2009年春闘方針
自 交 総 連

2009年1月29日
自交総連第31回中央委員会

も く じ

2009年春闘の位置付けと闘いの焦点
基本的な要求・課題と闘いの力点
闘いの基本方向と組織の強化拡大
春闘体制、闘いの流れと統一行動
〈関連文書〉08年秋から09年春闘にむけた闘争の到達点と課題

2009年春闘の位置付けと闘いの焦点

 2009年春闘は、アメリカ発の金融危機が世界経済の大混乱を引き起こし、日本経済にも深刻な影響を与えているもとでたたかわれる。
 いま景気悪化を理由に、大企業・大銀行が競い合って、大規模の「首切り」「雇い止め」を進め、下請単価の買いたたきや貸し渋り・貸しはがしで、中小企業を倒産に追い込むといった事態が進んでいる。株安・円高が進み、企業実績が落ち込む中で、地域では中小企業の業況が急速に悪化し、労働者の雇用不安が広がっている。
 経営環境の悪化と個人消費の急激な落ち込みは、ハイヤー・タクシー、自動車教習所、観光バスなど自交関係事業においても、整理解雇や賃下げ「合理化」、さらには倒産・廃業など不測の事態をもたらしかねない。
 世界的な金融危機は、アメリカが行き着いた「ばくち経済」(カジノ資本主義)そのものの破綻である。市場万能論に立って規制やルールをなくし、米大手金融機関は、ペテンとばくち同様の投機的な取引にのめり込んだ。サブプライム問題では、返す当てのない住宅ローンをもとにした証券を「優良証券」のように偽装して世界中にばら撒き、原油や穀物市場でもマネーゲームを繰り返した。
 「ばくち経済」によってつくられた景気悪化のツケを、労働者・国民にまわすことを許さないために、大企業の社会的責任と政治の責任を果たさせる必要がある。
 独自の闘争課題では、実効ある減車制度の導入及び適正な運賃の確保を重点とする闘いが、大きな山場を迎えている。交通政策審議会(交政審)は08年12月18日、国土交通大臣に対し、「タクシー事業をめぐる諸問題への対策について」と題する答申を行った。答申では、「複数の事業者が共同で減車を進めることについて、供給過剰対策としての要請と競争政策との調和をはかりつつ、その自主的・協調的なとりくみが推進されるスキーム(仕組み)を導入すべき」としている。こうした減車の仕組みに係る道路運送法改正法案等の通常国会提出・審議をめぐっては、その実効性が問われることになるだろう。今後の闘いの行方は、“確かな再生への足掛かりを築く”こととの関わりにおいて重大な意味を持つ。
 09春闘をめぐる情勢は、決して生易しいものではない。だが、同時に“ピンチはチャンス”でもある。“どっしりかまえて、ピンチの裏側に用意されているチャンスを見つけよう”(福岡県飯塚市の詩人・山本良樹さんの作品より)
 自交総連は、この春闘を、『力を合わせ 大幅減車、貧困・生活危機突破 09春闘』と位置付け、全力をあげてとりくむ。

(1) 確実な労働条件の改善、実効ある減車制度の確立を

 ハイヤー・タクシー労働者の賃金は、他産業労働者との比較では 241万円(厚労省調べ、06年)という格差が生じている。これまで、貧困ラインに相当する低賃金層の広がりは地方都市・郡部と仙台・大阪など「タクシー競争激戦区」に集中し、地域別最低賃金や生活保護基準額を下回る異常な低賃金が常態化していたが、営収の低下は全国に広がり、他産業の雇用情勢の悪化からタクシーの労働力が充足することも予想されることから、貧困化が、全国的に一段と深刻化することが懸念される。
 ハイヤーや自教・観光バス労働者も、賃下げや一時金カット等の「合理化」攻撃に加え、倒産・廃業、企業閉鎖に伴う雇用の危機が広がっている。
 自交総連第31回定期大会は、「安心・安全、日本社会の確かな再生めざし、実勢3万人の回復、生活危機突破への運動構築を」を中心スローガンとして確認し、「たたかう自交総連の本領発揮が期待されている中で、職場で労働組合としての存在意義を示し、同時に主戦場である地域を視野に入れての運動との結合をはかりつつ、自交労働者の生活防衛闘争の先頭に立つことが重要である」ことを強調した。
 09春闘では、いっせいに要求を提出し、職場での闘いを基礎に産業別、地域別、全国的な統一闘争の力によって、“雇用の確保を”“すべての労働者に賃上げを”の社会的世論を喚起し、共同を広げ要求実現をめざすことが求められている。  さらに、規制緩和実施後の実態告発、規制緩和の失敗に対する責任追及の闘いと“もうひとつのタクシー 確かな再生へ”をめざす運動の到達点として強調すべきことは、この09春闘の闘いで、変化のチャンスをとらえ、これを逃さずたたかえば、必ず大きな前進的成果をかちとることができることである。
 @増車抑制、減車による適正な台数への接近、A社会的水準の労働条件に近づく上での適正な運賃の確保と労働条件への確実な還元、の2つの視点をもって対峙し、運動の力によって要求前進をはかる必要がある。

