2001年春闘総括――その成果と教訓

1.2001年春闘のとりくみ結果とその評価

(1) 第23回中央委員会で決定した統一要求と課題

 自交総連は1月24〜25日、東京・家の光会館で第23回中央委員会をひらき、2001年春闘方針を決定した。
 決定された方針は、この春闘を『許すなこれ以上の状態悪化、底上げと雇用の確保 2001年春闘』と位置付け、とくに「春闘の位置付けをふまえ、労働組合存立の原点に立って」と「地域をキーワードに、将来像を見据えた運動展開を」にもとづく闘いの強化を重視し、総力をあげて2001年春闘にとりくむことにした。
 「基本的な要求・課題と闘いの力点」では、(1)みんなに賃上げを、底上げ闘争の強化 (2)リストラ「合理化」反対、倒産・身売りをさせない闘いの強化 (3)必要な規制の維持・強化、政策要求の実現 (4)モラルと職場規律の確立、社会的貢献との結合―を提起。「闘いの基本方向と組織の強化・拡大」では、(1)学習春闘を重視し、「権利要求」の構えで(2)みんなで決め、みんなの力を合わせ、みんなで行動を (3)地域を足場に、社会のあり方を変える国民春闘の前進を (4)仲間を増やし、組織の力をつけ、魅力ある自交総連の確立を―を重視し、21世紀最初の春闘の具体的展開をはかっていくことにした。

(2) 具体的な闘いの経過と到達点

(1) 中央戦術委員会及び中央闘争委員会で決定・確認した対応方針

 総連本部は、2001年春闘を推進するため、中央闘争委員会及び中央戦術委員会を設置。局面、局面の情勢を分析のうえ、必要な対応方針や戦術配置を中心に検討し、具体的な全国的指導にあたってきた。

● 第1回中央戦術委員会(2月23日)の確認

 1.学習春闘の徹底と要求提出の指導強化について
 決定された春闘方針は、今日の情勢問題につき「『新事態の出現』ともいうべき新たな段階」を迎えたと分析し、「事態はまさに一変している。何が起こっても不思議ではない局面」と警告。
 春闘を組織するにあたっては、“ただガマンし、抵抗もせず黙っていたのでは、事態はいっそう悪化するだけで、なんら問題解決になり得ない”と指摘しつつ、情勢認識の一致をはかることはなによりも不可欠で、またさらに要求提出の意義をあらためて問い直すことが重要であるとの提起を行った。
 この間、ほとんどの地連・地本で、中央委員会や春闘討論集会・学習会などが開催され、情勢認識の一致や要求 提出の意義について論議され意思統一されつつあるが、文字通り、全組織・全組合員のものとするにはいまだ不十分さを残している。この面での改善努力や必要な指導を軽視することなく、いっそうの学習春闘の徹底(地域単位あるいは単組別学習会の開催)と要求提出の指導強化を早急にはかる必要がある。

 2.「合理化」、倒産・身売り、廃業などへの対策強化と産別対応について
 2002年2月の台数規制廃止(大競争時代への突入)など情勢の激変に対する経営者の動揺と模索、危機感、見切り(場合によっては身売り・廃業の決断)にもとづく経営政策の転換については、「当然、起こり得るべきもの」との判断のもと、事前の対策・対応を講じていく必要がある。
 各地連・地本は、働く職場の確保(倒産させない、破産・廃業の防止、悪質資本への身売り反対)、労働条件の維持と労働組合の存続にむけ、この警戒心を強め「倒産・身売り対策会議」の設置など含め具体的な体制強化をはかっていくこととする。全国的な動向にも重大な影響を及ぼす北海道・第一ハイヤーの廃業問題及び所沢中央自教と大船自教で発生している全員解雇、刑事弾圧については、関係地連・地本と調整・協議のうえ、必要な手立てを総連本部として行っていく。

 3.3・2中央総行動の成功にむけて
 労働者・国民全体の生活危機突破、不況の国民的打開をはかるため、公務・民間の労働者が共同して総決起する「新世紀春闘勝利 3・2総行動」は、1万人を超える規模の闘いとして展開されようとしている。
 自交総連は、「改正」道路運送法の施行(2002年2月)に対応した運用基準策定の重要な局面となることなどふまえ、『3・2中央総行動展開図』にもとづく諸行動の成功めざし全力をあげる。

