2009年度運動方針(案)

自 交 総 連


も く じ
I 情勢の特徴と運動基調
II 主な運動課題と対応する基本方針
III 産業別組織体制の確立・強化にむけて

I 情勢の特徴と運動基調

1.必要な規制強化のあり方を問う本格的な闘いの段階へ

(1)規制緩和路線の破綻とあるべき政策転換の方向

昨年の11・13中央行動
昨年の11・13中央行動
 タクシー事業活性化特別措置法案は、09年6月19日の参議院本会議において全会一致で可決、成立した。特定地域における協議会の設置と地域計画の作成、共同減車制度の導入に加え、運賃認可基準の厳格化、タクシー運転者登録制度のあり方についての検討などを盛り込んだ特別措置法は、実質的に規制緩和を見直し、再規制へと政策転換をはかる方向を明確にした点において画期的なものである。
 さらに、タクシー破壊法(=改正道路運送法)成立から9年余、規制緩和実施から7年4か月が経過しているもとで、与野党共同提案による修正案として成立しているのも劇的な変化といえる。
 タクシー破壊法は2000年5月、日本共産党と社民党を除く与野党の賛成多数で成立した。一方、タクシー事業者団体と連合系3単産が、闘い半ばで反対の旗を降ろすもとで、最後まで反対の姿勢を貫いて奮闘した自交総連の運動実績は、規制緩和実施後の様々な局面・段階において大きな影響力を持ち、自交総連の存在の重みを決定的なものとしてきた。
 “道理ある主張・政策は、原則的な闘いの継続によって必ず生きるものである”(2000年5月、第2回中闘確認「タクシー破壊法反対闘争の今後の対策」より)――タクシー事業活性化特別措置法成立に至った今日の到達点は、これまでの粘り強い運動の力の反映であり、政策的優位性を見事に示したものといえる。このことを、今後の闘いの展望に照らして大きな確信としておく必要がある。
 特別措置法の施行は09年10月とされる。いまやタクシー規制緩和路線は完全に破綻し、現局面は、必要な規制強化のあり方を問う本格的な段階に入った。
 自交総連は、タクシー労働者の切実な関心・要求から出発しながら、21世紀の日本のタクシーの進むべき道として、「輸送の安心・安全」、「誇りと働きがい」、「地域貢献」を確実なものとするタクシーシステムの確立を掲げている。それは、タクシー運転免許制度のもとに、タクシー運転者には、法人企業に雇用されて働くだけの道ではなく、個人事業者あるいは個人協同の事業形態も認められるなど、「働き方の選択権」を保障する仕組みへの転換をめざすものである。
 これまでのタクシーの枠組みを超えた発想の転換が重要である。われわれがめざす政策転換の方向は、“もうひとつのタクシー 確かな再生へ”に集約されており、運転者優位の仕組みの確立が求められる。
 規制緩和実施後、自交総連がこれまで重視してきた政策目標(将来像への接近)は、「台数規制と運転者優位の仕組みの確立、タクシー運転免許の法制化」と、「地域に密着した公共交通機関たるタクシーの発展」の2つである。自交総連は、この目標を運動の基本に据えつつ、直面する現状の危機打開と解決策の実現にむけて全力をあげる。
 とくに、供給過剰を解消し実車率アップを可能とする制度的な減車システムの確立及び同一地域同一運賃制の導入、適正な原価を償うに足りうる運賃の確保は、輸送の安心・安全、労働者の労働条件の改善にとって必要・不可欠のものであり、早期の実現が求められている。
 当面の重点課題であるタクシー事業活性化特別措置法施行に伴う自主的・協調的な共同減車のあり方や適正な運賃の確保については、今後の省令・運用基準策定を含めその実効性が問われる重大な局面であることをふまえ、確実な賃金増、労働条件の改善に結び付く具体的な成果を獲得するために最大限の努力を払う。