(2) 働くルールの確立、企業の社会的責任(CSR)を問う闘い

 自交総連は、これまで、「規制緩和がもたらした安心・安全の破壊や違法駐車、道路交通の阻害・渋滞や排ガス問題など環境への影響は深刻である」と指摘し、「規制緩和失敗の弊害はすべて地域に集中し、地域住民のくらしや安心・安全な社会との矛盾を引き起こしている」と訴え続けてきた。
 こうした中、交政審答申は、「タクシーは、鉄道・バス等とともに、我が国の地域公共交通を形成する重要な公共交通機関である」と位置付け、タクシーのあり方を検討するに当たっては、「利用者に良質のサービスを提供する視点は当然のこと、産業としての健全性、労働者の生活の確保、地域社会への貢献等の視点も含め、すべての関係者にとって望ましい姿を探求する必要がある」と述べている。その上で、現在のタクシー事業をめぐる諸問題のひとつに「違法・不適切な事業運営の横行」を取り上げ、「過度な長時間労働や最低賃金法違反、社会保険・労働保険の未加入、不適切な運行管理や名義貸しによる経営など、コンプライアンスの見地から問題のある事例が生じている」ことを重大視している。
 こうした問題の発生は、タクシーが地域公共交通の分野で担うべき重要な役割を果たしていく上で障害となっているものであり、いままさに、「企業の社会的責任」が大きく問われている。
 「企業の社会的責任」(CSR=コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー)は、法令順守や製品・サービスの安全確保といった当たり前の行動に加えて、環境対策、人権尊重、地域・文化貢献など幅広いとりくみを企業に求めるものである。言い換えれば、「利潤追求だけでなく、企業も社会の一員としてのふさわしい行動を」という考え方であり、その際、企業には労働者や取引先、消費者、投資家、株主、地域社会など幅広い利害関係者への情報公開と誠実な対話が必要とされている。
 公共交通機関であるタクシー及び公共的性格を有する教育機関としての指定教習所の社会的役割は、極めて重い。こうした視点からも、労働組合としてのチェック機能の発揮、利益のためなら不法・不正行為もいとわない企業体質の改善、働く権利の確保、社会貢献、環境保護などにむけてのとりくみ強化をはかる必要がある。09春闘では、事態改善のために、CSR運動と政策闘争とを結合した闘いに全力をあげる。

(3) 生活危機突破、ストップ!悪政、政治の革新

 労働者・国民の不満と怒りは全国的な広がりを見せ、切実な要求にもとづく闘いが繰り広げられている。
 燃油高騰に抗議して全国230隻のサンマ漁船が08年8月18日、いっせい休業に踏み切り、21日には、全道農業危機突破総決起集会が札幌市でひらかれ、5000人以上の農民が燃料・生産費高騰の打開を訴えた。26日には、燃料高騰に苦しむトラック運送業者ら2万人が、政府に緊急対策を求め、経営危機の突破をめざす全国いっせい行動にとりくんだ。9月3日には、大阪タクシー協会と労働5団体共催の大阪タクシー業界危機突破総決起集会・パレードが2900人の参加で行われ、「安心・安全・快適」「車両台数の適正化と同一地域同一運賃制度の確立」をアピールしている。
 09春闘では、労働組合が運動を強めつつ、関係事業者団体に働きかけ、一致する政策課題での共同を強めることが求められる。こうしたとりくみこそが、労働者・国民の闘いで政治を動かし、要求が実現していく可能性を開くことにつながる。
 2代目安倍、3代目福田、4代目麻生となって引き継がれてきた弱肉強食の小泉「構造改革」路線は破綻し、いまや麻生政権と自民党の政治は、完全な行き詰まり状態に陥っている。報道各社が08年12月に実施した世論調査の結果では、麻生内閣支持率は軒並み2割そこそこに急落し、不支持率も6割を超えるなど政権発足2か月で早くも末期状態を呈している。
 日本の景気悪化を深刻にさせている根本には、極端な“外需=輸出だのみ”という日本経済が抱えている脆弱性があり、そのために、アメリカ経済が減速し、世界経済が混乱すると、日本の景気悪化が一気に進むという事態がつくられている。外需だのみから内需主導への日本経済へと切り替えさせていくことが必要である。
 09春闘では、不満・怒りをもっている広範な国民各層とともに手を携えあって協力し合い、世直し春闘として悪政転換、政治革新への大きなうねりをつくりだすことが求められている。