 4.3・15統一行動の具体化について
 3月14日の回答指定日をうけて実施される翌15日の第1次全国統一行動(全労連)には、自交総連として次の方向で臨むこととする。
 3月15日は、組合旗をすべての職場で立てるとともに、ストライキあるいは時間内外の報告集会を実施する。(経営者の要求に対する回答、姿勢に関する報告や以後のとりくみについての意思統一を行うこと)

● 第1回中央闘争委員会(3月7〜8日)の決定

 1.第1回中戦の確認ふまえ、いっそうの態勢確立ときめの細かい指導・オルグの強化を
 第1回中戦で確認し、すべての地連(本)に「闘争指令NO.1」として発した『学習春闘の徹底と要求提出の指導 強化』及び『「合理化」、倒産・身売り、廃業などへの対策強化と産別対応』にかかわる内容は、春闘推進のキメ手ともいうべき極めて重要な指摘となっている。すべての地連(本)は、この面での重要性を再認識し、学習春闘の徹底や倒産・身売り、廃業などへの事前対策強化をはかることが必要である。
 また、いまだ要求提出がなされていなかったり、提出されていても、団体交渉がなおざりになったりしている事態を一刻も早く改善するために奮闘することが必要となっている。そのために、執行委員会での一般的な意志統一にとどまらず、個別組合への援助・指導を重視し、現地におもむいてのオルグを含め、きめの細かい対策を講じていくようにする。

 2.産別本部中央の機能を発揮し、不合理な攻撃に対する争議への全国的支援・協力を
 第1回中戦は、「全国的な動向にも重大な影響を及ぼす北海道・第一ハイヤーの廃業問題及び所沢中央自教と大船自教で発生している全員解雇、刑事弾圧については、関係地連・地本と調整・協議のうえ、必要な手立てを総連本部として行っていく」と確認した。
 以上の主旨をふまえ、当面しては次のような対策や支援・協力策を講じていく。

 1)北海道・第一ハイヤーの廃業問題については、「一方的かつ不当な廃業は許さない、事業継続による雇用の確保を」を基本的対応方針としつつ、北海道地連と連携・協力し総連本部としても臨戦体制で臨む。
 すべての地連(本)は、北海道地連から協力要請をうけている「団体」及 び「個人」署名につき3月20日を最終集約日とし全力をあげてとりくむ。
 北海道運輸局への要請、総決起集会の実施など3・22一日行動の成功、社会的世論の喚起にむけ、総連本部としても代表派遣を行う。

 2)所沢中央自教及び大船自教の争議対策については、裁判への対応策、報告交流を主たるテーマとし、3月8日に顧問弁護士の参加を得て合同会議をひらき、必要な措置を講じていく。
 また、起訴されながら、逮捕からすでに1ヵ月以上が経つ今日もなお身柄を拘束されている所沢中央自教・長谷川副支部長の保釈と接見禁止の解除を求め、浦和地裁宛の「団体」及び「個人」の署名を緊急的にとりくむ。

 3.省庁交渉の実施、ひとつひとつの統一行動の成功にむけ全力を
 「改正」道路運送法の施行(2002年2月)にともなう運用基準の策定、春闘における賃上げ獲得、底上げ闘争の展開など含め、自交総連としては、次の方向で統一行動を設定し、全力をあげてとりくみ強化をはかっていく。

3月8日 厚生労働省交渉(20人の代表、午後2時より1時間程度)
   11〜12日 自教共同センター中央行動
   14日 国土交通省交渉(5人の代表、午前10時半より1時間程度)
   15日 産別統一行動第1波(組合旗の掲揚、ストライキあるいは時間内外の報告集会を実施)
4月17〜19日 産別統一行動第2波

 4.全労連「働くルール署名」のとりくみ準備、産別としての対応について
 3年間で労働者の過半数をめざすとりくみとして開始された「働くルール署名」((1)パート労働者などの均等待遇、最低賃金の改善、(2)解雇規制法の制定、(3)サービス残業の根絶、労働時間短縮)の運動については、4月11〜12日の第4回中央執行委員会で具体的な提起を行っていく。

