T 情勢の特徴と運動基調

1.コロナ危機に立ちむかい、白タク合法化阻止、ダイナミック・プライシング反対

(1) コロナ危機の打開へ労働組合の真価を発揮

 2020年から世界中に爆発的に広がった新型コロナウイルス感染症は、次々と新型変異株が現れ、各国でワクチン接種がすすんできているが、感染者数は再拡大し、収束はみえていない。日本の社会・経済も非常に大きな影響を受け、自交産業は事業存続の危機にさらされ、自交労働者は賃金・労働条件、雇用が深刻な被害を受けている。

 タクシー・ハイヤーでは営業収入の激減にともなって労働者の賃金も激減、観光バスでも旅客がほとんどゼロになり、倒産や廃業、身売りが広がっている。自動車教習所も休校が繰り返された。

 このなかで自交総連は、労働者のいのちと暮らしを守るという労働組合の原点に立って、危機を突破するために奮闘してきた。計画休業・休業手当の獲得や最低賃金の確保、雇用を守るたたかい、国や地方自治体にコロナ対策を求める政策闘争は、ひきつづく困難のなかでも多くの労働者を励まし、期待に応える役割を果たしている。

 労働組合がなければ、賃金は低下するにまかせて、最低賃金さえ保障されない。解雇や退職強要も会社の意のままにされてしまう。これとたたかうためには、労働者の団結の力、労働組合による団体交渉が不可欠となる。現場の労働者が声をあげ、国民とともに要求しなければ、コロナ対策の制度・政策を実施する政治を動かせない。

困難な状況からはまだ抜け出ていないが、この間の労働組合のたたかいに確信をもって、コロナ危機に立ちむかい、タクシー・バス、自交産業の将来を見据えて、今後のたたかいをすすめていく。

(2) ダイナミック・プライシング反対、白タク合法化阻止

 コロナ危機は、自己責任・市場原理を優先して、医療や福祉を弱体化し、公共交通を切り捨ててきた新自由主義政策、規制緩和の害悪をあぶりだした。タクシー・バスは規制緩和によって企業の体力がそがれ、労働者の労働条件が劣悪化したところに危機が襲い、混乱がいっそう拡大している。

 規制緩和の失敗を反省しなければならない時にもかかわらず、新自由主義勢力は、新たな規制緩和であるタクシー運賃へのダイナミック・プライシング(変動運賃制度)の導入をたくらみ、規制改革推進会議の答申、政府の規制改革推進計画に書き込ませた。ダイナミック・プライシングは需要に応じて運賃を変動させるもので、外国のライドシェアで行われているしくみである。利用者から要望されているわけでもないのに、菅政権の掲げる規制改革の一環としてタクシーに導入しようとしている。ライドシェアでは荒天時に運賃が4〜5倍にも跳ね上がるので苦情が絶えない。そんなものを日本のタクシーに導入することは許されない。

 しかも、配車アプリの普及・誘導と合わせて推進されれば、ライドシェア=白タク合法化への道がひらかれかねない。労働者のたたかいによって、ライドシェア導入は阻止してきているが、自家用有償旅客運送の拡大、ダイナミック・プライシングの導入など様々な規制緩和策を導入して、なし崩し的にライドシェアへつなげようとする動きには、警戒を怠ることはできない。

 白タク合法化阻止の旗をいっそう高く掲げ、ダイナミック・プライシングの導入に反対するたたかいをすすめていく。

(3) バス・タクシーの公共性を重視し、地域公共交通を守る

 コロナ危機により公共交通機関は大打撃を受けている。とりわけ地方では交通空白地が拡大し、ローカル線・バス・タクシーいずれも独立採算では経営が維持できない状態におちいり、公共交通の持続可能性が失われ、崩壊の危機に瀕している。新自由主義政策により、交通機関の公共性を無視し、「自助」「共助」ばかりを強調して「公助」をしてこなかった日本の交通政策の欠陥が鋭く立ち現れているといえる。

 バス・タクシーは地域住民の足として、自由に移動する権利を守る重要な役割を果たしており、これが崩壊すれば、地域に住みつづけることができなくなり、地域社会そのものが持続できない。

 地域公共交通を守るためには、国が適切な財政出動をして、「公助」によって地域住民の移動する権利を守らなければならない。そのための新たな税制や国民的合意についての研究・検討もすすめつつ、交通困難になっている地域住民、障がい者、高齢者など、安心・安全なバス・タクシーを切実に求めている人びと、利用者・国民と力を合わせて、公共交通の再生・充実にとりくんでいくことが必要である。

2.社会的水準の労働条件をめざす組合運動の前進

(1) 劣悪な労働条件がコロナ危機でさらに悪化

図1

 2020年のタクシー労働者の全国平均の年収は、コロナ危機の影響を受けて前年より38万円減って270万円となった。産業計男性労働者の494万円との格差は224万円に広がった。地方別にみると、奈良・青森が200万円を下回り、200万円台が34地方となった(19年の200万円台以下は25地方)。この調査は2020年6月の賃金をもとにした数値で、コロナ危機の影響を受け、一部には休業手当も含まれていると考えられる。年間労働時間は前年の2324時間から2102時間に減っている。

 規制緩和以降、長年にわたって供給過剰状態がつづき、運賃改定もほとんどないなかで、総営収(法人タクシーのみ)は2000年の2兆0565億円が19年度には1兆3655億円にまで34%も減った。規制緩和を見直させて減車をさせ、運転者数も減っているために、1台当たりの営収は23%減、1人当たりでは10%減となっているが、依然として20年前の水準を回復できていない。こうした体力が弱った状態にあるところにコロナ危機が襲った。

図2

 コロナ危機による営収・賃金の減少は深刻で、今年1月から4月までの営収は19年同月比約4割減で推移している。19年の平均年収308万円を基準にすると年収185万円に落ち込む水準であり、最低賃金法違反も続出している。休業手当を加えてなんとか生活しているが、すでに1年以上もこうした状況がつづき、限界に近づいている。

 このため、タクシー労働者の離職が急速に進行している。東京特別区武三地区の法人タクシー運転者は、19年度末から20年度末までの1年間で、前1年間の3.3倍の4469人、8%も減少した。21年4月以降も減少は止まっていない。各地方も同様か、それ以上の比率で労働者が減少している状態である。

図3

 多数の離職者が出ている状態は、「生活できない」「もはや限界」ということを示しており、緊急のコロナ対策で生活保障をかちとるとともに、コロナ後のタクシー事業の存続をかけて、労働条件の抜本的改善をはからなければ、事業の将来が失われてしまう。

 自動車教習所では、コロナ危機で一時休業したうえ、少子化が加速し、今後も入所者の減少、収入の減少が想定される。コスト削減のために、パート・契約指導員の導入、賃金削減、権利侵害などの攻撃が激しくなっている。

 一方で高齢者教習の増加などに対して、指導員不足から長時間労働が押しつけられ、休みが取れないなどの問題も発生している。

 観光バスでは、コロナ危機で壊滅的な打撃を受け、営収がほとんどゼロとなり、倒産や廃業も相次いでいる。規制緩和による過当競争で、タクシー以上にぜい弱な企業体質となってしまい、危機に耐えられない状態になっていたことも要因である。観光産業の緊急の企業救済策、雇用の維持が求められるとともに、規制緩和の根本的な見直しも急務である。

(2) 労働組合の役割発揮――団結して要求実現のたたかいを

 自交労働者は、賃金も、雇用も、いま深刻な危機のなかにある。こうしたときこそ、労働組合の役割を発揮しなければならない。

 賃金の激減という深刻な生活難は、労働者一人では解決できない。労働組合に入り、会社と団体交渉をして要求をかちとらなければ改善されない。全国の労働組合に結集した仲間が国民と力を合わせて政治を変え、制度を整えなければ解決しない。

 こうした労働組合の役割・機能=「組合員のいのちとくらしを守り、労働条件を向上させるために、団結してたたかう組織であること」を再確認して、今こそ団結をつよめて危機突破のためにたたかうことが必要である。