(2)今こそ、情勢変化に適応した運動の強化・前進を

 今日の情勢変化は、職場での闘いを基礎に産業別、地域別、全国的な統一闘争を飛躍的に発展させることの重要性をわれわれに教えている。
 変化のチャンスをとらえ、“多すぎるタクシーを減らせ、バラバラ運賃反対”など、タクシー労働者の切実な声に応えなければならない。
さらに、外需頼みから家計・内需主導への日本経済へと切り替えさせていく課題において、“働く貧困層をなくせ、まともな雇用の確保を”“すべての労働者に時給1000円以上の賃金を”の社会的世論を喚起し、要求実現をめざすことが不可欠である。産別組織の力を総結集した生活危機突破と事業の将来をかけた闘争の推進にむけ全力をあげなければならない。
 同時に、この闘いを通じて、実践的かつ産別的な視点を持った幹部・活動家の育成に力を注ぐとともに、実勢3万人の回復をめざす組織拡大の課題において、目覚しい成果をかちとることが強く求められる。
 組織拡大をめぐる活動の到達点では、09年8月末現在において、自交総連の組織実勢は20年ぶりにプラスに転じている。前年比560人増の前進を果たした貴重な教訓をふまえつつ、引き続き、質・量両面における闘争基盤の強化をはからなければならない。

2.貧困・生活危機突破、存在感ある組合運動の前進にむけて

(1)貧困ライン層の増大と権利破壊、問われる企業の社会的責任

 ハイヤー・タクシー労働者の賃金は、07年において、今から25年前(82年)の賃金水準とほぼ同額の277万円(厚労省調査)にまで低下しており、他産業労働者(=510万円)との比較では233万円の格差が生じている。
 08年の場合、他産業労働者の調査結果はまだ公表されていないため、格差の実態は明らかではないが、タクシーの賃金水準そのものは271万円(同調査、三重・滋賀の2県は未集計)で、前年より6万円低下している。このうち200万円に届かない地域が4県(岩手、秋田、福島、沖縄)あり、最賃割れが各地で発生している実態が今回の調査からも浮き彫りにされている。
 09年においては、アメリカ発の世界経済危機のもとで、日本経済の深刻な悪化が引き起こされ、労働者・国民のくらしは重大な打撃を被る中で、タクシー需要は急減している。運送収入は対前年比二桁減となるなど異常事態が続いており、賃金低下はいっそう深刻化している。
 一方、経営危機は一段と深まり、大都市・地方都市・郡部を問わず倒産、廃業等による全員解雇や、リストラ「合理化」など生き残りへの新たな提案が各地で相次いでいる。
 生活破綻に陥る労働者や過労死、健康破壊が増加し続けていることも見逃せない。貧困化に伴う運転者の資質やモラルの低下も起こり、乱暴運転、接客態度不良、乗車拒否、地理不案内など利用者からの苦情は依然として減少していない。
 自動車教習所は、構造的な問題である少子化傾向を背景に、入所者の減少をカバーするルールなき競争の激化などきびしい環境下におかれている。経営者の多くは、料金値引き、日曜・夜間営業の延長などの生き残り策に力を注ぎ、労働者からは働く意欲と将来展望を奪い、人件費の削減、パート・契約指導員の導入をはじめ、これまでかちとってきた権利を剥奪する攻撃を進めている。
 観光バスでは、2000年2月からの規制緩和後一気に新規参入が相次ぎ、08年3月末時点で78%増の4159事業者へと驚異的な伸びを示している。07年2月に発生した「あずみ野観光」スキーツアーバス死傷事故は、規制緩和によるバス業界の安値競争のひずみとして新聞・テレビで取り上げられ、大きな社会的問題として論議を呼んだ。
 過当競争の激化は、貸切り単価の切り下げとなり経営そのものの危機を現出し、景気悪化と新型インフルエンザの波紋が広がる中、倒産、企業閉鎖などによる失業・雇用不安も深刻化している。また、利用客減や大手旅行業者による無理な運行計画の強要や運賃・料金ダンピングなどによる過当競争の打開策として、賃下げ「合理化」・ワンマン運行による長時間労働の押し付けに加え、「正規」をアルバイト・派遣運転者に置き換える攻撃が続いている。

