自交労働者No.600、2003年4月15日

偽装廃業、全員解雇の通告

大阪・佐野第一交通

組合つぶしの暴挙

手を貸した近畿運輸局


 攻撃に屈しない自交総連つぶしのために事業所ごと廃業、全員解雇――第一交通は、新道運法の規制緩和も利用して悪らつな手段を強行。大阪地連ではただちに反撃態勢をとっています。別の営業所を認可し、攻撃の前提をつくった近畿運輸局の責任も重大です。

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第一交通の組合つぶしのための企業進出に市は手を貸すなと抗議行動=1月7日、大阪・泉南市役所前での抗議

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本部も入った交渉で近畿運輸局の真砂旅客2課長は「第一交通から『廃業しない』と説明を受けたのを信じている」と明言していた=1月9日
 4月3日、佐野第一交通の井上道人社長は従業員を集めて「4月15日をもって営業を終了し、16日付けで事業を廃業する。全員を15日付けで解雇する」と通告。あからさまな組合つぶしの偽装廃業の暴挙に出てきました。

組合つぶしに手段を選ばず

 第一交通は01年3月、南海電鉄からタクシー7社を買収、威圧的な攻撃で5社の組合をつぶしました。しかし、自交総連の佐野南海と白浜南海(和歌山)労組は、大阪地連はじめ全国の仲間の支援のもとに、賃金不払い、不当配転、真夏の炎暑下での2時間の虐待点呼、委員長・副委員長の解雇など、あらゆる攻撃に屈せず闘いつづけています。

 このため第一交通は、組合つぶしのために偽装廃業を計画。不動産や車両の所有権をグループ企業に移転したうえ、廃業後の受け皿として、佐野第一交通のすぐ近くに、対岸の神戸にある御影第一交通が営業所を新設するとして事業区域の拡張申請を行いました。

 組合員に対しては、組合をやめれば御影第一で雇ってやる、やめなければ佐野第一で会社ごと廃業・解雇だと脅す一方、区域拡張の認可が必要なため、近畿運輸局に対しては、佐野第一は廃業しない、御影第一の従業員は一般募集するなどと平然とウソをついてきたのです。

無法に目をつぶった近畿運輸局

 区域拡張申請は組合つぶしの偽装廃業を目的とした不純な動機にもとづくものだから認可するな、との佐野南海労組と大阪地連の再三の要請・抗議にもかかわらず、近畿運輸局は、佐野第一交通からは廃業しないとの説明を受けているなどとして、昨年12月に認可を行いました。

 新営業所開設と同時に組合員以外は同所に移籍させ、佐野第一には組合員だけが残されていました。そして、ついに廃業の通告です。道運法の改悪で、廃業についても規制緩和がされ、事後届出だけでいいことになっています。3日には社長と弁護士が近畿運輸局にも一方的に廃業の報告を行いました。

 組合つぶしという目的が明白にもかかわらず、あえてそれに目をつぶって、形式的な書類が整っているからと区域拡張の認可をした近畿運輸局の責任は重大です。悪質企業の取り締まりこそ行うべきなのに、監査もせず認可をしたことは、行政が組合つぶしに手を貸したともいえます。

 佐野南海労組・大阪地連は、職場の確保にむけ、仮処分申請の準備など、緊急の対応を計画、自交総連も全国から支援を強めて、無法な組合つぶしを許さない闘いに立ち上がっています。


第4回中執

4月中決着へ行動ゾーン

  今後の闘い方を検討

 自交総連は4月2〜3日、都内で第4回中央執行委員会をひらき春闘の今後の闘い方について討議し、以下の決定を指令しました。

 (1)労働組合の存在意義示す要求獲得にむかって全力を=4月中決着をめざす統一行動ゾーンとして、「地域宣伝行動」(4月10〜12日)「回答促進の統一行動」(4月15〜18日)「春闘決着めざす統一行動」(4月24〜30日)を配置。解決基準では、『賃下げは認めず現行の改善、プラスαの獲得』『全員の合意にもとづく解決』『将来展望を切り開くにたり得る政策の合意』の3つを重視して臨む。

 (2)くらしと雇用、いのち、平和を守る国民的共同の前進を=イラク攻撃の即時中止、医療費3割負担凍結など国民的課題を春闘と結合し、共同の行動に参加。また、いっせい地方選挙闘争方針にもとづき全力をあげる。

 (3)組織拡大を重視し職場・地域内での加盟促進を=4〜6月を組織拡大月間とし、職場内多数派をめざし対話と宣伝、相談・世話役活動や『自交労働者のしおり』を活用した加入促進をはかる。



国交省交渉

組合つぶしの廃業許すな

終始責任回避の対応

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安全輸送の確保と労働条件の改善を要請する自交総連の代表=4月4日、国土交通省内

