【問い】交通事故を起こしたら一方的に給料から弁済金が引かれます。駐車違反で社内の罰金をとられます。こんなことは許されるのでしょうか? 【答え】一方的に差し引くことは違法です。 |
タクシーの交通事故が激増していますが、事故の場合に多額の弁済金を一方的に賃金から差し引く例が後をたちません。また、駐車違反、スピード違反などで労働者から違約金をとる例も増えています。いずれも労基法違反です。
業務中の交通事故の賠償は使用者が負担するのが原則です。かつて神風タクシーが問題となったときもわざわざ「事故の賠償は経営者において負担すること」との国会決議が採択されています。
ところが事故の責任の所在も明確でないうちから、一方的に賃金から控除する場合がありますが、これは違法です。
【賃金は全額払いが原則】
労基法24条で賃金は全額を支払わなくてはならないことが定められており、税金や社会保険料を除き労使協定がない限り勝手に控除することはできません。
【控除額の限度】
仮に控除できる労使協定があったとしても、その金額は賃金から税金・社会保険料を引いた額の4分の1を超えてはならないことになっています。
労働基準法第16条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(以下略) 第91条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の10分の1を超えてはならない。 |
仮に運転者に故意や重大な過失がある場合には、会社が運転者に損害賠償を請求することはありえますが、あくまでその立証責任は会社にありますし、その場合でも労働者が全額負担ということにはなりません。
一般企業での業務中の交通事故につき、損害の公平な分担として労働者への請求が4分の1に制限された判例があります。
自動車の運行で利益を得、労働条件など事故防止には通常以上の配慮義務があるタクシー会社では、会社負担の割合はそれ以上に大きくなります。
違約金というのは、労働者の契約不履行(交通違反で摘発されたような場合)の際に取り立てるものですが、これは労基法16条で禁止されています。
実例として鹿児島の第一交通が、駐車違反をしたら違約金50万円、懲戒解雇されても異存ありません、などという誓約書を書かせていたケースがあります。
こうした誓約書は労基法違反ですから労働者が闘えば無効とすることができますが、労働者が闘わずに認めてしまえば、違法でもそれがが通ってしまうことになります。