自交労働者No.560、2001年6月15日


 東京では10年で2.3倍に
 2000年の交通事故統計が明らかになりました。タクシー・ハイヤーの人身事故は前年より2582件(11%)も増えて2万5624件。タクシー1000台当たりの事故件数も前年より10・3件増えて99・7件となりました。
 とくに、大都市での急増ぶりが顕著で、東京では91年と比べて2・3倍の7996件(1000台当たり144・4件)となっています。

 安全運転できる労働環境を

●タクシー1000台当たりの事故発生件数ワースト10
  2000年
1 神奈川 200.4
2 福 岡 148.1
3 東 京 144.4
4 埼 玉 130.2
5 大 阪 111.4
6 兵 庫 99.8
7 京 都 97.5
8 香 川 95.0
9 北海道 88.4
10 千 葉 82.8
 タクシーの交通事故は91年までは減少していましたが、92年から増加に転じ、98年からは年率10%を超える激増ぶりです。
 91年はバブル崩壊で不況に突入、98年は段階的規制緩和で増車が認可された年です。この間、タクシー1台当たりの乗客は年々減り運転者の年収は80万円も減少しています。まさに、これと反比例して事故が増えてきたことがわかります。
 「流し」営業主体の大都市部では、乗客が減れば、お客を求めて労働時間を延ばしたりスピードをあげることになります。過労運転、注意力減退、乱暴運転が事故の増加につながっています。
 来年2月の新道路運送法施行を前に、規制緩和がもたらすこの実態を広く利用者・国民に知ってもらうことが大切です。

 政策実現のとりくみ拡がる
 第5回常執春闘の中間総括を討議
 自交総連は6月5、6日、第5回常任中央執行委員会をひらき、春闘の中間総括と次年度運動方針(案)骨子について討議。また、第24回定期大会を10月10、11日の日程で東京・KFCホールでひらくことにしました。
 春闘総括では、回答プラス妥結組合の現況が、ハイヤー・タクシーで35%(現行賃金維持が大勢、一部で協力金、解決一時金などを獲得)、自教は46%(東京9社9労集交4000円、全体的に集約の方向)、観光バス・トラック他は19%(「合理化」がらみで長期化)との報告をうけての討議では、『きびしい結果』であるが、よく頑張り、他産別の労働組合と比較してもよくたたかったとの意見が全体的なものでした。
 さらに、「提案型春闘」(東京)「仕事おこし春闘」(大分)などに象徴されるタクシーや自教の職場・地域政策の実現を求めるとりくみが拡がっていることが明らかにされました。
 そうした反面、南海グループの第一交通への身売りにともなう攻撃や自教の相次ぐ閉鎖など情勢面でのきびしさが増していることにも、いっそう警戒心を高め必要な対策をとっていく重要性が浮き彫りになりました。
 運動方針(案)づくりの討議では、「労働組合存立の原点に立って、自交総連の本領発揮を」「新たな政策闘争の前進にむけ、闘争基盤の確立を」「悪政推進を許さない国民的共同の前進を」の3つを、運動の基調とするなど論議を重ねました。

 運収が80年代に逆戻り
 実車率は最低の40.6% 2001年安全運転実態調査
 2001年の安全運転実態調査がまとまりました。今年は宮城・東京・神奈川・大阪・福岡の5地方でのべ354台の車両を使い、通常営業した車両(通常車)と労働時間を守り安全運転で営業した車両(調査車)の統計をとりました。
 5地方平均の運収は通常車が3万8881円で昨年比683円の減収。調査車は3万5112円で昨年比601円の増収になり、ほぼ昨年と同じ水準になりました。
 しかし、ピークだった、91、92年との比較では通常車で1万1450円約27%の減収、調査車で1万1898円約25%の減収になっていて、調査車では4年連続3万円台となりました。
 長引く不況の影響をまともに受け、91、92年から10年間、毎年運収が下がってきていて実車率も過去最低を記録しました。
 運収が底を打ち回復傾向という新聞報道もありますが、今回の自交総連の調査では1984年当時の水準に逆戻りしていて依然として「長時間労働しなければ食っていけない」という過酷な状況が続いています。
 また、来年2月には規制緩和により増車も出てくるおそれもあり、いっそう悪化する危険性もあります。
 「安全運転で食える賃金」とするためには、実効ある運用基準の策定をはじめ、需給のバランスを回復する手立てが必要です。

 巡回タクシーに関心 佐賀関町
 運転委託は継続したい 臼杵市
 大分地連・自治体と会談
日田市と会談する自交総連の代表=4月19日
 【大分】大分地連は県下全自治体に提出していた「第4次提案」に基づき、自治体と会談を行いました。
 4月19日には日田市との会談を行いました。大石昭忠市長は、過疎バスの廃止問題が浮上していることをあげ、住民の足の確保に関する「総合的な協議の場」を設けることを約束しました。
 4月26日には佐賀関町との会談を行いました。首藤正芳町長は、「福祉巡回タクシーに関心を持っている。導入のための問題点を研究している」と述べました。
 5月8日には津久見市との会談を行いました。市側は大分地連の提案と説明を聞いて、「このような情報は参考になります」と答えました。観光客に食事の提供が困難なことが明らかにされました。
 5月11日には臼杵市との会談を行いました。市側は「学童送迎や議長車の運転委託を継続したい。介護保険に基づく移送のサービスは今後の検討課題」と回答しました。