(2)原点に立って、たたかう自交総連の本領発揮を

 不合理で納得のいかない賃金水準、ひどすぎる職場環境と格差社会、ルールなき競争と権利抑圧の現状を変えるために奮闘することが求められている。
 この闘いにとって重視すべきことは、今まさに「企業の社会的責任」が大きく問われていることである。「企業の社会的責任」(CSR)は、法令順守や製品・サービスの安全確保といった当たり前の行動に加えて、環境対策、人権尊重、地域・文化貢献など幅広いとりくみを企業に求めるものである。言い換えれば、「利潤追求だけでなく、企業も社会の一員としてのふさわしい行動を」という考え方であり、その際、企業には労働者や取引先、消費者、投資家、株主、地域社会など幅広い利害関係者への情報公開と誠実な対話が必要とされている。
 こうした視点を大切にし、法人経営の存在意義を問い、事態改善のための責任を果たさせるために、自交総連は、CSR運動と政策闘争とを結合した闘いを推進する。
 労働組合の原点に立ち返った「組織点検」もまた重要な課題である。それぞれの職場・地域で対話と宣伝のとりくみを旺盛に展開しつつ、広範な仲間との相互信頼にもとづく関係を確立することが不可欠である。
 また、日常的な助け合いと生活相談、みんなの要望・期待に応える雇用、賃金、労働条件、権利における実利・実益の確保、さらには道交法闘争や職場環境改善など諸活動の再構築をはかる必要がある。
 たたかう自交総連の本領発揮が期待されている中で、職場で労働組合としての存在意義を示し、同時に、主戦場である地域を視野に入れての運動との結合をはかりつつ、自交労働者の生活防衛闘争の先頭に立つことが重要である。

3.目線を地域に、政治の民主的転換の課題と結合して

(1)労働組合の優位性を生かし、地域からの変革を

 全労連が06年夏よりとりくんできた「もうひとつの日本」をめざす大運動の今日的意義をふまえ、(1)働くルールの確立、社会的格差と貧困の是正、(2)安心・安全な地域社会の実現、(3)「戦争をしない・参加しない日本」の追求をキーワードに諸闘争のいっそうの前進をはかる。
 第1は、働くルールを確立し、格差と貧困を是正することである。今、格差と貧困の問題が、労働組合運動や市民運動をはじめ国会論戦や選挙戦でも最大の対立軸となっている。これまで、市場経済万能論、弱肉強食の競争社会を進める構造改革が財界による政治支配によって推進され、日本経済と国民生活の矛盾をあらゆる分野で深刻化させてきた。長期失業者やワーキングプア、生活保護世帯、ホームレスの増加など、政府の政策によってつくりだされた社会的格差と貧困の克服こそ、今日の日本社会の焦点である。「働く貧困層」をなくすとともに、雇用・失業保険を抜本的に充実し、失業しても次の職業を安心して探せる社会にするなど人間らしい労働のルールの確立が求められる。
 第2は、安心・安全な地域社会の実現をはかることである。日本の経済危機は、構造改革路線によって貧困と格差が広がるなど、社会のあらゆる分野でゆがみが深刻になっているところに、世界からの大津波が襲いかかっているだけに、打撃も不安もかつてなく大きいものがある。地域経済の深刻な存立の危機、過疎化と高齢化、中心商店街の「シャッター通り」化、病院の廃止・縮小や鉄道の廃線、路線バスの撤退が進行することによって地域共同体の崩壊が進んでいる。地方自治体の財政破綻も一段と深刻さを増し、工場閉鎖と人口の流出、大幅な税収減によって住民のもっとも身近な社会単位である地域の基盤は危機に陥っている。
 第3は、戦争しない・参加しない日本を貫くことである。「戦争か平和か」が、世界の際だった対立軸となっている。とりわけ日本では、常時戦時国家体制づくりをめざすアメリカに追随する自民党政治のもとで、教育基本法の改悪、改憲手続法の制定、ソマリア沖への自衛隊派兵、米軍基地の再編強化などが強権的に進められてきた。一方では、イラク戦争の失敗を大きな契機として、アメリカの一国覇権主義が破綻に直面し、いま世界は大きく変わりつつある。その波はアメリカにまで及び、オバマ大統領が「核兵器のない世界」の追求を世界に宣言するなど、画期的な前向きの変化も生まれている。

