 ● タクシー台数規制の廃止によって予測される供給過剰による弊害・混乱を防止し、安心・安全な輸送の確立を保障する有効な措置は、タクシー運転免許の新設以外にないと考える。  改めて、自交総連等関係労働団体が強く主張し要望しているタクシー運転免許の新設につき、検討の場を設け実現への筋道を模索すべきである。

以  上




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