自交労働者No.538、2000年6月15日

タクシーの将来像掲げ
新たな闘いへ
第5回常執 「悔いのない闘い」に確信


 自交総連は6月6、7の両日、第5回常任中央執行委員会をひらき、道運法「改正」法の成立という事態を受けて、今後の闘い方について協議しました。7日には運輸省の馬場崎総括補佐官を招き、今後の運輸省の作業日程について説明を受けました。

 会議では、タクシー破壊法反対闘争と春闘の中間総括について論議。春闘は主要な地方で、「合理化」攻撃を押し返し、現行賃金体系維持?解決金支給などの内容で解決の方向に向かっています。
 タクシー破壊法反対闘争では、「悔いのない闘いをしよう」との意思統一のもと、各地でかつてない奮闘をした報告がのべられ、東京地連からは、22回の座り込みで1度も動員目標を下回ったことがなく、送り出した組合、参加した組合員が大きく成長した、などの経験が語られました。
 最後まで闘ったことが附帯決議や今後の闘いに生かされることを確認、「タクシー破壊法成立をうけての今後の闘争について」(案=別項)を論議し、7月の中執に提起していくことになりました。

 破壊法成立後の闘争について(案)
 「タクシー破壊法成立をうけての今後の闘争について」(案)は、法成立という新しい事態のもとで、第2幕、第3幕ともいうべき、政省令策定時の歯止め策、タクシーのあるべき将来像を掲げた闘いをよびかけています。
 第1に、供給過剰による交通事故の増加、悪貨が良貨を駆逐する業界再編、「合理化」・組織破壊攻撃など矛盾の拡大が想定されることから、台数規制の必要性は今後も訴えつづけていきます。
 第2に、タクシーの将来像を掲げた新たな政策闘争が必要となり「タクシー運転免許構想」の重要性が増します。運転者の数による台数制限の実現も展望しつつ、地域に密着した政策提起とその実現を重視していきます。
 このことを前提に、(1)タクシー運転免許の実現、(2)改正道運法の政省令策定にむけた歯止め措置の要求、(3)アルバイト・累進歩合などの排除、(4)地域に密着したタクシーの発展
などの基本方向で闘います。

 附帯決議は最大限尊重
 運輸省が説明 施行は2001年10月以降
 常任中央執行委員会の2日目、運輸省自交局旅客課馬場崎靖総括補佐官から、今後の運輸省の作業日程などについて説明を受け、質疑を行いました。
 馬場崎氏はまず、衆院で11、参院で13の附帯決議が付けられたことについて、異例な多さだが、国権の最高機関が決議した内容については最大限尊重していく、と述べました。
 今後の予定は、法の施行期日は、1年半くらいは間をおき、2001年10月1日以降となるが、まだ確定していない。とくに運行管理試験の準備には時間がかかりそうだとの見解を示しました。
 政令・省令、運用基準(通達)の策定については、まず政令・省令の改定作業をすすめ、つぎに運用基準という順になる、形式改正の部分以外は、通達もふくめて、事前に案を示して広く国民的な意見を聞くこととしたい、政令・省令は年内にはやりたい、としました。
 つづいて質問に答えて、つぎのような見解を示しました。
 ◇累進歩合の禁止については、労働省の分野だが、我々もまじめにやりたい。運輸省の監査で怪しいものは積極的に通報していく。
 ◇近センの指定地域については、附帯決議で慎重にといわれているので、必要性の高いところを慎重に考えていく。
 ◇運賃の認可に当たっては地域の平均くらいの人件費を見積もったうえで水準を示したい。ダンピングは、あればみつけて取り締まり、処分する。
 ◇緊急調整措置の範囲は、最低が営業区域で、もっと大きい範囲になることもある。適用は運輸局の意見も聞いて本省で決める。

 法違反企業が83%
 ハイタク企業の監督結果 過当競争で過去最悪
自動車運転者を利用する事業場に
対する監督結果(1999年、労働省)
 





労基法違反
改善基準
告示違反
全体
労働時
間違反
全体
最大拘
束時間
違 反
トラック
2,016
1,471
(73.0)
977
(48.5)
1,128
(56.0)
787
(39.0)
バ  ス
38
21
(55.3)
10
(26.3)
16
(42.1)
11
(28.9)
ハイタク
382
317
(83.0)
240
(62.8)
225
(58.9)
174
(45.5)
注:下段の( )内は%
 ハイタク企業の労基法違反率は83%、改善基準告示違反率は59%。労働省が明らかにした99年の監督結果は、いずれも過去最悪でした。
 労基署が昨年1年間に、自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督結果をまとめたもの。
 トラック、バスの違反率も高くなっており、いずれの業種でも規制緩和と不況による過当競争のしわよせが労働者に寄せられていることを示しています。
 違反の多さも異常ですが、監督を実施した数が、89年の1080件から99年は382件に激減しているのも重大です。
 道運法「改正」附帯決議で、改善基準告示の遵守や指導監督の徹底がうたわれていますが、これを実践するならば、監督数を増やし、違反を徹底して取り締まることが必要です。

