99年秋から2000年春闘にむけた闘争の経過と教訓

1.闘争方針で掲げた統一要求と課題


 自交総連は9月7、8日にひらいた第7回中央執行委員会で、「99年秋から2000年春闘にむけた闘争方針」を次のように決めました。

(1) 3つの重点課題を前面に掲げて

 『99年度運動方針(案)は、3つの重点課題として、@生活危機突破、たたかう拠点の確保と拡大、A規制撤廃ノー、将来像を見据えた政策闘争の強化、B苦しみの根源である悪政の打破−を提起している。自交総連は、自交労働者のくらしと雇用、事業の将来にとって、現局面は、まさに『非常事態』であるとの認識にたって、秋から年末、2000年春闘にむけた闘いを展開していく。とくに、規制撤廃ノーの大闘争を強化するにあたっては、タクシー規制撤廃反対闘争方針にもとづき全力をあげる。また、全労連が「緊急3課題」として打出した、@雇用・反失業闘争、A介護保険の改善、年金改悪反対などの社会保障闘争、B戦争法発動を阻止する闘い−の全国的な運動の推進のため、産別課題と結合させてとりくむ。』

(2) 地方別具体化をはかり、総力戦としての運動展開を

@生活危機突破、たたかう拠点の確保と拡大
 1.職場・地域からの反「合理化」闘争の強化
 2.倒産、廃業、撤退・身売りの防止、経営改善闘争などのとりくみ強化
 3.古知資本によるイースタン系列組合への攻撃に産別組織全体の支援強化
 4.最賃法違反の摘発、保障給の設定など「最低基準の保障措置」の確立
 5.供給過剰車両数の減(休)車の実現
A規制撤廃ノー、将来像を見据えた政策闘争の強化
 1.タクシー規制撤廃反対闘争の推進
 2.第6回自教労働者全国交流集会(12月12、13日於熱海)の成功にむけて
B苦しみの根源である悪政の打破

(3) 組織の強化・拡大、実践的幹部の育成を

@組織の強化・拡大
A実践的幹部の育成

(4) 職場要求実現の闘いと春闘準備にむけて

@職場要求実現の闘いと年末カンパ等の実施
 1.職場要求
  1) 退職金の改善、中退金加入と掛け金の増額
  2) 定年延長、60歳から65歳のゾーン方式
  3) 労災見舞金の改善(死亡・1〜4級の場合、2500万円以上)
  4) 年末一時金、その他春闘未解決事項の解決
 2.要求提出=10月20日まで、回答指定日=10月29日まで、11月中決着をめざしてのとりくみ強化
 3.年末カンパの実施

A2000年春闘の準備
 1. 2000年春闘方針(案)は11月中に提起、早めの体制強化を
 2.「働くみんなの要求アンケート」の実施


2.具体的な闘争経過と主な結果


(1) 3つの重点課題を前面に掲げた運動展開について

@地方議会での意見書採択のとりくみ
 地方議会への請願では、7地方が東京都議会はじめ8市3町(12月16日現在)で意見書を採択させる成果をあげました。
 福岡では労働4団体が共同して請願する準備をすすめるなど、新たな共同の前進もありますし、継続審議となっているところや、ひきつづき請願提出準備をすすめている地方もあります。

 意見書を採択した市町名
  北海道=札幌市
  山 形=藤島町、余目町
  宮 城=仙台市
  東 京=都議会、府中市
  広 島=向島町
  大 分=日田市、別府市、中津市、大分町、佐賀関町
  鹿児島=垂水市、名瀬市、串良町、瀬戸内町、姶良町、西之表市

A運輸省交渉と各政党申し入れ
 9月3日の運輸省交渉結果は月報277、99年11月号に掲載してあるとおりです。
 9月21日には、全政党および自民党交通部会会長・副会長8議員への申し入れにとりくみ、政党では、民主党・公明党・日本共産党・第二院クラブ・改革クラブ・新党さきがけ・自由連合の7党を訪問、「外国の規制撤廃がすべて失敗であることは理解した」(民主党)、「ご要望にお応えできるよう奮闘したい」(共産党)などの反応がありました。自民・自由・社民の各党は先方の都合で後日行うことにしました。