● 第4回中央執行委員会(4月11〜12日、第2回中戦=11日)の決定

 1.賃下げ「合理化」、廃業、倒産・身売り等への警戒心を強め、産別全体の粘り強い闘いで春闘要求の前進を
 いま最も重要で不可欠となっている課題は、これまで『闘争指令』で強調し、指示した方向での対策、戦術方針にもとづき、統一的な闘いとして、それぞれの地連(本)での運動展開を強化することである。
 とくに、行動を組織せず、全員参加の態勢となっていない場合、それは春闘要求の前進につながらないばかりか、リストラ「合理化」のいっそうの押し付け、場合によっては倒産・身売りにより、より困難な事態に直面することも懸念される。
 ある面では、粘り強く、安易な妥協を排してたたかう構えを堅持しつつ、『提案型』のとりくみ強化をはかるなかで中核的組合の可能な限りの早期決着を追求する必要がある。
 春闘要求実現にかかわる今後の戦術については、4月17〜19日の統一行動 第2波につづき4月24〜28日を解決をめざす統一行動ゾーンとし、地方毎に設定を行うこととする。
 春闘の『解決基準』については以下 の内容を重視して全力をあげる。
 ○基準の1 賃下げは認めない。現行賃金の改善と『プラスα』の獲得
 ○基準の2 額の水準にかかわらず、納得のいく中味での解決(全体的合意 の重視)
 ○基準の3 将来展望を切り開くに足りうる政策合意の取り付け

 2.組織の強化拡大をすべてのとりくみと結合させ、全員参加での奮闘を
  自交総連は、2001年春闘方針で決定した「仲間を増やし、組織の力をつけ、魅力のある自交総連の確立を」にもとづくとりくみ展開を、この間はかってきたが、4月10日現在、6地方で7つの新規加盟組合を新たに迎え入れている。
 1月11日 北海道 東海ハイヤー労組(4人)
   28日 神奈川 荒井自校支部(20人)
 2月4日 大 阪 学園都市自動車学院労組(39人)
   27日 青 森 さくら交通労組(17人)
十五番タクシー労組(70人)
 3月21日 千 葉 京急房総タクシー労組(12人)
 4月1日 福 島 福島山口タクシー労組(12人)
 今後のとりくみ方向としては、「すべての職場で1人以上の加盟推進」「1地域で1組合の加盟」を再意志統一し、5月末までの『対話と宣伝、統一行動ゾーン』のなかで必ず達成できるよう全国各地で奮闘していく。

 3.「働くルール署名」を全組合員で推進、7月末迄に6万の集約を
 全労連が提起した「働くルール署名」については、3年間の目標(2001年4月〜2003年12月)を、組合員1人10筆、全体で30万目標とし、具体的なとりくみを開始する。
 2001年春闘では少なくとも、「組合員本人と同居する家族分」(6万)の集約をはかることとし、その最終集約日を7月末とする。
 すべての地連(本)は、とりくみ開始にあたっては、「働くルール署名」の『手引き』及び『解説』(いずれも全労連作成)等を活用し、そのとりくみ意義を確認し、それぞれの具体的目標を設定したうえで署名活動を行うようにしていく。総連本部としては、別途具体的な指示通達を発していくが、署名用紙は、意志統一がなされた地連(本)の連絡をうけたあと、組合員の枚数分を発送していく。(なお、すでに発送済となっているのは大阪地連の1地方である)

 4.参議院選挙闘争の推進、消費税を3%に、不況の国民的打開、医療・介護の拡充、自公保連立政権の悪政ノーの闘いの強化を
 3か月後に迫った21世紀最初の重大な政治戦となる参議院選挙への対応方針については、第5回常任中央執行委員会(5月9日)で提起していく。