 自交総連は、コロナ危機のさなかに、労働者の賃金・収入を少しでも増やすために奮闘し、解雇や退職強要をはねかえし雇用を守るたたかいをしてきた。これらのたたかいが、多くの未組織労働者の中にも広がり、多くの新規加盟組合を迎え入れることになった。現在も、労働相談は相次いでいる。

 自交総連の組織強化拡大は、労働者に犠牲を転嫁して自分だけが生き残ろうとする身勝手な一部の経営者の責任を追及し、「企業の社会的な責任(CSR)」を果たすよう促すことにもつながる。労働組合が経営者を鍛え、それが事業の健全な発展にも役立つことになる。

 労働組合の重要性を、さらに多くの未組織労働者に伝えると同時に、既存の組織でも労働組合の役割を組合員が学び、組合員を減らさず、新しい幹部・後継者を育てる組織強化に力を入れなければならない。

3.コロナ後の安全で公平な社会めざし、国政の民主的転換

 コロナ危機により、国民のいのちと暮らしは深刻な影響を受けている。

 感染者の発見、隔離、治療、入院に関わる保健・医療体制の不備、病床の不足、医療崩壊、ワクチン接種の遅れなどは、1980年代からすすめられてきた新自由主義政策、規制緩和によってもたらされた。国民に自己責任を押しつけ、市場原理にもとづく弱肉強食の競争こそ経済発展のために必要だとして規制緩和をすすめてきた結果、医療や福祉、社会保障は切り捨てられ、保健所や公的病院は減らされてきた。

 労働の規制緩和で、公務・民間職場とも非正規や派遣という無権利で低賃金の労働者が増やされてきた。タクシー・バス労働者も含む、医療・介護、公共交通、物流などエッセンシャルワーカー(社会的に必要不可欠な仕事をしている労働者)の労働条件も破壊され、人員不足が深刻になっている。

 新自由主義・規制緩和でぜい弱となった社会にコロナ危機が起こり、痛めつけられてきた人々が重大な被害を受けている。

 菅政権は、ワクチン接種が遅れ、国民生活を支援する給付金は拒否するなど、コロナ対策に真剣にとりくまないのに、オリンピック開催を強行したため、感染の爆発的拡大を招いて、国民の命を危険にさらした。その結果、国民の支持を失った菅首相は辞意を表明、新たな総理大臣が選ばれることになったが、悪政に責任を負う自公政権がつづいたのでは政治は変わらない。野党4党は、市民と野党の共闘で、憲法にもとづく政治の回復、コロナ対策強化、格差と貧困の是正など共通政策に合意し、自公に代わる新しい政権をめざしている。

 目前の衆議院議員総選挙は、政権交代がかかった政治を変える最大のチャンスであり、危機から抜け出し、国民の命を守る政治、公正で民主的な政治の実現をめざさなければならない。そのためには、まずすべての組合員が選挙に行って投票権を行使することが必要である。職場で政治が話題になり、選挙に関心が高まるように議論を盛んにして、みんなが投票に出かけるようにする。

 このことは、国民が声を上げれば、政治が動き、変えられるということを明らかにしている。自交総連は、コロナ危機を克服する安全で公平な社会、労働者の要求が阻まれない社会をめざして、自公政権による悪政の継承を許さず、国政の民主的転換のために、広範な国民と団結して奮闘していく。

 ダイナミック・プライシングもライドシェアも新自由主義の政策であり、これを阻止し、自交総連が掲げている政策要求を実現するためには、政治を変え、アメリカや多国籍企業、大企業に奉仕する政治から、国民に奉仕する政治に切り替えなければならない。国民と野党の共同で、自公政権による悪政に代わる政治を求めていく。

4.すべての運動と結合した組織の強化拡大

 以上の基調となる運動と結びつけて、すべてのとりくみを組織拡大と連携させ、独自の宣伝、対話とも合わせてすすめる。

 自交総連の組織は長期にわたって漸減する傾向を脱しておらず、これを克服して増勢に転じなければ、将来への展望をひらくことができないことを肝に銘じなければならない。しかし、変化の兆しは、いま顕著に現れている。

 コロナ危機のなかで、たいへんな被害を被った自交労働者は、生活を維持し、最低限の労働条件を維持するためには、労働者が団結して経営者と団体交渉をしなければならず、政治を変えて国民を救済する政治が行われなければならないことを、身をもって体験している。何もしないで、たたかわなければ、犠牲はすべて押しつけられてしまう。

 だからこそ、昨年は1〜12月の1年間でかつてない14組合が新規加入し、今年度(10月〜9月)も7組合の新規加入組合を迎えている。加入した組合の多くは、コロナで営収が激減するなか、解雇や雇止めの攻撃を受け、休業計画や休業手当が労働者の意見を聞くことなく一方的に決められ、最低賃金が払われないなど、労働者の意見が反映されない環境のもとで、団結して会社と交渉したいと願って労働組合を結成してきた。また、自交総連のたたかい、政策に共感をいだいて結集してきた。

 未組織労働者に労働組合が何をしているのかわかるように伝えて、自交総連の存在を押し出し、組織拡大独自の宣伝行動と合わせて、一人でも多くの労働者と対話をして仲間を迎え入れることを、すべての運動のなかで常に意識したとりくみをすすめていく。

U 主な運動課題と対応する基本方針

1.4つの要求課題と運動の基本方向

(1) 社会的水準の労働条件確立への接近、権利の確保

@ 賃上げと底上げ闘争の強化

1) コロナ危機への対応

 〇 コロナ感染状況をみながら、必要な限り計画休業を実施させ、雇用調整助成金の特例の継続を政府に求める。厚労省がねらっている特例の完全廃止が強行されると、年間100日の支給限度日数が適用されるようになり、それ以降、活用できなくなる。コロナ終息まで、特例の廃止をさせないよう政府につよく要求する。

 〇 雇調金を活用せず、休業手当が支払われない事業所については、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を活用して労働者個人に支援金を給付させる。その際、事業者の指示による休業であることを事業者に証明させ、申請に協力させる。

 〇 休業しないところや一部休業中の稼働日、時間短縮勤務中の労働時間については、最低賃金の支払いを厳守させ、法令遵守、労働者の生活維持に必要な賃金の支払いに責任を持つよう求める。

2) 社会的水準の労働条件確立を、当然の要求として引き続き掲げていく。一定の時期に闘争を集中させて賃上げをめざす春闘と通年闘争としての政策闘争を結合して、社会的水準への接近をめざす。

 ○ 劣悪な労働条件こそが若年労働者、良質な労働力の確保を困難にしていることを社会的に問題にして、減車・運賃改定・助成策と合わせて、地域の経営者共同の責任で最低労働条件の確保などの底上げ、経営環境整備を求めていく。

 ○ 自動車教習所では、賃金「合理化」を阻止し、仕事量の拡大など職場政策要求への合意、実施を明確にしたとりくみ強化をはかる。

 ○ 観光バスでは、コロナ危機からの回復に合わせて、過当競争のもとでの低運賃(手数料割戻)押しつけなどを是正させる経営環境の改善を重視してとりくむ。

3) 賃金の実額が増える制度的改善を追求する。

 ○ タクシー特措法改正時の国会附帯決議、国交・厚労両省の通達にもとづき累進歩合制度廃止の確実な履行を求める。また、オール歩合給賃金を改善し、少なくとも最低賃金を固定給で保障する賃金制度確立を重視してとりくむ。

 ○ 最低賃金法違反の一掃、地域全体での賃金底上げをはかる。

 ○ 年次有給休暇の確実な付与と、取得によって賃金が下がる不利益取扱いの是正をはかる。

 ○ 時間外・深夜割増賃金の不払いや歩合給から控除する偽装を許さず、法定の支払い義務の確実な履行を求める。

 ○ 国会附帯決議で指摘されている運転者負担制度の廃止、交通事故弁済金、罰科金等をなくしていく。

4) 20年2月に実施されたタクシー運賃改定は、コロナ危機のために現状では増収となっていないが、運賃改定時のノースライド、運転者負担の撤廃など労働条件改善は、賃上げ・底上げの重要な要素であり、需要の回復をみながら実効性を点検していく。改定されていないところでは、増収につながる適時適切な運賃改定が実施されるよう求めていく。

