2006年度運動方針(案)

自交総連

I 情勢の特徴と運動基調

1.くらしと雇用・いのちの危機打開にむけて

(1) 格差は過去最高、貧困ライン層の増大

 タクシー労働者の賃金は、今から24年前(82年)の賃金水準とほぼ同額の269万円(厚労省調査、04年度)にまで低下し、他産業労働者との比較では243万円という過去最悪の格差が生じる事態となった。
 02年2月の規制緩和実施後、貧困ラインに相当する低賃金層が広がりをみせ、地域別最低賃金や生活保護基準額を下回る異常な低賃金が大都市においてさえ常態化している。都道府県別にみれば400万円台は東京のみで、300万円台は12府県、200万円台は33道府県、最も低かった沖縄は192万円である。生活保護基準額を下回っているのは、北海道・宮城・京都・大阪・広島・福岡など35道府県に及ぶ。
 いまや、タクシーは職業としての魅力≠失い、年々高齢化が進む一方、他産業からの流入も少ない慢性的な乗務員不足にあえいでいる。他方、大都市部を中心に「乗務員不足」とは到底いえず、新規参入と大量増車に起因する供給過剰状態に陥っている地域もある。
 リストラ「合理化」は露骨化し、固定給保障型賃金の解体、累進歩合制度やリース制的賃金への置き換え攻撃に続き、制裁金、違約金、事故負担、カード機など設備投資への個人負担が急速に広がっている。企業内個人タクシーやオーナーズ制度(大阪=ワンコインタクシー)など違法な名義貸しも横行しはじめている。
 こうした状況のもとで、生活破綻に陥る労働者や自殺、過労死、健康破壊が増加し続けている。貧困化にともなう運転者の資質やモラルの低下も起こり、乱暴運転、接客態度不良、乗車拒否、地理不案内など利用者からの苦情件数は増大している。

(2) 相次ぐ企業閉鎖、身売りと雇用不安

 タクシーでは、倒産・廃業の危機は一段と深まり、とくに地方都市・郡部では経営破綻等による整理解雇や雇用不安が広がっている。
 自動車教習所は、構造的な問題である少子化傾向を背景に、入所者の減少をカバーするルールなき競争関係の激化などきびしい環境下におかれている。一方では、東京・神奈川など大都市でも企業閉鎖や身売りが相次いでいる反面、勝英グループなど買収戦略によって企業拡張をはかる悪質企業の存在があり、自教労働者の雇用と労働条件、権利の確保に関わって深刻な事態を引き起こしてきた。また経営者の多くは、料金値引き、日曜・夜間営業の延長などの生き残り策に力を注ぎ、労働者からは働く意欲と将来展望を奪い、人件費の削減、パート・契約指導員の導入をはじめ、これまでかちとってきた権利までも剥奪する攻撃を強めている。
 観光バスでは、倒産・廃業が常態化し、雇用不安はかつてなく深刻化している。また、利用客減や大手旅行業者による無理な運行計画の強要や運賃・料金ダンピングなどによる過当競争の打開策として、賃下げ「合理化」・長時間労働の押し付けに加え、「正規」をアルバイト・派遣運転者に置き換える攻撃が広がっている。

(3) 原点に立って、たたかう自交総連の本領発揮を

 くらしの悪化や雇用不安など全面的な状態悪化が進行し、要求の切実さが増しているもとで、たたかう自交総連の本領発揮が期待されている。自交総連の伝統的な戦闘性と闘争推進力、蓄積された政策的な優位性こそは、われわれの貴重な共有の財産である。いまこそ、不合理で納得のいかない賃金水準、ひどすぎる職場環境と格差社会、ルールなき競争と権利抑圧の現状を変えるため奮闘することが求められている。
 そのためにも、職場こそ労働組合運動の原点≠ナあることを再認識し、それぞれの職場・地域で対話と宣伝のとりくみを旺盛に展開しつつ、広範な仲間との相互信頼にもとづく関係を確立することが重要である。日常的な助け合いと生活相談、みんなの要望・期待に応える雇用や賃金、権利面における実利・実益の確保、さらには道交法闘争や職場環境改善など諸活動の再構築をはかり、労働組合としての存在意義を示しつつ自交労働者の生活防衛闘争の先頭に立つことが必要である。