 4月4日、タクシーの安心・安全確保と労働者の労働条件改善などに関する要請を権田副委員長ほか6人で国交省に行いました。

 大阪の佐野第一交通が組合壊滅を目的とし廃業する。管理職が交友会に話した組合つぶしの証拠テープも提出済みだ。なぜ対応できないのか。4000万円の債権があり、それを払ってから書類もってこいくらい言えないのか――と権田副委員長が激怒。対応した多門勝良課長補佐は、皆さんの気持ちは分かるが、近畿運輸局の権限なので判断は尊重したい、虚偽でない限り対応できない、などと国交省としての責任問題を回避しました。

 沖縄の緊急調整措置発動でも、駆け込み増車も止められないとの追及に、同課長補佐は、経営者がまともな判断をしてない、想定外だった、など行政側の責任放棄の発言に終始しました。

 タクシー強盗・殺人については、統計はとっていない、警察庁・全乗連などと調整しながら対応していきたい▽道運法80条のボランティア有償輸送の申請の扱いについては、市町村が本気にならないと許可は出ない――などと答えました。


厚労省交渉

介護タクの報酬改善を要請

現状を把握し検討したい

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介護タクシーの報酬見直しを求め交渉する自交総連の代表=4月4日、厚生労働省内

 自交総連は4月4日、菊池書記次長ら8人で厚生労働省交渉を行い、介護タクシーの改善などを求めました。省側は社会援護局、老人保健局、労基局が対応しました。

 大阪から介護タクシーを実施している現場の代表も参加、介護報酬が2100円から1000円に下がったことで利用者負担が増え、利用が4割も減ったと実情を訴えて見直しを求めたのに対し、省側は、運賃を取ることを前提に1000円とした、と説明。

 また、要介護4以上の人は2310円が認められることについて、実態は3以下の人ほど外出・通院の回数が多く、介護タクシーの必要性が高いと矛盾を指摘すると、確かにそのとおりだが、移送自体への支援は介護保険とは別の課題だ、とした上で、「運用の実態をみながら、現状を把握し、考えていきたい」と答えました。

 介護タクシーや障害者支援費の運賃部分に対して地方自治体が助成することには何ら制限はなく、むしろ積極的にやってもらいたいと答えました。



規制緩和の

実態報告ルポ

 規制緩和の実験場――大阪では二十数種類の運賃に増車も1000台。激しい過当競争で事業者のモラル崩壊がすすんでいます。

大阪市内

多重運賃で競争激化

事業者のモラルも崩壊

大阪の多重運賃(自動認可枠内は除く)
遠距離割引
5000円超5割引 52社(うち40社認可)
5000円超2割引 1社(認可)
7000円超3割引 }1社(認可)
初乗中型600円
5000円超3割〜 }2社
7000円超5割引
自動認可の下限以下
初乗2km500円 ワンコインタク(認可)
初乗2km500円 大阪エムケイ (認可)
初乗2km540円 ファイブスター(認可)
初乗2km540円 }さくら3社(認可)
6000円超4割引
 
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客待ちのタクシーがあふれるタクシープール=新大阪駅前
 「ホテルの玄関で花番(先頭)で待っていたのに、後の遠距離割引の車に乗られた」―多重運賃は労働者に無用の苦しみをもたらし、大阪地連のアンケートでは77%の運転者が「多重運賃は悪い」と答えています。出現した運賃は以前からあった自動認可の下限運賃に加えて別項のような多種複雑なもの。利用者にとっても一体どの運賃が安いのか判断できるものではありません。加えて1000台を超える増車です。

 その結果、実車率の低下はもちろん、運賃単価も1キロあたり10円近く下がって、大阪市内の日車営収は大幅に低下、3万円前後にしかなりません。

 この低営収をもたらした過当競争に反省するどころか、一部の悪質事業者は、最低賃金以下の労働者を「稼ぎが悪い」として解雇で脅しています。

 実際に労組副委員長を解雇して裁判でも断罪された三和交通(大阪市)の就業規則は、営収が最賃額と会社経費額(リース料)の合算額を下回るときは解雇とし、ただし「差額を会社に対し補(ほ)填(てん)したときはこの限りではない」というひどさです。同社はリース制で、労働者の時間管理も何もしない無責任経営。規制緩和が生んだ事業者のモラル崩壊の典型です。



タクシー労働実態アンケート

ヒヤリとした経験「ある」が6割


規制緩和で安全輸送は崩壊

 タクシー規制緩和はタクシーの安全・安心を破壊する――自交総連で実施している「タクシー労働実態」アンケートが東京と広島で実施され、東京では646枚、広島では299枚の回答がありました。

 タクシーの台数については、東京96・4%、広島88・0%と、大多数の人が「多すぎる」と回答し、運賃のダンピングについては東京58・2%、広島88・0%と、ともに半数以上の人が「ある」と回答しています。

