T 情勢の特徴と運動基調

1.コロナ後のタクシーを見据え、白タク合法化阻止

(1) コロナ危機の打開へ労働組合の真価を発揮

 2020年、世界中に広がった新型コロナウイルス感染症は、日本の社会・経済、自交産業、労働者に甚大な被害、影響を与え、いまだに終息は見通せていない。タクシーでは営業収入が6割から9割も激減、観光バスではほぼすべての仕事がなくなり、自動車教習所は長期間の休校を余儀なくされた。労働者の賃金、雇用、事業の存続が危機にさらされ、その影響は今後、長期にわたってつづくことが予想される。

 コロナ危機からみえてきたものは、弱肉強食の市場原理を優先して、医療や福祉、公共の仕事を切り捨ててきた新自由主義政策の害悪である。タクシー・バスには、それが象徴的に現れている。規制緩和によって、劣悪な労働条件になった自交労働者にさらなる犠牲が押し付けられ、大幅な需要減退に対して必要となる需給調整の機能は失われて混乱が業界を覆っている。

 困難ななかでも、労働者の奮闘もあり、タクシーは地域公共交通機関としての最低限の役割を果たし、住民の移動を担っている。しかし、この危機を克服するためには、新自由主義の失敗を乗り越え、国民の移動する権利を保障する公共交通機関としてのタクシーの役割が改めて検討されなければならない。需給調整、適正な運賃など、規制緩和からの回復が求められている。

 危機に当たっては、労働組合の真価が試される。自交総連は、コロナから労働者のいのちとくらしを守るために、全国各地で奮闘をつづけ、生活確保、雇用維持などの成果もかちとってきた。このことに確信を持ち、コロナ後のタクシーを見据えて、ますます重要となる責務を自覚し、今後のたたかいをすすめていかなければならない。

(2) 白タク合法化阻止、地域公共交通を守るたたかい

 コロナ危機のさなかにもかかわらず、ライドシェア解禁をねらう新自由主義・規制緩和勢力は、ひきつづき白タク合法化を推進しようとしている。竹中平蔵氏は、コロナ問題が深刻化し始めた20年3月、雑誌インタビューで、(コロナの)異常事態を踏まえて遠隔医療やライドシェアなど、「今まで抵抗勢力が邪魔して実現しなかったことをこの際やりましょう」(プレジデント Digital 2020.3.9)と語っている。政府の規制改革推進会議は7月にまとめた答申で、タクシーの利便性向上として、交通事業者協力型自家用有償旅客運送の環境整備、新たな運賃サービス実現、タクシーのデジタル情報の収集・把握などを掲げた。安倍首相は答申を受けて、「デジタル時代の到来を踏まえ、従来型の規制・制度を大きく変革していく」と述べ、コロナの混乱に乗じて、いっそうの規制緩和をすすめていく姿勢をあらわにしている。

 自交総連が反対運動にとりくんだ自家用有償旅客運送の拡大・道路運送法改悪を含む地域公共交通活性化法改正法案は5月27日、国会で成立した。反対は日本共産党とれいわ新選組のみで、「ライドシェアは引き続き導入を認めないこと」などの附帯決議がつけられた。最後まで反対を貫いた自交総連のとりくみは、将来の法律の見直しなどに必ず生きてくるものである。

 今後は、審議の中で明らかになった矛盾点や附帯決議をふまえ、運用面での規制強化を求め、実際に無限定な自家用有償運送を実施させないとりくみが必要となってくる。今国会で同時に改悪された国家戦略特区法(スーパーシティ法)も使って、特区でライドシェア解禁につながる自家用有償旅客運送が行われるおそれもあり、警戒を怠ることはできない。

 道運法改悪阻止闘争の中で、地域公共交通を充実させることの重要性が改めて明らかになった。タクシー・バスがその役割を果たし、資格を持った自交労働者が運転して、安心・安全を確保しなければならない。このことを多くの国民に訴えて、白タク合法化阻止と公共交通を守り充実させるとりくみを一体としてすすめていく。

(3) 求められる役割にふさわしい自交総連の強化拡大を

 コロナ危機があぶり出したものは、弱肉強食の規制緩和をすすめ、自己責任が強調される社会をつくってきた新自由主義のもろさ、害悪である。いま深刻な被害を受けているのは、規制緩和で痛めつけられてきたタクシー・バスの労働者であり、この間、大量に生み出された非正規、派遣などの労働者である。

 危機を乗り越え、コロナ後の社会を見据えた時、新自由主義を克服し、労働者の権利が守られる社会にしていくことが求められる。タクシーにおいては、規制緩和がもたらした惨状から脱却し、適切な需給調整、社会的水準の労働条件を確保していくことが欠かせない。自交総連は、その実現を見据えて、今年度の運動を展開していく。

 安心・安全な公共交通を実現する課題は、国民の移動する権利を確保するたたかいと一体のものであり、すべての労働組合、事業者、利用者・国民と共同してとりくんでいく。国民本位の政治を実現することが必要であることから、全労連や民主団体とともに、社会を変えるとりくみも重視する。

 これらのたたかいをすすめ、共同を広げていくためには、自交総連の主体的な力量の強化が不可欠である。今年こそ組織的後退に歯止めをかけ、組織の強化拡大に踏み出し、多くの労働者とのつながりを広げた運動をすすめていく。

2.社会的水準の労働条件をめざす組合運動の前進

(1) 劣悪な労働条件がコロナ危機でさらに悪化

 2019年のタクシー労働者の全国平均の年収は、前年より4万円増の308万円で、産業計男性労働者の505万円とは197万円の格差がある。地方別にみると、徳島が205万円で最も低く、200万円台が前年の21地方から25地方に増えている。労働時間は年間2324時間で、依然として長時間労働が改善されていない。1時間あたりの賃金では、タクシー労働者は1324円で、産業計男性労働者2355円の56%になり、格差は前年より広がった。平均年齢は前年と同じ61.2歳となり高齢化が定着している(いずれも厚労省「賃金センサス」による)。

 以上は2019年6月の調査をもとにした数値だが、20年3月以降、コロナ危機によって労働条件は激変した。全タク連のサンプル調査によれば、全国平均の営業収入は前年同期比で3月33%減、4月62%減、5月63%減となり、最も落ち込みの激しかった京都では5月86%減となった。賃金もほぼ同率で下がっていることになり、各地で最低賃金割れが続出している。

 タクシーの総営業収入(法人のみ)は、規制緩和前の2000年度に2兆565億円あったものが年々低下し、直近の18年度には1兆4303億円と30%減少している。車両数は規制緩和後のピーク時(07年)からは17%減ったものの、2000年度比では12%の減少にとどまっている。このため、1台当たり営業収入は979万円から777万円へ21%減少している。運転者一人あたりの営業収入は、運転者数が大きく減っているため、18年度524万円と前年度の519万円より多少持ち直したが、2000年度の577万円からは9%減少している。

 このことからわかるのは、規制緩和で崩れた需給バランスは、タクシー特措法(09年)以降の減車と近年の運転者数の減少によって、若干の回復はあるものの、依然として規制緩和前の水準に戻っていないということである。運転者一人当たりの営業収入が524万円ということは、賃率50%とすれば賃金は262万円ということであり、このままでは社会的水準の労働条件は確立し得ない。いっそうの減車による需給バランスの回復を第一に、適切な運賃、需要の増加、補助金など政策的な対応が必要となってくる。

 労働者にまともな賃金を支払うという経営者の雇用責任は厳しく追及しつつ、社会的水準の労働条件を保障できる条件の確立をめざしていく。

 コロナ危機で休業・臨時休車を実施したため一時的に需給バランスが回復したが、休業明けに全車両をもと通り稼働させれば、需要が十分に回復しないなかで、激しい営業収入低下が起こることは目に見えている。数年は続くと予想されるコロナ危機を見据えて、臨時休車車両の一部は復活させずに恒久減車にするなどの対応を、経営者に求めていく。

 自動車教習所では、コロナで営業できない期間が生じたうえ、少子化が進行しつづけていることから、今後も入所者の減少、収入の減少が想定される。コスト削減のために、パート・契約指導員の導入、賃金削減、教習生集めのノルマ強要、権利侵害などの攻撃が激しくなっている。一方で高齢者教習の増加などに対して、指導員不足から長時間労働が押し付けられ、休みが取れないなどの問題も発生している。

