自交労働者No.580、2002年5月15日

第一交通を監査・指導せよ

衆院・国土交通委員会

大幡議員(共)が追及


第一交通の無法ぶりを追及する大幡議員=5月8日
 日本共産党の大幡基夫衆院議員は5月8日、国土交通委員会で、第一交通の実態を暴露、タクシー労働者の労働条件、累進歩合の廃止などについて政府を追及しました。
 大幡議員は、2月以降、大量の新規・増車が出ているが、政府は供給過剰との認識を持っているのかと質問、扇国土交通相は、客待ち空車の列は承知しているとし「それを見て過剰かと問われれば過剰だ」と答えました。
 大阪でのバラバラ運賃の申請について規制緩和のツケだと追及、国土交通省洞(ほら)自交局長は、4月に運賃の新通達を出したのは、申請されている運賃が消費者の利便に反するものがあったからだと認めました。
 第一交通の実態を把握しているのかとの質問には、厚生労働省鈴木大臣官房審議官が、一方的賃下げや中退金への虚偽の退職届、長時間点呼などについて事実関係を把握、調査していることを明らかにしました。大幡議員が、10年前にも国会で取り上げられた第一交通がいまだに組合つぶしをくり返していると追及すると、洞局長は「輸送の安全に関わる問題については監査に入り、そのなかで労働法違反があれば厚生労働省にも通報する」と答えました。
 累進歩合の横行については、扇大臣が「監査の際、累進歩合が分かれば労働当局に通報していく。両省あいまって指導していく」と答えました。


  

働く仲間は団結しよう


第73回メーデー

戦争法阻止など掲げ 全国372か所で集会

 5月1日、全国各地でメーデーが行われ、自交総連の仲間もそれぞれ参加しました。
 東京の中央メーデーは73回目。労働者の団結、医療改悪反対、戦争法阻止などを掲げて、亀戸中央公園に8万人が参加、3コースのデモを行いました。
 日の丸自交労組は見事な登り龍の張りぼてをつくって参加、龍の腹には「タクシー労働者に食える賃金と眠る時間をよこせ」「これ以上の国民負担は許さないぞ」と怒りのメッセージ。
 一部で雨模様の天気となりましたが、大阪・扇町公園に5万人をはじめ、372か所で集会・デモが行われました。

怒りの登り龍を担いで行進する東京・日の丸自交労組=東京・葛飾区内

あいにくの雨をついて集まり、団結のこぶしをあげる大阪地連の仲間=大阪市内

 東京労働局

労災新基準にそって


過労防止へ労働時間を指導

領家委員長(中央)先頭に東京労働局と交渉する東京地連の代表=4月19日
 【東京】東京地連は4月19日、東京労働局に対して「改正・道路運送法の施行に伴なう労働諸条件に関する要請書」を提出、交渉しました。
 対応した村田、滝沢両監察監督官は、道路運送法の処分基準との整合性については具体的な回答は避けたものの、長時間労働・過労問題については、労災の新認定基準で、過労の判断期間が従来の1週間前から6か月になったことを強調、「過重労働については新基準の6か月を基準に労働時間をメインに指導していく」と回答しました(同基準の通達を掲載)。
 また、累進歩合制や地域最賃についても、「具体的な事例をもとに、違反かどうか判断したい。違反であれば指導する」と回答しました。

福祉タクなど東京都と交渉

 4月24日には、東京都との交渉を実施。
 ロードプライシング(都心部への進入車両への課税)に伴なうタクシー課税については「都の実施案ではない。意見を聞いて整理している段階」と答えました。
 また、移動制約者の移動の権利を保障する要求については、ユニバーサルタクシー(ワゴン型の多用途車両)導入への助成はひきつづき実施すると答えましたが、福祉タクシー券増額やシルバータクシー券の新設については、「福祉タクは区市町村の問題」「包括的な補助制度は検討していない」と、福祉に冷たい石原都政そのままの対応でした。