(2)悪政を許さず、国民的共同の飛躍的前進を

 組織された労働者の優位性を発揮し、要求実現の立場で、悪政打破、政治革新をめざす闘いに決起していくことが求められる。とりわけ、自民党政治を打ち破り、日本社会と経済の健全な発展、平和に貢献する日本をめざすには、労働組合運動からの接近≠重視し、恒常的かつ継続的に国民的共同の可能性を模索する必要がある。自交総連は、そのために公務・民間労働者の共同を前進させることや、労働者・地域住民一体となった地域変革のための共同実現に力を注ぐ。
 タクシー・自動車教習所など業種の特性に立脚した地域住民との接点を重視し、安全性と移動の権利確保や環境問題を共同の運動課題として位置付け、具体的な政策をもって地域に積極的に打って出ることも重要である。こうしたとりくみは、組合員一人ひとりの政治意識を高めることにも大きく貢献する。
 自交総連は、自交労働者と事業、日本の明るい将来を築くために、これまでも困難に正面から立ちむかい、団結の力で乗り越えてきた自交労働運動の歴史と伝統に確信を持ち、それに恥じない底力を発揮する。

II 主な運動課題と対応する基本方針

1.4つの要求課題と運動の基本方向

(1)社会的水準の労働条件確立への接近、権利の確保

(1)賃上げと底上げ闘争の強化

 1) 社会的水準の労働条件確立など「権利要求」の視点を大切にし、それへの接近にむけた要求闘争を重視する。そのため一定の時期に闘争を集中させてたたかう春闘と通年闘争としての政策闘争を結合してとりくむ。
 ○ 減車と上限運賃の確保を最重点課題とし、地域の経営者共同の責任として労働条件改善のための環境整備を行うよう要求する。
 ○ 自動車教習所、観光バスでは、経営環境の改善を重視し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみ強化をはかる。
 2) 状態悪化に歯止めをかける闘いでは、地域における賃金底上げの視点を軸に最低賃金法違反の一掃、累進歩合制度の廃止、足切りの引下げ、企業内最低賃金の確立などを重点課題としてとりくむ。
 3) 年次有給休暇の不利益取扱いの是正、割増賃金の適正な支払いなど法定労働条件の確保と交通事故負担金、罰科金等の廃止をはかる。
 4) 労働条件の高位平準化と到達闘争を全国的に展開し、地方(地域)での労働条件の格差是正をはかる。また、「職場・地域から時給1000円未満をなくそう」の課題を重視した運動を推進する。さらに、地域別最低賃金の改善と全国一律最低賃金制度の確立にとりくむ。