 5.第72回メーデーを国民的怒りの結集の場に
 今年の第72回メーデーは、中央メーデーの会場を12年ぶりに代々木公園にとりもどすなかでひらかれるが、労働者のくらしと権利を守るとともに、参院選・都議選を目前にした悪政打破、政治を変える国民的決起の場としても位置付けることが重要である。総連本部は、中央メーデーの大成功をかちとるために東京地連と協力しこれまでの参加者数を大きく上回る規模での結集をはかれるよう奮闘していく。
 全国各地のメーデーも、国民的決起の場にふさわしいものとして成功させるため、すべての地連(本)は全力をあげることとする。

 <追加要請について>
 1.第一交通グループに買収され、雇用と労働条件の維持・確保、労働組合の存続をかけて反撃を開始している「佐野南海交通労組」「堺南海交通労組」「白浜南海タクシー労組」に対し、早急に激励のための寄せ書き(檄)をおくること(発送先は大阪地連)。
 2.「介護タクシーの保険適用を求める要請書」(個人署名)については、別途指示通達を発するので、それにもとづきとりくみの推進をはかること。

● 第2回中央闘争委員会(5月9日)の決定

 1.5月中の春闘決着をはかるために全力を
 各地連(本)は、それぞれの闘争状況をふまえ、ストライキを含む統一行動の独自設定と団体交渉の促進により、5月中の春闘決意をはかるために全力をあげる。また、地方・地域全体へ闘争成果を波及させることを重視し、「○○地域から○○%以下をなくす(賃率下限の引上げ)」などのとりくみ展開をいっそう推進していく。
 総連本部としては、中核的組合へのリストラ「合理化」、廃業、倒産・身売り問題などに対する支援対策を重視し、闘争状況に見合ったオルグ派遣を行う。

 2.21世紀の進路を問う重大な都議選・参議院選挙の勝利をめざして
 2か月後に迫った21世紀の進路を問う重大な政治戦となる参議院選挙への対応については、『参議院選挙に対する自交総連の態度ととりくみについて』にもとづき全力をあげる。
 また、その闘いの前哨戦ともいうべき都議選については、東京地連との連携・協力体制のもとに啓蒙・教育の宣伝活動を重視したとりくみ強化をはかっていく。

(2) 統一行動、省庁交渉等のとりくみ結果

1.統一行動の実施状況

 全国的な産業別統一行動としてとりくまれた中央行動、統一行動等の実施状況は、次のような結果となっている。
 2月21日 2・21地域総行動(22地方で実施)
 3月2日 3・2中央総行動(25地方から1145人が参加)
   11〜12日 自教共同センタ−中央行動(5地方から48人が参加)
   15日 産別統一行動第1波(12地方で実施)
 4月17〜19日 産別統一行動第2波(9地方で実施)
   24〜28日 産別統一行動第3波(7地方で実施)

2.行政当局交渉等のとりくみ結果

 行政当局交渉は3・2中央総行動の一環として実施した。その結果は『月報』294、2001年4月号及び295、2001年5月号に掲載したとおりである。
 3月2日 国土交通省(申し入れのみ、領家委員長他11人)
     警察庁(竹本副委員長他5人)
     規制改革委員会(高松副委員長他3人)
     全乗連(領家委員長他5人)
   8日 厚生労働省(領家委員長他8人)
   14日 国土交通省(今村書記長他3人)

(3) 重点争議組合支援のとりくみ

1.3・22第一ハイヤー争議支援一日行動の実施

 許すな、組合つぶしの廃業−北海道・第一ハイヤーの廃業問題で、総連本部は3月22日、北海道地連と協力し、一日行動を札幌市内で展開した。この行動には、竹本副委員長、今村書記長、鈴木東京地連書記長が参加し、北海道運輸局や労働局への要請行動を実施。市内中心部での宣伝行動を行った他、「激励報告集会」に出席し、激励を行った。

2.所沢中央及び大船自教合同対策会議の開催

 埼玉・所沢中央自教と神奈川・大船自教で発生した身売り等にともなう全員解雇、刑事弾圧の争議について、総連本部は3月8日、本部顧問弁護士の協力も得て、裁判への対応策、情報交流を主たるテーマとする合同会議をひらいた。会議には、当該の組合代表と両担当弁護士に加え東京地連、神奈川地本からも参加し、乗り込んで不法・不当な攻撃をつづけている「勝英グループ」への対策、刑事弾圧への対応等について意見交換を行った。

