自交労働者No.582、2002年6月15日 |
営業収入は20年前と同じ |
安全運転実態調査 限界を超える労働 |
自交総連が毎年実施している安全運転実態調査(注)の結果がまとまりました。実車率は調査開始以来の最低を更新、営業収入は20年前と同じ低い水準にまで落ちています。
仙台・東京・神奈川(横浜・川崎)・大阪・福岡の5地方平均で、運送収入はテスト車が前年より5%余り下がって3万3244円。通常営業は3万6867円で、ともに1984年を下回る低い数字となりました。
実車率はテスト車が39・2%、通常営業が40・2%で、ともに過去最低です。
テスト車の運送収入の落ち込みぶりを地方別にみると、大阪が91年から2万1187円減(42・4%減)、福岡が92年から1万6911円減(39・4%減)と際立っています。減少率が一番少なかった神奈川でも17・8%の減少となっています。
規制緩和後の影響はまだ出ていない時期の調査結果ですので、今後さらにきびしくなる可能性が心配され、タクシー労働者の労働条件悪化は限界を超えています。
【注】テスト車は労働時間(実働16時間)を守って運行、通常営業は同時期の営業所平均(残業を含む)。詳しいデータは『月報』7月号に掲載します。
2002年 安全運転実態調査結果(自交総連)
テスト車(A) | 通常営業(B) | 差(B−A) | 差(B/A) | 調査日 | 調査 組合 |
のべ 調査 台数 |
|||||||
走行 キロ |
実車 率 |
運送 収入 |
走行 キロ |
実車 率 |
運送 収入 |
走行 キロ |
運送 収入 |
走行 キロ |
運送 収入 |
||||
km | % | 円 | km | % | 円 | km | 円 | % | % | 組合 | 台 | ||
仙 台 | 232 -12.1 |
34.4 7.8 |
30,644 -4.8 |
250 -7.1 |
36.8 2.8 |
35,798 -2.2 |
18 | 5,154 | 109 5.8 |
117 2.7 |
4/1-7 | 6 | 42 |
東 京 | 251 -6.7 |
39.4 -7.3 |
39,975 -11.3 |
282 -6.9 |
40.9 -7.3 |
47,331 -8.7 |
31 | 7,356 | 112 -0.3 |
118 2.9 |
4/8-14 | 23 | 266 |
神奈川 | 226 -5.4 |
46.7 2.2 |
40,878 -3.6 |
225 -5.9 |
47.4 2.6 |
41,884 -1.2 |
-1 | 1,006 | 100 -0.4 |
102 2.4 |
4/15-25 | 7 | 126 |
大 阪 | 197 -2.5 |
37.9 -9.8 |
28,744 -7.8 |
214 -2.3 |
38.3 -4.3 |
30,092 -8.1 |
17 | 1,348 | 109 0.2 |
105 -0.3 |
4/20-26 | 7 | 95 |
福 岡 | 206 13.8 |
37.5 -8.5 |
25,981 4.9 |
231 -1.7 |
37.8 -5.3 |
29,229 -5.6 |
25 | 3,248 | 112 -13.6 |
113 -10.0 |
4/4-15 | 1 | 50 |
平 均 | 222 -3.7 |
39.2 -3.5 |
33,244 -5.3 |
240 -5.0 |
40.2 -2.3 |
36,867 -5.3 |
18 | 3,623 | 108 -1.3 |
111 0.1 |
(計) | 44 | 579 |
第5回常執 |
「国民一揆型」春闘を総括 |
運動方針骨子案を提起 |
自交総連は6月4、5日、第5回常任中央執行委員会をひらき、春闘の中間総括と次年度運動方針(案)骨子について討議。また第25回定期大会を10月8〜10日の日程で新横浜国際ホテルでひらくことにし、大会準備に入ることになりました。