5) 地域内でよりよい労働条件をかちとっている職場を目標にした到達闘争を全国的に展開し、地方(地域)で労働条件の格差是正をはかる底上げにとりくむ。「職場・地域から時給〇〇円未満をなくそう」「賃率〇〇%未満をなくそう」の課題を重視した運動を推進する。地域別最低賃金の大幅な引上げとともに全国一律最低賃金制度の確立にとりくむ。

A リストラ「合理化」反対、権利の確保

1) コロナ危機による倒産や廃業・身売りがすでに発生しており、警戒心をつよめ、情報を収集して、対策を講じる。雇用調整助成金や持続化給付金など政府の制度を活用し、経営者に申請させ、最悪の事態に至らないようにする。経営責任を放棄して犠牲をすべて労働者に押しつけ、解雇や退職強要、「合理化」を強行しようとする経営者とは、地域ぐるみで地連・地本が一体となってたたかう。

2) 労働者・労働組合の権利尊重、賃金・労働時間、雇用規制など働くルールの確立と企業の社会的責任(CSR)を問う運動の推進をはかる。

 〇 新型コロナウイルスから労働者を守るため、感染予防策の徹底、PCR検査、ワクチン接種の促進をはかる。個人の事情でワクチンを接種しない者への差別をさせない。

 ○ 整理解雇の4要件(@企業の維持・存続にとっての差し迫った必要性、A解雇回避についての努力がつくされたこと、B人選の仕方が客観的・合理的で公正であること、C労働者側への説明と納得を得る努力)にもとづき、解雇権濫用を禁止するルールの確立をはかる。

 ○ タクシー、バスでは違法な日雇い・アルバイトの禁止(運輸規則第36条)、雇用の正常化にむけた地域的運動にとりくむ。

 ○ 60歳以上の雇用については、定年延長・同一労働同一賃金を基本に、改正高年齢者雇用安定法の趣旨(65歳までの希望者全員雇用)にそって、継続雇用拒否や労働条件の低下等が起こらないようにする。65歳を超えたものの雇用継続についても不当な差別的扱いを許さない。法律に基づいて有期雇用の無期転換権を行使するなど更新への不安をなくす。

 雇用確保とともに、高齢者を「安上がりな労働力」として使おうとする経営者の姿勢を許さず、65歳以上の者については、脳ドックや認知症検査など厳格な心身の検査を会社負担で毎年行うことを義務付けさせる。

 ○ 定時制・嘱託・パートなど非正規労働の差別を許さず、均等待遇、同一労働同一賃金を求める。均等待遇を理由として正規労働者の労働条件引き下げは許さない。

 ○ 違法な名義貸しや「業務委託契約」等については、地連・地本ごとに情報収集や調査を行い、運輸・労働局交渉等を通じて根絶をはかる。

 ○ 勤務中の労働者の生命・人権を守る面から、警察庁の「タクシーの防犯新基準」を遵守させ、訓練、防犯板、車内カメラなどの防犯対策の充実をはかる。その際、映像・音声の使用については、労働者・乗客のプライバシー侵害にならないようにし、労務管理に悪用させない。

 乗客からの暴力・暴言などハラスメントを防ぐため運送約款改定などの対策をすすめる。

 女性労働者をはじめLGBTQ(性的少数者)など誰もが差別されず働きやすい職場とするため、施設・環境の改善をすすめ、セクハラ・パワハラを防止する対策にとりくむ。

 ○ 新たに「安上がりな労働力」として外国人労働者を活用する動きに反対し、一切の差別のない同一労働同一賃金の堅持を求める。

 ○ 自動車運送事業者の「働きやすい職場認証制度」の登録が2021年からはじまったが、悪質企業を排除し、適正な労働条件に近づけていくために、法令遵守、累進歩合制度の廃止、運転者負担なしなど活用できる点は活用して、経営者に申請・登録をさせていくとともに、申請内容の実効性を追求していく。

3) 改善基準告示は改正審議中だが、改正を待つことなく、猶予されている自動車運転者の時間外労働規制を一般労働者と同じ規制(年720時間)が適用されるよう求める。現行の改善基準告示、同内容の国交省告示(タクシー、バス)、国交省・交替運転者配置基準(バス)については、最低限の基準として厳守させる。

 36協定の届出にあたっては、労働者代表選出における民主的手続きの厳守、協定書の協定事項に裏づけされた運行予定表(勤務ダイヤ表)の提出を義務づけ、未提出のものは受理しない措置を講じるなど事前のチェック機能を厳格にさせる。

 有給休暇5日義務付けに際し、労働者の望む時季に取得できるようにし、有休を取ることによって賃金・一時金が下がることのないよう、有休手当の計算方法を改善させる。

4) 運輸・労働行政の監督指導責任を明確にさせ、道路運送法や運輸規則、労働基準法等を無視し、労働者・労働組合の権利を認めない悪質経営者への厳しい措置や厳格な処分を迫る。

5) 労働基本権や労働基準法など基礎知識の学習を日常的に重視し、職場・地域での権利総点検活動を展開する。

6) 職場で起こっている賃金不払いや権利制限、差別・支配介入など不当労働行為の一掃を重視する。その際、司法機関や労働委員会を適切に活用するが、裁判(労働委員会)一辺倒の闘争におちいることなく、職場でのたたかいを基礎に、地連・地本全体での闘争態勢の確立、地方労連などの支援体制と社会的包囲との結合を重視して解決していく。

(2) ダイナミック・プライシング反対、白タク合法化阻止、政策要求の実現

1) コロナ危機で休業し、臨時休車措置で休車させている車両を、需要が十分に回復していないまま早期に復活させれば、深刻な供給過剰状態が生じる。長期にわたる需要減退も予想されるので、現状の需要に見合った稼働台数となるよう、適切な需給調整、減車措置をとくに求めていく。

2) ダイナミック・プライシング(変動運賃制度)の導入を阻止する。

 規制改革推進会議の答申で、2021年中に実証実験を行い、結論を得次第速やかに措置するとされたダイナミック・プライシングの導入を阻止するため、利用者・国民、タクシー労働者への宣伝を強化し、実態を明らかにする。反対の理論構築、違法性の指摘など顧問弁護団作成の意見書を活用する。

 反対運動は、タクシーの公共性を守るたたかいと位置づけ、障がい者、高齢者らの交通権の確保、利便性の向上の観点を重視して、多くの団体と共同してすすめられるようにする。

3) ライドシェア導入=白タク合法化、新たな規制緩和を阻止する。

 ○ 白タク合法化の阻止は、ひきつづき最重点課題として、タクシー関係のすべての労働組合、ナショナルセンター、他産業労組、事業者、自治体、利用者・国民との共同を追求してとりくむ。

 ライドシェアの危険性を社会的に周知させ、国内外のライドシェア事業者、大口出資者、提携事業者、規制緩和勢力の動向を注視し、白タク合法化につながるあらゆる動きを阻止する。国交省には、ライドシェアを認めない現在の立場の堅持を求めていく。

 ○ 自家用有償旅客運送の拡大・道路運送の改悪を含む地域公共交通活性化法改正については、附帯決議で「ライドシェアは引き続き導入を認めないこと」と明記された点を踏まえ、運用面での規制強化を求め、無限定な自家用有償運送が実施されないようにとりくむ。

 ○ 住民の移動する権利を守り、地方自治体が危険な輸送方法に頼らなくてもすむように、地域公共交通にはタクシーを活用することを求めていく。交通過疎地での乗合タクシー・デマンドタクシーなどの充実を求め、障がい者や高齢者のタクシー利用への補助金を求め、そのための国の財政措置の大幅な増額を要求していく。

 ○ 改正国家戦略特区法(スーパーシティ法)は、特区に指定した地域内で、MaaS(マース=モビリティ・アズ・ア・サービス)など交通関係も含めてあらゆるサービスをデジタル化、IT化するスーパーシティをつくろうとするもので、そこでのライドシェアの解禁や実証実験の開始も視野に入っている。これを利用したライドシェア導入の動き警戒し、世論の喚起、地方自治体、地域住民への働きかけをつよめる。