2.未来をかけ、歴史的な闘いの先頭に立って

(1) 明らかになった規制緩和の失敗

 02年2月に施行された新道路運送法は、都市部を中心に大量増車と運賃値下げ競争を出現させた。3年10か月が経過した05年12月末までのタクシーの純増数は全国で1万6409台(増加率=6・4%)。その内、純増数では東京(3279台)、大阪(2687台)、神奈川(1729台)、北海道(1069台)、広島(881台)、増加率では宮城(18・2%)、宮崎(15・4%)、神奈川(14・3%)、岡山(14・0%)、広島(13・5%)の順で著しい傾向を示している。値下げなど運賃変更は、国交省が資料の開示を行わなくなったため事業者数は判明していないが、運賃・料金の多様化がいっそう促進されている。とくに、運賃値下げ競争を熾烈化させているものとしては、下限運賃やワンコイン、遠距離割引や営業的割引(大口割引、定期券割引、きもの割引、うどん割引等)などがあり、なりふり構わない値下げ合戦の様相を呈している。
 『規制緩和をすれば、タクシーの運賃は安くなり、サービスも向上する上に競争によって非効率な経営は淘汰される。そのことに加え、タクシー労働者の悪い労働条件も、よい会社が生き残ることで大幅に改善されるはずだ』――。これは、規制緩和推進を支持した者の論理であったが、現実に生じた事態は、それとはまったく逆の結果をもたらした。(1)公共交通機関の必須条件である安心・安全の破壊、(2)ルールを守らない悪質企業=悪貨が肥太り、良貨が駆逐される流れが顕著に、(3)賃金・労働条件の際限なき悪化、魅力ない事業への転落と疲弊、の状況からするならば、規制緩和は明らかに失敗そのものである。のみならず、規制緩和は、駐停車車両による交通渋滞、騒音、大気汚染など環境、地域社会への悪影響をもたらしている。

(2) 第2ラウンドを迎えた歴史的な闘い

 いまわれわれは、タクシー労働者と事業の将来にとって、この先10年の行方を左右する歴史的な闘い≠フ真っただ中にある。
 国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会は05年10月、今後のタクシー事業のあり方及びその実現に必要な環境整備の方策について調査・審議する『タクシーサービスの将来ビジョン小委員会』を設置した。この小委員会設置は、政府・国交省主導にもとづくもので、社会的に問題化するに至ったタクシー車両の急増による安心・安全の崩壊、環境への悪影響などに対する具体的な対策を講じる必要性に迫られたことに最大の特徴があった。
 その小委員会での審議は8回をもって終了し、7月7日、『総合生活移動産業への転換をめざして』と題する報告書がまとめられ、国土交通大臣に提出された。
 報告書は、自交総連が一貫して要求してきたタクシー運転免許の法制化を盛り込まなかったものの、「運転者全体の質の確保・向上」が重要であることを指摘し、運転者登録制度の全国的な導入やタクシー業務適正化特別措置法にもとづく指定地域の拡大を提起するなど、それへの一歩接近として評価できる内容を盛り込んでいる。第2ラウンドの闘いは、報告書に盛り込まれた積極面を国・行政をして確実に実行に移させることにある。法改正や実効ある運用基準の策定を求め、大運動を継続・強化することが極めて重要である。自交総連は、タクシー運転免許の法制化の世論化とともに、当面する課題達成にむけて全力をあげる。

(3) 権利破壊とモラルハザード、問われる企業の社会的責任(CSR)

 自動車教習所は、競争関係が熾烈さを増してくるもとで、将来の経営維持に不安をもち廃業など撤退の道を選択したり、また親会社が抱える多額の債務返済処理をめぐる手段として、系列の自動車教習所を丸ごと売却するなどのケースが近年、目立っている。過去10年の間に1533校から1459校(04年12月末)へと全国で74校が減少しているが、そのうち関東が19校ともっとも多くなっている。
 観光バスでは、2000年2月からの規制緩和後一気に新規参入が相次ぎ、05年3月末時点で60%増の3743事業者へと驚異的な伸びを示している。過当競争の激化は、大手旅行会社による下限運賃を下回る「違法運賃」契約の押し付けと相まって、経営そのものの危機を現出しているが、NOx・PM法対策としての新車買替え等の設備投資が強いられ、倒産、企業閉鎖による失業・雇用不安がいっそう深刻化している。さらに、規制緩和後、長時間労働や整備ミスなどを主たる要因とする交通事故が増大している。
 こうした局面にあって、最小限の競争ルールを守らず、また労働組合そのものを破壊し権利を奪いさることによって人件費を大幅にカットし競争力を強化、そうした手法で企業拡張の全国的展開をはかる悪質企業の攻撃が相次いでいる。
 いま、タクシー、自動車教習所、観光バスなど自交関連事業では、組合破壊をともなう生き残りをかけた増車・運賃値下げ(料金値引き)競争の展開と買収による経営拡張策の推進、その一方で進む身売り・廃業等による撤退によって労働組合の存続そのものもきびしい現状におかれている。
 耐震強度の偽装、アスベスト被災、ライブドア・村上ファンド事件などを通じていっそう明らかになった『企業の社会的責任』(CSR)の問題は、労働組合のチェック機能の重要性とともに、その運動強化の必要性をわれわれに教えている。CSRは、法令順守や製品・サービスの安全確保といった当たり前の行動に加えて、環境対策、人権尊重、地域・文化貢献など幅広いとりくみを企業に求めるものである。
 こうした視点を重視し、自交総連は事態改善のために、CSR運動と政策闘争とを結合した闘いに挑む。