春闘総括では、全労連が呼びかけた「国民一揆型」春闘の提起を受け、現状の危機打開と実利・実益の獲得、事業の将来展望に関わってどれだけの成果を得、運動の前進をはかることができたかを中心に据えて検討。不満足な賃上げ結果の評価にとどまらず、3つの視点((1)労働組合の存在意義(2)参加型での結集(3)将来につなぐ提案型の追求)での分析と評価にもとづいた議論を行いました。
運動方針づくりの討議では、書記局がまとめた「討議メモ」(タクシー運転免許構想の具体的実践と今後の運動の発展方向)にもとづき集中的に議論し、運動方針に反映させることにしました。
九州ブロック運輸局交渉 |
大口割引は10%程度 |
労働4団体が参加 |
九州運輸局と交渉する労働4団体の代表=4月24日、九州運輸局内 |
東北ブロック運輸局交渉 |
1人1車制は監査 |
情報を局・支局に |
【宮城】自交総連東北ブロック協議会は5月21日、宮城・福島・山形の各地連から31人が参加して東北運輸局と交渉、局から田鎖旅客二課長ら4人が参加しました。
交渉では、要請書にもとづき追及、課長は一つひとつの問題に次のようにていねいに答えました。
(1)新規・増車問題について、運転者の選任問題で、本人の同意がない場合は処分する。1人1車制になっている会社は監査に入る。休廃止については、事前に話があればできることはやる。
(2)運賃ダンピングについて、告発の積み重ねが大切。何が決定的になるかは今後検討する。
(3)悪質事業者については、情報を支局・局に対して集中させてほしい。
これらの回答のうえで課長は「それぞれ厳正に対応することで、労働条件や加重労働などによって安全運行に支障がないようにしたい」としました。(宮城・伊藤知広)
代行から暴力団排除を |
高知 公安委員会と交渉 |
【高知】高知地連は5月21日、運転代行、違法駐車問題などで日本共産党の田頭・米田両県議の協力を得て高知県公安委員会、県警と交渉しました。
6月から施行される運転代行法について、組織暴力団の完全排除、白タク行為の禁止等の要請に、上田県警交通部長は、法の趣旨にそって暴力団の完全排除に努めたい。暴対課も来ているので、情報があれば通報してもらいたい、としました。
また、タクシーや代行の違法駐車状態の改善とタクシー乗り場確保については、運転手さんにも生活があるので、警告を与えた上で取り締まる方策などを考慮しながら検討したいと答えました。
大阪・佐野第一交通 |
偽装廃業を画策 |
明白な組合つぶし |
運輸局に許可するなと要請 |
【大阪】はげしい組合つぶしをつづけている第一交通は、組織を維持してがんばっている佐野南海交通労組に対して、廃業・倒産の脅しをかけて、攻撃をエスカレートさせてきています。
第一交通からの申入れにもとづき5月23日、2か月ぶりに団交が行われました。冒頭、会社側は重大な発表をすると切り出し、「経営安定のための努力に対して一部理解のない人たちがいる」、したがって今後、(1)労組との交渉は打ち切る(2)第一交通(本社)からの支援を打ち切り、現取締役は引き上げる(3)支援を一切打ち切るので破産・廃業もありうる(4)廃業した札幌の第一小型ハイヤーの廃業方法をよく知っておられるはず(5)理解してくれる者については新しい職場で守っていくなどあからさまな組合つぶしのための偽装倒産・廃業の手法を通告。組合側が、株式所有者、新社長の氏名などを聞いても一切説明せず、一方的に交渉を打ち切りました。
大阪地連と佐野南海交通労組は5月28日、近畿運輸局に偽装廃業を許すなと緊急の申し入れを行い、現会社廃業、別会社設立などの新規申請は許可するなと要請しました。
福岡地連 |
組合員が出資して設立 |
労働者協同組合方式の新事業体 |
【福岡】福岡地連は、一昨年来議論してきた労働者協同組合方式による「新事業体」設立に向けての一歩をスタート、自主経営の新和タクシーの福岡営業所と前原営業所の新設、事業区域拡大の申請を福岡陸運支局に出しました。
事業参加者は11組合から51人で、運行管理者は組織外から、事務職、業務責任者などは内外から募集していく予定となっています。
福岡営業所(17台)は糟屋郡志免(しめ)町に、前原営業所(6台)は同市内に土地を確保しました。
新事業体は、これまでの自主経営とは一線を画し、労働者が自ら出資(100万円)する「労働者の労働者による労働者のための事業体」であり、財務、運営、業務に参加者が応分の責任を負うものです。新事業のメインは「介護タクシー」で高い水準のサービスを提供します。7〜8月ごろの事業開始を予定しています。
