自交労働者No.657、2005年11月15日

第一交通本社の責任を認定

組合つぶしの賠償を命令

大阪高裁 完ぺきな勝利判決


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勝利判決後の報告集会でお礼を述べる佐野南海労組の堀川委員長(中央)と組合員、左側は弁護団=10月21日
 大阪地連佐野南海労組は、第一交通の組合つぶしによる損害の賠償などを求めていた裁判で10月21日、第一交通本社の責任を明確に認めて、総額8000万円余の賠償を同労組と地連に対して支払えという全面勝利の判決を大阪高裁よりかちとりました。

 第一交通(本社・北九州市)は、01年3月に南海電鉄のタクシー会社7社を買収して以来、卑劣な人権侵害や無法行為をくりかえして、6社の組合をつぶしてきましたが、佐野南海労組は4年半にわたる攻撃をはね返して闘いつづけています。この間発生した争訟事件は、佐野第一交通(旧佐野南海)を会社ごとつぶして組合員全員を解雇した偽装廃業事件をはじめ62件におよんでいます。

 今回の判決は、第一交通のさまざまな無法行為に対して、佐野南海労組と大阪地連が、違法行為に対応するため余儀なくされた支出や組合員の減少に伴う損害賠償、精神的苦痛に対する慰謝料を求めていたもの。委員長・副委員長の解雇と不当配転事件が併合審理されていました。

 1審の大阪地裁堺支部は04年4月に、違法行為を直接行った佐野第一交通の責任はもとより、それと共謀し指揮命令したとして第一交通本社の責任を明確に認め、佐野南海労組と地連に対する損害賠償を認める判決を出していました。

 今回の高裁判決は、本社関与を地裁以上に明確に認定。第一交通本社の買収当初からの思惑を、「組合が激しく抵抗することが当然予想され」るが「第一交通には、労働組合の抵抗を抑えてきた実績とそこで獲得した手法の蓄積と、それに長けた人材がそろっているので、これを駆使して、労働組合に対して強硬な姿勢で臨み、労働条件の切り下げを求める」と考えていたと認定しました。

 また、佐野第一の偽装解散についても、組合が抵抗をやめなかったことを原因として指摘しており、偽装解散・全員解雇事件でも、重要な武器となる内容となっています。



名義貸し取り締まれ

仁比参院議員(共) 運行管理等で判断との答弁


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質問する仁比議員=10月25日、参議院国土交通委員会
 参議院国土交通委員会で10月25日、日本共産党の仁比聡平議員が規制緩和後のタクシーの実態ととりくみについて質問しました(2面に同党小林議員の質問主意書の関連記事)。

 現状認識について国土交通省の宿利自交局長は「1台当たりの収入が減少を続け、運転者の収入が低迷しておることは、非常に残念な事態と認識している」と答えました。

 大阪などで違法な名義貸しが横行していることについては、「道路運送法で名義貸しは禁止されている」としたうえで「運転者が事業者の監督指揮下にあるか、運行管理が適切に行われているかどうかを主たる要素として判断している。事業計画違反が確認できれば行政処分を行う」とし、車両の持ち帰りや点呼を受けずに営業に出ることは「極めて問題」と答えました。

 福岡の半額運賃が却下されたことについては、「原価計算を行った結果、運送収入が運送原価を大きく下回っており、認めると他の運送事業者間で不当な競争を引き起こすおそれがあり却下した」としましたが、労働者の賃金などの実態を運賃の審査基準に組み込むべきとの指摘には、「事業者が最低賃金とか労働関係法規を遵守することを前提に(認可を)しており、その後問題が生じれば監査等で厳正に処分する」に留まりました。

 規制緩和後の対応の総論として、北側国土交通大臣は「タクシー事業は大事な公共交通の一つと思っております。したがって、利用者の安全確保が最大の役割でないといけない。そのために国土交通省として、監査体制の充実や関係省庁との連携をはかり事後チェック体制を強化していく。違反した事業者は厳正に処分をしていく」と答弁しました。



質問主意書

過酷な労働実態告発

小林参院議員(共) 政府答弁は責任回避


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小林みえこ参議院議員
 日本共産党の小林みえこ参議院議員は10月28日、「タクシー業界の過当競争とタクシー運転者の過酷な労働実態に関する質問主意書」を提出、11月4日付で小泉総理大臣の答弁書が返ってきました。

 質問主意書は、規制緩和後の過酷な労働実態を指摘、(1)最近10年間の賃金・労働時間の統計の明示(2)賃金低下の現状をどう認識しているか(3)減車や運賃水準の適正化の方策(4)大阪の名義貸しについて(5)規制緩和検証の実態調査をすべき(6)タクシー運転免許の法制化――について聞いています。

 答弁書は、統計を集計しておらず「お答えすることは困難」という無責任な回答を含め、「『行き過ぎた値下げ競争』が生じているとは考えていない」「運賃及び料金は適切なものとなっている」「運転者の資質は確保できているものと考えている」など、責任回避の論調になっていて、国交省の不真面目さが現れています。