 ○ 生産性向上特措法による「規制のサンドボックス制度」を利用したライドシェアの実証実験を阻止し、JIS認証やグレーゾーン解消制度を使ってライドシェア・白タクに国のお墨付きを与えることを許さない。すでに営業しているジャスタビやnotteco(のってこ)などの白タク行為については、道路運送法の枠外におかれて監督する省庁もないという危険な実態を告発し、禁止させる。

 ○ 外国人訪日客などを相手にした白タクの根絶をめざし、運輸・警察当局が連携して摘発、取り締まりを強化することを求めていく。

 ○ 東京や福岡で開始されたUber(ウーバー)アプリでのタクシー配車など、海外ライドシェア企業との提携がすすみ、国内でのグループ再編、囲い込みの動きがつよまっている。新たに生じてくる手数料負担の運転者への転嫁を許さず、ライドシェア導入の足掛かりとされて海外資本にのみこまれるおそれには警鐘を鳴らし、海外ライドシェア企業との安易な提携には反対する。

 ○ ダイナミック・プライシングと同時に規制改革推進会議の答申に盛り込まれたソフトメーター、IT点呼導入は、正確性、安全確保の実効性に疑問があり、性急な導入に反対する。

 ○ 改正国家戦略特区法(スーパーシティ法)は、特区に指定した地域内で、MaaS(マース=モビリティ・アズ・ア・サービス)など交通関係も含めてあらゆるサービスをデジタル化、IT化するスーパーシティをつくろうとするもので、そこでのライドシェアの解禁や実証実験の開始も視野に入っている。これを利用したライドシェア導入の動き警戒し、世論の喚起、地方自治体、地域住民への働きかけをつよめる。

 ○ ライドシェアへの対抗策、利用者利便向上のためとして、スマホ配車アプリの活用やクレジットカード決済などの創意工夫をタクシー事業者が行うことは当然のことだが、その際、新たな運転者負担や賃金に悪影響を及ぼすことは許されない。デジタル化を名目にした規制緩和、運転者・利用者の個人情報の集積、活用には慎重に臨む。

 全タク連は、ライドシェア対策としてのタクシー事業の活性化11+9項目を提起している。

1. 初乗り距離短縮運賃

2. 相乗り運賃(タクシーシェア)

3. 事前確定運賃

4. ダイナミックプライシング(繁忙・閑散時の運賃値上げ・割引)

5. 定期運賃(乗り放題)タクシー

6. 相互レイティング(乗務員と乗客相互の評価システム)

7. ユニバーサルデザイン(UD)タクシー

8. タクシー全面広告

9. 第二種免許緩和(取得年齢21→19歳、経験3→1年)

10. 訪日外国人等の富裕層の需要に対応するためのサービス

11. 乗合タクシー(交通不便地域対策・高齢者対応・観光型等)

(追加9項目)

1. MaaSへの積極的参画

2. 自動運転技術の拡張方策の検討

3. キャッシュレス決済の導入促進

4. 子育てを応援するタクシーの普及

5. UDタクシー・福祉タクシーの配車体制の構築

6. 「運転者職場環境良好度認証」制度の普及促進

7. 労働力確保対策の推進

8. 大規模災害時における緊急輸送に関する地方自治体との協定等の締結の推進

9. タクシー産業の国内外へのアピールの推進

 これらの施策のうち、運賃に関するものは運転者の賃金低下につながり、第二種免許の緩和は安全性、運転者の質の低下となる。本来、ライドシェアに対抗するタクシーの最大の利点は、安全性・良質なサービスであり、それを損ない、運転者の労働条件を悪化させる施策には反対していく。

 ○ 過疎地で導入が可能となった「貨客混載」は、旅客の安全性破壊や運転者の労働強化になるなど問題がある。今後、地域が拡大していく可能性や、旅客と貨物運送の垣根をなくす規制緩和が拡大し、配送シェアと一体になったライドシェアの導入に利用される懸念もある。安心・安全が担保されない規制緩和には反対し、厳格な運用を求めていく。

4) オリンピック輸送のためにタクシーをハイヤーに流用する方式は、関係通達を乱暴に拡大解釈してすすめられ、運転者からコロナ感染者もうんでしまった。国交省による、このような手法がまかり通れば、法律や通達を無視した規制緩和が容易に実施されてしまう。勝手な解釈変更、法令違反を許さないたたかいをすすめる。

5) 2015年12月に策定した政策提言「安心・安全、持続可能な公共交通を担うタクシーをめざして」にもとづき、@安心・安全、利便性確保、それを担保する運転者の労働条件確保、Aタクシー運転免許の実現にむけて――という提言の内容の学習、普及に努め、その実現をめざしていく。

6) 自動運転技術は、今後の労働条件や雇用に重大な影響を与えるものであり、調査・研究を深めていく。

 国交省が2019年6月に策定した自動運転(レベル4)の実現に向けたバス・タクシー事業者のためのガイドラインは、「運転者が車内にいる場合と同等の安全性を確保する」という実際には実現不可能な状況を想定して無人自動運転を容認する内容となっており、乗客の安全を無視し、国民的な合意も得ずに自動運転を推進するものである。このガイドラインの実施に反対し、安全を軽視した実証実験が行われないようにする。

 技術の進歩は安全性向上や労働の負担軽減に役立つように活用されるべきであり、どんなに自動化がすすんでも安全確保や乗客への対応・サービスのための運転者の役割が失われることはないとの観点から、営業車の完全自動運転・無人化には反対する。自動化のもとでは、運転者には、より高度で良質な旅客対応が求められることになり、タクシー運転免許制度の実現をめざすとりくみと一致させて対応していく。

7) 2014年1月に施行された改正タクシー特定地域特措法は、目的である運転者の労働条件の改善、減車、運賃適正化などについて実効性がないことが明らかになる一方、コロナ危機で需給調整の必要性はいっそう増している。調整を個々の企業に任せていたのでは、できないことは明白であり、地域協議会などがスピーディーに調整できる機能を持てるように法の再改正・整備を行い、実効ある施策を緊急に実施することを求めていく。同時に、現行法の限界を乗り越えるタクシーの将来像としてタクシー運転免許構想の真価と必要性を社会的にアピールし、政府・行政、国会にはタクシー運転免許法制化について検討するよう求めていく。

 適正化(減車)計画の実施など、現行法でできることについては確実な履行を求める。地域指定基準の適正化を求め、準特定地域の指定解除には反対する。

 地域協議会には、労働者の代表として積極的に参加して意見を表明し、政策を提起していく。将来的には、政策提言にある「利用者・住民、事業者、労働者、行政が参加する地域協議会をタクシー委員会(仮称)に発展させ、需給調整、運転者の数、運賃、交通計画などを決めて実行できる機関とさせる」ことをめざす。

8) 二種免許の受験資格は、2020年の道路交通法改正で、特別な教習を修了した者は年齢19歳以上、普通免許取得後1年以上で取得できるように緩和された。特別な教習の厳格な運用と、免許取得後の指導・監督の強化を求め、安全が担保できない若年者の安易な取得がなされないよう求めていく。

 2015年から実施されている全国での運転者登録制度については、運転者の資質向上の実効性が確保される制度運用を求め、試験制度(効果測定)の難度を上げ、安心・安全、良質な運転者の確保という目的にかなうものとして年齢の上限規制を含む措置を求めていく。

 登録制度にかかる費用が事業者を通じて運転者に転嫁されないようにする。運転者の登録取消処分などについては、公正、教育・指導、公開の原則を尊重するほか、背後責任の追及を明確化するよう求める。

 現行の登録制度は、企業に雇用されていないと登録できず、運転者証の管理なども事業者主体のしくみとなっている。この点について、将来的には労働者が自分で運転者証を管理できる制度とするようにタクシー業務適正化特措法の改正を求めていく。

9) 厚労省労働政策審議会での自動車運転者の労働時間等の改善基準告示改正の審議は、2021年中には改正案がほぼ固まるスケージュールですすんでいる。実効ある労働時間の短縮、とりわけ休息期間(インターバル規制)11時間などを重視した改正と法制化を求めて、適時意見を出していく。現行の改善基準告示、同内容の国交省告示(タクシー、バス)については、最低限の基準として厳守させるとともに、国交省・交替運転者配置基準(バス)の改正を求めていく。