3.6・14〜15第一交通抗議宣伝行動(北九州、福岡)の実施

 総連本部は、大阪地連が計画した「第一交通産業・黒土資本糾弾6・14〜15抗議宣伝行動」を支援するため、6月14〜15日の北九州及び福岡行動に領家委員長他3人の代表を送り、ともに共同してとりくみの成功に全力をあげた。 150人が参加した「報告集会」(14日、於戸畑市民会館)を初め、翌15日の九州運輸局、福岡県タクシー協会、福岡シティ銀行等への要請行動、第一交通産業福岡支社前での宣伝など九州ブロックや福岡県労連の協力も受けながら、事故やトラブルもなく整然としたアピール性のある2日間のとりくみとなった。

(4) 重点署名のとりくみ

 春闘の期間中を通じて重点的にとりくんだのは、「働くルール署名」(全労連)と「介護タクシーの保険適用を求める要請書」(産別独自)の2つである。
 それぞれ、「組合員本人と同居する家族分」の最終集約日を7月末としたが、8月31日現在、次のような到達状況となっている。
 「働くルール署名」(目標6万筆)――19地方で3529枚1万1112筆
 「介護タクシー署名」(目標6万筆)――18地方で9130筆

(5) 悪政ノー、国民的諸課題のとりくみ

 国民的諸課題の達成では、全労連・国民春闘共闘委員会の具体的な行動提起をうけ、全力をあげてとりくむことにした。 自交総連が2001年春闘のなかで具体的にとりくんだ主たる諸行動は、次のとおりである。
 3月2日 新世紀春闘勝利 3・2総決起集会 於日比谷野外音楽堂
   16日 3・16東京港総行動
   29日 3・29国鉄闘争総決起集会 於日比谷野外音楽堂
 4月18日 厚生労働省要請行動
 5月1日 第72回メーデー 於代々木公園
   6日 2001年平和大行進

(3)闘いの結果とその評価

(1) 総合的評価と今後の課題

 全労連は、賃上げ闘争の評価では、「多様な闘争を粘り強く展開したが、春闘全体の否定的影響をのりこえるには至らず、全体としては極めて不十分な結果にとどまった」としつつ、今後の運動発展の方向性について以下のように指摘している。
 「賃上げ額は決して十分なものではなかったが、春闘共闘の多くの単産・組合が、切実な組合員の生活要求と中小企業の困難を打開する政策提起を結合した春闘を探求し、経営者を説得して労働組合と共同の姿勢に立たせて、ぎりぎりの再回答を引き出すなど『提案型』の春闘を前進させたことは重要である。また、企業を越えた同一産業・地域内の共同も前進した。こうした単産・組合のとりくみを全体の教訓に生かし、春闘の新たな活性化・前進にむけた方向を追求していくことが求められる」
 自交労働者の闘いも、不況の長期化と生き残りをかけた危機意識、リストラ「合理化」の流れをうけ、賃上げの結果はきびしいものとなった。
 ハイヤー・タクシーでは、現行賃金維持が大勢で、一部の組合でプラスアルファーを獲得。自教は、東京9社9労集交(4000円)を中心に2500〜6000円、観光バス・トラック他では、今日段階においてさえ「合理化」がらみで長期化せざるを得ない状況にある。
 しかし、全体的には敗北感はみられず、逆に『よく頑張り、よく奮闘した』とか『他の産別組織と比べてもよくたたかい、自信や確信につながっている』などの評価がみられるのは教訓的である。
 「提案型」への切り替え、その土台である学習春闘の強化によって、職場・地域の政策要求を掲げ必要な経営責任を追及しつつ、将来につなぐ成果をかちとっている貴重な経験事例も全国的にみられる。「納得できる解決」をめざし、粘り強く、説得ある政策にもとづく交渉展開によって、賃下げ「合理化」に歯止めをかけ、あるいは撤回させるなかで合意を取り付け、解決するケースもみられた。
 これら運動上の前進面は、全労連の総括との関連においても、正しく評価すべきものであり、今後の前進を期すうえでも極めて重要である。
 そうした一方で、闘争上の弱点や克服すべき欠陥部分も明らかになっている。第1は、要求提出の大切さがなおざりにされていたり、その裏腹の関係ともいえる正しい情勢認識の一致の必要性が職場に十分、浸透しきれなかったこと。第2は、職場の日常活動が低下しており、産業別統一闘争への結集が弱まっていること。さらには、第3として団体交渉力や闘争指導面で力量低下がみられ、全国的に幹部・活動家の育成が大きく立ち遅れていることなどである。
 この面における改善、欠陥の是正は、自交総連の今後の運動前進をはかるうえで緊急かつ重要な課題となっている。