B11・17統一行動
 11・17統一行動は各地方でとりくまれ、秋闘の最大のヤマ場となりました。中央では、11日からの東京地連の運輸省前座り込みにひきつづいて、当日は交運共闘の行動として、朝8時半からの宣伝、衆院議面での集会、人と営業車による運輸省請願・交渉を行い、自交総連独自行動として議員要請にとりくみました。
 交運共闘全体で2500人のうち自交総連として2000人、1000台の参加で行動成功に貢献しました。当日は、警察が機動隊を配置、宣伝カーのスピーカー使用を禁止するなどの妨害もありましたが、整然と請願行動を成功させました。運輸省交渉の結果は、月報278、99年12月号に掲載してあるとおりです。議員請願では、当初全議員を予定しましたが、事前の集約で参加者が少なかったため、日本共産党の49議員にしぼって訪問、要請しました。
 全国的には、26地方で3000人、1255台の営業車が参加、宣伝や運輸局・支局交渉、座り込みなどをくりひろげました。

C議員要請ハガキのとりくみ
 衆参両院 752人の全議員に総計4万枚の規制撤廃反対の要請ハガキを送るとりくみは、11月はじめに各地方にハガキを送付、11月中(遅くとも年内)に投函することとしました。各議員の宛名書きや切手を貼るという手間のかかるとりくみになりましたが、12月7日現在、2万5000枚以上の投函を確認、ぞくぞくと各議員にハガキが到着しています。

Dイースタン、カイナラ争議支援のとりくみ
 産別組織全体の支援強化をはかることとした古知資本によるイースタン系列組合への攻撃に対しては、9月9日に、群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・京都・大阪からの参加で古知資本系列労組全国連絡会議交流会を開催しました。
 一旦退職、一時金ジャックなどの攻撃にさらされていた東京・イースタンでは、8月に一時金を支給させたのにつづき、10月28日に一旦退職は撤回させたうえで新賃金について合意し集約しました。
 千葉では足切り以下の早退扱い・賃金カットなどについて労基署から是正勧告を出させたのをはじめ、埼玉・神奈川(バス)でも闘いが継続中です。また、ストを理由に委員長が解雇され、大阪高裁で不当判決が出されていた奈良・カイナラ労組の事件では、高裁判決が、争議権を否定し労働組合への偏見に満ちた異常な内容であることを考慮、最高裁での逆転勝利をめざす闘いに全国的な支援をつよめることとし、本部と地本で各地方に協力の要請書を送り、本部顧問弁護団も上告理由補充書の作成にとりくむこととなりました。

Eその他のとりくみ
 その他、全労連などのよびかけに応えて総連本部として参加した行動、集会等は以下のとおりです。
10月21日 10・21統一行動 於東京・日比谷野音
10月29〜31日 99年日本平和大会 於山口・岩国基地周辺
11月5〜6日 交運研第4回交通問題 研究会 於熱海・ニューフジヤホテル
11月10日 11・10国民大集会 於東京・明治公園
11月20日 全労連結成10周年記念集会 於東京・国際フォーラム
12月8〜15日 介護保険、年金改悪反対座り込み 於国会前

F自教の文部省懇談、全国交流集会の開催
 自教では、文部省が高校での交通安全教育に教習所を活用することを打ち出したことを受け、10月7日、同省と懇談しました。12月12、13日には、自教労組共同センターの全国交流集会が熱海でひらかれ、11地方、3単産、 115人が参加して、政策闘争などの交流を行いました。