(4) 自交総連結成30年にむけて、実勢3万人の達成を

 自交総連は、07年10月の第30回定期大会をもって結成30年を迎える。74年の全自交労連第30回定期大会を契機に発生した不団結問題、そして組織排除、分裂の拡大から全自交全国共闘会議の発足、新たなたたかう産業別組織・自交総連の結成へ――の引き金となったのは、一部幹部の『年度別賃金方式』(運賃改定にともなうスライド賃下げの容認)の方針化と特定政党支持の押し付けであり、さらに非民主的な組織運営であった。
 30年近いこれまでの闘いが、われわれに示している最大の教訓は、「どんな困難があっても、労働者の根性で、闘いで、解決することができる」ということである。それを保障していたのは、情熱と献身性をもって闘いに挑んだ先輩たちであり、「燃える労働者」の生きざまそのものであった。
 運動の基本というものを忠実に守ってきたことも忘れてはならない。(1)職場の要求を大切にし、そこから運動を出発させてきたこと、(2)組合民主主義を徹底し、みんなで参加する運動としていること、(3)教育と学習を系統化し、幹部はもとより組合員の自覚を高めるための努力を続けていること、である。
 自交総連の活躍は、まさにこれから、以前にも増して望まれる。自交労働者と事業をとりまく環境は激変し、自交労働運動も大きな転換期を迎えている。こうした中、自交総連の存在意義がするどく問われている。その一方で、自交総連の組織を防衛し、新たな組織建設の道を見いだすために全力を尽くすことは、緊急の課題である。自交総連は、〃組織の防衛、強化拡大なくして活路なし〃の構えで、『組織強化拡大推進3か年計画』にもとづく目標達成を1年繰り延べ、第30回定期大会までに必ず3万人を達成する方向で全力をあげる。