京都地連 |
増車、運賃競争ストップ |
安全輸送守れと声明 |
【京都】京都地連は、相次ぐ増車届出、運賃値下げ申請に対して「タクシー産業の将来と安全輸送を守るため、有害な運賃競争、増車競争はただちにストップを」とする声明を5月24日に発表しました。
京都では、弥栄、MKなどが増車、運賃はアオイグループが下限、数社が遠距離割引の申請をし、さらに京聯も組合の反対にもかかわらず運賃値下げ申請を行いました。
声明では増車、運賃値下げによって一番の犠牲を被るのは労働者であり、タクシーの社会的使命である安全輸送が確立されないと指摘、世界一の京都のタクシーにするために、地域協議会や乗り場委員会等の機能強化をはかり、タクシードライバー法の制定などを追求することをよびかけています。
「改正」道路運送法−どこが変わった? どこがダメ? どう活用する? 〉連載 7(最終回)〈〈〈 |
協議会と監査方針 |
道運法「改正」を審議した国会での附帯決議にもとづき都道府県ごとにタクシーの地域協議会が発足しています。また悪質事業者排除も同決議で触れられ、新しく監査方針の通達が出されました。
地域協議会は積極的に活用 |
悪質事業者に「重点監査」をさせる |
すでに発足した地域協議会
国会の附帯決議では「タクシー業務の適正化、良質な運転者の確保方策、利用者利便の向上のために、行政機関、関係の事業者団体及び労働者団体等からなる関係者の協議機構を設けること」(参議院)とされました。
これを受け昨年8月に通達が出され、今春までに各都道府県ごとに協議会が発足しました。
自交総連の地方組織があるところでは、ほとんどが構成メンバーに加わっていますが、問題は、これから協議していく中身とその実効性です。
労働条件確保を
決議にある「良質な運転者の確保」のためには当然、労働条件の向上がなければなりません。実態は逆になっているのですから、協議の場で労働組合の代表が積極的に訴えていく必要があります。
事業者や行政代表にまかせていたのでは、協議ばかりで具体的な方策は何も決まらないということになりかねません。
また通達では「最低年1回は開催するものとする」とされていますが、年1回では不十分ですから、必要に応じて協議会がひらかれるようにすることが大切です。
重点を決めた新監査方針
「社会的規制」の強化策として、前回紹介したように行政処分の基準が決められ、点数制が導入されました。
その処分の前提となるのが事業者に対する監査です。
監査方針についての通達では、事業所に出向いて行う監査は、特別監査と重点監査の2種類とされています。
特別監査は重大事故を起こしたり違反点数20点を超える事業者に対して行われます。
申告すれば監査
重点監査は、従来の計画監査に代わり、より機動的に監査を実施できるようにしたもので、◇新規・増車をした◇事故、苦情又は法令違反が多いと認められる◇労働・警察当局から通報があったなどの事業者に対して行われます。
自交総連との交渉でも国土交通省は、「(増車したところは)基本的にはみんなやる」(5月14日、旅客課海谷課長補佐)、「個別に局に言ってもらえば、監査に入る」(2月1日、同氏)と答えています。
法違反行為を労働者におしつけている悪質な事業者については積極的に申告し、監査を実施させて、処分もさせる必要があります。
◎
7回の連載で「改正」道運法を解説しました。悪法でも使える点は活用して労働者の権利を守りましょう。(おわり)
運行代行法が施行 |
認定、マークなど義務化 |
違反には処分 |
運転代行のマーク |
新加盟のなかま |
結成直後に解雇 | ||
(659)福島・会津交通労組 |
【福島】会津若松市の会津交通に働く仲間は6月7日、自交総連会津交通労組(武藤勝弘委員長)を結成しました。
劣悪な労働条件なのに交通労連のハイタク支部は会社のいいなりのため、地連と相談してきました。ところが会社は組合結成を察知すると、ハイタク支部と一体になって委員長ら3人を解雇してきました。自交総連・県労連で支援体制をつくり、不当解雇撤回をたたかっています。
自 交 総 連