 観光バスでは、コロナ危機で壊滅的な打撃を受け、数か月にわたって営業収入がゼロとなり、倒産や廃業も相次いでいる。規制緩和による過当競争で、危機に耐えられない脆弱な企業体質となってしまったことも要因である。緊急対策としての企業救済策、雇用の維持が求められるとともに、規制緩和の根本的な見直しと、労働者の健康を守るための労働条件改善、自動車運転者の改善基準告示・交替運転者の配置基準の改正、法制化が必要である。

(2) 労働組合の役割発揮――団結して要求実現のたたかいを

 労働組合は、組合員のいのちとくらしを守り、労働条件を向上させるために、団結してたたかう組織である。その原点が、コロナ危機の中で鮮明になっている。

 自交総連は、新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻化するのと同時に、国交省・厚労省へ申し入れ、国会議員要請でもコロナ対策の強化を求め、迅速に情報を発信してきた。各地連・地本では、タクシー協会、自治体などへの申し入れを行い、雇用調整助成金や臨時休車など政府の特例措置を利用して計画休業を行い、雇用を守り、休業手当を支給、需給調整を行うことを求め、実行させた。各単組・支部では、団体交渉で計画休業の合意、最低賃金の保障、足切り減額、特別手当などをかちとり、組合員に生活福祉資金貸付制度などの情報を伝えて、生活を守るために奮闘した。

 危機に乗じて、労働者を解雇しようとする経営者とは断固としてたたかい、東京・ロイヤルリムジングループの事業休止、600人への退職強要事件では、同グループ内の自交総連東京地連目黒自交労組が、会社のウソを暴き、退職強要の撤回、事業再開をかちとった。東北地連ハイタク一般労組センバ流通支部では、不当解雇を撤回させるため地位確認の仮処分申請をしてたたかっている。

 労働者を守るための、これらの活動と成果は、たたかう労働組合に団結していたからこそ、かち得たものである。労働組合のない職場では、休業もしない、最低賃金も保障しないなど、何の手当もなく危機の犠牲が労働者に押し付けられているところもある。ロイヤルリムジンの退職強要では、多くの労働者が退職合意書に署名させられて職場を去っている。労働組合があるのとないのとでは、まったく様相が異なっている。

 危機的状況のなかで労働者の意識は変化し、労働組合への関心が高まっている。2020年に入ってから、福岡・JRバス労組、東京・丸井自動車労組、福岡・昭和市丸交通分会、庄内観光タクシー分会、中央タクシー分会、古賀・宗像自動車学校分会、秋田あさひ交通労組、東京・日本リース労組(ハイヤー)と8組合が結成され自交総連に加盟した。いずれも、コロナ危機への会社の対応が不十分であることに怒りをもち、あるいは経営危機の深刻化などを理由に、労働組合をつくって会社と交渉したい、権利を守りたいとして自交総連に結集してきたものである。

 未組織労働者は、たたかうすべを持たず、情報を求めている。いまこそ、労働者には団結してたたかえる権利があることを伝えて、自交総連への結集を呼びかけ、組織化の前進をかちとらなければならない。コロナ感染の予防のための配慮と工夫をしたうえで、多くの労働者に宣伝と対話を行い、働きかけていくことが求められている。

 同時に、既存の組織でも労働組合の役割を組合員に伝えて、組合員を減らさず、新しい幹部・後継者を育てる組織強化に力を入れなければならない。

 自交総連の組織強化拡大は、自交産業においては、企業が公共交通機関、交通安全教育機関として、労働者・利用者を大切にし、利益追求のみでなく、社会的な貢献もするという「企業の社会的な責任(CSR)」を果たすことをつよく促すことにつながる。

 また、全労連、地方・地域労連の仲間と協力して、社会を変えていくことにもなる。労働者の要求は、個別の経営者、個別の産業に対するとりくみだけでは解決できないことが多く、政治のしくみを変えなければ実現できない。共同して強大な資本家勢力とたたかい、労働者の要求が実現する社会をめざしていくことが必要である。

3.コロナ後の安全で公平な社会めざし、国政の民主的転換

 自交総連が掲げている政策要求の実現は、政治を変え、社会を変えない限り最終的には実現できない。私たちが望む、社会的水準の賃金の獲得や白タク合法化の阻止は、労働者を安く使おうとする資本家の意向に従う政治家、アメリカや多国籍企業のウーバーなどITプラットフォームに迎合する政治家が権力を握っている限り、実現困難な壁にぶつかってしまう。

 そのことがとくに明らかになったのがコロナ危機である。この危機による健康への不安や生活の困難は、1980年代からすすめられてきた新自由主義政策、規制緩和によってもたらされた。医療や福祉、社会保障は切り捨て、国民に自己責任を押し付け、「小さな政府」にするのがいいことだと宣伝し、市場原理にもとづく弱肉強食の競争こそ経済発展のために必要だとして規制緩和をすすめてきた結果、医療・福祉体制は脆弱になり、公務・民間職場とも非正規や派遣という無権利で低賃金の労働者が増やされてきた。タクシー・バスの労働者も規制緩和で労働条件を破壊されてきた。

 その弱っているところにコロナ危機が襲いかかり、痛めつけられてきた人々が最も重大な被害を受けている。

 コロナ危機に有効な政策を打ち出せなかった安倍政権は、持続化給付金の中抜きやGo Toトラベルの手数料などで、コロナ対策費の上前をはねるような特定企業優遇策をすすめ、規制緩和の害悪に目を向けずに、危機に乗じてライドシェアをも含んだ産業のIT化、デジタル化をすすめようとした。

 国民の怒りは高まり、検察庁法改正を強行しようとしたところツイッターデモが起こり、多くの国民の声に押されて同法案は廃案とせざるを得なくなった。国民一人ひとりへの10万円給付も、当初は拒否していたものが、国民と野党の声に押されて実現し、雇用調整助成金の改善などもせざるを得なくなった。

 内閣支持率が大きく低下するなか、安倍首相は8月28日、持病の悪化を理由に退陣を表明、8年近くに及んだ安倍政権が終了した。

 このことは、国民が声を上げれば、政治が動き、変えられるということを明らかにしている。自交総連は、コロナ危機を克服する安全で公平な社会、労働者の要求が阻まれない社会をめざして、自公政権による悪政の継承を許さず、国政の民主的転換のために、広範な国民と団結して奮闘していく。

U 主な運動課題と対応する基本方針

1.4つの要求課題と運動の基本方向

(1) 社会的水準の労働条件確立への接近、権利の確保

@ 賃上げと底上げ闘争の強化

1) コロナ危機への対応

 〇 計画休業については、事態の終息が見通せないなかで、引き続き実施するように求め、改善された雇用調整助成金(100%助成、上限1人1日1万5000円)を活用して、4月にさかのぼっての増額も含め、最大限の休業手当の支給率を求めていく。特例期限の12月31日は、終息するまで延長するよう政府に要求する。

 〇 雇調金を活用せず、休業手当が支払われない事業所については、新設された「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を活用して労働者個人に支援金を給付させる。その際、事業者の指示による休業であることを事業者に証明させ、申請に協力させる。

 〇 休業しないところや一部休業中の稼働日、時間短縮勤務中の労働時間については、最低賃金の支払いを厳守させ、法令遵守、労働者の生活維持に必要な賃金の支払いに責任を持つよう求める。

2) 社会的水準の労働条件確立の要求は、当然の要求として掲げる。一定の時期に闘争を集中させて賃上げをめざす春闘と通年闘争としての政策闘争を結合して、そこへの接近をめざす。

 ○ 劣悪な労働条件が若年労働者、良質な労働力の確保を困難にしていることを社会的に問題にして、減車・上限運賃確保と合わせて、地域の経営者共同の責任で最低労働条件の確保などの底上げ、経営環境整備を求めていく。

 ○ 自動車教習所では、賃金「合理化」を阻止し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみ強化をはかる。

 ○ 観光バスでは、過当競争のもとでの旅行会社からの低運賃(手数料割戻)の押し付けなどを是正させる経営環境の改善を重視してとりくむ。

3) タクシー特措法改正時の国会附帯決議、国交・厚労両省の通達にもとづき累進歩合制度廃止の確実な履行を求める。最低賃金法違反の一掃、地域全体での賃金底上げをはかる。また、オール歩合給賃金を改善し、少なくとも最低賃金を固定給で保障する賃金制度確立を重視してとりくむ。