3.目線を地域に、悪政打破の課題と結合して

(1) 「もうひとつの日本」をめざす大運動の前進を

 いま、多くの労働者・国民が現在と将来に展望をもてず、不安と閉塞感を広げている。8年連続3万人を上回った自殺者、ついに100万を超えた生活保護世帯、300万人を突破し続ける完全失業者、極端な低賃金と無権利に苦しめられる若者や非正規労働者、「勝ち組・負け組」を当然視する風潮、高齢者や子供への虐待、凶悪犯罪の増加など、小泉政治は国民の不安を膨れ上がらせている。これは、昨年の総選挙における小泉「圧勝劇」が自民党政治の一時的延命に過ぎず、自民党政治の危機と行き詰まりが深刻な段階にあることの証しである。極端な大企業中心、アメリカいいなりの政治の矛盾は、その虚像の実態が明らかになるにつれて、必ずや政治の激動をもたらすことにつながる。
 こうした情勢認識をふまえつつ、7月26〜28日にひらかれた全労連第22回定期大会は、「もうひとつの日本」をめざす大運動を提起し、(1)「戦争をしない日本」、(2)社会的格差と貧困の是正、(3)「安心・安全な地域社会」をキーワードに諸闘争の前進をはかる方向を明らかにした。
 「もうひとつの日本」の第1のテーマは、『戦争しない・参加しない日本を貫く』ことである。「戦争か平和か」が、世界の際だった対立軸となっている。とりわけ日本では、常時戦時国家体制づくりをめざすアメリカに追随する自民党政治のもとで、教育基本法の改悪、国民投票法の制定、共謀罪の新設、米軍基地の再編強化などが進められている。「中国、北朝鮮の脅威」を口実に、「過去の日本の戦争は正しかった」と歴史を逆戻りさせようとする様々なキャンペーンも繰り返され、またこれを口実に軍備増強を企てようとしている。
 今年秋の臨時国会では、二大政党制が進む中で、教育基本法改悪、国民投票法案の成立の危険性も高く、文字通り日本の戦後史をかけた正念場の闘いとなる。
 さらに、憲法闘争の視点からも、07年に行われる統一地方選挙及び参議院議員選挙の2つの政治戦が重要な試金石となる。憲法改悪や国民・労働者犠牲の「小さな政府」を競い合う勢力を後退させ、憲法を職場とくらしに生かす勢力の躍進をめざすことが求められる。
 第2のテーマは、『働くルールを確立し、格差と貧困を是正する』ことである。今後、格差と貧困の問題が、労働組合運動や市民運動をはじめ国会論戦や選挙戦でも最大の対立軸となる。これまで、市場経済万能論、弱肉強食の競争社会を進める「構造改革」が財界による政治支配によって推進され、日本経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻化させてきた。しかし、今日では、「競争や格差は必要悪だ」とマスメディアが持てはやす風潮は、国民の厳しい批判にさらされつつある。長期失業者や極端な低賃金労働者、生活保護世帯、就学援助者、ホームレスの増加など、政府の政策によってつくりだされた社会的格差と貧困の克服こそ、今日の日本社会の焦点である。
 第3のテーマは、『安心・安全な地域社会の実現をめざす』ことである。約3300あった自治体は1800にまで激減し、村は全国に198村しかなくなったといわれる。「国から地方へ」が叫ばれる裏側で、高齢化が進んだ町や村、地方都市から潮が引くように人がいなくなり、地域社会の崩壊が進んでいる。政府の「構造改革」は、住民のもっとも身近な社会単位である地域を破壊し、格差を広げている。さらに政府は、国の役割を外交、防衛、マクロ経済に限定し、都道府県制を廃止して道州制に組み替えるとしているが、国民の雇用とくらし、福祉や教育などに国として責任をもつ姿勢はみられない。大企業・ゼネコン優先政治、小泉「構造改革」によって破壊された地方・地域の再生、活性化は、そこで住み働き、生活する国民にとっては必要不可欠のものである。

(2) 悪政推進を許さず、国民的共同の前進を

 (略)

II 主な運動課題と対応する

  基本方針

1.4つの要求課題と運動の基本方向

(1) 社会的水準の労働条件確立への接近、権利の確保

① 賃上げと底上げ闘争の強化

 (1) 社会的水準の労働条件確立など「権利要求」の視点を大切にし、それへの接近にむけた要求闘争を重視する。そのため一定の時期に闘争を集中させてたたかう春闘と通年闘争としての政策闘争を結合してとりくむ。
 ○タクシーは、減車による適正な台数と上限運賃の確保を最重点課題とし、地域の経営者全体の共同責任として即時実施に踏み切るよう要求する。
 ○自動車教習所、観光バスでは、経営環境の改善を重視し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみ強化をはかる。
 (2) 状態悪化に歯止めをかける闘いでは、地域における賃金底上げの視点を軸に最低賃金法違反の一掃、足切りの引下げ、累進歩合制度の廃止、企業内最低賃金の確立などを重点課題としてとりくむ。
 (3) 年次有給休暇の不利益取扱いの是正、割増賃金の適正な支払いなど法定労働条件の確保をはかる。
 (4) 産業別最低賃金の確立(大都市=1500円以上、地方都市・郡部=1000円以上)では、具体的に重点地域を設定し、「労働協約ケース」による申出の可能性を追求する。また、全国一律最低賃金制の法制化と現行最低賃金制の改善にとりくむ。
 (5) 労働条件の高位平準化と到達闘争を全国的に展開し、地方(地域)での労働条件の格差是正をはかる。