(2) 重点問題における個別評価

1.「改正」道路運送法の施行に対応しての闘い、その到達点

 自交総連は、タクシー破壊法反対闘争の一環として、運転代行業への法的規制の強化を求めてきたが、これまでの闘いの大きな成果として、自動車運転代行業の適正化に関する法律案を、今春の通常国会で成立させることができた。
 「改正」道路運送法の施行における運用基準策定などのとりくみでは、国土交通省と交渉を行い、個別・具体的に要請事項の責任ある反映を求めた。このなかで、「定時制で、よいものと悪いものとを区分けして考える」(運転者の選任)、「名前は違っても、タクシーの協議の場はつくる」(タクシー地域協議会の設置)などの回答を示している。運用基準そのものについては、「参入関係」「緊急調整措置の発動要件等」「運賃関係」「行政処分の点数制等」「最高乗務距離制等」についての概要案が示されたが、「まったく評価するに値しない」ものであり、自交総連が提唱しているタクシー運転免許の法制化の必要性がますます浮き彫りになっている。
 「タクシー近代化センターのあり方についての自交総連の提言」における前進面では、地理試験の強化を行わせるなどの一定の成果をかちとった。

2.政策闘争の前進面とその評価

 自教関係では、2種免許の技能検定制度導入や高齢者講習対象者年齢70歳への引き下げなどを盛り込んだ道路交通法改正により、業務拡大の道が広がっている。 タクシーにおける地方のとりくみでは、ホームヘルパー資格取得のための養成講座の開催(山形、宮城、福島、東京、静岡、福岡、大分)、身障者やお年寄りなどのタクシー利用に対する補助額の拡大(鶴岡市、広島市、日田市)の面で前進があった他、タクシー地域協議会の設置を求める要請行動を通じて、前向きの回答(宮城、東京、中国ブロック、高知、福岡)を引き出している。
 自教における業務拡大の課題と教習所の役割との結合、地域と密着した安心・安全なタクシーの発展を模索するとりくみは、全国的に強化の方向がみられるが、今後、いっそうの前進が期待される課題となっている。

3.倒産・身売りをさせない闘いについての評価と問題点

 自交総連は、第一ハイヤーの廃業問題、所沢及び大船自教の勝英資本による全員解雇・刑事弾圧などの攻撃、南海電鉄資本の第一交通グループへの身売り問題にともなう攻撃に対応し、この闘いを産別の重点争議と位置付け、合同対策会議の開催や一日行動等への参加、支援と激励のとりくみ強化など必要な行動展開をはかってきた。
 第一ハイヤーの廃業問題を除いては、いま現在もきびしい攻撃の下で、闘いを継続中であるが、廃業・身売りなど同種の問題が、今後いっそう全国的に広がることなどふまえ、これまでの反省点など振り返りつつ、以下、留意すべき事柄について指摘を行う。
 第1は、『同様の事態は、いつ自分の会社で起こっても不思議ではない』ということを明確にしておく必要があること。どこの職場でも、廃業・身売りの危険があり得るとの立場で、調査・分析し、チェックする活動を重視しなければならない。(無防備の克服)
 第2は、健全な労使関係を職場に確立することを重視し、また一致する政策課題での協力・共同を積極的に推進する姿勢を堅持すること。(提案型への切り替え)
 第3は、組合員教育の重視である。いかなる事態が起こっても、みんなで討論し、だれもが納得してたたかえる結論を導き出すことのできるような意識のレベルアップを日常的にめざす必要がある。(意識のレベルアップ)
 第4は、問題が発生した時に(あるいは、以前の段階で)、機敏・適切に対応できる幹部・オルグの存在が担保されていなければならないことである。早急に、この面での幹部・オルグの育成を重視する必要がある。(指導性の発揮)
 こうした指摘は、今後いっそう廃業、倒産・身売りの危険が増大する情勢のもとで、組織防衛とも直結し、いささかも軽視できない重要問題として、自交総連の克服すべき大きな課題となっている。