(2)リストラ「合理化」反対、権利の確保

 1) 労働者犠牲のリストラ「合理化」に反対し、労働者・労働組合の権利尊重、賃金・労働時間、雇用規制などにおける働くルールの確立と企業の社会的責任(CSR)を問う運動の推進をはかる。
 ○ タクシーでは違法な日雇い・アルバイトの一掃、雇用の正常化にむけての地域的運動にとりくむ。
 ○ 名義貸しであるオーナーズ制度や「業務委託契約」等への対策については、地連(本)毎に情報収集や調査を行い、運輸局交渉を通じて根絶をはかる。
 ○ 整理解雇の4要件(企業の維持・存続にとっての差し迫った必要性、解雇回避についての努力、労働者側の納得、人選の仕方が客観的・合理的なものであること)など解雇権濫用を禁止するルールの確立をはかる。
 2) 運輸・労働行政の監督指導責任を明確にさせ、道路運送法や運輸規則、労働基準法等を無視し、労働者・労働組合の権利を認めない悪質経営者への厳しい措置や厳格な処分を迫る。
 3) 労働基本権や労働基準法など基礎知識の総学習運動を日常的に重視し、職場・地域での権利総点検活動を展開する。
 4) 倒産や廃業・身売り対策については、“いつでも起こり得る”ことを前提に、地連(本)として学習会の開催や対策会議の定期化、機関会議での情報交換などチェック機能の強化を含め体制強化をはかる。
 5) 職場で起こっている差別、支配介入など不当労働行為の一掃を重視する。また、裁判(地労委)一辺倒の闘争におちいる弱点を克服することに努め、職場を基礎とする産業別レベルでの反撃体制の確立、地方労連などの支援体制と社会的包囲との結合を重視する。
 6) 各種政府委員の獲得などについては、全労連の具体的方針にそった闘いの展開をはかる。とくに、中央・地方で労働者委員候補者を立て、共同のとりくみとして運動強化をはかれるよう奮闘する。
 7) 日雇い派遣の禁止や特定業種に限定する派遣の規制、派遣先企業の責任の明確化など労働者派遣法の抜本的改正を求める。

(2)必要な規制の維持・強化、将来像を見据えた政策要求の実現

 1) 現在生じている供給過剰の是正、労働条件低下の防止策等の解決をはかるため、具体的な政策要求にもとづく事態改善のとりくみ強化をはかる。
 とくに、タクシー事業活性化特別措置法施行との関係では、特定地域の指定要件、協議会のあり方と構成メンバー、特定事業計画の作成と共同減車の実効性を重視し、省令・運用基準策定へのとりくみ強化をはかる。
 ○ タクシー事業活性化特別措置法にもとづく「特定地域の協議会」の機能強化、権威ある機関として役割発揮を求める。なお自交総連は、「地域分権の確立を基礎に、利用者・住民、事業者、タクシー運転者の声が反映する官民合同の委員会を設け、タクシーサービスのあり方や適正なタクシー台数、運賃などの重要事項の決定権を与えるようなシステムの確立をめざす」としていることをふまえ、協議会参加には積極的に対応し必要な役割を果たしていく。
 ○ 08年6月に施行された政令指定都市等13地域における運転者登録制度については、良質な運転者の確保という本来の目的に適った実効性のある仕組みとして定着させる。また、運転者の登録取消処分などに係る対応については、懲罰的制裁主義を排し、公正、教育・指導、公開の原則を尊重するほか、背後責任の追及を明確化するよう求める。
 ○ 東京の国賠訴訟上告審対策については、政策形成訴訟の視点を重視し、実態告発と国の責任の追及、運動高揚と世論喚起の場として位置付けるとともに、最大のテーマである「原告適格を認めさせる」闘いの支援・協力体制を継続する。
 2) 経営者自らが引き起こしている増車・運賃値下げ競争に対しては、3つの観点(第1=適正な台数・運賃水準の確保は不可欠、第2=優先されるべきは輸送の安心・安全、第3=良貨が悪貨を駆逐するシステムこそ必要)を組織的に身に付け、原則的に対応していくことを重視する。
 3) プロドライバーとして必要な運転技術の向上、接客態度の確立に努めるとともに、移動制約者や高齢者の輸送についてのとりくみ推進をはかる。また、移動制約者らの交通権を保障するため、国が責任を持って運賃補助などの助成措置を講じるよう求めていく。
 4) 地方自治体に、タクシーを公共交通機関として位置付けさせ、タクシー問題を担当する部局を設けさせる。また、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、乗合タクシーの活用、福祉・介護政策とタクシーの役割及び労働者の関与のあり方について検討・具体化させる。
 5) 自教関係では、「自教労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(03年4月、第4回中執決定)にもとづき、とりくみ推進をはかる。とりわけ、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務範囲の拡大」を重視していく。
 6) 観光バス関係では、公正な取引ルールの確立、安全性と雇用・労働条件の確保のための政策要求を掲げてとりくむ。とくに、旅行会社による不当な低運賃の押し付け、運賃ダンピング・区域外営業など法違反の是正、過労運転の防止措置、労働条件改善にむけての環境整備を重視していく。
 7) 対等・平等による正常な労使関係の確立、一致する政策課題にもとづく協力・共同の追求をめざす。
 8) 社会貢献の観点を重視し運動の強化をはかる。とくに地域住民との接点を追求し、住みやすい街づくりとの関係で、「移動(交通権)の確保」「安全教育、交通事故の根絶」といった分野での関与のあり方を積極的に検討し、労働組合としての社会参加を追求する。
 9) 地球温暖化防止運動については、「タクシー減車による地球温暖化防止への貢献」(08年5月発表、自交総連作成)を活用し、実際の減車闘争に役立たせるなど交通政策からの接近をはかる。