② リストラ「合理化」反対、権利の確保

 (1) 労働者犠牲のリストラ「合理化」に反対し、労働者・労働組合の権利尊重、賃金・労働時間、雇用規制などにおける働くルールの確立とCSRを問う運動の推進をはかる。
 ○タクシーでは違法な日雇い・アルバイトの一掃、雇用の正常化にむけての地域的運動にとりくむ。
 ○リース制的賃金、『違反点数制』に起因する制裁金、社内罰、交通事故負担などについては反対していく。
 ○整理解雇の4要件((1)企業の維持・存続にとっての差し迫った必要性、(2)解雇回避についての努力、(3)労働者側の納得、(4)人選の仕方が客観的・合理的なものであること)など解雇ルールの確立をはかる。
 (2) 運輸・労働行政の監督指導責任を明確にさせ、道路運送法や運輸規則、労働基準法、改善基準告示などを無視し、労働者・労働組合の権利を認めない悪質経営者へのきびしい措置や厳格な処分を迫っていく。
 (3) 労働基本権や労働基準法など基礎知識の総学習運動を日常的に重視し、職場・地域での『権利総点検活動』を展開する。
 (4) 倒産や廃業・身売り対策については、いつでも起こり得る≠アとを前提に、地連(本)として学習会の開催や対策会議の定期化、機関会議での情報交換などチェック機能の強化を含め体制強化をはかる。
 (5) 職場で起こっている差別、支配介入など不当労働行為の一掃を重視する。また、裁判(地労委)一辺倒の闘争におちいる弱点を克服することに努め、職場を基礎とする産業別レベルでの反撃体制の確立、地方労連などの支援体制と社会的包囲との結合を重視する。
 (6) 各種政府委員の獲得などについては、全労連の具体的方針にそった闘いの展開をはかる。とくに、中央・地方で労働者委員候補者を立て、共同のとりくみとして運動強化をはかれるよう奮闘する。
 (7) 解雇金銭解決制度や労使委員会の導入を含む労働契約法制の制定など労働分野のさらなる規制緩和に対しては断固として反対していく。

(2) 将来像を見据えた政策要求の実現

 (1) タクシー運転免許の法制化を軸とする実効性ある新たなしくみの確立≠めざす。とくに、『輸送の安心・安全』、『誇りと働きがい』、『地域貢献』のための政策要求を重視し、その実現をはかる。
 ○タクシー運転免許の法制化の必要性についての世論喚起、国民的合意を獲得するためのとりくみ強化をはかる。そのため、地方自治体・地方議会への要請行動と意見書の採択、政党への協力要請など全国的な大運動として中央・地方で推進する。
 ○タクシー小委員会報告書の中に盛り込まれた積極面を政策化させ、実行に移させるためのとりくみ強化をはかる。とりわけ、運転者の要件の見直し及び運転者登録制度の導入に関する事項を最重点課題としてとりくむ。「指定地域」(東京、大阪)における臨時・アルバイト雇用の登録防止や地理試験内容の高度化、研修制度の充実、民主・公正な運営の確保を求めることはもとより、指定地域の政令指定都市までの拡大を緊急措置として要求する。
 ○タクシー規制緩和にともなう賃金大幅低下等に関わる国家賠償請求訴訟については、実態告発と国の責任の追及、運動高揚と世論喚起の場として位置付け、引き続き、関係地連(本)への支援・協力体制の強化をはかる。
 (2) 経営者自らが引き起こしている増車・運賃値下げ競争に対しては、3つの観点(第1=適正な台数・運賃水準の確保は不可欠、第2=優先されるは『安心・安全』、第3=良貨が悪貨を駆逐するシステムこそ必要)を組織的に身に付け、原則的に対応していくことを重視する。この際、賃金低下などが十分予測される中での選択であり、低下分の差額補填を含む経営責任が生じることを明確にしておくことが重要である。
 (3) プロドライバーとして必要な運転技術の向上、接客態度の確立に努めるとともに、移動制約者や高齢者の輸送についてのとりくみ推進をはかる。
 (4) 地方自治体に、タクシーを公共交通機関として位置付けさせ、タクシー問題を担当する部局を設けさせる。また、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、乗合タクシーの活用、福祉・介護政策とタクシーの役割及び労働者の関与のあり方についてなど検討・具体化させる。
 (5) 自教関係では、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務範囲の拡大」を重視していく。
 (6) 観光バス関係では、基準運賃の遵守、公正な取引ルールの確立、安全性と雇用・労働条件の確保のための政策要求を掲げてとりくむ。とくに、運賃ダンピング・区域外営業など法違反の是正や白バス行為の一掃、過労運転の防止措置、労働条件改善にむけての環境整備などを重視していく。
 (7) 対等・平等による正常な労使関係の確立、一致する政策提言にもとづく協力・共同の追求をめざすとりくみ強化を重視する。
 (8) 社会的貢献の観点を重視し運動の強化をはかる。とくに地域住民との接点を追求し、住みやすい街づくりとの関係で、「移動(交通権)の確保」「安全教育、交通事故の根絶」といった分野での関与のあり方を積極的に検討し、労働組合としての社会参加を追求する。