2.組織の強化拡大の到達点 

(1)とりくみの基本方向と重点

 自交総連は、第23回定期大会で「組織建設は緊急の最重要課題であり、5万人の自交総連構築と幹部・活動家の大量育成をめざし、全力をあげる」(2000年度の運動基調)ことを確認し、この1年間、とくに「2000年秋から2001年春闘にかけての闘い」と2001年春闘の期間を通じ全力をあげてとりくんできた。
 組織拡大の課題でとりわけ重視したのは、(1)空白県の組織化 (2)「少数派から職場(地域)内多数派へ」 (3)地域実情に適合する「地域タクシー労働組合(個人加盟方式)の結成と組織化 (4)非正規労働者の組織化 (5)自教・観光バス労働者の全国的な組織化への対策強化である。 この他、産業別組織としての体制・機能の強化をはかるとともに、「労働組合の存続・維持」の面でも組織を自己点検し、いかなる事態が生じても、それに対応してたたかえる闘争基盤強化の必要性を強調し、具体的な対策への努力をつづけてきた。

(2) 組織の強化拡大の到達点

 この1年間の新規加盟は、10地方(北海道、青森、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、島根)で18組合(タクシー=12、自教=3、観光バス=1、路線バス等=2)となり、加入組合数は683人となった。
 もっとも新規加盟組合が多かったのは、大阪4組合、青森・京都ともに3組合などで、神奈川でも複数の加盟が実現している。
 また、東京で「南部地域労組」(個人加盟方式)が誕生した他、福岡・古賀自校労組が企業内組合との「組織統一」をなしとげている。
 こうした奮闘にもかかわらず、北海道・第一ハイヤー労組の廃業にともなう組合解散をはじめ、全国的にも身売り・企業閉鎖にともなっての組合解散・消滅が相次ぎ、自交総連の組織実勢は昨年より○○人の減となった。
 ひきつづき、組織の強化拡大を最重要課題として位置付け、台数規制の廃止によって想定される大「合理化」の嵐に対置し、将来像を見据えての新たな運動の推進に適う組織の力量強化をはかることが求められている。
 また、組織人員の減少が、廃業(企業閉鎖)や身売りにともなって深刻度を増していることからも、「倒産・身売りをさせない闘い」をいっそう重視していくことが重要となっている。

3.その他の諸行動のとりくみ結果

(1)政策プロジェクトの開催

 自交総連は、中戦メンバーに加え高野常任中執、顧問弁護団及び全運輸労働組合の協力を得て、「タクシードライバー法案大綱」の策定と「自主経営の今後のあり方」を検討する政策プロジェクトを設置。7月12日(第1回)と8月6日(2回)の会議を経て報告をとりまとめるに至った。
 とりまとめられた政策プロジェクト報告は、第5回中執(9月5〜6日、於水月ホテル鴎外荘)で確認され、第24回定期大会で正式に発表されることになっている。