(2) 組織の強化・拡大、実践的幹部の育成

 組織拡大では、9月以降3地方で4組合141 人が新規加盟しています。
 幹部の育成では、ほとんどの地方で9〜11月の間に定期大会がひらかれましたが、その際には学習会や記念講演を組み入れて行い、学習を実施しています。

(3) 職場要求実現の闘いと春闘準備

 要求は10月31日までに20地方で提出、年末一時金(年間で春に決まっていないところ)や退職金改善などを掲げてたたかいましたが、全体としては、理不尽な「合理化」攻撃ははねかえしているものの、「金のかかる要求には応えられない」などとする経営側のカベを突破するには至っていません。
 そのなかでも自教では、東自教が11月17日、12労使の集交で81万1000円という年末一時金をかちとり、妥結しました。全体の相場が前年の十数%減となるなか、前年比 2.4%、2万円の減にとどめる健闘といえます。
 その他、地方ごとに独自の課題をかかげた闘いでは、各地で経営改善・再建の闘いにとりくんでいるのをはじめ、大分、福岡、石川などでケアワークドライバーの講習、福岡・直鞍地区での個別減車協定による減車のとりくみでの前進などの成果をかちとっています。また、京都地裁裁判官によるタクシー労働者を蔑視する「雲助表現」問題では、地元京都地連が即座に抗議を申し入れるなど機敏に対応、全国的に抗議の輪を広げるきっかけをつくりました。
 長期争議組合では、企業閉鎖・全員解雇の攻撃とたたかっていた広島・安全タクシー支部が11月2日、職場を確保し全員雇用という勝利の和解をかちとったのをはじめ、茨城・関鉄水戸(一方的賃下げ、地労委)、徳島・吉野川(配車差別等、行訴地裁)、高知・土佐ハイヤー(不当解雇、地裁)で勝利的和解、神奈川・都南自教(賃金差別、高裁)では勝利判決をかちとっています。
 2000年春闘アンケートは11月末締切りでとりくみ、12月16日現在、26地方1万0300枚の集約となっています。


3.闘いの評価

(1) 3つの重点課題を前面に掲げた運動展開について

@生活危機突破、たたかう拠点の確保と拡大について
 生活危機と厳しいリストラ「合理化」攻撃の嵐のなかで、労働者のくらしと権利を守る砦である労働組合の役割はますます重要になっています。自交総連は、秋からの闘いの中でも、この労働組合の原点ともいえる機能を発揮して、反「合理化」や企業再建・経営改善など労働者を守って奮闘してきました。
 とくに、古知資本に買収されたイースタン労組の闘いで、東京では一旦退職、月例40%の超低賃率攻撃を打ち破り、解決に至りました。労働条件の点での一定の譲歩を余儀なくされた面もありますが、古知資本がねらった組織と権利を根こそぎ破壊するというもくろみをうちやぶり、組織を守り今後のたたかう拠点を確保した点が重要な教訓といえます。千葉、埼玉、神奈川(バス)でも果敢に闘いを継続しています。