(3) 悪政の打破、反核・平和、国政の民主的転換

  (略)

(4) 自交総連の組織防衛と強大な全労連の建設

 (1) 『3か年計画』を1年繰り延べし、目標達成(=第30回定期大会までに3万人)にむけての全国的な組織強化拡大運動を推進する。
 ○重点目標として、「一桁組合からの脱却、少数派から職場内多数派へ」「二桁の地連(本)は100人以上の組織勢力へ」を追求し、各地連(本)での最高時勢力の回復をめざす。各地連(本)は、独自に策定した『3か年計画』にもとづき中央のとりくみと結合したとりくみ推進をはかる。
 ○空白県の組織化については、全労連オルグ・久賀特別中執の活動と連携し、中国・九州ブロック(重点地域=山口県西部及び福岡県北東部)を戦略地域としたとりくみを推進する。この場合、近接ブロックの協力や地方労連との連携をはかり未組織宣伝行動などを計画する。
 ○各地連(本)は、「地域タクシー労働組合」(個人加盟方式)の設置を行う。また、非正規雇用や自教・観光バス労働者の組織化を、運動方針に明確に位置付け必要な対策を具体化していく。とくに非正規雇用労働者の組織化にあたっては、組合規約をチェックし、「パート労働者は加入できない」などの不備・障害があれば改善し体制整備をはかる。
 ○各地連(本)は組織内点検を行い、機関会議欠席組合や組織機能を失っている少数派組合への対策を重視しオルグ強化を含む必要な手立てをとっていく。総連本部としては、体制・機能の確立がなされていない地連(本)への個別オルグ、援助と指導を重点的に行う。
 (2) 一致する要求にもとづく共同の拡大をはかる。運賃値下げ、リストラ「合理化」や廃業・身売り問題などでの職場内共同を重視する他、政策提言の実現を重視した地方(地域)内共同を積極的に進める。
 (3) 「200万全労連建設と600地域組織確立」をめざし、中央・地方で全力をあげる。また、中央交運共闘の組織・運動面にわたる機能強化にむけ積極的な役割を果たすとともに、各地連(本)は交運関係組合との共同拡大、地方交運共闘確立への努力を払う。

2.当面する運動の基本的展開

(1) 2006年秋から2007年春闘にむけた闘争の具体化

 2006年秋から2007年春闘にむけての闘いは、独自の産別要求・政策の重点と国民的課題とを結合し、春闘の前段闘争と位置付けとりくむ。闘いの具体化では、「2006年秋から2007年春闘にむけた闘争方針」を第5回中央執行委員会(9月5〜6日)で決定しとりくみを進める。

(2) 2007年春闘の準備

 (1)アンケートの実施については、全労連の『働くみんなの要求アンケート』を基本とし、全組合員と広範な未組織・未加盟の労働者を対象とする独自のものを作成しとりくむ。
 (2)春闘方針は、11月中に執行部原案をつくり、1月下旬には中央委員会をひらき決定する。春闘方針の職場討議は、1月初旬から執行部(案)にもとづいて行えるように準備する。