(4) 実勢3万人の回復へ、すべての職場・地域で組織拡大を

 職場組織、地連(本)の力量を質量ともに強化拡大し、確固たる組織的基盤を確立することが必要・不可欠となっている。そのためにも、緊急の重点課題である実勢3万人の回復を必ず、達成していくことが重要である。
 たたかう基盤の強化なしに、状態悪化に歯止めをかけ要求闘争を前進させることはできない。09春闘で、目に見える組織的前進をかちとり、組織の反転攻勢の転機にする必要がある。09春闘をめぐる情勢は、そのことを現実的に可能とする条件をわれわれに与えてくれている。同時に、企業倒産や組合員の高齢化、後継幹部の不在などに起因する労働組合存続の危機にも警戒心を高めておく必要がある。
 すべての地連(本)、職場組織が具体的な拡大目標を持ち、推進体制を確立して組織拡大を追求することが求められている。自交総連は、09春闘の期間を通じてすべてのとりくみとの結合をはかる方向で全力をあげる。

基本的な要求・課題と闘いの力点

(1) みんなに賃上げを、底上げ闘争の強化

@ 賃上げ要求の基本的構え

 すべての業種で生活実態に根ざした賃上げ要求(=だれでも○万円あるいは賃率○%以上)を、すべての組合員の総意によって練り上げることを重視する。また、提案型の視点をもって企業の社会的責任や経営者モラルを問う政策要求の実現を迫るとともに、個別企業のみならず事業全体の将来展望を切り開く方向への経営政策の転換、協力・共同によるとりくみを前進させる。
 タクシーでは、減車による適正な台数と上限運賃の確保を最重点課題とし、実収入増確保への経営責任を追及する。運賃改定に伴う労働条件の改善については、引き続きノースライドプラス重点改善要求の実現を堅持していく。重点改善要求については、1)実質的な労働者負担の軽減や手当て類の創設 2)累進歩合制度の廃止 3)非正規労働者の同一歩率確保等の待遇改善、を重視していく。
 自動車教習所・観光バスでは、経営環境の改善を重視し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみをはかる。

A 底上げ闘争の強化

 自教・観光バス・ハイヤーなど固定給が中心の業種では、職場の全労働者を対象に時間額、日額、月額による企業内最低賃金の締結をはかる。
 タクシーでは下限賃率を一定地域ごとに設定、「○○から賃率○○%以下の労働者をなくそう」との具体的なスローガンを掲げて宣伝・行動し、それ以下の賃率を職場・地域から一掃する底上げ闘争を展開する。また、歩合給中心の賃金制度が採用されている職場では、最低賃金法との関連で、「所定の賃金計算にもとづき実際に支払われる賃金が、最低賃金額を下回る場合は、その差額分を上積みして支払う」との協定を締結する。

B 一職場一重点要求の設定と獲得への徹底追求

 職場ごとに、実感のこもった切実で身近な改善要求を必ず設定し、どうしても譲れない解決条件と位置付け、獲得への徹底追求をはかる。また、とくに青年、女性及び非正規労働者特有の要求を大切にし、みんなの力で改善をはかる。