 残業代請求したら賃下げ
 静岡・富士急石川タクシー 国会議員へ要請
瀬古衆議院議員(共)に養成する富士急石川タクシーの代表=6月7日
 残業代を請求したら報復の賃下げ―静岡地連富士急石川タクシー労組は会社の非常識な攻撃と闘っています。
 同社はオール歩合で残業・深夜割増賃金が一切支払われていなかったため組合は昨年、労基署に申告し是正勧告が出されました。
 しかし会社は、支払わざるをえなくなった割増賃金を取り戻そうと本給部分を一方的に賃下げしてきました。
 組合では、こんなことを許したら法違反の是正を申告することもできなくなるとして反撃しています。
 会社の不当なやり方に怒って組合員は10人から20人に倍化、富士急グループの会長が自民党堀内派会長の堀内光雄衆院議員(山梨2区)であることから「元労働大臣の堀内氏の会社で、こんな非常識が許されるのか」と6月7日に国会議員に要請を行いました。
 日本共産党の瀬古由起子衆院議員は「これはひどい」と即座に厚生労働省に電話し、担当者を国会に呼び事情を調べることを約束させました。
 静岡・山梨の各議員の部屋では「議員も関心を示していました」「堀内さんのところが…。恥ずかしいことですね」など強い関心が示されました。

 新加盟のなかま 
 個人加盟労組を結成 (646)東京・南部地域労組
 【東京】5月16日、南部地域労働組合(岡崎浩一委員長)を結成し、自交総連に加盟しました。
 各ブロックに1人で入れる個人加盟労組をつくるとの東京地連の春闘方針にそって、結成されました。営業譲渡によって未組織職場に移っていた労働者10人が結成と同時に加入し、東京地連に加盟しました。
 各職場での運動が期待されます。

 自交労働者と選挙 1 タクシー破壊を進めたのは誰か
 道運法改悪に賛成した各党にはまかせられない
 7月29日投票の予定で参議院選挙が行われます。自交労働者のくらしは、政治と密接にかかわっています。この選挙でどんな選択をすればいいのかを探っていきます。

 タクシー破壊法を成立させたのはどの党か
 自交総連が総力をあげて反対運動にとりくんだタクシー破壊法(道路運送法改悪)は2000年5月、タクシー労働者の抗議の声を無視して強行成立させられました。
 この法案に賛成したのは別表のように自公保連立与党のほか民主・自由の各党です。これらの政党に自交労働者の願いを託せないのは明らかです。
 もともと、日本共産党を除く各党は、農業つぶしの農産物輸入自由化、中小商店をつぶす大店法の規制緩和など、自由化・規制緩和についてその速度を競い合ってきました。
 いま、規制緩和の徹底による「構造改革」を掲げる小泉内閣の誕生で規制緩和の流れはいっそう加速しかねない状況です。
 参院選では、これに歯止めをかける選択をすることがタクシーの安全と労働者の生活を守ることにつながります。

 タクシー破壊法審議での各党議員の発言
 【自民党 実川幸夫衆院議員】本法案につきましては…ぜひ早急に審議をし、成立をしていただきたい、そういう旨の陳情を受けております。そういうことを考えますと、まさに時宜を得た法案ではないかなというふうに思っております。
 【公明党 赤羽一嘉衆院議員】タクシーまたバスの需給調整規制を初めとする規制緩和についての法案に臨むに当たりまして、経済の規制緩和は基本的には進めていくべきだ、これは私たちの党の考えでございます。
 【保守党 松浪健四郎衆院議員】私のところにも、各方面からこの法律を一日も早く成立させてほしいという要望が届いております。
 【民主党 前原誠司衆院議員】大きな流れとしての需給調整規制の緩和、と同時に、労働者の方々あるいはその事業そのものをいかに守っていくのか…そういう観点からも議論をさせていただきたいと思います。
 【日本共産党 平賀高成衆院議員】規制緩和ではなくて、きちっと規制をかけて、質のいい、安全なタクシーをつくっていくというのが世界の流れだと私は思いますから、まさに、こういうタクシーの規制緩和をこれからどんどん進めていくというのは中止をするべきだということをこの際改めて私は要請します。

タクシー破壊法(2000.5成立)への各党の態度
政党名 賛否 法案への態度
自民党 ●賛成 連立与党としてタクシー破壊の法案を提出、官僚とともに、業界の懐柔をはじめ成立を強引に推進
公明党 ●賛成
保守党 ●賛成
自由党 ●賛成 規制緩和については与党以上に推進する立場で、法案にも賛成
民主党 ●賛成
社民党 ○反対 法案に反対するが早期採決を了解
共産党 ○反対 最後まで徹底審議を要求して政府を追及。自交総連の署名の紹介議員となり、共同で実態調査も実施


自 交 総 連