10) 2020年2月実施の各地の運賃改定では、初乗り距離短縮運賃となっている地域が多く、短距離客の多い地域では営業収入減になる。運転者の賃金減少につながる運賃制度には反対し、実情の把握と見直しを求める。

 公定幅運賃の下限引き下げには反対し、幅運賃内での上限張り付きを求める。適正な運転者人件費をまかなうに足る運賃設定を追求し、各種割引や割増返上などの運賃・料金引き下げに反対する。

 今後、運賃改定が行われる地方では、@運転者人件費査定方法の適正化、A配車アプリ、クレジット手数料等の原価への反映、B適切な需給調整・減車――を求め、実際に増収となり、ノースライドで運転者の労働条件改善に資する改定となるように求めていく。

11) 過疎地や交通空白地域の住民、障がい者・高齢者・病人など移動制約者の交通権の保障を追求し、持続性・安定性が担保された公共交通の確立を求めていく。自家用有償旅客運送の拡大に反対し、タクシーを公共交通機関として積極的に活用し、国と自治体の助成額の大幅な引上げを要求する。これらの運動は、交運共闘や国公労連・自治労連など公務産別とも協力して進める。

 乗合タクシーや送迎バスの委託にあたり、地方自治体が安易な競争入札によって労働条件を無視した安値で落札させていることは、安全と利便を阻害するものであり、運転者人件費などを保障した適正価格で持続的に受注できる契約方式の採用を求めていく。全労連・地方労連とともに公契約条例の制定を追求する。

12) 地方自治体にタクシーを公共交通機関として位置づけさせ、タクシー問題を担当する部局の設置を求める。また、乗り場の増設やバスレーンへの乗り入れ、過疎地・交通空白地域における乗合タクシーの活用、福祉・介護政策とタクシーの役割などについて政策提言し、実施を求めていく。

13) 運転代行については、タクシー類似行為等の違反行為の排除及び事業の適正な運営、安全の確保等における改善措置を講じるよう求める。

14) 地球温暖化防止運動については、「タクシー減車による地球温暖化防止への貢献」(08年5月発表、自交総連作成)を活用し、実際の減車闘争に役立てるなど交通政策からの接近をはかる。

15) 自教関係では、「自教労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(03年4月決定)にもとづき、とりくみ推進をはかる。とりわけ、地域の交通安全教育センターとしての機能強化に関する政策提言の実現、「職務領域や業務範囲の拡大」を重視していく。

16) 観光バス関係では、「観光バス労働者の権利と社会的地位の向上、事業の将来のために」(13年9月決定)にもとづき、公示運賃違反、脱法的な手数料負担の是正、日雇い・アルバイト運転者の一掃、低運賃や無理な運行を押しつける旅行会社の規制、改善基準・交替運転者配置基準の改正、過労防止措置など労働条件改善にむけた環境整備を重視していく。

17) 一致する政策課題については、経営者・経営団体、消費者・市民団体などとの広範な協力・共同を追求する。

 労働組合の社会貢献の観点を重視し、地域住民との接点を追求し、住みやすい街づくり、住民の交通権の確保、交通安全教育、事故の根絶などにタクシー、バス、自動車教習所を活用することを積極的に提起していく。

18) 消費税引き下げや年金制度改善、社会保障充実など全労働者に共通する課題については、全労連・国民春闘共闘に結集して運動の前進をはかる。

 各種政府委員の獲得を追求していく。とくに、中央・地方で労働者委員、最賃委員候補者を立て、共同のとりくみとして運動強化をはかる。

 最賃1500円以上、全国一律最賃制の確立をめざし、雇用によらない働き方、残業代ゼロなど労働法制の改悪を阻止し、労働者保護法制については抜本的な法改正による実効性の確保を求めていく。

(3) コロナ危機打開、国民本位の政治の実現

 菅首相は、ワクチン接種の遅れなど有効なコロナ対策を打ち出せないままオリンピックを強行し、感染の爆発的拡大をまねいて、国民の命とくらしを危機にさらした挙句、国民の支持を失い政権を投げ出した。もともと、新自由主義政策によって医療・福祉・交通など各分野で規制緩和を行い、公共の役割を投げ捨ててきたことが、コロナ危機の影響を深刻なものにしており、首相が代わっても、悪政に一切の反省もない自公政権がつづいたのでは、事態は悪くなるばかりである。

 白タク合法化阻止、自交労働者の労働条件改善、地位向上など、自交総連の掲げる目標も、政治を変えなければ実現できない。

 アメリカや多国籍企業、財界・大企業の利益優先の政治から、労働者・国民本位の政治に転換することが求められている。そのチャンスが秋に行われる衆議院議員総選挙である。

 自公政治に代わる新しい政治を求める国民の声を背景に、立憲・共産・社民・れいわの野党4党は、憲法にもとづく政治の回復など共通政策に合意し、協力をすすめることになった。現実に選挙で政治を変えられる状況が生まれている。市民と野党の共闘で、政権交代、野党連合政権を実現し、労働者・国民のいのちと暮らしを守る政治を実現するため、労働組合としてとりくんでいく。とくに、労働者が政治に関心をもち、選挙に行くように、投票の仕方、労働者と政治とのかかわりなどを丁寧に説明していく。

(4) 自交総連、全労連の組織強化拡大

1) 2021年1月に決定した「2021〜22年 組織拡大2か年計画」にもとづき、年1割の実増をめざす。各地連・地本ごとに目標と計画を決めて、着実に実践する。

 〇 まずは減少に歯止めをかけ増勢に転じることをめざし、1割の実増を追求する。

 ○ 全組合員が組織拡大の意義を理解し、実践にとりくめるように、繰り返し学習を行い、一人ひとりがもっているつながり、力を生かしたとりくみを行う。

 〇 単組・支部は毎年の自然減を補い実増を達成する具体的な計画を立て、労働者にとって魅力ある組合をめざして組織の強化にとりくむとともに、組合の民主的運営の確立をはかる。

 ○ 全労連の組織拡大新4か年計画と連動し、地方労連と協力して最重点計画に登録することに積極的にとりくむ。

 ○ 各地連・地本は、新規加入組合獲得のため宣伝・行動計画を立てる。「地域タクシー労働組合」(個人加盟方式)がないところは設置し、定時制・嘱託など非正規雇用や個人タクシー、自教・観光バス労働者の組織化を運動方針に明確に位置づけ、必要な対策を講じる。

 ○ 空白県の組織化については、ブロックごとに重点を決めて共同の宣伝等のとりくみをつよめる。

 ○ 10〜12月、3〜5月を組織拡大月間として、集中してとりくむ。

 ○ 組織拡大に活用できるビラ等は本部で版下を作成し、機関紙や各地連・地本の独自宣伝物と組み合わせて活用する。

 ○ 各地連・地本は組織点検を行い、機関会議欠席組合や組織機能を失っている少数派組合への対策を重視し、産別結集が弱まらないように注意をはらい、オルグ強化を含む必要な手立てをとっていく。本部としては、体制・機能の確立がなされていない地連・地本への個別オルグ、援助と指導を重点的に行う。

2) 組織拡大の集中的とりくみとして、空白地域も含めた宣伝行動、キャラバン行動などについて、財政状況も勘案しながら、検討していく。

3) 組織拡大を担い、魅力ある組合をつくる中心となる幹部・活動家の育成を重視し、学習会の設定など計画的なとりくみで組織強化をはかる。

4) 一致する要求にもとづき他労組との共同の拡大をはかる。白タク合法化阻止や減車、地域の最低労働条件の確立などの課題では上部団体の違いを超えた地方(地域)内共同の実現を追求する。リストラ「合理化」、廃業・身売り問題対策等での職場内共同を推進する。

5) 全労連が2020年7月の大会で決定した「組織拡大強化新4か年計画」(2020〜23年度)を踏まえ、地方労連・地域労連の強化にとりくむ。

 交運共闘の組織・運動面にわたる機能強化、地方交運共闘の確立について積極的な役割をはたす。

2.当面する運動の基本的展開

(1) 2021年秋季年末闘争の具体化

 秋から春闘にむけた闘いは、産別要求・政策課題と国民的課題とを結合し、重点を絞って春闘の前段闘争と位置づけ、「2021年秋季年末闘争方針」を第5回中央執行委員会(9月8〜9日)で決定しとりくむ。