 これらは、コロナ危機で大幅に営業収入が低下していることから、とくに重視して、賃金の確保を図っていく。

4) 20年2月に実施されたタクシー運賃改定は、コロナ危機のために現状では増収となっていないが、需要の回復もみながら、ノースライドを堅持し、運転者負担の撤廃など労働条件改善につながるようにする。改定されていないところでは、今後の情勢をみて、適時適切な運賃改定が実施されるよう求めていく。

5) 年次有給休暇の確実な付与と、取得によって賃金が下がる不利益取扱いの是正をはかる。時間外・深夜割増賃金の不払いや歩合給から控除する偽装を許さず、法定の支払い義務の確実な履行を求める。国会附帯決議で指摘されている運転者負担制度の廃止、交通事故弁済金、罰科金等をなくしていく。

6) 地域内でよりよい労働条件をかちとっている職場を目標にした到達闘争を全国的に展開し、地方(地域)で労働条件の格差是正をはかる底上げにとりくむ。「職場・地域から時給〇〇円未満をなくそう」「賃率〇〇%未満をなくそう」の課題を重視した運動を推進する。地域別最低賃金の大幅な引上げとともに全国一律最低賃金制度の確立にとりくむ。

A リストラ「合理化」反対、権利の確保

1) コロナ危機による倒産や廃業・身売りがすでに発生しており、警戒心をつよめ、情報を収集して、対策を講じる。雇用調整助成金や持続化給付金など政府の制度を活用し、経営者に申請させ、最悪の事態に至らないようにする。経営責任を放棄して犠牲をすべて労働者に押し付け、解雇や退職強要、「合理化」を強行しようとする経営者とは、地域ぐるみで地連・地本が一体となってたたかう。

2) 労働者・労働組合の権利尊重、賃金・労働時間、雇用規制など働くルールの確立と企業の社会的責任(CSR)を問う運動の推進をはかる。

 〇 新型コロナウイルスから労働者を守るため、感染予防策の徹底をはかり、会社の責任でマスクの着用などを利用者にも周知させる。

 ○ タクシー、バスでは違法な日雇い・アルバイトの禁止(運輸規則第36条)、雇用の正常化にむけた地域的運動にとりくむ。

 ○ 違法な名義貸しや「業務委託契約」等については、地連・地本ごとに情報収集や調査を行い、運輸・労働局交渉等を通じて根絶をはかる。

 ○ 整理解雇の4要件(@企業の維持・存続にとっての差し迫った必要性、A解雇回避についての努力がつくされたこと、B人選の仕方が客観的・合理的で公正であること、C労働者側への説明と納得を得る努力)にもとづき、解雇権濫用を禁止するルールの確立をはかる。

 ○ 60歳以上の雇用については、定年延長・同一労働同一賃金を基本に、改正高年齢者雇用安定法の趣旨(65歳までの希望者全員雇用)にそって、継続雇用拒否や労働条件の低下等が起こらないようにする。65歳を超えたものの雇用継続についても不当な差別的扱いを許さない。法律に基づいて有期雇用の無期転換権を行使するなど更新への不安をなくす。

 雇用確保とともに、高齢者を「安上がりな労働力」として使おうとする経営者の姿勢を許さず、65歳以上の者については、脳ドックや認知症検査など厳格な心身の検査を会社負担で毎年行うことを義務付けさせる。

 ○ 勤務中の労働者の生命・人権を守る面から、警察庁の「タクシーの防犯新基準」を遵守させ、訓練、防犯板、車内カメラなどの防犯対策の充実をはかる。その際、映像・音声の使用については、労働者・乗客のプライバシー侵害にならないようにし、労務管理に悪用させない。

 乗客からの暴力・暴言などハラスメントを防ぐため運送約款改定などの対策をすすめる。

 女性労働者をはじめ誰もが働きやすい職場とするため、施設・環境の改善をすすめ、セクハラ・パワハラを防止する対策にとりくむ。

 ○ 新たに「安上がりな労働力」として外国人労働者を活用する動きに反対し、一切の差別のない同一労働同一賃金の堅持を求める。

3) 改善基準告示は現在、改正審議が行われているが、改正を待つことなく、猶予されている自動車運転者の時間外労働規制を一般労働者と同じ規制(年720時間)が適用されるよう求める。現行の改善基準告示、同内容の国交省告示(タクシー、バス)、国交省・交替運転者配置基準(バス)については、最低限の基準として厳守させる。

 36協定の届出にあたっては、労働者代表選出における民主的手続きの厳守、協定書の協定事項に裏づけされた運行予定表(勤務ダイヤ表)の提出を義務づけ、未提出のものは受理しない措置を講じるなど事前のチェック機能を厳格にさせる。

 有給休暇5日義務付けに際し、労働者の望む時季に取得できるようにし、有休を取ることによって賃金・一時金が下がることのないよう、有休手当の計算方法を改善させる。

4) 運輸・労働行政の監督指導責任を明確にさせ、道路運送法や運輸規則、労働基準法等を無視し、労働者・労働組合の権利を認めない悪質経営者への厳しい措置や厳格な処分を迫る。

5) 労働基本権や労働基準法など基礎知識の学習を日常的に重視し、職場・地域での権利総点検活動を展開する。

6) 職場で起こっている賃金不払いや権利制限、差別・支配介入など不当労働行為の一掃を重視する。その際、司法機関や労働委員会を適切に活用するが、裁判(労働委員会)一辺倒の闘争におちいることなく、職場でのたたかいを基礎に、地連・地本全体での闘争態勢の確立、地方労連などの支援体制と社会的包囲との結合を重視して解決していく。

(2) 白タク合法化阻止、規制の強化、将来像を見据えた政策要求の実現

1) コロナ危機で休業し、臨時休車措置で休車させている車両を、需要が十分に回復していないまま早期に復活させれば、深刻な供給過剰状態が生じる。長期にわたる需要減退も予想されるので、現状の需要に見合った稼働台数となるよう、適切な需給調整、減車措置をとくに求めていく。

2) 白タク合法化、新たな規制緩和を阻止する。

 ○ 白タク合法化の阻止は、最重点課題として、タクシー関係のすべての労働組合、ナショナルセンター、他産業労組、事業者、自治体、利用者・国民との共同を追求してとりくむ。

 ライドシェアの危険性を社会的に周知させ、国内外のライドシェア事業者、大口出資者、提携事業者、規制緩和勢力の動向を注視し、白タク合法化につながるあらゆる動きを阻止する。国交省には、ライドシェアを認めない現在の立場の堅持を求めていく。

 ○ 成立した自家用有償旅客運送の拡大・道路運送の改悪を含む地域公共交通活性化法改正については、附帯決議で「ライドシェアは引き続き導入を認めないこと」と明記された点や、審議の中で、安心・安全を第一にするなどの答弁を引き出していることを踏まえ、運用面での規制強化を求め、無限定な自家用有償運送が実施されないようにとりくむ。

 〇 住民の移動する権利を守り、地方自治体が危険な輸送方法に頼らなくてもすむように、地域公共交通にはタクシーを活用することを求めていく。交通過疎地での乗合タクシー・デマンドタクシーなどの充実を求め、障がい者や高齢者のタクシー利用への補助金を求め、そのための国の財政措置の大幅な増額を要求していく。

 ○ 改正国家戦略特区法(スーパーシティ法)は、特区に指定した地域内で、MaaS(マース=モビリティ・アズ・ア・サービス)など交通関係も含めてあらゆるサービスをデジタル化、IT化するスーパーシティをつくろうとするもので、そこでのライドシェアの解禁や実証実験の開始も視野に入っている。これを利用したライドシェア導入の動き警戒し、世論の喚起、地方自治体、地域住民への働きかけをつよめる。

 ○ 生産性向上特措法による「規制のサンドボックス制度」を利用したライドシェアの実証実験を阻止し、JIS認証やグレーゾーン解消制度を使ってライドシェア・白タクに国のお墨付きを与えることを許さない。すでに営業しているジャスタビやnotteco(のってこ)、CREW(クルー)、営業を計画しているnommoc(ノモック)などの白タク行為については、道路運送法の枠外におかれて監督する省庁もないという実態を告発し、明らかにさせたが、国交省は必要な対応をしておらず、さらに危険性を追及して、禁止させる。

 ○ 外国人訪日客などを相手にした白タクの根絶をめざし、運輸・警察当局が連携して摘発、取り締まりを強化することを求めていく。

 ○ 東京や福岡で開始されたUber(ウーバー)アプリでのタクシー配車など、海外ライドシェア企業との提携がすすみ、国内でのグループ再編、囲い込みの動きがつよまっている。新たに生じてくる手数料負担の運転者への転嫁を許さず、ライドシェア導入の足掛かりとされて海外資本にのみこまれるおそれには警鐘を鳴らし、海外ライドシェア企業との安易な提携には反対する。