 通常営業運収4万円割る仙台、大阪の実車率は30%台
 安全運転実態調査
 今年の安全運転実態調査がまとまりました。運送収入はテスト車(労働時間を守って運行)、通常営業とも前年からさらに低下し、通常営業の5地方平均が14年ぶりに4万円を割り込んでいます。
 地方別の運収をみると、東京がテスト車、通常営業とも前年比横ばいだったものの、他は軒並み低下、福岡テスト車は1割近くも減りました。実車率では、仙台テスト車が34・2%、大阪同も37・1%と、いずれも最低を記録しました。
 テスト車と通常営業の差をみると、各地方とも、走行キロで6-52キロ、運収で1613-7155円の差があります。労働時間を守っていたのでは運収が上がらないため、通常営業は時間を延長しているということで「安全運転で食っていけない」ことを証明しています。

2000年安全運転実態調査結果
 
テスト車(A)
通常営業(B)
差(B-A)
差(B/A)
調査日
走行
キロ

Km
実車


運送
収入


走行
キロ
Km
実車


運送
収入

走行
キロ
Km
運送
収入

走行
キロ

運送
収入

調査
組合
のべ
台数
仙台
260
-1.5
34.2
-1.4
33,037
-5.1
271
-1.5
38.3
1.3
38,884
-1.1
11

5,847

104

118

4/2-8
5
35
東京
272
1.5
42.7
-1.4
46,427
1.4
300
-1.0
44.6
2.8
52,152
1.9
28

5,725

110

112

4/10-16
22
214
神奈川
229
-6.9
46.1
-0.4
39,663
0.9
235
-9.6
47.4
9.7
41,276
-6.0
6

1,613

103

104

4/10-16
14
168
大阪
212
-0.9
37.1
-0.5
29,851
-2.5
222
-0.9
38.8
-1.3
34,777
4.2
10

4,926

105

117

4/20-26
7
98
福岡
182
-1.6
45.6
6.0
23,576
-9.4
234
-2.1
40.2
-3.8
30,731
-6.2
52

7,155

129

130

4/10-16
1
70
平均
231
-1.9
41.4
1.2
34,511
-2.2
252
-3.1
41.9
1.9
39,564
-1.4
21

5,053

109

115

 
49
585
注:下段は前年比増減(%)

安全運転実態調査
運送収入、実車率の推移(平均)


 水揚げアップし、乗務員にやる気
 福岡・直鞍労組 2割減車を合意
 【福岡】福岡県の直方市と鞍手郡の3つの町を合わせて直鞍地区といいます。13社230台のタクシーが走っています。直鞍地区労組(筑豊、日の丸、松川支部)は、今春闘で2割減車協定をかわしました。
 20年程前には、郡部より直方市内の方が運収が良かったのが、その後、直方市で新免認可され、郡部の方が市内より運収があがるようになり、93年には、直鞍労組の要求で、市内のタクシーを鞍手町に移したこともありました。

 最賃以下がほとんど
 直方市の人口は約6万人で、8社149台、過剰率は159%です。98年の1日1車あたりの運収は1万8000円で、労働時間は月300時間以上です。
 運収は91年より25%減って、最賃以下の乗務員がほとんどです。
 96年春から本格的な減車のとりくみがはじまりました。春闘で、日・祝日の2割休車協定をしました。松川では第二組合が反対し、実施まで3か月かかりましたが、日・祝日の運収が平日と変わらなくあがったことで、第二組合からも評価されました。

 昨秋から8回の交渉で
 昨年の秋闘で「需給調整委員会」を設置させることを支部で合意し、昨年12月に発足させました。
 委員会は、筑豊地区タクシー協会直鞍支部小野部会長と、筑豊・日の丸の責任者と直鞍労組で構成し、最賃以下の労働者をなくすことを目的に、8回の交渉で減車に合意しました。
 協定後、小野部会長は「よそが減車しなくても、ひまわりグループだけでも減車して、緊急調整措置を発動させるよう働きかけ、住民の足を守りたい」と決意を述べました。
 「減車するときは、低運収者はクビになる」などの噂が広がるなど、苦労もしましたが、担当車問題やダイヤ変更も無事に解決し、7月1日から15台が減車される予定です。

 先行実施で増収効果
 先行して、1月から2割減車を実施している松川タクシーでは、昨年一時金の足切り260万円以下が12人だったのが、今年は、欠勤が多かった2人だけでした。減車をしたことで、乗務員のやる気や責任感に変化がでたり、思わぬ効果が出ています。

 (福岡・広瀬早美)

供給過剰で長時間の客待ちをしいられる直鞍地区
のタクシーだが、減車に期待が広がる=直方駅前





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