(1) 自交総連結成の初心に立ち戻って
2002年春闘は、政府・財界一体となった空前のリストラ「合理化」の嵐、台数規制の廃止を受けてのルールなき大競争の激化という、いまだ経験したことのない事態に直面したもとでたたかわれる。
自交総連は、将来展望をかけての“反撃、初年の闘い”とすべきこの春闘を、『リストラに反対し、底上げと雇用の確保 いまこそ総決起だ2002年春闘』と位置付け、結成の初心に立ち戻り、みんなの知恵と力に依拠し組織の総力をあげてたたかう。
●ガマンせず、「抵抗・反撃」をいまこそ
くらしと状態の悪化は深刻である。タクシー労働者の場合、その賃金は90年以前の水準に逆戻りし、他産業労働者との比較では 229万円という過去最悪の格差が生じる事態となった。「生存する権利」は奪われ、生活保護基準額以下の低賃金が常態化し、地域別最低賃金さえ確保でき得ない状態悪化が広がっている。さらに、生活破綻による自殺・事故死を含む在職死亡の急増と健康破壊、仕事面ではタクシー強盗事件が再び増加するなど生命の危険さえ危ぶまれるケースが後を絶たない。
自教労働者は、総人件費削減、権利破壊攻撃に加え、一方的な企業閉鎖などによる雇用不安が広がっている。ハイヤーや観光バス労働者は、すさまじい賃下げや一時金カットが年々行われ、生活苦がますますひどくなっているばかりか、廃業、分割譲渡、身売りによる失業・雇用不安が深刻化している。
『これ以上悪くはならない、そのうち景気がよくなるのでは…』『会社の言うことさえ黙ってきいていれば、そのうちに…』などの期待や願望は、結局、幻想にしかすぎなかった。
現実を正しく認識しよう。要求討議をていねいに行い、要求を明確にして元気にたたかおう。このまま、ただガマンし、抵抗もせず、黙っていたのでは、事態はいっそう悪化するだけである。
●悪政がもたらした弊害、許すなルールなき競争と地域破壊
いま起こっている大競争時代の到来を想定した生き残りをかけての経営戦略の特徴は、「廃業・身売り(撤退)の激増と寡占化、企業の再編成」と「熾烈さを増す賃金・雇用破壊のリストラ『合理化』」である。これらは、タクシー、自動車教習所、観光バスなど自交関連にとどまらず、業種・産業の枠を超えてすべての労働者にかけられている政府・財界の全面的な攻撃の一環であることを重視する必要がある。
『規制緩和で、これまで政府・財界がうたい文句にしてきた「豊かなくらし」が実現されてきただろうか』、さらにまた『良貨が悪貨を駆逐する社会のシステムが果たして確立されてきただろうか』
タクシーでいえば、政策不況の深刻化とこの5年間の「需給調整措置の段階的緩和」にもとづく増車、運賃ダンピングの競争激化は、供給過剰の深刻化(運収の大幅低下)と輸送秩序の崩壊をもたらしたにとどまらず、際限なき賃率引き下げ、地理を知らない運転者の増加や雇用の不安定化、さらには第一交通や北港・梅田グループなど法を無視し、やりたい放題の手法で買収をはかる悪質経営者の異常な膨張を促進する結果となった。
規制緩和がもたらした供給過剰による『安全』(交通事故の増大)や『環境』(道路交通の阻害・渋滞)、『移動』(生活交通の確保)への影響も深刻であり、失政の矛盾、その弊害はすべて地域に集中している。
(2) 地域をキーワードに、安心・安全をめざす積極的な運動展開を
●懸念されるいっそうの賃金・雇用破壊、労働組合存続の危機
自交労働者をとりまく現状は、「くらしと雇用、いのち」「事業のあり方と将来」「労働組合の存続・維持」のいずれをとってみても、まさに『非常事態』である。
不況の長期化や競争の激化で将来の「経営維持」に不安を持ち、あるいはバブル経済時の投資失敗の処理を資産整理(廃業、撤退)で解決しようとする大手グループなどの生き残り策によって、職場そのものが消滅する事例が、ハイヤー・タクシーのみならず観光バス、自動車教習所でも激増している。生き残りをかける経営者は今後、いっそうのリストラ「合理化」や労働組合の破壊、『企業主義化』(労働組合を企業内に丸ごと取り込んでの生き残り策)を狙い様々な攻撃をかけてくることが予測される。