(3)悪政の打破、反核・平和、国政の民主的転換

 自交総連は、安保優先・大企業本位の政治の転換、平和・民主主義擁護、憲法改悪に反対する国民多数の世論結集をめざす運動の強化を重視し、全国革新懇が示す「3つの共同目標」をいっそう高く掲げてとりくむ。具体的な運動については、全労連をはじめ民主的な諸団体の行動提起を積極的に受け止め、その前進をめざしていく。地方政治の分野では、「オール与党」による悪政を打破し地域住民のくらしや営業、地域経済を守る地方自治体を建設していくために奮闘する。
 憲法闘争では、全労連が提起している(1)すべての職場に憲法を守る会の確立を (2)すべての地域に憲法を守る地域の会や共同センターの確立を (3)すべての職場で憲法改悪反対署名の過半数集約を (4)中央、都道府県、産業で労働者9条の会などの結成を、にもとづきとりくみ推進をはかる。
 2010年夏の参議院選挙については、政治の真の民主的転換の方向性を明らかにし、自交労働者の生活危機突破、事業の将来を確かなものとする選挙闘争方針を確立してとりくむ。

(4)自交総連3万人の回復と強大な全労連の建設

 1) 実勢3万人の回復にむけて、全国的な組織強化拡大運動を推進する。
 ○ 重点目標として、「一桁組合からの脱却、少数派から職場内多数派へ」「二桁の地連(本)は100人以上の組織勢力へ」を追求し、各地連(本)での最高時勢力の回復をめざす。各地連(本)は、独自に策定した計画にもとづき中央のとりくみと結合したとりくみ推進をはかる。
 ○ 空白県の組織化については、近接ブロックの協力や地方労連との連携をはかり未組織宣伝行動などを計画する。
 ○ 各地連(本)は、「地域タクシー労働組合」(個人加盟方式)の設置を行う。また、非正規雇用や個人タクシー、自教・観光バス労働者の組織化を、運動方針に明確に位置付け必要な対策を具体化していく。とくに非正規雇用労働者の組織化にあたっては、組合規約をチェックし、加入できない≠ネどの不備・障害があれば改善し体制整備をはかる。
 ○ 各地連(本)は組織点検を行い、機関会議欠席組合や組織機能を失っている少数派組合への対策を重視しオルグ強化を含む必要な手立てをとっていく。総連本部としては、体制・機能の確立がなされていない地連(本)への個別オルグ、援助と指導を重点的に行う。
 2) 一致する要求にもとづく共同の拡大をはかる。減車、リストラ「合理化」反対、廃業・身売り問題対策等での職場内共同を推進するほか、政策提言の実現を重視した地方(地域)内共同を積極的に進める。
 3) 「200万全労連建設と600地域組織確立」をめざし、中央・地方で全力をあげる。また、中央交運共闘の組織・運動面にわたる機能強化にむけ積極的な役割を果たすとともに、各地連(本)は交運関係組合との共同拡大、地方交運共闘確立への努力を払う。

