新型コロナウイルスによる危機突破を

(2020年4月掲載)

 新型コロナウイルスの感染が広がり、政府は2020年4月7日に「非常事態宣言」を出しました。旅行やイベントの中止、外出の自粛などによって経済活動が縮小し、タクシー・バス事業は甚大な影響を受けています。貸切バスは予約がほぼすべてキャンセルされ、仕事がない状態、タクシーは3月以降、営業収入が半減しています。すでに倒産する会社が出ているほか、労働者を解雇する会社も現れています。こうしたときこそ労働組合に結集して、雇用と生活を守りましょう。

 1.労働者の安全・健康の確保

 感染が急拡大しているもとで、不特定多数の乗客と接する運転者の健康を守るために、感染予防対策を充実させることが大切です。
 マスク、消毒薬の支給、換気の徹底やビニール仕切りの設置など、感染予防設備の設置を会社に求めていきます。
 公共交通機関の重要性にかんがみ、国土交通省、厚生労働省にも優先的なマスクの確保などの措置を求めています(2020年3月5日要請済)。
 体調不良や濃厚接触の可能性などがある場合、はっきりとコロナウイルス感染とわからない段階でも早めに休めることが必要です。有給の特別休暇制度の整備を会社に要求しましょう。

 2.法違反、不当解雇は許さない

 乗客の急減でタクシーの売上げが減り、賃金(歩合給)も大幅に減少しています。こうした時期に、犠牲を労働者に押し付ける法違反や不当行為をすることは許されません。
 歩合給の減少で、賃金が最低賃金を下回るケースが出てきますが、最低賃金はどんな時でも支払わなければならないものです。経営者の一部には、最低賃金の例外的・弾力的運用を求めるなどと言って、手待ち時間(停車中の時間)を休憩時間とみなして最低賃金の支払いをまぬがれようとする動きもありますが、このようなことは許されません。
 経営危機を理由に労働者を解雇することは許されません。後述のように計画休業等、危機を乗り越える手段はいろいろあり、制度的な支援、特例もできています。あらゆる制度を使って、手をつくして労働者の雇用を守るのが経営者の責任です。無責任に解雇するなど、コロナ危機を悪用するやり方とは、断固たたかいましょう。そうした場合は、自交総連に相談してください。
 東京・ロイヤルリムジンの乗務員600人「解雇」(退職強要)についてついては、自交労働者情報電子版第 131416号を参照。

 3.計画的な休業で雇用確保、営収回復を

 雇用の確保、営業収入の回復(一人当たり)のため、計画的な休業をする方法があります。
 貸切バスでは全員休業もありますし、タクシーでは半分とか3分の1ずつ、高齢者や持病のある人などを休業として、休んだ人には休業補償を出します。勤務している人は営収回復の効果が期待できます。
 解雇を行わず休業する場合には、コロナ対策の特例で、雇用調整助成金により会社が支払った休業補償の9割(中小企業の場合)の補填がされます。会社と交渉して労使で休業計画を立て、危機を回避しましょう。
 雇用調整助成金のとりくみ、休業補償の決め方については、自交労働者情報電子版第 1214−114−216号を参照。

 4.減収の補填、労働者への直接給付を

 営業収入の急減で経営状態が危機に瀕しています。公共交通機関であるタクシー事業を維持・存続させるために、営業収入の減収分を補填する措置を、国と地方自治体に要求します。
 また、収入が減少している労働者・国民に、現金で直接給付して、生活の維持・安定を図ることが必要です。諸外国ではすでに実施されています。日本の現金給付制度は対象が極端に狭く、ほとんどの労働者には適用されません。制度の改善を早急に求めます。

 5.使える制度・特例の活用

 新型コロナウイルス対策として、雇用調整助成金・時間外労働改善助成金、小学校休業での保護者への補償、現金給付や貸付など、新たに特例が設けられた制度で、使えるものは最大限活用して、雇用確保、労働者の生活保障にとりくみましょう。

