【問い】 会社の経営が苦しいといって、賃金や勤務ダイヤの改悪が一方的に実施されました。こんなことは許されるのでしょうか? 【答え】 一方的な改悪は許されるものではありません。 |
労働条件の基本原則は「労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」(労基法2条)であり、当事者は「その向上を図るように努めなければならない」(同1条)とされています。
ですから、経営者が労働条件を一方的に引き下げることは、本来あってはならないことです。
一方的な改悪に対しては、「余後効」の原則を知っておく必要があります。
一般に、経営者が労働条件の改悪を強行する場合、組合が同意しなければ、経営者は労働協約を破棄してきます。期限の定めのない協約の場合、破棄通告から90日で失効しますが、その場合に従来の労働条件の基準がどうなるかについて、労働省は次のような通牒を出しています(昭25.5.8 労発第153号)
(要旨)
@旧労働協約が失効したにもかかわらず、新協約が締結されず、無協約状態となった場合でも、労働条件は就業規則および労働契約(個々の労働者と使用者との間の契約で、必ずしも書面とは限らない)に従わなくてはならない。
少数組合の権利を認めた判例原告ら(大輝交通労組)に対し、旧賃金協定所定の労働条件と異なる内容を有する賃金協定の一般的拘束力を及ぼすことは、原告ら加入労組が独自に被告会社と団体交渉を行い、労働条件の維持改善を図る努力をすることを無意味ならしめる結果となることから、労働組合の有する団結権・団体交渉権を保障する観点からみて、許されないと解するのが相当である。そして、この理(ことわり)は、旧賃金協定が有効期限を経過し、失効したあとであっても変わるところはない。(95.10.4判決言渡 東京地裁民事第11部 平成5年(ワ)第1673号、同6年(ワ)第21461号賃金各請求事件) |
多数派組合が「合理化」を認めてしまって、少数派の自交総連組合が認めないという場合もよくあります。
多数派組合が4分の3以上の組織の場合、労組法17条の一般的拘束力の規定によって、少数派組合は多数派が合意した労働協約に従わなければならないのでしょうか。
これについては、東京地連大輝交通労組が95年、少数派組合の権利を認めた貴重な判決をかちとっています(囲み内参照)。