2.当面する運動の基本的展開

(1)2009年秋から2010年春闘に向けた闘争の具体化

 2009年秋から2010年春闘にむけての闘いは、独自の産別要求・政策の重点と国民的課題とを結合し、春闘の前段闘争と位置付けとりくむ。闘いの具体化では、「2009年秋から2010年春闘にむけた闘争方針」を第5回中央執行委員会(9月9〜10日)で決定しとりくみを進める。

(2)2010年春闘の準備

 1) アンケートの実施については、全労連の『働くみんなの要求アンケート』を基本とし、全組合員と広範な未組織・未加盟の労働者を対象とする独自のものを作成しとりくむ。
 2) 春闘方針は、11月中に執行部原案をつくり、1月下旬には中央委員会をひらき決定する。春闘方針の職場討議は、1月初旬から執行部(案)にもとづいて行えるように準備する。

3.通年闘争の諸課題とそのとりくみ

(1)通年闘争のとりくみ

 1) 全労連や民主的諸団体がとりあげる国民的諸課題について積極的に対応していくこととし、原水協、全国革新懇、非核の政府を求める会、安保廃棄中央実行委員会、国民救援会などとの共同を発展させる。
 2) 「自交労働者月報」の購読者拡大とその積極的活用、「自交労働者新聞」の内容充実を重視していく。また今年度は、機関紙コンクールを実施する。教宣学校は、ブロック毎に計画を立て本部からの講師派遣を行う形で実施する。
 3) 不当弾圧や解雇、争議権制限に対するとりくみ強化をはかる。関係弁護士交流会については、中執メンバー全員の義務参加のもとに今年度も開催していく。
 4) 在職死亡(過労死や職業病、自殺)の増加など健康破壊が深刻になっていることを重視し、自交労働者が健康で生き生きと働ける職場環境を確立させるためのとりくみ強化をはかる。
 ○ 労働者の安全と健康を確保するため、職場内に安全衛生法にもとづく安全衛生委員会を設置し、安全衛生の確立と機能の充実をはかる。
 ○ 事業者負担による成人病検診の義務付けとともに、検査項目にマーカー検査(ガン検査)を入れるようにする。定期健康診断の受診率を高め有所見者の再診を義務付けさせる。
 ○ 働き過ぎによる過労死など労働災害をなくすための総合的な事前対策を重視する。
 ○ 不幸にも被災労働者が発生した場合には積極的に労災認定闘争を行う。
 5) タクシー強盗の増加を背景に警察庁が作成した「タクシーの防犯新基準」の普及促進と具体的対策の実施を求めていく。とくに、(1)防犯指導及び防犯訓練の内容・機会の拡充、(2)運転席後部の防犯仕切板の形状についての見直しと明確化、(3)車内防犯カメラ、異常事態外部表示装置等の設置など、新基準で示された対策を経営者に講じさせる。
 6) 道交法闘争を発展させるため、引き続きとりくみ強化をはかる。
 7) 国際連帯活動については、国際労働運動の紹介に努め条件に応じて大衆的国際交流を検討する。

(2)共済活動のとりくみ

 制定以来約60年ぶりの改正を受けて、新生協法が08年4月に施行された。新生協法では、組織・運営の強化や監査機能の強化がはかられるとともに、共済事業においては健全かつ適切な運営を確保するための様々な措置が求められ、一部では契約者保護の観点から保険業法を準用した規定もなされている。
 こうした状況に対応するため、第32回定期大会において規約の一部改正を行い、「組合員の相互扶助による福祉の向上をはかるため、共済活動を行う」(第4条関係)を追記する。
 具体的なとりくみでは、共済活動が、構成員からの委任にもとづく構成員の相互扶助による福祉の向上を目的としていることをふまえ、自交共済及び自交共済年金への加入促進をはかる。また、福祉活動の一環として全労済の各種制度普及に努め、厚生文化行事は条件によって計画していく。
 なお、共済契約に関する事務手続きを円滑に進めるため、全労済より必要最小限の範囲において個人情報の提供を受けることとする。