 しかし、タクシー運転者の労働条件の向上は重要な課題と認識しているとし、事業者においても台数の増減にかかわらず労働条件の改善に努める必要があると考えていることや、監査体制の充実、関係省庁との連携を強化すること、事業者の法令違反については厳正に対処すること――などを明らかにしています。



九州運輸局

半額運賃を却下

収入が原価下回る


 九州運輸局は10月18日、北九州交通圏の遠賀タクシーが申請していた半額タクシーの運賃申請(初乗590→300円、加算80→40円、距離は変わらず)を却下しました。

 申請企業は、半額にしたら需要が増えるから減収にならないなどという試算を示していましたが、福岡地連をはじめタクシー労組や北九州タクシー協会も、明らかな原価割れのダンピングだとして認可しないよう強く求めていました。

 審査期間は通常の倍近い5か月に及びましたが、同運輸局は、原価計算したところ、半額にしても需要はせいぜい1・5倍にしかならず、想定される収入が原価を下回ることになり、他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがある、として却下しました。

 半額は却下されましたが、初乗り500円のワンコインタクシーをはじめ、自動認可の幅を下回る値下げは各地で認可されており、今後も労働者を犠牲にした値下げ競争が引き起こされる危険性は消えていません。



プロジェクト発足

タクシー免許法制化へ

学識者を交え論議

4月に報告シンポ


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第1回タクシー運転免許法制化プロジェクト=11月4日、自交共済会議室
 自交総連は11月4日、第1回タクシー運転免許法制化プロジェクト会議をひらき、関西大学安部誠治教授、全運輸福田昭生委員長、顧問弁護団の板垣光繁、小賀坂徹、須藤正樹各弁護士と、本部4役、宮城・東京・神奈川・京都・大阪の書記長が参加、タクシーの現状を分析、対策を話し合いました。

 会議では、安部教授から、バスではタクシー以上に規制緩和の弊害が出ているが、まだ社会問題化していないのは抵抗勢力=労働組合の力が弱いからだ、タクシーではマスコミも労働者に好意的な論調でとりあげていて、その点は有利な点だ、との指摘も受けて、現状打開のための方策を議論。以前の需給調整をそのまま復活させることについては困難と問題が大きいことから、運転者の質の規制を強化して実質的に台数規制にもつなげるというタクシー運転免許の有効性が改めて確認されました。

 今後、減車や値下げ反対の当面の緊急対策とともに、タクシー運転免許の具体的中身の整理・充実、法制化していく方法について議論していくことになりました。

 次回は12月、さらに来年2月にプロジェクト会議を開いて報告をまとめ、4月にシンポジウムを開いて広く社会的にアピールしていく日程を決めました。



東京地連

弁護団と実態調査

大口割引の影響聞く


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のぼりを立てた調査団とともにタクシー乗務員から話を聞く宮坂弁護士(右)=10月11日、東京・お台場フジテレビ前
 【東京】東京地連は10月11日、準備中の国家賠償訴訟弁護団とともにお台場・銀座のタクシー実態調査を行い、9月から大口割引が本格化して1か月余の乗務員の声を聞きました。

 午後9時過ぎから、6人の弁護士を含む18人の参加者がのぼりを立てて調査を開始。お台場・フジテレビ前などでつけ待ちしている乗務員に、「規制緩和は売上げに影響していますか」など11項目の質問について直接話を聞きました。

 大口割引については、ほとんどの乗務員が反対との答え。「割引分を乗務員がすべて被るのは納得できない」「一人では何もできないので組合の力が不可欠」などの声が聞かれました。一部には「反対かどうか言えない」という複雑な心境の答えもありました。

 その後、一方通行の道をタクシーが3列全部埋めてひしめく、銀座1号乗り場への進入状況を視察しました。

 参加した宮坂弁護士は「実態をつかむことが目的だったが、本当によくわかった。乗務員の生の声が聞けてよかった」と、調査に参加した感想を述べていました。

 弁護団では、この実態調査の結果も参考にして、大口割引を誘導している国・国土交通省の不当性を追及する国家賠償訴訟の訴状の具体的な作業に入ることにしています。



福島地連

荒波越えて10周年

盛大に記念レセプション


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盛大に行われた福島地連10周年記念レセプション=11月4日、福島・グリーンパレス
 【福島】福島地連結成10周年記念レセプションが11月4日、福島駅西口のグリーンパレスで行われました。

 1995年9月25日、2単組の小舟で荒波の中に船出して10年が経過しました。規制緩和が実施された現在、たいへん厳しい情勢ですが、安全・安心なタクシーをめざし、団結の力でさらなる発展をめざし奮闘します――と主催者の山崎委員長のあいさつからはじまりました。

 来賓として、自交総連本部の今村書記長をはじめ東北ブロック各地連の仲間、6社の経営者、県労連・各団体の方々、福島運輸支局の支局長・輸送課長も出席し、みなさんから祝辞と励ましの言葉が寄せられました。