 ○ ライドシェアへの対抗策、利用者利便向上のためとして、スマホ配車アプリの活用やクレジットカード決済などの創意工夫をタクシー事業者が行うことは当然のことだが、その際、新たな運転者負担や賃金に悪影響を及ぼすことは許されない。デジタル化を名目にした規制緩和、運転者・利用者の個人情報の集積、活用には慎重に臨む。

 全タク連は、ライドシェア対策としてのタクシー事業の活性化11+9項目を提起している。

 白タク合法化、新たな規制緩和を阻止する。

1. 初乗り距離短縮運賃

2. 相乗り運賃(タクシーシェア)

3. 事前確定運賃

4. ダイナミックプライシング(繁忙・閑散時の運賃値上げ・割引)

5. 定期運賃(乗り放題)タクシー

6. 相互レイティング(乗務員と乗客相互の評価システム)

7. ユニバーサルデザイン(UD)タクシー

8. タクシー全面広告

9. 第二種免許緩和(取得年齢21→19歳、経験3→1年)

10. 訪日外国人等の富裕層の需要に対応するためのサービス

11. 乗合タクシー(交通不便地域対策・高齢者対応・観光型等)

(追加9項目)

1. MaaSへの積極的参画

2. 自動運転技術の拡張方策の検討

3. キャッシュレス決済の導入促進

4. 子育てを応援するタクシーの普及

5. UDタクシー・福祉タクシーの配車体制の構築

6. 「運転者職場環境良好度認証」制度の普及促進

7. 労働力確保対策の推進

8. 大規模災害時における緊急輸送に関する地方自治体との協定等の締結の推進

9. タクシー産業の国内外へのアピールの推進

 これらの施策のうち、運賃に関するものは運転者の賃金低下につながりかねない。第二種免許の緩和は安全性、運転者の質の低下となる。ダイナミックプライシングは利用者を差別し公共性を損なう危険がある。本来、ライドシェアに対抗するタクシーの最大の利点は、安全性・良質なサービスであり、それを損ない、運転者の労働条件を悪化させる施策には反対していく。

 ○ 過疎地で導入が可能となった「貨客混載」は、旅客の安全性破壊や運転者の労働強化になるなど問題がある。今後、地域が拡大していく可能性や、旅客と貨物運送の垣根をなくす規制緩和が拡大し、配送シェアと一体になったライドシェアの導入に利用される懸念もある。安心・安全が担保されない規制緩和には反対し、厳格な運用を求めていく。

3) 2015年12月に策定した政策提言「安心・安全、持続可能な公共交通を担うタクシーをめざして」にもとづき、@安心・安全、利便性確保、それを担保する運転者の労働条件確保、Aタクシー運転免許の実現にむけて――という提言の内容の学習、普及に努め、その実現をめざしていく。

4) 自動運転技術は、今後の労働条件や雇用に重大な影響を与えるものであり、調査・研究を深めていく。

 国交省が2019年6月に策定した自動運転(レベル4)の実現に向けたバス・タクシー事業者のためのガイドラインは、「運転者が車内にいる場合と同等の安全性を確保する」という実際には実現不可能な状況を想定して無人自動運転を容認する内容となっており、乗客の安全を無視し、国民的な合意も得ずに自動運転を推進するものである。このガイドラインの実施に反対し、安全を軽視した実証実験が行われないようにする。

 技術の進歩は安全性向上や労働の負担軽減に役立つように活用されるべきであり、どんなに自動化がすすんでも安全確保や乗客への対応・サービスのための運転者の役割が失われることはないとの観点から、営業車の完全自動運転・無人化には反対する。自動化のもとでは、運転者には、より高度で良質な旅客対応が求められることになり、タクシー運転免許制度の実現をめざすとりくみと一致させて対応していく。

5) 2014年1月に施行された改正タクシー特定地域特措法は、目的である運転者の労働条件の改善、減車、運賃適正化などについて実効性がないことが明らかになる一方、コロナ危機で需給調整の必要性はいっそう増している。調整を個々の企業に任せていたのでは、できないことは明白であり、地域協議会などがスピーディーに調整できる機能を持てるように法の再改正・整備を行い、実効ある施策を緊急に実施することを求めていく。同時に、現行法の限界を乗り越えるタクシーの将来像としてタクシー運転免許構想の真価と必要性を社会的にアピールし、政府・行政、国会にはタクシー運転免許法制化について検討するよう求めていく。

 適正化(減車)計画の実施など、現行法でできることについては確実な履行を求める。地域指定基準の適正化を求め、準特定地域の指定解除には反対する。

 地域協議会には、労働者の代表として積極的に参加して意見を表明し、政策を提起していく。将来的には、政策提言にある「利用者・住民、事業者、労働者、行政が参加する地域協議会をタクシー委員会(仮称)に発展させ、需給調整、運転者の数、運賃、交通計画などを決めて実行できる機関とさせる」ことをめざす。

6) 二種免許の受験資格緩和については、若年者は事故が多く危険だとして反対してきたが、2020年の道路交通法改正で、特別な教習を修了した者は年齢19歳以上、普通免許取得後1年以上で取得できるように緩和された。特別な教習の厳格な運用と、免許取得後の指導・監督の強化を求め、安全が担保できない若年者の安易な取得がなされないよう求めていく。

 2015年から実施されている全国での運転者登録制度については、運転者の資質向上の実効性が確保される制度運用を求め、試験制度(効果測定)の難度を上げ、安心・安全、良質な運転者の確保という目的にかなうものとして年齢の上限規制を含む措置を求めていく。

 登録制度にかかる費用が事業者を通じて運転者に転嫁されないようにする。運転者の登録取消処分などについては、公正、教育・指導、公開の原則を尊重するほか、背後責任の追及を明確化するよう求める。

 現行の登録制度は、企業に雇用されていないと登録できず、運転者証の管理なども事業者主体のしくみとなっている。この点について、将来的には労働者が自分で運転者証を管理できる制度とするようにタクシー業務適正化特措法の改正を求めていく。

7) 2019年末から厚労省労働政策審議会で自動車運転者の労働時間等の改善基準告示改正の審議が始まっている。実効ある労働時間の短縮、とりわけ休息期間(インターバル規制)11時間などを重視した改正と法制化を求めて、適時意見を出していく。現行の改善基準告示、同内容の国交省告示(タクシー、バス)については、最低限の基準として厳守させるとともに、国交省・交替運転者配置基準(バス)の改正を求めていく。

8) 2020年2月実施の各地の運賃改定では、初乗り距離短縮運賃となっている地域が多く、短距離客の多い地域では営業収入減になる。運転者の賃金減少につながる運賃制度には反対し、実情の把握と見直しを求める。

 公定幅運賃の下限引き下げには反対し、幅運賃内での上限張り付きを求める。適正な運転者人件費をまかなうに足る運賃設定を追求し、各種割引や割増返上などの運賃・料金引き下げに反対する。

 今後、運賃改定が行われる地方では、@運転者人件費査定方法の適正化、A配車アプリ、クレジット手数料等の原価への反映、B適切な需給調整・減車――を求め、実際に増収となり、運転者の労働条件改善に資する改定となるように求めていく。

9) 過疎地や交通空白地域の住民、障がい者・高齢者・病人など移動制約者の交通権の保障を追求し、持続性・安定性が担保された公共交通の確立を求めていく。自家用有償旅客運送の拡大に反対し、タクシーを公共交通機関として積極的に活用し、国と自治体の助成額の大幅な引上げを要求する。これらの運動は、交運共闘や国公労連・自治労連など公務産別とも協力して進める。

 乗合タクシーや送迎バスの委託にあたり、地方自治体が安易な競争入札によって労働条件を無視した安値で落札させていることは、安全と利便を阻害するものであり、運転者人件費などを保障した適正価格で持続的に受注できる契約方式の採用を求めていく。全労連・地方労連とともに公契約条例の制定を追求する。

10) 地方自治体にタクシーを公共交通機関として位置づけさせ、タクシー問題を担当する部局の設置を求める。また、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、過疎地・交通空白地域における乗合タクシーの活用、福祉・介護政策とタクシーの役割などについて政策提言し、実施を求めていく。