 近畿運輸局

運賃原価に疑問なら認めず

労働条件をチェック

近畿運輸局と交渉する大阪地連の代表=4月9日
 【大阪】大阪地連は4月9日、近畿運輸局と交渉、局から真砂旅客二課長らが対応しました。
 組合側は、「事後チェックの強化」をいう運輸局に、健康破壊や過労死、事故増大を生み出す超長時間労働、無権利の労働者の実態を本当に把握できるのか、と追及しました。
 相次ぐ運賃ダンピング申請について局側は、「自動認可枠を下回る運賃申請については、個別審査で厳正に行う」「原価計算など申請に疑問があれば認めない」「労働条件については、慎重・厳正に審査を行っている。処理後もさらにチェックを強化する」と答えました。
 増車については、「増車後、事業者のチェックは5、6月にかけて実施する。運転者の充足率や稼働率が悪い企業については減車を指導する」と回答しました。
 また、第一交通問題について「今後も安全輸送に支障をきたすことがあれば行政指導を行う」と答えました。


 神奈川

同一運賃守れ

全事業者に要請

 【神奈川】神奈川地本は4月5日、運賃競争の抑制を求める要請を全事業者に送付、同一地域同一運賃の堅持を要請しました。
 要請は、先に大量増車の自重を求める要請を出したのにつづくもの。大阪などでバラバラ運賃や割引の申請がされていることをあげ、適正な運賃こそ事業の健全な発展と労働条件に欠かせないと指摘、「同一地域同一運賃、上限張り付き」を今まで通り堅持することを求めています。
 ある経営者から「組合の言うとおりだ」と地本に電話がかかってくるなど、さっそく反響がありました。


  

法違反80%、告示違反55%

厚労省監督結果

「事後チェック」に不安

 ハイタク企業の労働関係法違反は80%、改善基準告示違反は55%――厚生労働省は01年中の自動車運転者を使用する事業場の監督結果をまとめました。バス業では、労働関係法違反58%、改善基準告示違反49%でした。
 【解説】8割が法違反、告示違反も半分以上という実態は、現在の集計方法になった92年以来、毎年つづいています。
 この高違反率の常態化は、法律を守る意識が極めて薄いハイタク事業者の実態を示すとともに、規制緩和と引きかえに政府がやるという「事後チェック」の限界をも示すものです。
 しかも、監督実施数が89年の1080から376事業場(ハイタクのみ)にまで減っていることは、事後チェックそのものさえできる体制があるのかとの疑問を生じさせるものとなっています。
 厚生労働省の改善基準告示は2月から国土交通省告示ともなりましたが、労働組合の監視が欠かせません。

ハイヤー・タクシー業の労働関係法、改善基準告示違反

ハイヤー・タクシー業の違反率の推移
1989 1996 1997 1998 1999 2000 2001
監督実施数 1080 417 361 370 382 385 376
法令違反
同 率

333
79.9%
278
77.0%
284
76.8%
317
83.0%
304
79.0%
299
79.5%
告示違反
同 率
569
52.7%
237
56.8%
199
55.1%
214
57.8%
225
58.9%
210
54.5%
206
54.8%
 注.−は調査・集計の項目が異なる


 厚生労働省

残業は月45時間以内に

過労防止の通達

労災発生には司法処分も

 厚生労働省は今年2月、「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」との通達を出しました。昨年12月に脳出血等の労災認定基準を緩和したことを受け、長時間労働の防止をはかる方針を示したものです。タクシー事業には当てはまる部分が多いので、長時間労働の是正に活用できます。
 【解説】労災認定基準の緩和では、過重労働について、時間外労働が発症6か月前から月45時間を超えていると業務との関連性が強まり、2〜6か月間に月80時間を超えているか1か月間に100時間を超えている場合には労災と認めるとしています。また、不規則な勤務▽拘束時間の長い勤務▽交替制・深夜勤務▽精神的緊張を伴う業務などが負荷要因となるとしており、タクシーはほとんどが当てはまります。
 この基準を受け、通達では過労防止のため事業者がとるべき措置として、(1)時間外労働の削減(2)有給休暇の取得促進(3)健康診断の徹底実施などを定めています。
 時間外労働は月45時間以下とするよう求め、45時間を超えている場合は産業医等の助言・指導を受ける、80時間を超えている場合は当該労働者に医師と面接による健康指導を受けさせることなどを義務づけています。
 そして、過重労働による労災を発生させた事業場で労基法違反があった場合には、司法処分を含めて厳正に対処するとしています。 (自交労働者月報2月号に認定基準、5月号に通達を全文掲載)