(2) 参議院選挙のとりくみとその結果

 7月29日投票の参議院選挙に際しては、組合員の政党支持・政治活動の自由を保障するという原則的立場を堅持すると同時に、(1)タクシーの安心・安全破壊を許さない政治の実現を (2)自交労働者の政策要求を実現する政治へ (3)すべての国民の将来にかかわる国政の転換を(「働くルールの確立、すべての労働者の底上げ、雇用の拡大を」「消費税を3%に、個人消費を暖め不況打開を」「憲法改悪阻止、政治腐敗をただし、平和と人権を守ろう」)の争点を重視し、闘争の具体的とりくみを展開してきた。
 参議院選挙の結果は、「小泉人気」に乗った自民党が改選議席の過半数を超え、与党3党でも非改選をあわせた全議席の過半数を維持した。一方、野党では民主党、自由党が改選議席を上回ったが、共産党、社民党は改選数を下回った。投票率は前回を下回り、有権者の迷いを反映した結果となった。
 今回の参議院選挙は、昨年春の国会の場でタクシー破壊法反対の論戦をはって最後まで奮闘した日本共産党の後退など残念な結果ではあるが、自民党など「勝者」である政党が必ずしも信任されたわけではなく、「ともかくも小泉改革にかけてみよう」との民意のあらわれであることに注目しておく必要がある。

(3) 主な関係団体の動きと役員人事

(1) 交運共闘第11回総会

 交運共闘は2月28日、第12回総会をひらき、2001年度運動方針と次の役員を決めた。
 議   長 坂田 晋作 建交労
 副 議 長 高松 幸尾 自交総連
       鈴木 信平 検数労連
       高橋 靖典 海貨労協
       三浦 隆雄 建交労
       田中 茂冨 全運輸
 事務局長  今村 天次 自交総連
 事務局次長 山田 喜巳 建交労
       久賀 孝三 自交総連
       橋本  勲 全運輸
       (以下略)  

(2) 交運研第11回総会

 交運研は4月28日、第11回総会をひらき、2001年度活動方針と次の役員を決めた。
 会   長 土居 靖範 立命館大
 副 会 長 桜井  徹 日本大
       安部 誠治 関西大
       西村  弘 大阪市大
       高松 幸尾 自交総連
       田中 浅雄 国  労
 事務局長 田中 茂冨 全運輸
 幹   事 菊池 和彦 自交総連
(以下略)  
 
(3) 自教共同センター第24回総会

 自教共同センターは6月25日、第24回総会をひらき、2001年度の申し合わせと次の役員を決めた。
議   長 領家 光徳 自交総連
副 議 長 山田 善巳 建交労
      大木  寿 全国一般
事務局長 石川  明 東  京
事務局次長 貴志  元 神奈川
       (以下略)  

(4) 第23回関係弁護士交流会のとりくみ

 第23回関係弁護士交流会は1月23〜24日、東京・家の光会館でひらかれ、12地方23人の弁護士が参加。今回も昨年にひきつづき、自交総連の中央執行委員が全員参加した。
 会議では、倒産・身売りをさせない運動、企業譲渡と労働者の権利などについて、中執も交えて討論を行った。中執が各地の闘いについて勉強できたのはもちろん、弁護士からも現場の幹部の意見が聞けて参考になったという意見があった。
 まとめは、須藤顧問弁護士が行い、その内容は月報293,2001年3月号に掲載されている。

(5) 自交共済第20回総会と共済活動のとりくみ

 自交共済は9月6日、13地方32人が参加し、東京・水月ホテル鴎外荘で第20回総会をひらいた。
 自交共済は、2000年度には死亡29件をはじめ休業や慶弔で、 710件の給付を行い、助け合いの機能を発揮しているものの、加入者が減少しているため、次期活動計画では1万5000人を目標に加入の促進に全力をあげることにした。

(6) 「日本における交通文化指数調査」へのとりくみ協力

 自交総連は、交通政策問題等で協力を得ている安部誠治関西大学教授から、韓国の政府機関である『交通安全公団』と市民団体の『緑色交通運動』が共同で実施しようとしている日本国内5都市(大阪、横浜、神戸、仙台、大分)での交通文化調査協力依頼を受けた。
 5月9日にひらいた第2回中央闘争委員会(第4回常執)は、調査への協力依頼を引き受けることを決め、6月3日(来日)から16日(帰国)の日程での交通文化調査に協力した。
 具体的には、事前の打ち合わせと当日の調査協力を含め、大分(4〜5日)、神戸・大阪(6〜8日)、仙台(11〜12日)、横浜(13〜14日)の順で、それぞれの関係地連(本)の積極的な協力のもと、交通マナーに対する18項目について、必要なデータをすべて入手し、無事終了させることができた。

 以  上

      


自 交 総 連