(2) リストラ「合理化」反対、権利の確保

@ 働く職場の確保と対応

 「倒産・廃業、(悪質企業に)身売りをさせない闘い」を重視し、経営チェックの強化、説明責任の追及など労働組合責任としてのとりくみ強化をはかる。また、一方的な廃業・身売りを防止するために、労働組合との事前協議を前提とする同意約款の締結を求める。
 倒産・廃業への対策を全国的に強化するために、本部専従役員及び常任中執メンバー等によるオルグ団を編成し、迅速かつ適切な対応が行われるようにする。
 労使関係の対等・平等、正常な関係の確立をめざすとりくみ強化をはかる。とくに、経営困難などを理由とする賃下げ「合理化」提案については、安易な妥協や激突主義を戒め、説明責任を追及し、納得のいく明確な説明と根拠、場合によっては関係財務諸表の提示などをもって判断し対応する姿勢を堅持する。

A 悪質企業対策の強化

 もっとも象徴的な悪質企業である第一交通グループの社会的責任を追及するとりくみを重視する。大阪・佐野南海交通労組の“組合つぶしを狙った偽装廃業、組合員全員解雇を許すな”の闘いに、引き続き全国的な支援・協力を行うとともに、争議全面解決にむけた社会的包囲の全国的行動については、関係地連(本)と協議、調整し具体化する。

(3) タクシー運転免許構想との結合、政策要求の実現

@ 交政審ワーキンググループ報告における積極面の活用と実効性の確保

 通常国会における道路運送法改正等の動きに対しては、第31回定期大会で確認した2大要求=「独占禁止法の適用除外措置にもとづく地域的減車の合法化」と「道路運送法と労働者保護及び安全運行規定の一体的機能化(労働保護立法的側面の挿入)」の基本的考え方をふまえ対応する。交政審答申で提起された新たな「スキーム」については、その実効性が確保されるよう検討、提案を行っていく。
 交政審答申に盛り込まれた賃金制度、行政による事前チェックの強化、運賃制度のあり方、運転者の資質の確保等に関わる積極面を活用し、実効性の確保を含めたとりくみ強化をはかる。
 規制改革会議や公正取引委員会など実態を無視して競争政策に固執する勢力の動きは、「規制強化が消費者利益を損なう」などの形でマスコミにも一定の影響を与えており、引き続き世論の喚起、実態の告発を重視していく。
 規制緩和についての国の責任を追及する国家賠償請求訴訟については、世論喚起の場として位置付け、東京地連への支援・協力体制の強化をはかる。

A 増車と運賃値下げ競争への歯止め闘争

 際限のない増車・運賃値下げ競争を可能にしている背景要因への歯止め闘争を関係行政、経営者に対して展開する。
 賃金では最低賃金法違反の一掃と累進歩合制度の廃止、雇用形態では日雇い・アルバイトの禁止(運輸規則第36条)と名義貸しの排除(道運法第33条)を重視し地域的闘争として発展させる。

B 労働者と事業の将来にむけた“提案型”政策闘争の推進

 タクシー関係は、地方自治体に公共交通機関としての位置付けを明確にさせ、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、乗合タクシーの導入、福祉・介護タクシーの活用、タクシーの役割の明確化と「パーク・アンド・ライド」方式の具体的検討を求める。さらに、公共の秩序維持、環境対策など住民の福祉の観点から、地方自治体・地方議会が行政区域内のタクシー事業者に減車を求めるなどの措置を講じるよう要請していく。
 自教関係では、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務の拡大」を重視する。
 観光バス関係では、公正な取引ルールの確立、安全性と雇用の確保のための政策要求を掲げてとりくむ。とくに、旅行会社による不当な低運賃の押し付けの是正や過労運転の防止措置、労働条件改善にむけての環境整備を重視する。

闘いの基本方向と組織の強化拡大

(1) 学習春闘を重視し、「権利要求」の構えで

 「社会的水準の労働条件は保障されるべき」という権利要求の原則的立場を貫く。その上で、それへの接近にむけた経営責任の追及と協力・共同の模索、要求実現を妨げている職場環境の改善(政策要求の実現)の視点を重視する。また、要求面における多数派形成を重視し組織内学習の徹底をはかる他、対話と宣伝の推進をはかる。

(2) みんなで決め、みんなの力を合わせ、みんなで行動を

 みんなで決めた要求提出、回答指定、統一ストライキに責任を持ってとりくむことができるよう、産業別統一闘争の意義徹底を含め中央・地方での指導強化をはかる。とくに統一ストライキについては、足並みを揃え、統一的な力を集中してたたかうことの重要性を徹底する。