新型コロナウイルス関連 緊急にとりくむ方針、活用できる制度(2020.5.12現在)
(政府の方針が変わると、制度が変更になる場合もあります。最新情報を各省庁ホームページなどで確認してください)

1.賃金確保の緊急対策

  項 目 内 容 問題点、要求事項






春闘での賃金改善 春闘は要求を出してとりくみ、改善を求めるとともに、緊急にコロナ対策の交渉をする必要がある 基本的な労働条件の確保、重点要求を獲得するため、春闘要求は貫く(実施時期など弾力的な対応はありうる)
足切りの廃止・減額 営収が大幅に減少するなか、足切り以下で賃率が大きく下がる制度がある場合、緊急に足切りを廃止あるいは引き下げる 足切りの前後で賃率が大きく変わるのは累進歩合であり、改善基準違反なので廃止すべきだが、当面減額させる労使交渉を緊急に行う

2.賃金補償、雇用確保、生活保障のための法律・制度の活用

  項 目 内 容 問題点、要求事項



最低賃金
(最賃法)
賃金が最低賃金を下回る場合は、差額が補填されなければならない 補填した事業者への国の支援策をつくることは必要だが、経営者の一部が要求している最賃法の例外的・弾力的な適用(適用除外)は認められない
出来高払い制の保障給
(労基法27条)
歩合給制度が採用されている場合、労働時間に応じ、一定額(改善基準通達で通常の賃金の6割以上)の賃金が保障されなければならない 労基法では額の規定はないが、改善基準で6割以上とされている。保障給=前3か月の賃金総額÷総労働時間×0.6。保障給が最低賃金を上回る場合、保障させる







年次有給休暇 有休は、理由のいかんにかかわらず、いつでもとることができる 年次有休は本来、病気で使うものではない。病気のための特別休暇を要求して、制度をつくる必要がある
特別休暇 年次有給休暇とは別の病気休暇など特別休暇の制度があれば活用できる。会社が制度をつくった場合、助成金が出る(下記参照) コロナ対策のための緊急の要求として、有給の特別休暇制度をつくって、適用させることを求める。会社には助成金を申請させる
休業手当
(労基法26条)
使用者の責による休業の場合は平均賃金の60%以上の休業手当が支払われなければならない
会社が休業計画を立てて実施した場合、助成金が出る(下記参照)
コロナとわからない段階で労働者が自主的に休んだ場合、休業手当支払いの対象とならない
60%というのは法律の最低基準なので、労使交渉で引き上げることが必要。計画を実施させ、会社には助成金を申請させる
傷病見舞金
(健康保険)
労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12か月の平均の標準報酬日額の2/3に相当する金額が傷病手当金として支給される 最初の3日間は支払われない。その分の補填、支給額との差額を会社に補填させることを求める
労災補償 業務又は通勤に起因してコロナウイルス感染症を発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となる 手続きは事業者になるので、適切に行わせる必要がある



一律一人10万円 一人当たり10万円の現金を支給。所得の減少などの条件はない
(所得が減少した世帯への30万円給付ななくなった)
市町村から郵送される申請書に記入して返送する。世帯分を一括して世帯主が申請すると銀行振込みされる。DV被害者や虐待がある場合は別途手続きで受け取れるので市町村に要相談
国民や野党の声に押されて急きょ補正予算を組み替えて支給することになった。
金額の増額や1回きりでなく継続的な支援になるよう、いっそう声を上げていく必要がある

生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金の特例 @休業で一時的な資金が必要な人、A失業し生活の立て直しが必要な人に、上限20万円貸付、無利子(窓口は市区町村の社会福祉協議会) 貸付なので返済が必要
返済不要の労働者への生活支援を求めていく

3.事業者に対する助成制度・臨時休車等(コロナ対策の特例)