(3)政党との関係について

 労働組合と政党との関係は、以下の4原則をふまえ対応する。
 第1=自民党政治の反労働者・反国民的政策に反対してたたかうとともに、自交労働者の生活と権利、平和と民主主義を守ってたたかう政党と協力・共同の関係を保っていく。
 第2=前項の立場に立って、組合員の政治意識を高める活動を行う。
 第3=組合員の政党支持・政治活動の自由を保障していく。また資本や警察からの妨害・弾圧には、労働組合の立場から政治活動の自由を保障する見地でたたかう。
 第4=政党別選挙に際しては、特定政党・特定候補の支持は行わない。ただし、労働組合の要求実現とのかかわりで政策協定を結んだ革新・民主勢力共同の候補については、労働組合として積極的に支持していく。

III 産業別組織体制の確立・強化にむけて

1.執行体制と顧問の委嘱について

(1)機関会議開催の計画と本部専従体制

(1)機関会議開催の計画

 中央執行委員会の開催は大会及び中央委員会時を含め年5回とする。また「地方代表者との合同会議」を適宜セットし、地方の幹部・活動家育成に役立たせる相互の経験交流や学習、個別問題での相談などを重視した運営にしていく。常任中央執行委員会(中央闘争委員会を兼務)は年7回開催していく他、必要に応じて専門討議を行う。中央委員会は1月に開催し、2010年春闘方針を決定する。

(2)本部専従体制について

 総連本部の専従役員は、書記長及び書記次長2名、専従中央執行委員1名(ただし全労連派遣)の4名、書記については2名とする。

(3)産別指導体制の強化

 産別指導体制を強化するため、ブロック協議会の機能強化と運営改善をはかる。また、書記局内に自教担当を配置する。

(2)顧問の委嘱

 顧問弁護団は、東京法律事務所、馬車道法律事務所、代々木総合法律事務所、江東総合法律事務所の4事務所とし、引き続いて協力を要請する。また、公認会計監査については坂根公認会計士に委嘱する。

2.財政の確立と2009年度予算(案)

(1)2009年度予算(案)の編成にあたって

 (1)収支率100%を基本にした予算編成が困難である財政事情と繰越剰余金の次年度取り崩し限度額とを勘案の上、資金収支計画を立てる、(2)予測される収支差損の縮減をはかるため、支出面での費用削減と事務の効率化に努める、(3)本部への登録率は実組合員数の80%以上、会計年度途中の変更は認めないことを原則とする、(4)50%未満の地連(本)は3〜4年の実施計画を策定し登録増への改善をはかる、ことなどをふまえ2009年度の予算編成を行う。
 臨時徴収金については、長期争議組合支援(20%)、組織化対策及び大型宣伝カー積立(20%)、ブロック宣伝還元金(25%)、全労連会館単産特別賦課金(30%)、その他予備費(5%)を基本に配分する。

(2)各地連(本)の財政基盤の確立

 労働組合の日常活動の基本は、「組織」「教育宣伝」そして「財政」の3つであるが、軽視されがちなのが財政活動である。財政活動は、組合を運営し、日常的な活動を支える上で欠かせないものである。改めて財政活動の重要性を認識し、すべての地連(本)は財政的基盤の点検と計画的改善をはかる。また不団結や組織力の低下を招くことになる不明瞭な財政支出や「使い込み」などをチェックする機能を確立する。
 会計報告は定期的に行い「公開の原則」を貫くなど会計面における民主主義の徹底をはかる。各地連(本)は、学習会の機会などを活用し、組合会計の基礎的知識を関係者が身に付けるように努める。総連本部としては、必要に応じて講師派遣を行う。



自 交 総 連