(3) 地域を足場に、社会のあり方を変える春闘の前進を

 「労働組合の存在意義」の視点を重視し、生活危機突破をめざす地方(地域)労連一体となった公務・民間共同の春闘推進にむけ全力をあげる。また、地域に共通して存在している総合的な交通体系のしくみや医療・福祉、介護政策のあり方、自治体サービス、住宅や環境保全、住みよい街づくり、地域経済の健全な発展にかかわる要求を持ち寄っての共同を重視し、その実現に努める。

(4) 仲間を増やし、組織の力をつけ、魅力ある自交総連の確立を

 当面する組織拡大の目標は、組織現勢2万人(08年8月末現在)から1万人増を果たし、実勢3万人を回復させることにある。09春闘では、この目標の達成にむけて本部・各地連(本)ともに集中した組織拡大運動にとりくむ。  このとりくみを前進させるため、「組織拡大月間」を3〜5月に設定し、組織内未加盟者への対話と加入呼びかけ、地域単位による宣伝、職場訪問、空白県対策など集中したとりくみを行う。
 各ブロックは、「未組織宣伝還元費」の有効的活用を行い、空白県の組織化及び既存地連(本)の組織拡大にむけたブロック内キャラバン行動をそれぞれ計画する。中央本部としては、東北ブロックを重点対象地域とし、本部専従役員の派遣措置等も含めて対応する。

春闘体制、闘いの流れと統一行動

(1) 全労連・国民春闘共闘委員会の構想

 全労連は、『貧困・生活危機突破の大運動で、変えるぞ大企業中心社会』を09春闘の統一スローガンとし、「生活危機に追い込まれてしまった労働者・国民の連帯と共同で、破綻が明確な大企業中心の経済から、国民生活中心の内需型経済への転換を迫る運動を旺盛に展開し、それを背景に地域・職場からの切実な要求前進を目指す春闘を追求する」としている。
 「闘いの構え」に関わっては、@労働組合の役割が問われる09春闘、A雇用破壊を許さず、貧困・生活危機突破の大運動を地域から追求する09春闘、B「カジノ資本主義」失敗のツケを労働者・国民に押し付けることに反対し、大企業の社会的責任追及のとりくみをいっそう強化する09春闘、C解散・総選挙を迫り政治を変える09春闘、の4つを提起している。
 「重点課題と具体的な運動」では、@生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争の課題と闘い、A雇用破壊に反対し、働くルールの確立を求める闘い、B社会保障の充実を求め、消費税率引き上げ反対など国民共同の闘い、C憲法改悪の策動を跳ね返し、守り生かす闘い、の4つを掲げ09春闘に臨もうとしている。
 全国統一行動の主な計画は、次のとおりである。
○1月7日 新春宣伝行動
○  14日 経団連包囲行動
○  28日 春闘決起集会
○2月13日 貧困・生活危機突破、諸要求実現中央行動
○  下旬〜3月上旬 地域総行動
○3月5日 春闘要求実現・総決起中央行動
○  12日 全国統一行動
○4月中旬 回答引き出し、追い上げの全国統一行動

(2) 中央・地連(本)闘争委員会の設置

 09春闘を推進するために、第31回中央委員会において中央闘争委員会(常任中執メンバーで構成)を設置する。この中央闘争委員会は全国的闘争指導に責任を持ち、中央で実施される産業別統一闘争の先頭に立つ。また、全国的闘争の戦術配置や地連(本)の指導にあたる。
 各地連(本)は、本部の春闘体制に対応するため、必ず闘争委員会を設置し、地方での具体的闘争を計画・指導する。

(3) 中央・地連(本)での春闘準備、宣伝行動の実施

 第31回中央委員会は1月28〜29日、東京・日本青年館でひらき2009年春闘方針を決定する。すべての地連(本)は、春闘情勢に見合った闘争体制を確立するため、2月中に春闘討論集会や学習会をひらき基本的な意思固めを行う。
 決起集会や宣伝行動用の「のぼり旗」(=自交総連)を作成する。また、組織内はもとより未組織労働者や未加盟組合への宣伝、ビラ配布を重視し春闘への参加を呼びかける。統一用のビラは中央本部で作成する。

(4) 闘争計画の具体化と統一行動の配置

@ 規制緩和失敗の責任を問い、必要な規制強化を求める2・1宣伝行動

 規制緩和実施8年目を迎える2月1日を基本に、春闘総決起の呼びかけと規制緩和の失敗を告発し、政府・行政の責任を問うタクシー労働者及び利用者、地域住民への宣伝行動を行う。