11) 運転代行については、タクシー類似行為等の違反行為の排除及び事業の適正な運営、安全の確保等における改善措置を講じるよう求める。

12) 地球温暖化防止運動については、「タクシー減車による地球温暖化防止への貢献」(08年5月発表、自交総連作成)を活用し、実際の減車闘争に役立てるなど交通政策からの接近をはかる。

13) 自教関係では、「自教労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(03年4月決定)にもとづき、とりくみ推進をはかる。とりわけ、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務範囲の拡大」を重視していく。

14) 観光バス関係では、「観光バス労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(13年9月決定)にもとづき、公示運賃違反、脱法的な手数料負担の是正、日雇い・アルバイト運転者の一掃、低運賃や無理な運行を押しつける旅行会社の規制、改善基準・交替運転者配置基準の改正、過労防止措置など労働条件改善にむけた環境整備を重視していく。

15) 一致する政策課題については、経営者・経営団体、消費者・市民団体などとの広範な協力・共同を追求する。

 労働組合の社会貢献の観点を重視し、地域住民との接点を追求し、住みやすい街づくり、住民の交通権の確保、交通安全教育、事故の根絶などにタクシー、バス、自動車教習所を活用することを積極的に提起していく。

16) 消費税引き下げや年金制度改善、社会保障充実など全労働者に共通する課題については、全労連・国民春闘共闘に結集して運動の前進をはかる。

 各種政府委員の獲得を追求していく。とくに、中央・地方で労働者委員、最賃委員候補者を立て、共同のとりくみとして運動強化をはかる。

 最賃1500円以上、全国一律最賃制の確立をめざし、雇用によらない働き方、残業代ゼロなど労働法制の改悪を阻止し、労働者保護法制については抜本的な法改正による実効性の確保を求めていく。

(3) コロナ危機打開、憲法改悪阻止、国民本位の政治の実現

 コロナ危機が深刻化するなか、安倍政権は、初動に立ち遅れて感染拡大阻止に有効な手を打てず、突然の小中学校全校休校、アベノマスクの配布など、思いつきの政策で迷走を重ねた。

 有効な対策を求める国民の怒りの声が高まり、野党も要求するなかで、政府は、当初は拒否していた国民全員への10万円給付、雇用調整助成金の拡充、個人で申請できる休業支援金などを実施せざるを得なくなった。憲法改悪への固執やコロナ対策費の税金中抜き疑惑、検察庁法の改悪をねらった手法などで安倍内閣への不信が増大し、支持率が大きく低下するなか、安倍首相は8月28日に退陣を表明した。

 コロナ危機が悪政の本質をあぶり出し、政治を変える機会を生み出している。

 いま必要なのは、コロナ危機対策の充実であり、不要不急の憲法改悪ではない。消費税減税で国民生活を守り、医療・福祉の切り捨てをやめ、規制緩和は見直すことである。莫大な費用をつぎ込んでも完成できるかもわからない辺野古新基地建設は止め、その費用はコロナ対策に充てるべきである。最低賃金を引き上げ、8時間働けば普通にくらせる社会にしなければならない。

 弱肉強食、自己責任の新自由主義から決別し、アメリカや財界・大企業本位の政治から、国民本位の政治へ転換することが、いまこそつよく求められている。

 安倍政権の悪政を継承する自公政権では政治は変わらない。新政権の下で、今秋にも衆議院の解散総選挙が行われる可能性があるなか、自交総連は、市民と野党の共闘をさらにすすめ、コロナから国民を守り、平和と民主主義を守る共通政策の実現をめざし、労働組合として団結した力を発揮して、政治を変えるたたかいの一翼を担っていく。

(4) 自交総連、全労連の組織強化拡大

1) 2019年1月に決定した「組織強化拡大新2か年計画」で、1割の実増をめざすとした目標は達成できていない。19年度末の組織現勢は若干の減少となっている。

 とりくみのなかで組織の実増を達成した地連もあり、コロナ危機のなかで新加盟組合も相次いでいる。組織拡大は、決して不可能な課題ではない。このことを確認して、21年1月の中央委員会まで期間を延長してひきつづきとりくむ。

 〇 減少に歯止めをかけ増勢に転じることをめざし、実現したところでは1割の実増を追求する。

 ○ 全組合員が組織拡大の意義を理解し、実践にとりくめるように、繰り返し学習を行い、一人ひとりがもっているつながり、力を生かしたとりくみを行う。

 〇 単組・支部は毎年の自然減を補い実増を達成する具体的な計画を立て、労働者にとって魅力ある組合をめざして組織の強化にとりくむとともに、組合の民主的運営の確立をはかる。

 ○ 全労連の組織拡大新4か年計画と連動し、可能なところでは地方労連と協力して最重点計画に登録し、集中的にとりくむ。

 ○ 各地連・地本は、新規加入組合獲得のため宣伝・行動計画を立てる。「地域タクシー労働組合」(個人加盟方式)がないところは設置し、定時制・嘱託など非正規雇用や個人タクシー、自教・観光バス労働者の組織化を運動方針に明確に位置づけ、必要な対策を講じる。

 ○ 空白県の組織化については、ブロックごとに重点を決めて共同の宣伝等のとりくみをつよめる。

 ○ 10〜12月、3〜5月を組織拡大月間として、集中してとりくむ。

 ○ 組織拡大に活用できるビラ等は本部で版下を作成し、機関紙や各地連・地本の独自宣伝物と組み合わせて活用する。

 ○ 各地連・地本は組織点検を行い、機関会議欠席組合や組織機能を失っている少数派組合への対策を重視し、産別結集が弱まらないように注意をはらい、オルグ強化を含む必要な手立てをとっていく。本部としては、体制・機能の確立がなされていない地連・地本への個別オルグ、援助と指導を重点的に行う。

2) 組織拡大の集中的とりくみとして、空白地域も含めた宣伝行動、キャラバン行動などについて、財政状況も勘案しながら、検討していく。

3) 組織拡大を担い、魅力ある組合をつくる中心となる幹部・活動家の育成を重視し、学習会の設定など計画的なとりくみで組織強化をはかる。

4) 一致する要求にもとづき他労組との共同の拡大をはかる。白タク合法化阻止や減車、地域の最低労働条件の確立などの課題では上部団体の違いを超えた地方(地域)内共同の実現を追求する。リストラ「合理化」、廃業・身売り問題対策等での職場内共同を推進する。

5) 全労連が2020年7月の大会で決定した「組織拡大強化新4か年計画」(2020〜23年度)を踏まえ、自らの組織を拡大し、地方労連の強化、多数の地域労連確立にとりくむ。

 交運共闘の組織・運動面にわたる機能強化、地方交運共闘の確立について積極的な役割をはたす。

2.当面する運動の基本的展開

(1) 2020年秋季年末闘争の具体化

 秋から春闘にむけた闘いは、産別要求・政策課題と国民的課題とを結合し、重点を絞って春闘の前段闘争と位置づけ、「2020年秋季年末闘争方針」を第4回中央執行委員会(9月9日)で決定しとりくむ。

(2) 2021年春闘の準備

1) 全労連の『はたらくみんなの要求アンケート』を基本とし、全組合員と広範な未組織・未加盟の労働者を対象とする独自アンケートを作成して、労働者の要求、組合員の意識を把握していく。

2) 春闘方針は、11月中に執行部原案をつくり、12月の中央執行委員会で討議し、1月下旬には中央委員会をひらき決定する。春闘方針の職場討議は、1月初旬から執行部(案)にもとづいて行えるように準備する。

3.通年闘争の諸課題とそのとりくみ

(1) 通年闘争のとりくみ

1) 全労連や民主的諸団体がとりあげる国民的諸課題について積極的に対応していくこととし、原水協、全国革新懇、非核の政府を求める会、安保廃棄中央実行委員会、国民救援会などとの共同を発展させる。

2) 機関紙については、「自交労働者新聞」は月1回の発行とする。メール配信の「自交労働者情報」電子版の内容を充実させ、配信読者の拡大をはかる。

 ホームページの充実をはかるほか、インターネット、SNSの活用などの研究をすすめ、地方でも新しいメディアに対応した情報発信を検討する。

 教宣学校は、ブロック毎に計画を立て、各地方で機関紙やビラが独自に発行できるように奮闘する。

3) 不当弾圧や解雇、争議権の制限に対するとりくみ強化をはかる。弁護士交流会は、コロナ対策も含めて開催方法を検討したうえで開催する。

4) 在職死亡(過労死や職業病、自殺)の増加など健康破壊が深刻になっていることを重視し、自交労働者が健康でいきいきと働ける職場環境を確立させるためのとりくみ強化をはかる。