 歓談中、マーチングバンドの生演奏があり、たいへん盛り上がりました。

 2次会には、本田タクシーの社長も加わり、みんなと話がはずみ、たいへん有意義な場となりました。話はつきませんでしたが、なごやかな雰囲気のなか終了しました。

 福島地連は95年の結成以来、着実に組織を増やし、単組数は2から9になり、組合員は倍化しています。



新加盟のなかま  (718)東京・ニュートランス労組

貼紙で条件改悪

 【東京】江東区のニュートランスシステム(タクシー)に働く仲間は10月14日、ニュートランス労働組合(中村秀雄委員長、6人)を結成し自交総連に加盟しました。

 同社は新免で設立後丸1年ですが、賃金・労働条件が貼紙1枚で日替わりで改悪されるなど労働者の不満が充満していました。東京地連のビラを頼りに電話で相談、地連とブロックの援助で2回の学習会をひらき結成しました。




減車の実現へとりくみ強化
宮城第29回大会


 【宮城】宮城地連は10月8日、第29回大会をひらきました。

 大会では全国一の増車率で組合員の生活が苦しくなっているが、国家賠償訴訟、適正化協議会での奮闘がマスコミにもとりあげられ減車を求める世論が広がっていることが報告され、国賠訴訟のとりくみ強化、地連の緊急提案にもとづく減車要求、仙台市内運転者の署名、2000人めざす組織拡大などの方針を確認しました。

 役員交代▽副委員長=本間昭(新)

自教の仲間が正式に加盟
高知第24回大会


 【高知】「変えようルールなき競争と格差社会、団結と統一、100人以上の高知地連構築を」のスローガンのもと高知地連第24回定期大会が、10月9日に高知自由民権会館で開催。

 大会は、正式加盟した高知自動車協会(自教)の仲間を加え18人が参加。1年間の総括と運動方針、決算・予算を満場一致で決定しました。

 委員長=曲直P(まなせ)茂行▽副委員長=大野浩祐、中西孝(新)▽書記長=森木良明(中西以外は再)

築こう人並みのくらし
埼玉第34回大会

 【埼玉】埼玉地連は10月12日、今年こそ築こう人並みのくらしと権利 タクシーの未来を!、のスローガンのもと第34回大会をひらき、今年2月の250人を超える組合員が参加したデモなどの成果を元に、増車反対、運賃値下げ反対などを掲げて運動を強化することを決めました。

 委員長=香取勝雄▽副委員長=小倉清充、坂本寛志、岡崎満、武井健一(新)▽書記長=三箇(さんか)登志雄▽書記次長=山光雄(武井以外は再)



交運研 韓国交通事情調査(1)

制度は国、認可は地方

台数規制を維持―個人タクが62%


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運輸産業研究院を訪問した交運研の調査団=10月25日、ソウル

 10月23〜27日、東京・加藤副委員長、大阪・庭和田機関紙編集長とともに交通運輸政策研究会の韓国交通事情調査に参加しました。韓国のタクシーと交通事情を紹介します。
 (本部・菊池和彦)

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 韓国では運輸産業研究院(バス協会が設立した研究機関)の李(リー)院長ど(チョ)研究員が資料を準備して親切に対応してくれました。

台数は日本の2倍

 韓国は、タクシーの台数規制、同一地域同一運賃が守られています。管轄は国の建設交通省ですが、ここは制度を作るだけで、実際の認可は地方自治体にまかされています。

 人口当たりのタクシー台数は日本の倍以上あり、個人タクシーが台数の62%を占めています。

 運賃は7月に値上げされたばかりで、初乗2q1900ウォン(209円)、加算144mごとに100ウォン(11円)。物価水準を勘案してもかなり割安です。

 近年は自家用車の普及にしたがって需要は減っているようです。ソウルでの実車率は50%を切ったと言っていました。

車両の使用年限

ソウルの一般タクシー(上)と模範タクシー(下)
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 タクシー車両は、韓国製の2000tクラスのセダンが中心です。法人4年、個人7年以内という使用年限が決められているので、オンボロ車両はありませんでした。

 模範タクシー(デラックスタクシー)という制度があります。88年のソウルオリンピックの時に、一般タクシーの需要が旺盛で乗りにくいということから、主として外国人客向けに3倍の運賃で導入され、個人タクシーの中で優秀な人が選ばれました。しかし、最近は外国人でも乗る人が少なく、一般タクシーに戻る人が多くなっています。

上限運賃への移行

 ソウル市では、増え続ける自動車対策の意味もあって、バスや地下鉄ではかなり先進的な公共交通優先政策が採用されています。しかし、タクシーは公共輸送機関としての位置づけが弱く、行政の保護や補助はあまりないということです。

 ソウル市では来年から個別に運賃値下げを認める制度に移行することになっています。ただし、タクシー協会の統制力が強く、実際には上限張り付きになる模様です。規制緩和の主張はまだ一部の学者の意見にとどまっていて、台数規制の緩和は考えられないと説明されました。

 規制緩和による日本の悲惨な状況を話し、「同じ過ちを繰り返さないようして下さい」と言ってきました。

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 調査に当たって、交運研の西村、安藤、岡本先生、鄭(チャン)さん、事務局の安藤、滝口さんはじめ全運輸のみなさん、通訳の藤田さんにたいへんお世話になりました。お礼を申し上げます。

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