  項 目 内 容 問題点、要求事項


雇用調整助成金の特例 事業活動が縮小(1か月5%以上低下)した事業者が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に、支払った休業手当に対し助成される
助成率は中小企業4/5、大企業2/3、解雇をしない場合は中小9/10、大企業3/4、上限8330円/日(教育訓練加算中小2400円、大企業1800円)
解雇しない中小企業で休業手当の支払率が60%を超えている場合、超えた部分についての助成率は10/10となる(上限8330円/日)
労使協定を結んで、休業計画を立てさせる(貸切バス部門は全休とか、交代で半分ずつ休むとか、65歳以上の者が休むなど)
特例で、計画届の事後提出可、残業相殺の停止(勤務している者は残業できなかったのを変更)、手続の簡素化がはかられているので、ハローワークと相談して事業者が申請する。休業手当の下限は平均賃金の60%、それ以上ならいいので、労使協定で100%に近づけ、平均賃金の算出期間をコロナの影響が出ていない1月以前の3か月平均とするのも可能。実際の支払率に応じて助成金が支給される
助成額・上限のアップ、手続簡素化、期間延長が必要
時間外労働等改善助成金の特例
300人以下の中小企業のみ
〈職場意識改善特例コース〉
新型コロナウイルス感染症対策として、特別休暇の規定を新たに整備した場合、対象経費の3/4(上限50万円)
〈テレワークコース〉
新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入した場合、対象経費の1/2(上限100万円)
緊急に特別休暇制度をつくらせて、就業規則等の作成・変更、労働者への周知・啓発などを実施する必要がある
上限額のアップ、助成条件の改善などが求められる
小学校の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援 臨時休業した小学校に通う子、感染またはその恐れのある子、濃厚接触者の世話のために有給休暇を取得した保護者・親族に給与を支払った事業者に支給した給与の全額、ただし上限8330円/日
業務委託の個人事業主は日額4100円
保護者として休んだ場合は給与を支払わせて、会社に手続きをさせて助成金を申請させる 上限額のアップ、助成条件の改善などを求めていく

タクシー臨時休車
(国交省)
需要の急減により臨時休車(@一時抹消登録A車検切れ状態で保有)を可能とする。自賠責・任意保険、定期点検の義務を免除。業績回復後には復活できる 臨時休車で負担を軽減できるので休業計画を立てる場合に事業者に活用させる
もともと過剰な車両は減車させるべき





売上げが減少した中小企業・個人事業主への現金給付
(経産省)
1月以降どの月でも売上げが半分以下に減少している場合、減収分の12か月分を上限に現金を給付(金額の上限は中小企業200万円、個人事業主100万円) 経産省の持続化給付金ホームページからオンライン申請ができる
個人タクシーは適用される
対象にならない場合が生じて不公平。適用条件の改正を求める


新型コロナウイルス感染症特別貸付
(経産省)
売上減少で当面の運転資金を調達するため、日本政策金融公庫や商工中金が特別貸付。3年間実質無利子、最長5年据置 民間金融機関から借り入れる場合は信用保証協会が保証 貸付条件等は経産省のホームページ参照。倒産危機打開、雇用の維持のために事業者に活用させる
債務等の条件変更 すでに受けた融資の条件変更について、事業者の実情に応じて柔軟に対応するよう金融機関に要請 金融機関による貸しはがしはあってはならない。経営危機の場合、事業者から返済条件の変更を申し出て応じさせる




国税納付の1年間猶予
社会保険料納付猶予
コロナの影響で、国税を一時に納付することができない場合、一定の要件に該当すれば1年間猶予され、差し押さえ猶予、延滞税免除される(国税庁)
厚生年金保険料・労働保険料の納付猶予措置もある(年金事務所、労働局)
猶予は原則1年、納付が免除されるわけではない
被害の大きな事業所・個人には、減税・免除等の措置が必要

リンク
内閣官房 新型コロナウイルス特設サイト

厚生労働省 コロナ関連ページ

経済産業省 コロナ関連ページ

国土交通省 コロナ関連ページ



自 交 総 連