 ○ 労働者の安全と健康を確保するため、職場内に安全衛生法にもとづく安全衛生委員会を設置し、安全衛生の確立と機能の充実をはかる。

 ○ 事業者負担による成人病検診を義務づけ、検査項目にはマーカー検査(ガン検査)を入れるようにする。定期健康診断の受診率を高め、有所見者の再診を義務づけさせる。

 〇 単組・支部は毎年の自然減を補い実増を達成する具体的な計画を立て、労働者にとって魅力ある組合をめざして組織の強化にとりくむとともに、組合の民主的運営の確立をはかる。

 ○ 長時間労働による過労死など労働災害をなくすための総合的な事前対策を重視する。不幸にも被災労働者が発生した場合には積極的に労災認定闘争を行う。

5) 道交法闘争を発展させるため、各地連・地本に道交法対策部(委員会)を設置するなど、引き続きとりくみ強化をはかる。

6) 国際連帯活動については、国際労働運動の紹介に努め、条件に応じて国際交流を検討する。

(2) 共済活動のとりくみ

 共済活動が、構成員からの委任にもとづく構成員の相互扶助による福祉の向上を目的としていることをふまえ、自交共済及び自交共済年金への加入促進をはかり、低利用や未取組の単組・支部への働きかけを意識したとりくみを行う。また、福祉活動の一環としてこくみん共済coop(全労済)及び全労連共済の各種制度普及に努める。

 なお、こくみん共済coopの共済契約等に関わる事務手続きは、組合員からの委任にもとづいて自交総連が代行する。この事務手続きに際して生じる費用相当額は、共済契約者に代わってこくみん共済coopからの団体事務手数料として支払われる。

 また、共済契約に関する事務手続きを円滑に進めるため、こくみん共済coopより必要最小限の範囲において個人情報の提供を受ける。

(3) 政党との関係

 労働組合と政党との関係は、以下の4原則をふまえ対応する。

 第1=政府・財界の反労働者・反国民的政策に反対してたたかうとともに、自交労働者の生活と権利、平和と民主主義を守ってたたかう政党と協力・共同の関係を保っていく。

 第2=前項の立場に立って、組合員の政治意識を高める活動を行う。

 第3=組合員の政党支持・政治活動の自由を保障していく。また資本や警察からの妨害・弾圧には、労働組合の立場から政治活動の自由を保障する見地でたたかう。

 第4=政党別選挙に際しては、特定政党・特定候補の支持は行わない。ただし、労働組合の要求実現とのかかわりで政策協定を結んだ革新・民主勢力共同の候補については、労働組合として積極的に支持していく。

V 産業別組織体制の確立・強化にむけて

1.執行体制と顧問の委嘱

(1) 機関会議開催の計画と本部専従体制

@ 機関会議開催の計画

 中央執行委員会の開催は、大会及び中央委員会時を含め年5回とする。幹部・活動家育成に役立つ経験交流や学習、個別問題での相談などを重視した運営にしていく。常任中央執行委員会(中央闘争委員会を兼務)は年4回開催し、必要に応じて専門討議を行う。中央委員会は1月に開催し、2021年春闘方針を決定する。

 会議は、コロナ対策としてzoomを利用したリモート開催及び署名開催も検討する。

A 本部専従体制

 本部の専従役員は1名(書記長)、書記は2名とする。

B 地連・地本の再編、産別指導体制、ブロック協議会の機能強化

 広域地連の発足は、当該する地連・地本の自主的な討議と合意に基づくもので、全国一律の措置とはしない。

 産別指導体制強化のため、ブロック協議会の機能強化と運営改善をはかり、本部と連携の上でブロック内各地方の指導と援助に当たる。

 バス部会は、東北・東京・大阪・高知・福岡地連のバス組合員の参加・協力のもとで、共通する宣伝物・資料の作成、国交省・厚労省交渉等の企画を立てる。

(2) 顧問の委嘱

 顧問弁護団は、東京法律事務所、馬車道法律事務所、代々木総合法律事務所、江東総合法律事務所の4事務所とし、引き続いて協力を要請する。また、公認会計監査については協働・公認会計士共同事務所に委嘱する。

(3) 役員体制・機構検討委員会での検討

 産別機能の維持・強化、将来的な役員体制などについて、「役員体制・機構検討委員会」(常執メンバー)を継続して検討を行う。

2.財政の確立と2020年度予算(案)

(1) 2020年度予算(案)の編成にあたって

 適正な予算・財政の確立をめざし、以下の観点で予算編成を行う。

 @収支率100%を基本にした予算編成が困難な財政事情であるため、繰越剰余金の残高と取り崩し限度額とを勘案のうえ、宣伝カー積立金の一部取り崩しを含め、収支差を最小限に押さえる資金収支計画を立てる、A予測される損失の縮小をはかるため、支出面でのいっそうの費用削減と事務の効率化に努める、B会費は現行の月580円とし、本部への登録率は実組合員数の80%以上、会計年度途中の変更は認めないことを原則とする、C50%未満の地連・地本は3〜4年の実施計画を策定し登録増への改善をはかる。

 臨時徴収金は、現行の600円とし、長期争議組合支援、未組織宣伝対策費等に配分する。

(2) 各地連・地本の財政基盤の確立

 労働組合の日常活動の基本は、「組織」「教育宣伝」そして「財政」の3つであるが、軽視されがちなのが財政活動である。財政活動は、組合を運営し、日常的な活動を支えるうえで欠かせないものである。改めて財政活動の重要性を認識し、すべての地連・地本は財政的基盤の点検と計画的改善をはかる。また不団結や組織力の低下を招くことになる不明瞭な財政支出や「使い込み」などをチェックする機能を確立する。

 会計報告は定期的に行い「公開の原則」を貫くなど会計面における民主主義の徹底をはかる。各地連・地本は、学習会の機会などを活用し、組合会計の基礎的知識を関係者が身につけるよう努める。

W 主な運動の到達点と今後の課題

1.2020年春闘の結果とその評価

(1) 第42回中央委員会で決定した統一要求と課題

 自交総連は1月28、29日、東京・全労連会館で第42回中央委員会をひらき、『道路運送法改悪阻止、地域公共交通の充実、賃上げ、職場権利の確立 20春闘』をスローガンとする春闘方針を決定した。

 「基本的な要求・課題とたたかいの力点」では、@みんなに賃上げを、底上げ闘争の強化 A職場権利の確保、リストラ「合理化」阻止 B自家用有償運送拡大・道運法改悪阻止、政策要求実現――を確認。「たたかいの基本方向と組織の強化拡大」では、@学習春闘を重視し、全員参加で要求を練り上げる Aみんなで決め、みんなの力を合わせ、みんなで行動を B地域に結集し、政治を変える春闘の前進を C仲間を増やし、組織の力をつけ、魅力ある自交総連の確立を――を重視し、春闘の具体的な展開をはかることにした。

(2) 春闘の具体的な展開と対応方針

@ 中央闘争委員会等で決定・確認した対応方針

 2020年春闘では、自家用有償運送拡大・道運法改悪阻止のたたかいが急を要するため、例年より早く19年12月18日の第1回中央執行委員会で中央闘争委員会を設置し、「2020年春闘と道運法改悪阻止闘争の当面する対策」を決定、3月4日の第3回中央執行委員会で「2020年春闘 今後のたたかい方」を決定した。その後、新型コロナウイルス感染拡大のため、中央闘争委員会は中止・延期し、闘争委員の意見を事前に聞いたうえで、4月9日に「2020年春闘 今後のたたかい方(2)」、5月14日に「2020年春闘 コロナ危機突破にむけた対策」を出した(それぞれ全文はホームページに掲載)。

 このなかで、各地連・地本は、コロナ問題での対策を先行しつつ、春闘課題については、職場要求等の重点要求の実現をめざし、以下の3つの解決基準をふまえ決着をはかっていくこととした。

 《3つの解決基準》

 第1=コロナ対策と賃上げ、一職場一重点要求の実現

 第2=道運法改悪阻止や地域的政策要求実現にむけた共同の確認

 第3=納得のいく内容での集約(全体的合意)と労働協約締結

A 統一行動及び省庁交渉のとりくみ結果

1) 中央行動等

 2月1日(1月31〜2月3日のゾーン) 春闘スタート、白タク合法化阻止、規制強化 いっせい宣伝行動
 2月13日 国会内決起集会・議員要請行動
 3月5日 自交総連中央行動 議員要請行動、国交省・厚労省交渉