A 行政当局・経営者団体へのいっせい申し入れ行動

 2月23〜27日のゾーンで、“多すぎるタクシーを減らせ”“増車・運賃値下げ競争をやめろ”“運賃改定の公約を守れ”など事態改善の緊急要求に関するいっせい申し入れ行動を地方(地域)ごとに実施する。これを受けて、中央では国交省・厚労省・警察庁及び全タク連への申し入れを3月5日に計画する。

B 要求提出とストライキ権の確立

 要求提出は3月3日までとし、集中回答日を3月17日に設定する。ストライキ権については、それぞれの単組(支部)ごとに要求決定の段階で確立する。

C 自交総連中央行動の計画

 自交総連中央行動は、労働条件の確実な改善、増車抑制と減車の実現及び道路運送法改正等に伴う重点要求を掲げ3月5日に配置する。参加規模は、タクシー400台、徒歩参加1000人とし、明治公園での決起集会、自動車パレードと請願、政党申し入れと省庁交渉の実施を検討する。

〈関連文書〉 08年秋から09年春闘
にむけた闘争の到達点と課題

 自交総連は08年10月20〜21日、東京・すみだリバーサイドホールでひらいた第31回定期大会で「安心・安全、日本社会の確かな再生めざし 実勢3万人の回復、生活危機突破への運動構築を」をスローガンとする運動方針を決定した。
 08年秋から09年春闘にむけての闘いでは、@増車抑制と減車闘争を全力でとりくむ、A地域最低賃金以下の解消、労働条件の改善にとりくむ、B組織の強化拡大を、すべての運動と結合させてとりくむ――を重点としてとりくむこととした。

(1) 主な統一行動などのとりくみ

@ 11・13中央行動、11・19省庁交渉の実施

 11月13日、東京・埼玉・神奈川の仲間ら600人が参加して、全労連の統一行動にあわせ中央行動を実施した。
 午前11時、宣伝カーから飯沼委員長が「独禁法の適用除外による協調的減車の必要性」を訴え、今村書記長が情勢報告を行った。菊池書記次長が主に供給過剰の防止・解消を求めた「タクシー規制緩和の見直しを求める請願書」を読上げ、請願を開始。参加者は事前に集めた分を含めて9025筆(追加提出含む)の個人署名を提出した。請願後は日比谷野外音楽堂で「なくせ貧困!守れ雇用!生活危機突破!」のスローガンを掲げた決起集会に参加した。
 19日には、国交省・厚労省・規制改革会議と交渉した。結果は『月報』368、08年11・12月号に掲載したとおりである。

A 地方ごとの行政当局交渉の実施

 08年10月27〜11月7日を全国いっせい申し入れ統一行動ゾーンとしてとりくんだ。東北(9/25)、関東(11/5)、九州(11/4)運輸局をはじめ、宮城、埼玉、千葉、神奈川、石川、京都などで運輸支局交渉が実施され、地方ごとの課題で要請した。
 交渉が実施できなかったブロック、地方については、地方・地域の問題解決に支障となり、自交総連の活動を未組織労働者に知らせる上でも不十分となるので、実施できるよう体制の強化をはかっていく必要がある。

B 国民的課題のとりくみ

 08年9月の福田首相の突然の辞任表明を受けて、にわかに衆議院解散・総選挙の機運が高まり、当初10月中にも選挙が行われることが確実視されるなか、自交総連では9月中に「総選挙闘争方針」を提起し(10月19日の中央執行委員会で承認)、規制緩和・構造改革路線と完全に決別する政治の実現等をめざして、組合員の政党支持の自由を保障しつつ、選挙の意義の徹底、各党の実績を明らかにする判断資料を提供することとした。
 麻生新首相は、就任直後に解散の決断ができないうちに、アメリカ発の金融危機が起こり、解散の機会を失って選挙を先送りしたが、その後の支持率の急落で主体的に解散できない状況に追い込まれている。09年は年初からいつ解散になるか予測がつかない事態になっており、総選挙闘争方針の基本を維持していつでも対応できるようにしておく必要がある。
 金融危機は、世界中を不況に巻き込み、日本でも企業業績が悪化、大銀行の貸し渋り・貸しはがし、大企業の派遣・期間工切りなど無責任な企業行動を加速させ、雇用情勢は急速に悪化している。
 全労連は、カジノ経済破綻のツケを労働者・国民にまわすなというとりくみを強めて、解雇を強行した企業での相次ぐ労働組合結成などで社会的にも注目されている。自交総連の各地連(本)は、地方労連などの提起した行動に積極的に参加してきた。

