タクシー労働者と男子常用労働者の労働条件比較(2000年)がまとまりました。
年収格差は過去最高の238万円となり、92年以降9年連続して差がひらく結果となっています。労働時間は逆にタクシーのほうが493時間も長くなっています。
1時間当たりの賃金で比べると、男子常用の2679円に対してタクシーは1205円と半分以下にしかなりません。
地方別では、年収格差の額の最高が大阪の321万円。比率では島根の32%が最も差が大きくなりました。島根では3分の1以下ということです。37地方で半分以下でした。
詳しい一覧表は『自交労働者月報』4月号に掲載しています。
【注】自交総連独自の集計ですので数値は業界紙などとは異なります。
脳出血での障害に労災認定 |
連日の残業、連勤で蓄積疲労 |
【山梨】山梨地連甲府名鉄労組は、乗務中に脳出血を発症、療養中の秋山さんの労災認定を3月7日にかちとりました。秋山さん(発症時59歳)は2000年5月、乗客を乗せて目的地に到着した直後に脳出血で倒れ、半身マヒと失語症の症状でリハビリ中です。
家族と組合では、会社から検診結果、勤務表、運転日報などを入手して分析したところ、発症前6か月で月平均80時間以上の時間外労働、明番後5〜7時間しか間をおかず連勤しているなどの実態がわかりました。定年を前に成績優秀でないと再雇用が難しいとの思いもあり、公休出勤を重ね、売上はいつもトップクラスでした。
組合では家族を励まし、県労連や「山梨過労死と労災問題を考える会」の医師・社会保険労務士らと協力して、甲府労基署に労災を申請。ビラをつくり「明日はわが身」と宣伝、署名活動にもとりくみました。
山梨県でタクシー労働者の脳出血が労災認定されたのは初めて、脳・心臓疾患の労災認定自体も2例目です。秋山さんの妻は「労災は泣き寝入りが多いが、みなさんの支援のおかげです。ありがとうございました」と話しています。
一時金は月例給と不可分 |
高知地裁 部分的な協約破棄は無効 |
【高知】高知地連明神観光ハイヤー労組は、一方的に一時金が不支給とされていた事件で2月26日、高知地裁より一時金を支払えとの全面勝利判決をかちとりました。
同社の賃金はいわゆるAB型で、組合と会社は、オール歩合で月例給は営収の46・7%、夏一時金として6か月営収の7%、冬は同9%という期間の定めのない労働協約を結んでいます。
ところが会社は2000年2月、協約中の一時金部分の条項を破棄すると組合に通告。同年夏・冬の一時金を支給しませんでした。
判決は、賃金を月例給と一時金に分けた趣旨は、本来賃金として受領すべき金額を社会保険負担軽減のために分けたのであり、月例給と一時金は「不可分一体」であり、協約の一時金部分のみを解約することは許されないと判断、一時金を支給することで経営が破綻に瀕するとも認められないとして、会社に原告18人へ計812万余円と利子を支払うよう命じています。一時金の分離給としての性格を明確に認めた判断が注目されます。
【大阪】大阪地連金剛自動車労組は、「合理化」をのまないとしてジャックされていた一時金を支払えとの仮処分決定を、大阪地裁堺支部より3月5日、かちとりました。
会社は2001年春闘で祝祭日手当、特勤(公休出勤)廃止などの「合理化」を提案、別組合と協定を結ぶ一方、提案を拒否した自交総連組合に対しては、特勤を禁止、同年冬の一時金を支払いませんでした。
決定は、新しい合意ができるまでは従前の合意が適用されるとしたうえで、(1)一時金の計算方法について、会社の禁止で特勤ができないのだから、特勤をしたことを前提に算定すべきと判断。(2)組合の主張どおり払うと別組合と合意した条件と公平を欠くとの会社の主張についても、「組合各自の団体交渉権を否定するに等しい」として退けました。
さらに、(3)組合員らの月額給与は15〜20万円程度であり、一時金が支給されることを前提に生活してるから、保全の必要性があるとして、7人に対する計119万余円の仮払いを認めました。
|
セキタクシーで導入した車イス専用車。軽自動車を改造して車イスごと乗れる |
【大分】大分地連の自主経営会社のセキタクシーでは昨年末、車イスのまま乗り降りできる軽自動車をタクシーとして導入、今年に入り連日、稼動しています。
軽自動車のタクシーは福祉輸送に限り認められており、定員は車イス使用者・付添者・乗務員の3人。後部座席を取り外して、備え付けのスロープで乗り込めます。
セキタクシーでは乗務員がヘルパーの資格をとり「車イスの方の外出の楽しみを広げたい」と奮闘してます。