2) 省庁交渉等

 3月5日 国交省交渉(城委員長他13人)
      厚労省交渉(城委員長他13人)
 3月6日 全タク連要請(文書で申し入れ)

3) 議員懇談、国会質問等

 2月4日 地域公共交通法案(道運法改悪)問題打合せ
      高橋千鶴子衆院議員(共)秘書、武田良介参院議員(共)秘書
   21日 地域公共交通法案(道運法改悪)国交省レクチャー
      武田良介参院議員、高橋千鶴子衆院議員秘書
 3月10日 参議院国土交通委員会質問 武田良介参院議員
      コロナのバス・タクシーへの影響、労働者の救済
   24日 衆議院本会議質問 高橋千鶴子衆院議員
      地域公共交通法案(道運法改悪)問題
 4月2日 参議院内閣委員会質問 田村智子参院議員(共)
      二種免許の年齢・経験年数引き下げ
   10日 衆議院国土交通委員会質問 高橋千鶴子議員
      衆議院厚生労働委員会質問 宮本徹議員(共)
      ロイヤルリムジンの退職強要問題
   14日 衆議院国土交通委員会質問 高橋千鶴子議員
      地域公共交通法案(道運法改悪)問題、同日採決、可決
   20日 雇調金の休業手当で厚労省レクチャー
      倉林明子参院議員(共)
   26日 雇調金上限引き上げなどで懇談 山添拓参院議員(共)
   27日 参議院本会議質問 山添拓参院議員
      雇調金の上限引き上げ
 5月14日 参議院国土交通委員会質問 武田良介参院議員
      コロナのバス・タクシーへの影響、センバ流通解雇問題
   20日 参議院本会議質問 武田良介参院議員
      地域公共交通法案(道運法改悪)問題
   21日 地域公共交通法案(道運法改悪)問題打合せ
      武田良介参院議員
   26日 参議院国土交通委員会質問 武田良介参院議員
      地域公共交通法案(道運法改悪)問題、同日採決、可決
 6月30日 雇調金の拡充策で厚労省レクチャー 高橋千鶴子衆院議員秘書

B 悪政ストップ、国民的共同のとりくみ

 4月15日 最賃・ディーセントワークデー 新宿駅
      高橋千鶴子衆院議員(共)秘書、武田良介参院議員(共)秘書
 5月1日 第91回中央メーデー(インターネット中継)
   3日 5・3憲法集会(インターネット中継)
   27日 国民大運動実行委員会国会行動 議員会館前
 6月15日 最賃・ディーセントワークデー 渋谷駅

(3) 春闘の結果とその評価

【総括の視点】

 総括では、コロナ危機への対応を含めて、@要求は前進したか(要求獲得)、A団結力は強まったか(産業別統一闘争への結集、労働者の意識の高まり)、B組織は拡大したか(拡大、組織強化)という3点について評価をする。

 今後の闘争に活かすための成果と弱点を明らかにし、成果に確信をもち、弱点を克服する対策を立てていく必要がある。

@ 要求獲得とその特徴点

 コロナ危機への対応として、計画休業にとりくみ、4月以降、半分程度の労働者を交代で休業させるところが多くなっている。休業手当は平均賃金の60〜100%を獲得、全体の相場をつくった。雇調金の上限引き上げ後、再交渉を行い引き上げたところもある。一部で休業を行わない会社があるが、最低賃金を保障させている。

 春闘課題では、賃上げ(コロナ前決着)を獲得したところもあるが、おおむね現行賃金体系維持を基本に、特別給付金支給、足切り引き下げ、カード手数料引き下げ、中退金アップ、福利厚生費、車両機器・施設改善、脳ドック補助などを獲得、政策要求での合意を得たところもある。

A 要求提出と統一行動への結集

 要求の提出状況は、ハイヤー・タクシー=48.6%(前年60.0%)、自教=28.6%(同33.3%)、バス・トラック他=23.5%(同37.5%)、全体では45.9%(同57.5%)となった(6/22現在)。

 コロナ危機への対応を含め、ほとんどの組合が休業の労使協定などで団体交渉を行っているが、一部に組合員がごく少数で提出が困難なところもある。コロナ危機での労働者の救済、春闘時の要求提出は、労働組合の基本的な活動であり、組合員からつよく求められたものである。それが困難になっているところについては、地連・地本で個々の実情を把握して、指導をつよめていく必要がある。

 要求討議の基礎となる春闘アンケートは、16地方4410枚の回収で、前年より3地方1276枚減っている。全組合員からの回収をめざすようにしなければならない。

 統一行動については、コロナ感染拡大のため、3・5中央行動の国会前行動を中止、以降の統一行動は設定できなかった。

B 政策闘争の到達点とその評価

1) コロナ危機の中で労働者を守るとりくみ

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、春闘方針決定時には想定していなかったものであるが、感染の防止、労働者の賃金・生活保障の要求を国交省・厚労省、全タク連に出し、地方でも自治体、タクシー協会への要請、交渉をすすめた。国会議員への要請、情報提供もくりかえし、休業補償、雇用確保、労働者へ直接届く生活保障措置などの国会質問、省庁レクチャーで活用できる答弁を引き出した。

 その結果、休業手当の算出方法について、平均賃金の60%から100%への引き上げ、平均賃金算出期間を直近3か月から年末も含めた業績好調な期間を含めた3か月を基準にすることなど、休業手当の相場を高くする役割を果たした。国民の声、野党の追及によって、雇調金の助成率100%へのアップ、上限1人1日1万5000円への引き上げ、労働者個人に給付する休業支援金の新設などが実現した。多くの会社で実施された計画休業は、需要急減に対応する需給調整の役割を果たし、1台当たりの営業収入を一程度回復させる効果も発揮した。

 東京・ロイヤルリムジンでの退職強要では会社の退職強要方式を否定する事務連絡やQ&Aを出させて、雇用維持に役立たせた。

 地連・地本が地方自治体にコロナ対策を要請して、地域公共交通を担うタクシーの役割を評価し、特別の協力金・補助金等を出させているところもある。

 緊急のとりくみであったが、労働者のくらしを守り、労働組合の重要性を再認識させる、意義あるたたかいを展開している。

2) 白タク合法化阻止闘争

 自家用有償旅客運送の拡大・道路運送法改悪阻止のたたかいは、春闘での最重点課題として昨年末からとりくみ、世論の喚起、議員要請、大衆行動などを計画した。しかし、コロナ危機によって、3月以降の中央行動、大規模な大衆行動ができなくなり、法案審議直前の議員要請もできなくなる困難な状況下のたたかいとなった。

 世論を喚起するうえで、宣伝行動は、2月1日(1月31〜2月3日のゾーン)に全国でとりくんだが、3月以降は外での宣伝はほとんどできなくなった。他団体、自治体への要請、申し入れなどで法案の危険性を訴えた。2月13日の国会内決起集会には「障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会」の市橋博会長が参加して、障がい者の移動する権利を守るうえでもライドシェアは危険と訴えるなど、公共交通としてのタクシーの重要性については、理解がすすんできているといえる。

 署名は3万筆の目標に対して2万161筆(7/15現在)を集約して、高橋千鶴子衆院議員、武田良介参院議員を通じて衆参議長に提出した。他単産、障がい者団体、民主団体などかつてない広範な組織の協力が得られたが、組織内での集約が弱い地方もあった。

 議員要請は、各党の国土交通委員を中心に、一度の要請にとどまった。日本共産党以外の野党議員には、“国交省がライドシェアとは違うといっているから大丈夫だろう”という楽観論が根強く、法案の危険性を認識させるまでには至らなかった。このため、国会論戦でも、議論は十分深まったとはいえず、衆参各1日の委員会審議で、日本共産党が提出した自家用有償旅客運送拡大を外す修正案が否決され、法案が可決された。

 審議の中では、地域公共交通に対する国の予算措置が不十分であること、二種免許のないものが自家用車に人を乗せる行為の危険性、矛盾点が明らかになった。自家用有償旅客運送がライドシェアにつながるのではないかとの質問に、大臣、国交省参考人は、再三にわたって安全性が第一で、それを守って行うとの答弁を繰り返した。ライドシェア導入を認めないこととする附帯決議が付いた。

 法案の成立は許したが、最後まで反対を貫いて世論に訴え、日本共産党の協力で国会論戦を展開した自交総連の姿勢は、今後の法律の見直しにもつながるものといえる。審議の中で明らかになった点を活かし、附帯決議も利用して、自治体が自家用有償旅客運送を安易に拡大しないよう歯止めをかけ、公共交通の充実をはかり、ライドシェアにつながらないようにすることが重要である。