  
核兵器のない地球を


平和大行進が広島へむけ出発



東京・夢の島を出発して都内を歩く平和大行進の隊列=5月6日
 核兵器のない地球を――2002年原水爆禁止国民平和大行進が5月6日、東京・夢の島の第5福竜丸(米水爆事件の被害船)展示館前を出発しました。
 アメリカが「テロ支援国家」対策などとして核兵器使用を依然公式の方針として掲げ、小泉政権が有事法制=戦争法の制定をねらうなか、平和への願いを込め、北海道・沖縄から広島へ全国を網の目のように歩き継ぐ平和行進が計画されています。
 自交総連の仲間も参加して平和をアピールしました。


 「改正」道路運送法−どこが変わった? どこがダメ? どう活用する?
 〉連載 5〈〈〈

勤務時間等の基準告示

 「改正」道路運送法では、従来から厚生労働省告示として決められていた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を国土交通省告示としてタクシー運転者の勤務時間の基準としました。違反には行政処分があります。

厚労省「改善基準」を国交省も告示

違反には行政処分、減点

 改善基準とは
 厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準)は89年にそれまでの通達から告示になり、法律に準ずるものとして事業者が守るべき基準とされました。何度か改正され、現在の基準は下表のようになっています。
 しかし、この改善基準は、法律ではないため罰則、強制力がなく、あくまで行政指導として事業者に「守ってもらう」という性格のものにとどまっていました。このため、実際には守られることの方が少なく、厚生労働省の監督結果でも、毎年、半数以上の事業場が違反しているという状況がつづいています(参照)。

  厚労省の告示が国交省の告示に
 今回、「改正」道路運送法の運輸規則で、運転者の勤務時間及び乗務時間の基準を国土交通大臣が告示で定める(第21条)ことになりました。
 その基準として厚生労働省の改善基準がそのまま国土交通省告示ともなったわけです。

 違反には行政処分と減点がある
 国土交通省告示となったことにより、違反事業者に対して車両停止などの行政処分ができるようになりました。
 処分の基準は、(1)告示の設定違反=初犯車両停止10〜30日車、再犯30〜90日車(2)告示の遵守違反=初犯10〜40日車、再犯30〜120日車となっています。
 さらに、「改正」法とともに実施された違反点数制により、車両停止10日車で1点、51点で事業停止、81点で許可取り消しなどの処分が行われることになります。
 従来は違反しても何のペナルティーもなかったのが、行政処分がされることにより一定の違反抑制効果が期待できます。

  実際の処分には監視が不可欠
 しかし、厚生労働省の監督結果にみられるように、違反の監視体制はきわめて不十分で監督数も年々減っている実態です。
 国土交通省の監視体制についても同様の懸念が消えず、人員の点からも充分とはいえません。
 労働者・労働組合が悪質事業者、増車事業者等について積極的に監視、申告・告発し、行政処分をさせていくいくことが、違反をなくすためには不可欠です。

「改善基準」告示の内容(タクシー)
  日勤勤務 隔日勤務
拘束時間 1か月 299時間
1日原則13時間
最大16時間
1か月 262時間
2暦日21時間
休息期間 継続8時間以上 継続20時間以上
休日労働 2週間に1回以内、かつ、1か月の拘束時間および最大拘束時間の範囲内
 注 拘束時間は、車庫待ち等の特例があり、一定の延長が可能となっている。


自 交 総 連