自交労働者No.584、2002年7月15日


賃金低下で事故増加

人間らしい労働条件を


 タクシーの交通事故は依然高水準――01年中の交通事故統計によると、タクシーが第一当事者となった人身事故件数は2万4037件となりました。今回から警察庁が統計上の車種区分を変更したために前年より減っていますが、従来どおりの集計方法では2万6192件と過去最高です。1000台あたりの事故件数は93・8(同102・2)件でした。
 タクシー事故は、92年から増えはじめ、運転者の賃金が減るのとまったく対称的な傾向となっています。運送収入が上がらないので、少しでも稼ごうと長時間労働になり、少ない乗客を奪い合うために運転が荒くなることが原因です。
 地方別にみると、事故の多い地方は、流し営業をしている大都市がある地方が上位を占めていて、賃金(運送収入)が下がると事故が増えるという構図がより明確になります。
 安全輸送のためには人間らしい労働条件の確立が必要です。



 第6回常執


激変に負けぬ組織を

方針案を討議 状態悪化許さない


 自交総連は7月10、11日、第6回常任中央執行委員会をひらき、02年度運動方針案などを議論しました。
 討論では、2月1日以降の増車や運賃値下げ競争の激化に対して、◇労働者の意識にも配慮しながら、企業主義に陥ることなく運動すべきだ◇同一地域同一運賃の原則、減車闘争に改めてとりくむ必要がある◇激変のなかでまだ危機感が足りない◇まともな事業者とは協力共同を発展させるなど活発な意見が交わされました。
 今後、9月の中央執行委員会でさらに論議することにして確認された方針案は、(1)これ以上の状態悪化を許さず、労働組合存立の原点に立って、たたかう自交総連の本領発揮を(2)将来展望を切り開く政策闘争の前進、闘争基盤の強化(3)自公保の悪政ノー、全労連強化、国民的共同の前進を3つの基調として運動をすすめることを提起しています。
 さらに、全国的に個人加盟方式の地域タクシー労組を設立するなど、組織拡大の前進をはかることを呼びかけています。
 また、予算案大綱では、厳しい財政状況のため必要な効率化で支出をカットし、将来的には組織拡大で財政状況の打開をはかることにしています。

 茨城地連県

タクシー乗り場がない

陸運支局と交渉

 【茨城】茨城地連は6月13日に陸運支局と20日には県と交渉しました。
 支局交渉では、迎車メーターの返上申請事業者に監査をすることや運転代行業者の違反摘発等を申し入れました。
 県交渉には、共産党の大内県議が立合い、公共施設にタクシー乗り場を求める要請を提出しました。
 茨城県内では今年8月に高校総体が予定されていて、会場となる笠松、ひたちなか両運動公園にはタクシー乗り場がなく、利用者の送迎時にどの場所に着けたらいいのかわからないという混乱も生じています。
 県は「訴えは真摯に受けとめる」としながら立て看板で対応するとの回答にとどまりました。
 大内県議は「運動で県の姿勢も変えていきたい。質問でも議題にする」とし、地連では今後もその他の公共施設にもタクシー乗り場を設置するよう関係自治体に求めていく方針です。


 高知・高南ハイヤー労組

バリアフリーは気持ち

障害者接客へ講習会

 【高知】高知市の高南ハイヤー労働組合は6月19日、「障害者接客講習会」を市の青年センターで実施しました。
 講師に市障害者福祉センターの竹村利道主任を招き、約30人の乗務員が参加しました。
 竹村さんは接客マナーや介助法などを紹介しながら、「福祉車両でなくてもバリアフリーは気持ちでカバーできる」と訴えました。
 またセンターの職員が障害のある客の立場から「障害者にとってタクシーのニーズは交通機関の中で1番高い」と説明しました。
 西添書記長は「乗務員も意識改革につながった。今後も時間をとって認識を深めたい」と話していました。
 全組合員が出席できるよう20日にも講習会を行いました。
 なお今回の講習会の様子は地元新聞、TV等で大きく報道され注目されました。



 東京・青年部

自分たちができることを

救急法の講習会

  救急の講習を受ける東京地連青年部の仲間=6月23日、東京・亀戸文化センター
 【東京】東京地連青年部は6月23日、亀戸文化センターで救急法の講習会を開きました。日本赤十字社から講師2人を招き、4組合37人が参加しました。
 この講習会は、タクシーの事故が増加している今日、応急手当や2次事故の防止など自分たちができる社会的役割を果たしていこうと取り組まれたものです。
 午前中の講義に続き午後から行われた実技では、人形を使っての人工呼吸や心臓マッサージなどの蘇生法などに取り組みました。
 講習会終了後に行われた交流会では「事故はないにこしたことはないが、何かあれば役立てたい」などの積極的な意見が出されました。
 また、タクシー乗務員の地位の向上が叫ばれているなか、社会に貢献し、誇りと自信の持てる職場をめざし今後も活動していく決意を固めあいました。



 聴覚障害者の声


聴導犬もタクシーに乗せて

目で見て分かる対応を

 前号の介助犬につづき、今回は聴導犬使用者の声を紹介します。聴導犬は聴覚障害者に必要な音や危険な音を知らせる大切なパートナー。聴導犬の美音(みお)と暮らす松本江理さん(東京都在住)に聞きました。