(2) 2022年春闘の準備

1) 全労連の『はたらくみんなの要求アンケート』を基本とし、全組合員と広範な未組織・未加盟の労働者を対象とする独自アンケートを作成して、労働者の要求、組合員の意識を把握していく。

2) 春闘方針は、11月中に執行部原案をつくり、12月の中央執行委員会で討議し、1月下旬には中央委員会をひらき決定する。春闘方針の職場討議は、1月初旬から執行部(案)にもとづいて行えるように準備する。

3.通年闘争の諸課題とそのとりくみ

(1) 通年闘争のとりくみ

1) 全労連や民主的諸団体がとりあげる国民的諸課題について積極的に対応していくこととし、原水協、全国革新懇、非核の政府を求める会、安保廃棄中央実行委員会、国民救援会などとの共同を発展させる。

2) 機関紙については、「自交労働者新聞」は月1回の発行とする。メール配信の「自交労働者情報」電子版の内容を充実させ、配信読者の拡大をはかる。

 ホームページの充実をはかるほか、インターネット、SNSの活用などの研究をすすめ、地方でも新しいメディアに対応した情報発信を検討する。

 教宣学校は、ブロック毎に計画を立て、各地方で機関紙やビラが独自に発行できるように奮闘する。

3) 不当弾圧や解雇、争議権の制限に対するとりくみ強化をはかる。弁護士交流会は、コロナ対策も含めて開催方法を検討したうえで開催する。

4) 在職死亡(過労死や職業病、自殺)の増加など健康破壊が深刻になっていることを重視し、自交労働者が健康でいきいきと働ける職場環境を確立させるためのとりくみ強化をはかる。

 ○ 労働者の安全と健康を確保するため、職場内に安全衛生法にもとづく安全衛生委員会を設置し、安全衛生の確立と機能の充実をはかる。

 ○ 事業者負担による成人病検診を義務づけ、検査項目にはマーカー検査(ガン検査)を入れるようにする。定期健康診断の受診率を高め、65歳以上の脳ドック検診、有所見者の再診を義務づけさせる。

 〇 長時間労働による過労死など労働災害をなくすための総合的な事前対策を重視する。不幸にも被災労働者が発生した場合には積極的に労災認定闘争を行う。

5) 道交法闘争を発展させるため、各地連・地本に道交法対策部(委員会)を設置するなど、引き続きとりくみ強化をはかる。

6) 国際連帯活動については、国際労働運動の紹介に努め、条件に応じて国際交流を検討する。

(2) 共済活動のとりくみ

 共済活動が、構成員からの委任にもとづく構成員の相互扶助による福祉の向上を目的としていることをふまえ、自交共済及び自交共済年金への加入促進をはかり、低利用や未取組の単組・支部への働きかけを意識したとりくみを行う。また、福祉活動の一環としてこくみん共済coop(全労済)及び全労連共済の各種制度普及に努める。

 加入者の意向をふまえ、未組織労働者にもアピールできるよう、魅力ある共済となるように内容の改善を検討する。

 なお、こくみん共済coopの共済契約等に関わる事務手続きは、組合員からの委任にもとづいて自交総連が代行する。この事務手続きに際して生じる費用相当額は、共済契約者に代わってこくみん共済coopからの団体事務手数料として支払われる。

 また、共済契約に関する事務手続きを円滑に進めるため、こくみん共済coopより必要最小限の範囲において個人情報の提供を受ける。

(3) 政党との関係

 労働組合と政党との関係は、以下の4原則をふまえ対応する。

 第1=政府・財界の反労働者・反国民的政策に反対してたたかうとともに、自交労働者の生活と権利、平和と民主主義を守ってたたかう政党と協力・共同の関係を保っていく。

 第2=前項の立場に立って、組合員の政治意識を高める活動を行う。

 第3=組合員の政党支持・政治活動の自由を保障していく。また資本や警察からの妨害・弾圧には、労働組合の立場から政治活動の自由を保障する見地でたたかう。

 第4=政党別選挙に際しては、特定政党・特定候補の支持は行わない。ただし、労働組合の要求実現とのかかわりで政策協定を結んだ革新・民主勢力共同の候補については、労働組合として積極的に支持していく。

V 産業別組織体制の確立・強化にむけて

1.執行体制と顧問の委嘱

(1) 機関会議開催の計画と本部専従体制

@ 機関会議開催の計画

 中央執行委員会の開催は、大会及び中央委員会時を含め年5回とする。幹部・活動家育成に役立つ経験交流や学習、個別問題での相談などを重視した運営にしていく。常任中央執行委員会(中央闘争委員会を兼務)は年4回開催し、必要に応じて専門討議を行う。中央委員会は1月に開催し、2022年春闘方針を決定する。会議は、コロナ対策及び経費の節約・効率化のために、zoomを利用したリモート開催を活用する。

A 本部専従体制

 本部の専従役員は1名(書記長)、書記は2名とする。

B 地連・地本の再編、産別指導体制、ブロック協議会の機能強化

 広域地連の発足は、当該する地連・地本の自主的な討議と合意に基づくもので、全国一律の措置とはしない。

 産別指導体制強化のため、ブロック協議会の機能強化と運営改善をはかり、本部と連携の上でブロック内各地方の指導と援助に当たる。

 バス部会は、東北・東京・大阪・高知・福岡地連のバス組合員の参加・協力のもとで、共通する宣伝物・資料の作成、国交省・厚労省交渉等の企画を立てる。

(2) 顧問の委嘱

 顧問弁護団は、東京法律事務所、馬車道法律事務所、代々木総合法律事務所、江東総合法律事務所の4事務所とし、引き続いて協力を要請する。また、公認会計監査については協働・公認会計士共同事務所に委嘱する。

(3) 役員体制・機構検討委員会での検討

 産別機能の維持・強化、将来的な役員体制などについて、「役員体制・機構検討委員会」(常執メンバー)を継続して検討を行う。

2.財政の確立と2021年度予算(案)

(1) 2021年度予算(案)の編成にあたって

 適正な予算・財政の確立をめざし、以下の観点で予算編成を行う。

 @収支率100%を基本にした予算編成が困難な財政事情であるため、繰越剰余金の残高と取り崩し限度額とを勘案のうえ、専従役員の人件費減額などを含め、収支差を最小限に押さえる資金収支計画を立てる、A予測される損失の縮小をはかるため、支出面でのいっそうの費用削減と事務の効率化に努める、B会費は現行の月580円とし、本部への登録率は実組合員数の80%以上、会計年度途中の変更は認めないことを原則とする、C50%未満の地連・地本は3〜4年の実施計画を策定し登録増への改善をはかる。

 臨時徴収金は、現行の600円とし、長期争議組合支援、未組織宣伝対策費等に配分する。

(2) 各地連・地本の財政基盤の確立

 労働組合の日常活動の基本は、「組織」「教育宣伝」そして「財政」の3つであるが、軽視されがちなのが財政活動である。財政活動は、組合を運営し、日常的な活動を支えるうえで欠かせないものである。改めて財政活動の重要性を認識し、すべての地連・地本は財政的基盤の点検と計画的改善をはかる。また不団結や組織力の低下を招くことになる不明瞭な財政支出や「使い込み」などをチェックする機能を確立する。

 会計報告は定期的に行い「公開の原則」を貫くなど会計面における民主主義の徹底をはかる。各地連・地本は、学習会の機会などを活用し、組合会計の基礎的知識を関係者が身につけるよう努める。

W 主な運動の到達点と今後の課題

1.2021年春闘の結果とその評価

(1) 第43回中央委員会で決定した統一要求と課題

 自交総連は2021年1月27日、第43回中央委員会を書面開催で行い、『コロナ危機突破、ライドシェア阻止 雇用を守れ、人間らしく暮らせる賃金確保 21春闘』をスローガンとする春闘方針を決定した。