(2) 主な闘いの成果と教訓、今後の課題

@ 職場要求の獲得状況とその評価

 秋季年末闘争では、要求を出してたたかったところでは、年末年始手当や賃率アップなどの経済要求に加えて、交通事故費負担や乗務員負担の改善、高速帰路会社負担、車載カメラ設置、インフルエンザ予防注射接種、定年延長、有休改善などのさまざまな職場要求を獲得している。
 運賃改定が実施されたところでは、ノースライドの確認をしたうえで、未組織職場にも運賃改定の趣旨などを宣伝した。
 一方で、要求を提出していない組合もかなりあり、特別の闘争態勢をとっていない地方もある。
 秋から年末にかけての闘いでは、労働組合としての基本活動の点検や個別の職場要求獲得など春闘とは異なる部分で要求を前進させることが求められている。要求が提出できなかったところでは、成果をかちとったところにも学び、秋季年末闘争の意義自体をよく論議して再確認していくことが求められる。

A 長期争議組合の解決、闘争の前進と教訓

 埼玉地連ダイヤモンド交通労組は、会社が足切り額を一方的に引き上げてきた問題で08年9月1日にさいたま地裁川越支部で勝利判決をかちとった。
 宮城地連塩竃交通労組は10月22日、組合員への脱退強要などで、仙台高裁で和解をかちとり、会社役員の違法行為が確定した。  いずれも、会社が控訴したり他の事件があり、まだ全面解決には至っていない。
 東京地連の国家賠償訴訟事件は、東京高裁で控訴審がひらかれ、国側は、タクシー運転者の原告適格を否定するために、宮城で組合代表を利害関係人とする通知を出したことは「東北運輸局長の誤り」、労働者保護にかかわる通達を出しているのは一般論で「個別の労働者を保護するためではない」などと苦しい弁明に追い込まれている。一審敗訴にも関わらず、この間の運動でかちとった成果が大きな効果を発揮しているものといえる。

B 政策闘争の前進と今後の課題

1.特別監視地域の改正通達、規制緩和見直しの共同の広がり
 国土交通省は08年7月11日に特別監視地域の運用等を大幅に改正する通達を出し、全国の主な都市部について新規参入や増車の要件を厳しくする措置をとり、規制緩和から規制強化への転換としてマスコミの注目も浴びた。これに対し首相の諮問機関である規制改革会議は7月31日、規制緩和にあくまで固執する立場から国土交通省を強く批判する「見解」を公表した。
 自交総連では、8月11日に規制改革会議への抗議を公表し、その実態無視、労働者蔑視の姿勢を厳しく批判し、規制緩和見直しが他の分野に波及することをおそれる反動勢力の本質を指摘した。秋からの闘いでも、規制緩和に固執する勢力の動向を厳しく批判し、国交省が姿勢を後退させないように監視するとりくみを強めた。
 規制緩和に対する闘いは、社会的な広がりをみせ、9月3日には大阪タクシー協会と自交総連などタクシー労働5団体が共同集会とデモにとりくみ、すべての政党の代表が参加した。
 東京では地連の3労組連絡会議が10月17日、適正実車率実現などを求める集会・デモを開催し、デモでは経営者の激励も受けた。
 全タク連は、安全・安心なタクシーを求める労使共同の署名を提起、自交総連に対しても協力が要請された。自交総連では、協賛団体となり、各地連(本)に協力を指示した。署名は12月10日現在、73万8573筆になり、全タク連では、署名を持参して国交省、全政党への要請行動を08年12月に実施、自交総連はじめ各産別の代表も同行した。
 交政審は12月18日に答申を提出、新規参入・増車抑制策の強化、協調的減車が推進される「スキーム」(仕組み)の導入などを提起した。今後の具体化、関係法案の提出に際して実効性の確保が重要な課題となってくる。
 実際に減車を進める点でも、東京や埼玉では秋闘の中で会社に要求し、まだ台数的には少ないものの自主減車を実現させている。実際に減車が行われたことは、長年にわたる粘り強い運動によるものであり、まだ台数的には少ないものの、減車の流れをつくりだす一定の成果といえる。