 また、広島では区域外営業について、77・9%の人が「ある」と回答し、規制緩和で街にはタクシーがあふれ、違法行為が続出していることが現場の声から明らかになりました。

 また、事故やヒヤリとした経験では、東京63・6%、広島45・2%の人が「ある」と回答し、東京では長時間労働で眠気が押さえられない(70・2%)が多く、広島ではお客さんを乗せようと急に車線変更する(85・2%)が多くなっています。

 なお、グラフは右側が東京、左側が広島。質問項目は6項目ありますが、紙面の関係上省略してあります。詳しい内容については月報に掲載します。


タクシーの台数について
広 島 東 京

運賃のダンピングについて
広 島 東 京

区域外営業について
広 島

事故やヒヤリとした経験について
広 島 東 京

長時間労働で眠気がおさえられない
広 島 東 京

お客さんを乗せようと急に車線変更する
広 島 東 京

疲れて安全確認がおろそかになる
広 島 東 京

あせってついスピードを出しすぎる
広 島 東 京


 いっせい地方選挙と自交労働者(3)

タクシー規制緩和、

国民負担増の悪政に審判

国政変革にもつながる選挙

 いっせい地方選挙は地方自治体の首長・議員を選ぶ選挙ですが、全国的に行われるその規模からいっても、国政にもきわめて大きな影響を与えます。

規制緩和の悪政に審判 自交労働者にとっては、タクシー・観光バスの規制緩和という最悪の政策を強行し、さらに、経済政策の失敗で景気をどん底に導き、営収が年々低下するという結果を招いた自民・公明・保守連立政権の悪政に、断固たる回答を示すチャンスです。

 営収の回復に直結する不況打開のためにも、暴走政治をストップさせ、国政の変革につながる結果を出すことが大切です。

国民負担で不況は深刻化 小泉内閣は、医師会はじめ保守層もふくめた国民の声も無視して、4月から医療費アップなどの国民負担増を強行しました。逆に年金などは給付を減らし、負担増とダブルパンチです。

 これでは、多くの人が生活防衛のために、タクシーの利用をますます減らすことは確実です。生活不安からその他の支出も抑えるため不況はますます深刻化。出口が見えなくなってしまいます。

 地方から悪政に審判を下せば、小泉内閣も国民の声を無視できなくなり、医療費を元に戻すことや解散・総選挙の展望が見えてきます。

小泉内閣がすすめる負担増と給付減
4月からの負担増
健保本人負担と家族入院
2割→3割
50%アップ
介護保険料(40〜64歳、労使折半)
月平均2918→3043円
4%アップ
同(65歳以上)
月平均2911→3241円
11%アップ
訪問介護利用者負担
平均2%アップ
厚生年金保険料
年収方式でボーナスの保険料アップ
4月からの給付減
厚生年金(夫婦のモデル)
月23万8100→23万5900円
1%ダウン
国民年金(夫婦満額支給)
月13万4000→13万2800円
1%ダウン
生活保護(標準3人世帯)
月16万3970→16万2940円
1%ダウン


  労働組合 キホンのキ

 (14)組合員を増やすほどつよくなる

 労働組合は数の力と団結によって、はじめて使用者と対等になれます。組合員の数が多いほど力はつよく、要求実現にも近づきます。常に組織の強化と拡大に努力しなければなりません。

未加入者の意識に合わせ訴え

計画を立ててみんなが協力


職場の未加入者

 労働組合は、まず職場内での多数派をめざしましょう。

 最近は雇用形態が多様化していますから、もし組合規約で定時制・嘱託・パートなどの人が加入できない条項があれば、改正して入れるようにしておく必要があります。

 そのうえで、未加入者の意識(会社が恐いとか組合に不信があるとか)を分析して、担当者を決めるなど計画的に加入を呼びかけるようにします。

 なぜ入ってこないのか、組合の側に原因はないのかを率直に分析し、信頼される組合活動になっているかを振り返ることも必要です。

 普段から、生活相談や道交法違反の対策など世話役活動が活発な組合では、信頼を得て組合員が増えています。

企業内・他産別 未組織の組織化

 職場の外に出て行き拡大することも必要です。

 企業内組合しかなかったり未組織の職場ほど労働条件は悪く、それを放置しておけば、やがては自分たちの職場の労働条件も引き下げられかねません。

 地連・地本やブロックなどで計画を立てることになりますが、計画にそって各組合が協力して行動します。

 未組織の仲間は、規制緩和や労働者保護の法律・通達などほとんど知りません。事実と情報を伝えて、組合の利点を訴えます。

 定期的なビラや宣伝カーでの宣伝のほか、普段から組合員が客待ちのときなどに他社の仲間に声をかけて自交総連の宣伝をしておくと非常に効果的です。



自 交 総 連