 「基本的な要求・課題とたたかいの力点」では、@みんなに賃上げを、底上げ闘争の強化 Aコロナ対策強化、職場権利の確立と「合理化」阻止 Bコロナ危機突破、ライドシェア阻止、政策要求実現――を確認。「たたかいの基本方向と組織の強化拡大」では、@学習春闘を重視し、全員参加で要求を練り上げる Aみんなで決め、みんなの力を合わせ、みんなで行動を B地域に結集し、政治を変える春闘の前進を C仲間を増やし、組織の力をつけ、魅力ある自交総連の確立を――を重視し、春闘の具体的な展開をはかることにした。

(2) 春闘の具体的な展開と対応方針

@ 中央闘争委員会等で決定・確認した対応方針

 3月4日、第4回中央執行委員会で「2021年春闘 当面する対策」、4月8日、第1回中央闘争委員会(第2回常執)で「2021年春闘 今後のたたかい方」、5月20日、第2回中央闘争委員会(第3回常執)で「2021年春闘 最終決着へむけた対策」を決めて、たたかいをすすめてきた(各全文はホームページ掲載)。

 決着へむけては、コロナ問題での対策を重点としつつ、春闘要求については、以下の3つの解決基準をふまえて解決していくこととした。

 《3つの解決基準》

 第1=コロナ対策と賃上げ、一職場一重点要求の実現

 第2=規制破壊阻止や地域的政策要求実現にむけた共同の確認

 第3=納得のいく内容での集約(全体的合意)と労働協約締結

A 統一行動及び省庁交渉のとりくみ結果

1) 統一行動の実施状況

 2月1日 春闘スタート、コロナ危機突破、白タク合法化阻止 いっせい宣伝行動(コロナの状況により可能なところで実施)
 3月5日 自交総連中央行動
 4月12〜16日 要求前進をめざす宣伝・統一行動ゾーン
 4月22〜28日 春闘決着をめざす統一行動ゾーン
 5月1日 メーデー
 5月3日 憲法集会

2) 省庁交渉等の結果

 3月5日 国交省交渉(城委員長他11人) 情報電子版7号参照
      厚労省交渉(城委員長他11人) 〃
      全タク連要請(城委員長他2人) 〃
 4月2日 国交省・内閣府レクチャー(城委員長他7人) 〃12号参照
 7月16日 国交省交渉(高城委員長他2人) 〃34号参照

3) 主な課題ごとのとりくみ

(ダイナミック・プライシング阻止のとりくみ)
 3月17日 自交総連の反対声明を発表
 4月2日 国交省・内閣府レク、日本共産党国土交通部会と懇談
 4月14日 全視協との懇談
 5月6日 日本共産党武田良介議員打合せ
   11日 参議院国土交通委員会で武田議員質問
   11日 顧問弁護団会議で意見書作成決定(現在、作成中)

(改善基準告示改正専門委員会)
 4月23日 第5回専門委員会 改正時間の論議開始
 5月28日 第1回ハイタク作業部会  6月18日 専門委員会への意見書の提出

(最低賃金引き上げ)
 6月22日 最低賃金の大幅引き上げについての意見書提出

(オリンピック関係者のタクシー輸送)
 7月12日 タクシーでのみなしハイヤー輸送の見直しを求める声明発表
 7月16日 国交省交渉

(3) 春闘の結果とその評価

【総括の視点】

 総括では、コロナ危機への対応を含めて、@要求は前進したか(要求獲得)、A団結力は強まったか(産業別統一闘争への結集、労働者の意識の高まり)、B組織は拡大したか(拡大、組織強化)という3点について評価をする。

 今後の闘争に活かすための成果と弱点を明らかにし、成果に確信をもち、弱点を克服する対策を立てていく必要がある。

@ 要求獲得とその特徴点

 コロナ感染が再拡大し、緊急事態宣言等が出されるなかでの春闘となり、コロナ対策の交渉を先行させ、支給条件の改善、雇用調整助成金を最後まで活用、コロナ一時金(危険手当、生活支援金)などを獲得している。ワクチン接種時の特別休暇等を確認したところもある。

 春闘要求では、おおむね現行賃金体系維持としたうえで、解決金支給、足切り減額、福利厚生改善、車両機器・施設改善、高速帰路会社負担、政策合意、働きやすい職場認証制度の申請・認証などの要求を獲得している。

A 要求提出と統一行動への結集

 要求の提出状況は、ハイヤー・タクシー=61.7%(前年48.6%)、自教=50.0%(同28.6%)、バス・トラック他=20.0%(同23.5%)、全体では58.4%(同45.9%)となった(6/30現在)。

 コロナ休業での労使協定などで、ほとんどの組合が団体交渉を行っているが、一部に組合員が少数で要求提出が困難なところもある。春闘時の要求提出は、労働組合の基本的な活動であり、それが困難になっているところについては、地連・地本で個々の実情を把握して、指導をつよめていく必要がある。

 要求討議の基礎となる春闘アンケートは、17地方3817枚の回収で、前年より1地方増え、593枚減っている。コロナ被害の実情が明らかになるなど貴重な資料となっているが、回収枚数を増やしていくことが必要である。

 統一行動については、コロナ感染拡大のため、3・5中央行動の個人請願を代表提出に切り替え、多くの人が結集する大衆行動は実施できなかった。

B 政策闘争の到達点とその評価

1) コロナ危機の中で労働者を守るとりくみ

 コロナ感染症が再拡大するなかで、昨年からのとりくみに引き続き、感染の防止、賃金・生活保障の要求を国交省・厚労省、全タク連に出し、地方でも自治体、タクシー協会への要請、交渉をすすめた。国会議員への要請も行っている。

 その結果、労働者のくらしを守るとりくみでは、休業と休業手当の改善などの成果をかちとっているが、いっそうの前進をはかるうえで、政府の動きはにぶい。雇調金特例は12月末までの延長が検討されているが、その先は不透明で、厚労省は特例の廃止も検討している。政府として、大幅な賃金減となっている自交労働者に対する特別の支援もなく、PCR検査拡大やワクチン優先接種でも要求に応えようとしていない。

 要求を阻んでいる政治の実態を暴露し、政治を変えるとりくみと合わせて、運動をつよめていく必要がある。

2) ダイナミック・プライシング阻止、白タク合法化反対闘争

 2021年2月22日の規制改革推進会議でとりあげられ急浮上したダイナミック・プライシングについては、3月5日の国交省交渉で問題点を明らかにし、3月17日に反対声明を出し、国会議員、消費者団体、障がい者団体に送付、ビラを使った宣伝も行い、素早くとりくみをはじめた。

 4月2日に内閣府・国交省同席でレクチャーを行い、利用者の要望もないのに、規制改革のためとして実施しようとしていることが明確になった。5月11日に武田良介参院議員の国会質問で、赤羽国交相は「性急にすすめようというわけではない」としながらも、21年中に実証実験を行い、22年には導入するとの姿勢を崩していない。

 ダイナミック・プライシングは、運賃が下がって賃金が低下する運転者のみならず、運賃高騰時には利用者に迷惑をかけ、とりわけ障がい者・高齢者など他に代替手段のない利用者への被害は甚大である。この点を重視して、障がい者団体からもコメントをもらい、全国視覚障害者協議会と懇談して、運賃が高くなれば障がい者はタクシーに乗れなくなるなどの意見をもらって、国会質問でもとりあげられた。

 7月10日には東京地連が新宿で宣伝・デモを行い反対をアピールした。

 国交省は、ダイナミック・プライシングは道運法改正をしなくても導入できるとしているが、本部顧問弁護団では、道運法で定められている運賃原則を崩し、法違反の疑いが強いとして、その点の検討を含めて意見書を作成する準備をすすめている。

 ダイナミック・プライシングの導入と同時に進められている事前確定運賃、アプリ配車の促進などは、ライドシェアの導入の布石にもなるもので、国交省にはライドシェアの導入はしないとの姿勢を守らせているが、この点でも油断をせずに、白タク合法化反対のたたかいをすすめていく必要がある。

3) 改善基準改正の動き

 2019年末から開始された自動車運転者の改善基準告示改正の審議は、2021年5月から、トラック・バス・ハイタクに分かれた作業部会で拘束時間、休息期間などの具体的な数字が出されて議論が始まり、同年中には改正案が固まる予定になっている。自交総連の代表は委員に選任されていないため、会議ごとに傍聴し、厚労省から自交総連に対して内容を説明させて意見を聴取させている。