3.通年闘争の諸課題とそのとりくみ

(1) 通年闘争のとりくみ

 (1)全労連や民主的諸団体がとりあげる国民的諸課題について積極的に対応していくこととし、原水協、全国革新懇、非核の政府を求める会、安保廃棄中央実行委員会、国民救援会などとの共同を発展させる。
 (2)『自交労働者月報』の購読者拡大とその積極的活用、『自交労働者新聞』の内容充実を重視していく。また今年度は、機関紙コンクール及び写真コンテストを実施する。教宣学校は、ブロック毎に計画を立て本部からの講師派遣を行う形で実施する。
 (3)不当弾圧や解雇、争議権制限に対するとりくみ強化をはかる。関係弁護士交流会については、中執メンバー全員の義務参加のもとに今年度も開催していく。
 (4)在職死亡(過労死や職業病、自殺)の増加など健康破壊が深刻になっていることを重視し、自交労働者が健康で生き生きと働ける職場環境を確立させるためのとりくみ強化をはかる。
 ○労働者の安全と健康を確保するため、職場内に安全衛生法にもとづく安全衛生委員会を設置し、安全衛生の確立と機能の充実をはかる。
 ○事業者負担による成人病検診の義務付けとともに、検査項目にマーカー検査(ガン検査)を入れるようにする。定期健康診断の受診率を高め有所見者の再診を義務付けさせる。
 ○働き過ぎによる過労死など労働災害をなくすための総合的な事前対策を重視する。
 ○不幸にも被災労働者が発生した場合には積極的に労災認定闘争を行う。
 (5)急増しているタクシー強盗防止のため、警察庁が作成した「タクシーの防犯基準」の実施を求め、防犯機器の設置など必要な対策を経営者に講じさせる。
 (6)道交法闘争を発展させるため、引き続きとりくみ強化をはかる。
 (7)自交共済第25回総会の決定をふまえ、自交共済及び自交共済年金への加入促進運動を行う。また全労済の各種制度普及に努め、厚生文化行事は条件によって計画していく。
 (8)国際連帯活動については、国際労働運動の紹介に努め条件に応じて大衆的国際交流を検討する。

(2) 政党との関係について

 (略)

III 産業別組織体制の

  確立・強化にむけて

1.執行体制と顧問の委嘱について

(1) 機関会議開催の計画と本部専従体制

① 機関会議開催の計画

 中央執行委員会の開催は大会及び中央委員会時を含め年5回とする。また「地方代表者との合同会議」を適宜セットし、地方の幹部・活動家育成に役立たせる相互の経験交流や学習、個別問題での相談などを重視した運営にしていく。常任中央執行委員会(中央闘争委員会を兼務)は年7回開催していく他、必要に応じて専門討議を行う。中央委員会は1月に開催し、2007年春闘方針を決定する。

② 本部専従体制について

 総連本部の専従役員は、書記長及び書記次長2名、専従中央執行委員1名(ただし全労連派遣)の4名、書記については3名とする。

③ 産別指導体制の強化

 産別指導体制を強化するため、副委員長4人体制の確立及びブロック協議会の機能強化と運営改善をはかる。

(2) 顧問の委嘱

 顧問弁護団は、東京法律事務所、馬車道法律事務所、代々木総合法律事務所、江東総合法律事務所の4事務所とし、引き続いて協力を要請する。また、公認会計監査については坂根公認会計士に委嘱する。

2.財政の確立と2006年度予算(案)

(1) 2006年度予算(案)の編成にあたって

 (1)収支率100%を基本にした予算編成が困難である財政事情と繰越剰余金の次年度取り崩し限度額とを勘案の上、資金収支計画をたてる (2)予測される収支差損(赤字)の縮減をはかるため、支出面での費用削減と事務の効率化に努める (3)本部への登録率は実組合員数の80%以上、会計年度途中の変更は認めないを原則とし、少なくとも50%未満の地連(本)は3〜4年の実施計画を策定し、登録増への改善をはかる――ことをふまえ、2006年度の予算編成を行う。
 「臨時徴収金」については、長期争議組合支援(20%)、組織化対策及び大型宣伝カー積立(20%)、ブロック宣伝還元金(30%)、全労連会館単産特別賦課金(25%)、その他予備費(5%)を基本に配分する。
 全労連から交付される全労連オルグの配置に伴う出向負担金(=年間700万円)については、同額を『組織対策費』(内訳=事務費、運動費、人件費、予備費)として支出する予算措置を講じる。
 タクシー運転免許実現大運動における闘争財政の確立については、組合員一人300円の大運動徴収金の拠出を訴える。

(2) 各地連(本)の財政基盤の確立

 労働組合の日常活動の基本は、「組織」「教育宣伝」そして「財政」の3つであるが、軽視されがちなのが財政活動である。財政活動は、組合を運営し、日常的な活動を支える上で欠かせないものである。改めて財政活動の重要性を認識し、すべての地連(本)は財政的基盤の点検と計画的改善をはかる。また不団結や組織力の低下を招くことになる不明瞭な財政支出や「使い込み」などをチェックする機能を確立する。
 会計報告は定期的に行い「公開の原則」を貫くなど会計面における民主主義の徹底をはかる。各地連(本)は、学習会の機会などを活用し、組合会計の基礎的知識を関係者が身に付けるように努める。総連本部としては、必要に応じて講師の派遣を行う。




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