規制緩和は、タクシーの安全・安心を破壊してしまいます

 タクシーの規制緩和をすすめる道路運送法「改正」法案が2002年2月1日から施行されました。
 自交総連は、この法律はタクシーの安全と安心を破壊する「タクシー破壊法」だとして、反対運動にとりくんできました。数の力で悪法が強行されても、法律のひどい内容は変わるものではなく、これから、その被害はいっそう明確になっていくはずです。
 悪法の廃止を求め、タクシー破壊の実行を阻止するために、今後も運動を進めていきます。

タクシー労働者はもう限界

 「走っても、走っても、客はいない」「休みの日にも出勤しなきゃ、食っていけない」……いま、タクシー労働の現場からは悲鳴が聞こえてきます。客待ちタクシーは街のなかにあふれ、運転者が乗っているのに駐停車違反で取り締まられるほどです。
 このひどい現状を、さらに悪化させるのが道路運送法「改正」です。


道路運送法「改正」の内容と問題点

  いままでの規制 規制緩和後 問題点
新規参入
増  車
需要と供給のバランスを考慮した免許制、認可制 車庫の確保など一定の条件さえ満たされれば自由に 無制限なタクシーの増加をまねく
緊急調整
措  置
なし
(需給調整規制で参入・増車は抑制されている)
著しい供給過剰の場合、参入・増車を一時停止する 車が増えたあとの措置であり「後の祭」の可能性が強い。減車はまったく考慮されていない
事業の休止・廃止 認可制 届出制 過疎地ではタクシーがなくなる
運  賃 認可制 認可制だが、ゾーンの幅を拡大 ダンピング競争やバラバラ運賃がひどくなる


タクシー激増で、なくなる安全、増える事故

 政府や運輸省は、規制を緩和すれば、サービスが多様になり、タクシーの利用が促進されるといっています。
 しかし、現在すでに実施されている段階的な規制緩和のもとでも、タクシーの供給過剰は深刻で労働者のくらしが破壊されています。
 このうえ規制緩和されれば、タクシー台数はさらに増え、1台当たりの売り上げは激減、歩合給で働くタクシー運転者の賃金がいっそう低下することになります。
 いまでも年収327万円というひどい実態なのに、これ以上労働条件が下がれば、低賃金を補うための長時間・過労運転からタクシーの安全が破壊され、運転者の質が低下から利用者も安心してタクシーに乗れなくなります。
 あふれるタクシーで交通渋滞や、排気ガス、CO2の増加が引き起こされます。


規制緩和で運転者の収入は減少、事故は急増


規制をなくせばタクシー激増、台数規制は世界の常識

都市名 タクシー台数規制の有無
ニューヨーク 1万2187台に規制
ロンドン 厳しいタクシー運転免許で台数を実質規制(約2万台)
パ   リ 1万4900台に規制
ロ ー マ 5000台に規制
フランクフルト 1712台に規制
アトランタ 68年に規制撤廃、700台が1500台に激増。81年から再規制
シアトル 79年に規制撤廃、350台が850台に。86年から再規制
ストックホルム 90年に規制撤廃、1300台が5000台に。95年から運転者規制強化


安全で利用しやすいタクシーを実現するために

 タクシーを、安全で利用しやすい乗り物にするためには、規制緩和ではなく、必要な規制は維持し、自交総連が提案している次のような政策を実現することこそが必要です。
 自交総連では、身障者やお年寄りがタクシーを利用するさいに、ベッドからタクシーまでの移動、介護を手助けできるように、各地で組合員がホームヘルパーの研修を受けるなど「ケアワークドライバー」をめざす運動をすすめ、利用者からも喜ばれています。


自交総連の政策提言

 1.タクシー事業免許制の維持と減車勧告の実効性強化
 2.移動が制約されている高齢者・障害者が気軽にタクシーを利用できるようにする助成制度、過疎地での乗合タクシー導入など住民の足の確保のための助成制度の改善・拡充
 3.同一地域同一運賃制の原則の回復
 4.公共輸送機関であるタクシーの優先通行権の確立と自動車の総量規制
 5.タクシー運転免許制度の確立とタクシー運転者の社会的水準の労働条件の確保
 6.運転者、利用者の声を反映するタクシー行政の民主化



自 交 総 連