3) 二種免許取得の年齢・経験年数引き下げ

 二種免許取得の年齢・経験年数引き下げが道路交通法改正案として国会に提出された。自交総連は従来から二種免許の規制緩和に反対し、日本共産党にも法案審議での協力を要請した。

 日本共産党の議員は若年者の事故率の高さなどを指摘したが、法案が、あおり運転の厳罰化や高齢運転者の免許更新の規制などと一括して提案されたため、世論の関心はそちらに集中し、十分な審議がされないまま、可決・成立した。

 安全性を担保する、特別な教習や免許取得後の講習・点検などの実効性強化を監視して、二種免許取得者の粗製乱造を防いでいく必要がある。

4) 運賃改定への対応

 2月1日に全国48地域で運賃改定が実施された。当初は順調な増収の報告もあったが、コロナの蔓延で運賃改定の効果は検証できていない。ノースライドを確保したうえで、コロナによる営業収入減が収まった段階で、増収と運転者の労働条件の改善という運賃改定の目的が適切に行われたかどうかを確認し、今後の運賃改定にもつなげていく必要がある。

5) 改善基準改正の動き

 自動車運転者の改善基準改正の審議が2019年末から開始された。自交総連の代表を労働者側委員に選任するように求めてきたが、厚労省は要求を無視する不公正な選任を行った。しかし、抗議に対して、厚労省の担当者が自交総連に出向いて、審議のたびに内容を説明させて意見を聴取させている。

 審議で結論がまとまるのは2021年12月以降となるので、こうした対応をつづけさせて、適時に意見を述べて、総拘束時間の短縮、休息期間の11時間の確保など、実効ある労働時間短縮の審議がされるように求めていく。

2.組織強化拡大の到達点とその評価

(1) 目標達成にむけた組織強化拡大運動のとりくみ

 2019年1月の第41回中央委員会で策定した組織強化拡大新2か年計画にもとづき、各地連・地本で自主的な目標を決め、対話と宣伝などの諸行動にとりくんできた。

 ブロックごとの空白地域での未組織宣伝行動は、コロナ危機のために実施できなかったが、大幅な賃金の低下、雇用不安という危機に際して、労働組合の重要性が再認識され、組合をつくって会社と交渉して危機を打開したいという切実な要求にもとづく組合結成、新加盟が相次いでいる。

 とくに今年5組合が結成された福岡では、前年にとりくんだ全労連の組織拡大最重点計画のなかで、宣伝を繰り返し、相談に対応する体制が確立されたことで、未組織労働者からの相談が相次ぎ、組合結成につながっている。

(2) 組織強化拡大運動の到達点と教訓

 春闘期間中の新規加盟組合は、秋田・東京・福岡で8組合90人になっている。それぞれ加盟後に組織拡大をして奮闘している。個人加盟組合への加入、既存組織での拡大もある。

 新加盟した組合の多くは、コロナ危機で休業計画を会社が立てているが、労働者の要求が反映されず、会社が勝手に決めている状態に置かれ、休業手当などを適切に決めるためには、労働組合をつくって会社と団体交渉を行う必要があるということで、相談に来て、組合結成に至っている。

 労働者の高齢化もあるが、その高齢者が不利な条件で扱われているなど、高齢化を乗り越えて団結をつよめ、組合結集につなげている。

 こうした労働者の意識、要求を的確にとらえて、相談に乗り、受け入れ態勢をつくっているところで成果が生まれている。

 この教訓を生かして、全国で労働者の不安が高まり、労働組合を求める意識が高まっている状況に対応して、相談活動、個人加盟組織への受け入れ、組合づくりの援助をつよめていけば、組織拡大の条件が大きく広がることは明らかである。

 一方で、経済状況悪化、タクシーの疲弊から、仕事を離れてしまう人が都市部では増加している。たたかえば、休業手当増額や最低賃金確保など実利になり、展望が開けることを、多くの労働者に知らせていくことが必要である。

 全体としての8月末現在の組合員の実勢は若干の減少となっており、継続的な宣伝で労働組合の必要性広げて、組織化の種をまきつづけるとともに、今後の運動を担う幹部・活動家の育成も急務である。

3.通年闘争とその他の諸活動

(1) 権利闘争の現状と特徴点

 残業代と同額を歩合給から差し引いて、いくら残業しても支給総額は変わらないというタクシー労働者の賃金の違法性が争われていた国際自動車の裁判で3月30日、最高裁は3つの裁判について判決を出し、この賃金支払い方法は、労基法37条の趣旨に沿うものとはいい難く、割増賃金が支払われたことにはならないという労働者側勝利の逆転判決を言い渡した。

 歩合給に残業代を含めて支払わないやり方を合法とした高裁判決が否定されたもので、審理が行われている自交総連の組合の裁判にも大きな影響を与え、割増賃金の適正な支払いを求めるたたかいに役立つ重要な判決である。

 東京・ロイヤルリムジンの退職強要は、当該の目黒自交労組が団結し、退職強要を跳ね返し、事業の再開をかちとった。

 東北・センバ流通分会は、不当解雇に対して、地位保全の仮処分申請をしてたたかっている。

(2) 主な関係団体の動きと役員人事

@ 全労連第30回定期大会

 全労連は7月29〜30日、全労連会館と各産別・地方の代議員をリモートで結んで第30回定期大会をひらき、2020年度運動方針(2年間)と次の役員を決めた。

 議  長 小畑 雅子(全  教)
 副 議 長 荻原  淳(東京労連)
   〃   川村 好伸(国公労連)
   〃   菅  義人(大阪労連)
   〃   清岡 弘一(生協労連)
   〃   前田 博史(自治労連)
   〃   三木 陵一(JMITU)
   〃   森田しのぶ(医 労 連)
   〃   柳 恵美子(生協労連)
 事務局長 黒澤 幸一(医 労 連)
事務局次長 秋山 正臣(国公労連)
   〃   布施 恵輔(全 労 連)
   〃   渡辺 正道(全 労 連)
 幹  事 菊池 和彦(自交総連) (以下略)

A 交運共闘第31回総会

 交運共闘(交通運輸労働組合共闘会議)は2月22日、第31回総会をひらき、2020年度運動方針と次の役員を決めた。

 議  長 城 政利(自交総連)
 副 議 長 相木 伸之(建 交 労)
   〃   瀬戸  修(検数労連)
   〃   民本 義光(海貨労協)
   〃   安藤 高弘(国交労組)
 事務局長 田中 達也(国交労組)
事務局次長 光部 泰宏(検数労連)
 幹  事 菊池 和彦(自交総連)(以下略)

B 交運研第30回総会

 交運研(交通運輸政策研究会)は6月28日、第30回総会をひらき2020年度運動方針と次の役員を決めた。

 会  長 桜井  徹(国士舘大学)
 副 会 長 安藤  陽(文京学院大学)
   〃   西村  弘(関西大学)
   〃   佐々木隆一(国  労)
   〃   城 政利(自交総連)
 事務局長 後藤 智春(国交労組)
事務局次長 安附  徹(国交労組)
 幹  事 菊池 和彦(自交総連) (以下略)

(3) 第42回弁護士交流会の開催

 第42回弁護士交流会が1月27〜28日、東京・全労連会館で開催され、11地方から弁護士23人と城委員長が参加、中執が傍聴した。

 交流会では、本部弁護団・田辺幸雄弁護士が『自家用有償旅客運送拡大の問題点』と題し、自家用有償旅客運送の意義や概要を解説、道運法「改正」の方向性や自交総連の態度などについて基調報告を行った。

 特別報告では、@国際自動車・割増賃金を歩合給から差し引く未払い賃金請求事件の経過=東京・中村優介弁護士、Aハイタクユニオン(東交通)・65歳定年で再雇用拒否された不当解雇事件=北海道・亀田成春弁護士、B飛鳥草加・八潮労組組合結成を契機にした不当解雇事件=埼玉・石野正英委員長――の3つの報告があり、活発な意見が交わされ、その他の参加弁護士から、仙台・みちのく観光バスガイドの不当解雇事件、三重・東海交通労組分会の休憩時の時間外労働賃金請求事件も報告された。

(4) 自交共済第39回総会の開催

 自交共済は9月10日、第39回総会を書面開催でひらき、第37期活動及び決算報告を承認するとともに、第38期(2020年度)の活動計画をきめた。

以  上




自 交 総 連