2.運賃改定と労働条件改善問題
 運賃改定は、08年春までに全国のほぼ半数の地域で実施され、その後も10月に鹿児島、12月に高知で実施された。
 改定後の労働条件改善状況は6月に長崎などで公表されて以降、各地の公表が続き、10月には遅れていた東京や関東各県の分も公表された。結果は、東京特別区武三地区が平均増収率−0.39%、平均賃金改善率−0.63%となったのをはじめ、営収も賃金も減少した地域が多くみられた。
 値上げにもかかわらず営収が減少しているのは、景気の低迷とあわせて供給過剰が原因であることは明らかで、減車の実現が重要な課題であることが浮き彫りになった。同時に、大阪・京都をはじめ値上げを実施していない地域での営収の落ち込みも激しいことから、値上げをしていなければ、さらにひどい減収になっていたとみることもできる。
 改善状況で公表された「営業収入に占める賃金支給率の変動状況」「労働者負担の軽減等」については、「歩合率の維持」が認可条件であったにもかかわらず、改定前より賃金支給率が低下(スライド賃下げ)していたり、労働者負担軽減をしていない企業が多数存在していることが明らかになった。賃金支給率が低下した企業については「すべて事情を聞く」(11月19日交渉の回答)と国交省が言明していることも活用し、認可条件違反を許さず、少なくとも歩合率の維持、労働者負担の軽減を確実に実施させる必要がある。

3.運転者登録制度の実効ある運用
 運転者登録制度は08年6月から主要都市で新しい制度の運用を開始した。すでに、登録のための講習と効果測定をふまえた修了の認定が行われているが、ほとんどの地域で受講者のほぼ全員が修了するという実績になっている。京都地連では運輸支局交渉で、効果測定の設問レベルなどについて実効性のある厳しい運用を求めているが、登録制度が運転者の資質向上に役立つものとなるためには一定のレベルが必要であり、実績をふまえて問題点を改善するとりくみを強める必要がある。
 同時に、登録制度を悪用して、労働者に対する処分や脅しの材料としたり、労働者の退職を妨害するため登録証の返納を遅らせるなどの不当・違法な行為をする悪質事業者も出てきている。また、乗客の一方的な申告による処分や権利侵害も予想される。事業者の不当行為については、運輸局への申告などで的確に歯止めをかけるとともに、新たに発生した事例も収集した上で、運転者の権利を守る立場から、公平・公正な制度運用を引き続き求めていく。

4.名義貸しへの改善指導の実施
 近畿運輸局は08年11月13日、ワンコイン堺(町野勝康代表)に対して、経理処理が名義貸し行為に当たるとして09年3月末までに改善するよう指示した。国交省が6月に出した名義貸しの判断基準通達にもとづく初の摘発となった。名義貸しと判断したのは、運収が会社の収入に計上されていないことを確認したもので、最高乗務距離違反など自交総連の意見書が指摘した事実も発覚して処分された。
 自交総連の運動と意見書を強く反映した通達と、それによる指導は、違法な名義貸し撲滅への前進といえる。今後、調査中とされる十数社への指導と、期間内に改善がない場合には断固たる処分を求めて運動を強めていく必要がある。

C 組織強化拡大の到達点と評価

 組織拡大では08年9月以降、東京、大阪、奈良(三重)で5組合393人が新たに加盟した。
 新加盟組合は、劣悪な労働条件に苦しむ観光バスの組合(大阪)と共闘関係の発展(東京3組合)、既存組合の関連会社での組織化(奈良)となっている。
 共闘やオブ加盟だった組合が、一緒に活動する中で上部団体・産別組織の必要性を感じて加盟してきた他、権利侵害やリストラ攻撃への対応、劣悪な労働条件改善をめざして加盟している。
 しかし、全国的には純増傾向に転じたとまではいえず、横ばいの状態が続いている。
 不況の深刻化の中で、今後、賃下げや解雇・雇い止め、権利侵害などの攻撃が強まることは確実で、労働者の権利を守る労働組合・産別組織の必要性はいっそう強まってくる。実績に示されているように、地道に働きかけていけば、それが理解されて拡大につながってくる。労働者への働きかけを強めて、実勢3万人をめざしていく必要がある。

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