事態はまさに一変している。春闘をとりくむに際し重視すべきことは、組合の幹部・活動家にとどまらず、すべての組合員が自分達のおかれている現状の背景や情勢について学びあい、情勢認識を一致させる努力を払うことである。
さらには、春闘にとりくむ意義を全体のものにする必要がある。賃上げにとりくむのは春闘の最大課題であり当然のことであるが、今日の情勢では『労働者犠牲の賃下げではなく、組合提案の政策への合意、経営の効率化や自らの経営努力で責任を果たせ』『放漫経営を改善し、健全な経営への転換をはかれ』なども春闘の重要な課題であり切実な要求たり得る。職場段階での要求討議を、そのようなものとして再認識し、すべての組合が春闘に立ち上がるようにしなければならない。
●タクシー運転免許の法制化、『運転者優位のしくみ』の確立へ
現時点における労働組合の役割、とりわけ自交総連に課せられた任務は重大である。
自交総連は、すでに方針として確定し、実践的なものとしてとりくみを開始した『みんなで知恵を出し、全員参加でタクシー運転免許構想の実践を』(2001年10月、「タクシードライバー法と事業の将来」)にもとづく運動を全国各地でさらに推進、強化しようとしている。
「当面する運動の基本目標」の第1は、台数規制と運転者優位のしくみの確立を掲げ、その有効な方策であるタクシー運転免許の制定をめざし、それへの接近をはかる。第2は、安心・安全な輸送の確立、地域交通の一翼を担うに足り得る輸送分野の拡大など地域に密着した公共輸送機関たるタクシーの発展をめざす、ことである。自交労働者と事業の将来を占う規制緩和元年の闘いにあたり、労働組合の存在価値をかけて、その存立の原点をふまえ、たたかう自交総連の本領を発揮していこう。
●地域を変え、世の中を変革する公務・民間共同の運動前進を
不況の長期化と大企業の非情なリストラ「合理化」が横行するもとで、ますます国民の生活破壊と雇用不安は深刻化している。中小企業の倒産は激化し、大型店野放しによる地元商店街の破壊は地域社会と地域経済に深刻な打撃を与えている。また税金による大銀行救済が、金融業界はもとより産業界にもはてしないモラル破綻を招いている。
庶民の家計に対しては、医療、年金、介護でも、社会保障の負担増が無慈悲に押しつけられ、これに消費税増税や超低金利政策が追い討ちをかけている。大企業の身勝手を社会的にも追いつめ、自公保の悪政転換のうねりをつくりださねばならない。そのためには労働組合分野からの反撃を重視し、『国民一揆』型、国民総決起の闘争前進を視野に入れつつ、それぞれの切実な要求を持ち寄っての公務・民間労働者の共同、労働者・地域住民一体となった『下からの変革の共同』の実現などに力を注ぐことが、いま重要な視点となっている。
●組織の強化・拡大は最重要課題、すべてのとりくみとの結合を
第24回定期大会は、『たたかう自交総連の歴史と伝統を生かし、底上げと雇用の確保、団結の力で事業の将来展望を』を中心スローガンとして確認し、どのような事態にも対処できる組織の強化・拡大の必要性を強調。全国の仲間にその面での奮闘を呼びかけた。
たたかう基盤の強化なしに、熾烈化する攻撃に抗してたたかい、歯止めをかけ、あるいは打破し、要求闘争を前進させ、タクシー運転免許構想など将来像への接近をはかることはできない。この春闘の期間を通じて、すべてのとりくみとの結合をはかりながら組織的前進をはかることが決定的に重要である。いまこそ、自交労働者のたたかう底力を発揮し、全員参加で決起し、歴史的な闘いとなるこの春闘で、将来展望を切り開く成果と到達点を築き、組織的な前進をなしとげよう。
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