春闘では、大企業でも定昇ゼロが相次いでいますが、上条弁護士から全労連にコメントが寄せられています。
◎
1、定期昇給は、労働者の生活を支える重要な労働条件であり、多くの経営で就業規則の中に、「昇給は毎年1回行う」と明記されている。そして、定期昇給の具体的な金額は通常、就業規則か就業規則に基づく給与規定・給与表によって、1号上位の号俸を基準に特定されている。
2、これを使用者が一方的に凍結して所定の昇給期に支払わなければ、所定の賃金の不払いとなる(労基法24条違反)。そして使用者は最高30万円の罰金(労基法120条)。
労働者が承諾しても、労使が合意しても、労働基準法第24条違反の使用者の刑事責任は消えない(扶桑商運事件、大阪高裁 昭25・2・4判決)。判例は一般に、使用者が社会通念上、通常の経営者としてなすべき最善の努力をした場合には刑事責任を免れるとしているが、判例は、この最善の努力という点を厳格に解している。
3、刑事罰はともかく、使用者は就業規則違反、すなわち労働契約違反の違法が明白。昇給分の賃金請求権は2年間は時効にかからない。
もし、労使協定で定昇凍結を決めても、定昇のような重要な労働条件を侵害する措置を、組合員の意見を十分に反映しないまま急いで妥結した場合は、そのような協定は、これに反対する組合員には法的拘束力をもたない(参考=中根製作所事件、最高裁第3小法廷 平12・11・28決定、原審東京高裁 平12・7・26判決)。
「改正」道運法の最大の特徴は台数規制の廃止です。これは労働者・利用者の利益に反する間違った政策ですが、運用基準で定められた基準の厳守と国土交通省が国民に対し国会で約束し言明したチェックの確実な実行が大切です。
2月から施行された「改正」道路運送法は台数規制をなくしました。企業はタクシーを基本的に自由に増やせるようになり、新規参入もできるようになったということです。
この措置は、自交総連が繰り返し指摘してきたように重大な間違いです。欧米で失敗し結局、再規制をせざるをえなかったように、その過ちはいずれ必ず国民の前に明らかになるでしょう。
すでに、各地では企業の身勝手な増車の動きが相次ぎ、新規と合わせて全国で2000台を超えようとしています。その結果は、1台当たりの営収のいっそうの低下になることは明白で、そのつけは労働者と利用者にかぶさってきます。
自交総連は、必要な再規制とタクシー運転免許の法制化を求めて、たたかいつづけます。
運用基準を守れ
自由とはいえ、実際の新規・増車の許可については、次のような運用基準が設けられています。
新規参入の場合は、営業所・車庫、所要資金の確保のほか、運行管理者(40台に1人)、運転者(必要数を常時選任)の確保などの条件をクリアしなければ許可されません。
車庫などは、たんなる書類審査ではなく、現地で確認させることが必要です。
運転者の確保
運転者の確保は、最も重要な点で、運用基準で明記されている「適切な乗務割、労働時間、給与体系」、定時制の場合の「雇用契約の内容」「社会保険加入の有無」「適切な乗務割、乗務日時の決定」などについて、すべてを確実に守れる計画になっているのかをチェックさせる必要があります。
増車については、届出で済むことになるので、事前チェックには限界がありますが、増車後に「必要な運転者を常時選任していなければ処分の対象となる」「(それでも)守らなければ再度、処分ということになる」(2月1日の自交総連の交渉での国土交通省回答)と言明しているように、実態を確実に調査させ、処分もさせる必要があります。
積極的な申告が大切
こうしたチェックが確実に行われるためには、労働者・労働組合の役割が欠かせません。もともと運輸局・陸運支局の監督体制は人数的にも不十分であり、すべての会社の違反を常に監視することはできません。違反・違法を労働組合が積極的に摘発し、告発・情報提供していくことが、法令・運用基準を守らせ、無制限な新規参入、増車に歯止めをかけることにつながります。
また、基準は既存事業者にも適用されるものですから、現に違法状態となっているものの摘発も重要です。
【神奈川】川崎市にあるコスモ交通に働く仲間は3月12日、自交総連神奈川地本コスモ交通支部(細田修支部長、30人)を結成しました。
同社には親睦会はありましたが、会社から数年にわたり労働条件の切り下げが強行され、不法・不公正も横行。なんとかしたいと上部団体加盟を視野に、各所を訪ねたところ、自交総連が一番親身に相談に応じてくれたとして加盟することになりました。
自 交 総 連