  後ろからきた自転車のベルの音を知らせる聴導犬=松本さんのホームページ(聴導犬・美音とゆかいな家族http://plaza16.mbn.or.jp/~matsufamily/)より

 ―タクシーで困ったことがありますか。
 実は昨日もタクシー乗り場で順番で来た運転手さんは「犬は勘弁して!」と言ってドアを閉めてしまい、窓越しに障害者手帳と認定証を見せましたが、見てももらえませんでした。次の運転手さんもいぶかしげでしたが、認定証を見て「聴導犬ですか。どうぞ」と言ってくれ、無事に乗れましたが、時には何台も待たなければならないこともあります。
 ―乗車の際にはどんな注意をしたら安心してもらえますか。
 聴導犬はたいてい足元でうずくまり、おとなしくしています。
 聴覚障害者全般に対してお願いしたい点があります。
 タクシーを利用する際に困ることは、行き先をうまく告げられない、ちゃんと伝わっているか不安ということです。行き先を発話(口で話す)して告げることができても、運転手さんの言葉を聞き取れない、ということは多々あります。

 振り返って話して
 行き先などが不明瞭な場合の確認の場合は、(1)メモに書く=確実ですが、暗かったり、急ぎの場合もあるかもしれません(2)振り返ってゆっくり、はっきりと話す=読話(唇を読み取る)ができる場合もあります。右左折などの確認などには手振りを交えていただければ分かりやすい。
 「分かりました」などもできれば手話(手で胸をなでおろすしぐさ)だとありがたいですが、せめて、うなずくなど、見て「分かってくれた」と分かるようにしてほしいです。

 メールで呼べると
 また、迎車を電話で頼めないということがあります。家の近くでは流しのタクシーが拾えないため、10分ほど離れたスーパーの乗り場に行かなければならず、妊娠中、体調が悪くて医者に行く時などとても困りました。
 FAXやメール、携帯メールなどでの依頼ができれば、自宅への迎車だけでなく、病院など出先からも呼べるので助かります。
 ―これからのタクシーへの要望は。
 外国人客用に英語の勉強会があるように、手話講習会などをしてもらうといいですね。
 もし、「手話ができます」というステッカーの貼ったタクシーがあったら、何台か見送ってでも乗りたいな、と思いますよ。


 労働組合キホンノキ

団結して交渉できる
闘いの末かちとった権利

 不況やリストラ攻撃で低下する労働条件、先行きへの不安自交総連の組合員のなかでも労働組合の存在意義を問い直す声があり、ときには組合不要論さえ聞かれることがあります。労働組合はなぜ必要なのか、本当に組合員の役に立っているのか。その原点と活動の基本を振り返ってみましょう。

(1)労働組合は何の ためにある?

労働者の団結が力
 労働者が給料を上げてもらいたいと思って個人で会社と交渉したら解決するでしょうか。会社がOKするどころか、辞めてくれといわれるのが関の山です。
 このように労働者一人と会社(経営者)とでは圧倒的に力の差がありますが、その力関係を変えることができるのが労働者の団結であり、労働組合です。

団体交渉する権利
 そもそも、経営者に個人で要求を出しても、相手が拒否すれば交渉すらできません。
 しかし労働組合という法律にもとづく組織があれば、労働者の要求をまとめて提出し、会社と団体交渉をすることができます。会社は法的にも団体交渉を拒否できなくなります。
 団体交渉で要求が実現しないときには団体行動をする権利も認められています。

かちとった権利
 このような労働組合の権利は、長い間の労働者の大変な努力と闘いによってかちとられてきたものです。
 労働組合は、機械工業が発展した産業革命の時代、あまりにひどい労働条件と人権侵害に抵抗し、労働者の生活と権利を守る組織として生まれました。イギリスでは18世紀、日本でも19世紀末には誕生しています。しかし、最初は労働組合の結成自体が犯罪とされ、激しい弾圧を受けました。
 日本では戦後、憲法や労働組合法が整備され、労働組合の団結権・団体交渉権・団体行動権が法律で認められるようになりました。
 各職場で労働組合を結成するときにも、会社からの攻撃をはね返す、大変な努力が重ねられてきました。
 そうやってつくった労働組合、あってよかったと思われる組織にするためには常に原点に立ち返り、組合活動の基本をきちんと守っていくことが大切です。


新加盟のなかま
 一時金廃止を決定
 (660)埼玉・三和交通労組

 【埼玉】坂戸市の三和交通労働組合(木村敏夫委員長、54人)は6月2日、自交総連に加盟しました。
 同労組は以前埼玉地連に加盟していましたが、10年程前に脱退、企業内組合として活動していました。
 会社の一時金の廃止に、スト権を確立して撤回させましたが、今後の会社からの攻撃に備えるために加盟しました。
 当時の組合員が残っていて地連の宣伝行動で交流を続けていました。

 上部組織が必要
 (661)東京・さがみ交通ムサシノ労組

 【東京】武蔵野市のさがみ交通ムサシノ労働組合(綱昭治委員長、64人)は6月26、27日、職場集会をひらき自交総連に加盟しました。
 同労組は、企業内組合として職制による処分の乱発反対、専制支配反対や賃下げ「合理化」反対などの活動をしていましたが、「合理化」攻撃の中で上部組織の必要性を強く感じ、昨年の春頃から東京地連へ相談をし今回自交総連へ加盟することとなりました。


自 交 総 連