 具体的な労使の意見が出されたことから、時短に難色を示す経営側委員の意見に対する反論も含めて自交総連としての意見をまとめて審議会の各委員へ送付した。今後も適宜意見を出し、総拘束時間の短縮、休息期間の11時間の確保など、実効ある労働時間短縮の審議がされるように求めていく。

4) オリンピック関係者のタクシー輸送見直しを求めるとりくみ

 オリンピックで来日する関係者(放送・プレス関係者等)を一般タクシー車両で輸送する方式が、開催直前の7月8日に組織委員会から東タク協に説明があり、9日から実施された。不特定多数の乗客を乗せるタクシー(公共交通機関)を、オリンピック関係者を乗せる時だけ紙看板を掲げてハイヤー(非公共交通機関)とみなして輸送し、終わったらまたタクシーに戻して一般客を乗せるという方式であり、都内の全社が対象のほか、神奈川・埼玉・千葉でも行われた。この方式では、運転者に感染の危険があることはもとより、関係者が降りた後、次に乗る一般乗客にも感染の危険が生じる。入国後14日間は隔離するという「バブル方式」にも穴が開く。

 自交総連は、本部と東京地連と連名で7月12日、危険な輸送方法の見直しを求める声明を出した。ただちに大きな反響があり、新聞・テレビの取材が相次ぎ、多くの局で報道された。16日には、声明にもとづき国交省交渉を行い、@車両を分ける、A営業所に戻して消毒する、Bワクチン接種済みの運転者を担当させる――の3点の緊急対応を求めた。国交省は、消毒の徹底などを事業者に説明するというだけで、無責任な対応に終始した。自ら出した通達にも反する輸送を認めた国交省・関東運輸局の責任は、ひきつづき厳しく追及しなければならない。

 事業者や他の労働組合が取り上げないなかで、緊急の事態に素早く対応して、運転者と利用者の安全を求めた理論と主張は、大きく世論を巻き込む運動となり、自交総連の名前を広げ、評価を高めることとなった。

5) 運賃改定への対応

 2020年2月に全国48地域で運賃改定が実施され、その後も福岡などで改定が行われたが、コロナ危機のため運賃改定による増収の効果は検証できていない。今後、東京の運賃改定も予定されていることから、ノースライド、運転者の労働条件改善という基本的な姿勢で、運賃改定の目的が適切に行われたかどうかを確認し、今後の運賃改定にもつなげていく。

2.組織強化拡大の到達点とその評価

 コロナ危機が深刻化して以来、従来からつづいていたタクシー労働者の減少に拍車がかかり、急速に減少している。このため、既存の組織での組合員の減少に歯止めかからず、組織の脱退・消滅もあり、全体として8月末現在の組織実勢は減少となった。

 一方で、昨年から、コロナ危機で困っている労働者からの相談は相次ぎ、組合を結成して新規加入してくる動きもある。危機への対応に労働者の声が反映されず、会社が一方的に決めているという現状に不満をもち、労働組合をつくって会社と団体交渉を行う必要があるということで、相談に来て、組合結成に至っている。

 宣伝行動が十分にできない現状のもとで、今年になって組合結成のペースは遅れているが、労働組合に寄せる期待の高さは変わっていない。

 鹿児島、高知、京都では県労連と協力して全労連差し重点計画への登録をめざして、地連と県労連が総がかりで組織拡大をすすめる準備をすすめ、福岡で実践した実例に学んで、作戦計画を立てている。

 この間の教訓を生かして、宣伝・対話、相談活動、個人加盟組織への受け入れ、組合づくりの援助をつよめていけば、組織拡大の条件が大きく広がることは明らかである。労働者の意識、要求を的確にとらえて、相談に乗り、受け入れ態勢をつくって、成果に結実させなければならない。

 今後の運動を担う幹部・活動家の育成、組織強化にもとりくんでいく。

3.通年闘争とその他の諸活動

(1) 権利闘争の現状と特徴点

 北海道地連ハイタクユニオンは、札幌個タク協組職員へのパワハラ攻撃について道労委に救済を申し立てていたが、2021年3月に和解で解決した。

 同ユニオン(東交通)では、組合員の定年後再雇用の拒否について20年10月に道労委の不当命令が出されたため再審査申立をしている。

 同江別ハイヤー労組は、一方的賃金変更で21年3月に道労委の不当命令が出されたため、損害賠償請求訴訟の準備をしている。

 東北地連ハイタク一般労組鹿島タクシー支部は、コロナを理由にした廃業・全員解雇について、雇調金の活用をせず解雇回避義務を果たしていないとして21年3月に労働審判の申立をしてたたかっている。

 福岡地連福自交労組は、ワーカーズコープタクシー福岡での組合員への残業禁止の不当労働行為について20年12月に救済命令をかちとった。会社の意向に従わず、自交総連に加入した組合員を見せしめ的に残業禁止をして兵糧攻めにした不当労働行為が明確に認定され、残業代相当の支払いが命じられた。

 同太宰府タクシー労組は、委員長の解雇事件について県労委で勝利命令をかちとったが、会社が命令取り消しの行政訴訟を起こしていた件で2021年5月に地裁で不当判決が出された。控訴してたたかっている。

(2) 主な関係団体の動きと役員人事

@ 交運共闘第32回総会

 交運共闘(交通運輸労働組合共闘会議)は2月26日、第32回総会をひらき、2021年度運動方針と次の役員を決めた。

 議  長 城 政利(自交総連)
 副 議 長 相木 伸之(建 交 労)
   〃   瀬戸  修(検数労連)
   〃   民本 義光(海貨労協)
   〃   安藤 高弘(国交労組)
 事務局長 光部 泰宏(検数労連)
事務局次長 安附  徹(国交労組)
 幹  事 菊池 和彦(自交総連) (以下略)

A 交運研第31回総会

 交運研(交通運輸政策研究会)は6月27日、第31回総会をひらき2021年度運動方針と次の役員を決めた。

 会  長 桜井  徹(国士舘大学)
 副 会 長 安藤  陽(埼玉大学)
   〃   近藤 宏一(立命館大学)
   〃   佐々木隆一(国  労)
   〃   城 政利(自交総連)
 事務局長 後藤 智春(国交労組)
事務局次長 門田 耕司(国交労組)
 幹  事 菊池 和彦(自交総連)(以下略)

(3) 第43回弁護士交流会の開催

 第43回弁護士交流会は1月25日、ZoomをつかったWEB会議形式で行われ、11地方22人の弁護士が参加、中執も傍聴した。会議では、基調報告として、@コロナ危機のなかでの自交労働者の闘い(菊池書記長)、A ライドシェア・ギグ労働の最近の国際的動向(菅俊治弁護士、東京法律事務所)が行われた。

 特別報告として、@割増賃賃金を歩合給から差し引く賃金の最高裁判決、国際自動車事件(中村優介弁護士、江東総合法律事務所)、A割増賃金を歩合給から差し引く賃金での高裁不当判決、最高裁上告棄却、東交通事件(齋藤耕弁護士、さいと う耕法律事務所)、Bコロナ危機を理由にした解雇で仮処分勝利、センバ流通事件 (長沼拓弁護士、一番町法律事務所)が報告され、意見交換がされた。

 国際自動車事件は、一度は最高裁で不当な判断がされたものを再逆転したもので、 割増賃金を歩合給から差し引いて総額が変わらない賃金は、割増賃金を支払ったことにならないということが明確にされた。センバ流通の事件は、コロナによる解雇を無効としたもので、全国的にも大きな 影響を与えたと評価されたが、賃金仮払いが極端に低額にされていることについては、裁判所の全国的な傾向でもあり、警戒を要するとの意見が出された。

(4) 自交共済第40回総会の開催

 自交共済は9月9日、第40回総会をひらき、第38期活動及び決算報告を承認するとともに、第39期(2021年度)の活動計画をきめた。

 自交共済の加入状況は、2928人となっており、総会では加入人員5000人を目標に未加入地方・組合への対策強化とともに、少数組合でも入りやすく、魅力を感じられるように、加入方法の再編や給付内容の改定などの検討をすすめることとした。

以  上




自 交 総 連