A規制撤廃ノー、政策闘争の強化について
 規制撤廃を先取りしたタクシー供給過剰の弊害が現実化するなか、99年春闘での自交総連の闘いは、マスコミ・世論を大きな影響を与えましたが、秋からの闘いのなかで、この流れはいっそう顕著になってきています。
 政党・議員の関係では、自民党のなかに「規制緩和を見直す会」(武藤嘉文会長、 152議員)が11月9日に発足、武藤会長は「(総務庁長官として)規制緩和を推進したが…緩和策は正しかったのかと反省している。特にタクシー業界をいじめてしまい、申し訳なかった。マイカーが増加しているのに需給調整をやめたら、全体がオーバーフローになるのは間違いない」「閣議で決めても過去に何度も変えたことはある」(東京交通新聞99.11.15付)と述べています。また、同党タクシー・ハイヤー議員連盟(江藤隆美会長、153議員)も「規制緩和推進の閣議決定の破棄・修正」に言及しています。
 マスコミも「『偶然』の影響が大きいタクシーに、規制緩和はどこまで有効か」(朝日新聞 99.11.30付)などの報道にみられるように、いっそうの姿勢の変化がすすんでいます。
 こうした変化は、11・17統一行動をはじめ、7月以降の各地方での国会議員・地方議員要請や地方議会での意見書採択、全国会議員へのハガキ要請などのタイムリーな行動によって促進されてきたものであり、この点に確信をもつ必要があります。
 運輸省も、表面的には既定路線は変更しないとの姿勢ですが、「『暗中模索』に近い状態が、続いている」(前同朝日新聞)と報道されるように、規制撤廃でタクシーが「よくなる」確信を持てていないことは明らかであり、今後の私たちの闘いいかんによって、姿勢を変えさせること、また、解散・総選挙を含めて国会での「タクシー破壊法」成立を阻止することは可能性を切り開いてきました。
 一方では、11・17行動での警察権力の異常な対応にみられるように、労働者の運動が世論に大きな影響を与えることを恐れて、それを妨害する動きも現れていますので、警戒を怠らずに、ひきつづき闘いをすすめていくことが大切です。
 自教では、学校教育の中での教習所の活用という課題が大きく前進しました。文部省との懇談で省側は、高校での交通安全教育に教習所に協力を願いたいとの態度を表明しましたが、従来は「教員でない者に生徒を教えさせられない」としていたことから考えると、大変な変化です。今後の教習所の事業活動にも大きな影響をあたえるものです。

(2) 組織の強化・拡大について

 組織の拡大については、「非常事態」を反映して、大幅な賃下げやリストラ「合理化」の攻撃にさらされている労働者が自交総連に加盟してくる例もうまれていますが、全国的には、情勢に見合った拡大のペースとはなっていません(11月末現在3地方4組合141 人、前年は12月までで10地方12組合214+α人)。
 新加盟の例はいずれも、「客待ちを不就労として賃金カット」「病気療養中に退職強要」「大幅賃下げを強行」など切実な事情によるものです。同様のケースで苦しんでいる例は全国各地に多数あるはずです。こうした仲間の苦しみに応える宣伝、組織活動が求められています。とくに、秋闘のなかでも重点とした不安定雇用労働者の組織化については、ひきつづき力を入れてとりくむ必要があります。

(3) 職場要求実現の闘いについて

 自教では、年末一時金をはじめ、支部要求でも前進をかちとりました。これは、集交を成立させ、統一行動を配置して精力的に団交をすすめた結果の成果であり、厳しい経済状況下であっても、たたかえば一定の成果が得られるということを示しています。
 一方、ハイタクでは、要求の提出自体が20地方にとどまっていることに加え、要求を出したところでも統一的、計画的に団交をすすめたり、統一行動を配置して力を集中してたたかうという面で弱点があり、率直にいって不十分な結果となっています。
 もちろん、異常なまでの営収の低下と規制撤廃の攻撃という、たいへん厳しい情勢のもとでの闘いであり、賃下げ「合理化」、権利剥奪の攻撃と正面からたたかって、労働条件・権利を維持しているという点では、たいへん奮闘しているという点は評価できます。しかし、生活危機を突破するために少しでも実利・実益が必要だという組合員の切実な要求との関係では、いっそうの奮闘が求められています。
 要求を出せなかったところ、出しても十分な闘いが組めなかったところでは、どこに弱点があったのかを分析するとともに、要求実現を阻んでいる政治・経済情勢についてもよく目を向けて学習し、現状打開の展望を示していく必要があります。
 地方ごとに独自の課題を掲げた闘いでは、規制撤廃阻止の全国的な闘いと連動して、地方交通政策の確立、介護タクシーやケアワークドライバーの拡大、減車のとりくみなどで前進をかちとっている地方があります。全国の地方でも、これらの先進的なとりくみには大いに学んでいく必要があります。

  以  上


 


自 交 総 連