自交労働者No.670、2006年6月15日

全面勝利の判決かちとる

大阪・佐野 南海交通労組

偽装解散・全員解雇は不当


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勝利判決に笑顔の佐野南海交通労組の仲間=5月31日、堺市総合福祉会館
 「大勝利」に大きな拍手と笑顔――第一交通による組合つぶしの偽装解散・全員解雇と闘っている大阪地連・佐野南海交通労組は5月31日、大阪地裁堺支部より、全面勝利の判決をかちとりました。

 第一交通産業は01年3月に南海電鉄系列のタクシー会社7社を買収し6社の組合をつぶしてきました。しかし、真夏の炎暑下での2時間近くの虐待「点呼」や不当解雇・配転などの数々の攻撃にもかかわらず、佐野南海交通労組が団結を維持してつぶれなかったため、03年4月に佐野第一交通を会社ごとつぶして組合員を全員解雇するという暴挙を強行しました。

 この偽装解散にあたって第一交通は、規制緩和を悪用、兵庫の御影第一の事業区域拡張を申請して、佐野第一から2キロしか離れていない所に営業所を新設、非組合員は移籍させ、組合員のみを残して解散したものです。

 判決後の報告集会では、堀川委員長が横断幕に「大勝利」と書き入れると、会場から拍手がわき起こり、組合員・参加者の笑顔がはじけました。



会長・社長にも共同不法責任

大阪地裁堺支部

第一交通の組合つぶし断罪


 大阪地連・佐野南海交通労組がかちとった大阪地裁堺支部の判決は、組合側主張を全面的に認める内容です。

 判決は、御影第一が佐野第一の事業継承会社であることを確認し、佐野南海交通労組組合員に対する雇用責任を認定したうえ、組合つぶしを目的に佐野第一を偽装解散させた親会社の第一交通本社の責任をも明確に認定し、判決の確定まで毎月約1200万円の賃金相当額を組合員に支払うことを命じています。

 さらに、本社の黒土始会長、田中亮一郎社長にも共同不法責任があるとして組合員・佐野南海労組・大阪地連に対する総額3900万円の慰謝料支払いを命じています。

 第一交通は、これまで幾多の不当労働行為で組合をつぶし、批判には知らぬ顔を通してきました。しかし業界トップグループ企業本社の会長・社長の共同不法責任をも認定した判決に今後の社会的批判の高まりは避けられません。組合では、この機を生かして全面解決めざし本社所在地の北九州での宣伝など引続き奮闘することにしています。

 判決に先立ち、本件の仮処分事件の抗告を最高裁が5月22日に棄却、御影第一の雇用責任を認めた高裁決定が確定していました。



産別指導体制の強化を確認

第5回常執

次年度運動方針など議論


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春闘総括などについて討論した第5回常執=6月7〜8日、自交共済事務所
 自交総連本部の第5回常任中央執行委員会が、6月7〜8日に自交共済事務所で行われました。

 この会議では、06春闘中間総括、06年度運動方針(案)骨子と予算大綱を主要な議題として議論をしました。

 春闘総括では、加盟組織の78・2%が要求提出したなかで29・9%が一定の原資を引き出しことに加え、1職場1重点要求でも、定年延長などを獲得して解決したこと。タクシー運転免許の実現めざす政策課題では、3・3中央行動をはじめ、4・22シンポジウムを成功させ、交通政策審議会のタクシーサービスの将来ビジョン小委員会への座り込み行動を実施するなか、同委員会の報告書骨子案に影響を与えた報告がされました。

 次年度の運動方針(案)骨子では、(1)07年に結成30周年を迎えるにあたり実勢3万人の組織達成する課題、(2)「未来をかけ、歴史的な闘いの先頭に立って」交政審・小委員会報告書の内容を実行させる、大運動を構築すること、(3)産別指導体制の強化を柱に練り上げることとしました。



将来を見据えた報告書を

交政審小委員会

具体的な施策を集中審議


 交通政策審議会の第7回タクシーサービスの将来ビジョン小委員会は6月6日にひらかれ、国交省事務局が提示した報告書骨子(案)にもとづく集中的な審議を行いました。

公共交通としてのタクシー

 骨子(案)は、(1)時代認識、(2)タクシーの位置付けと期待される役割、(3)タクシーの将来ビジョン:「総合生活移動産業」へ、(4)タクシーの現状と課題、(5)基本方針:「総合生活移動産業」への脱皮を促進する施策を、(6)具体的な施策案、で構成され、とくに、(3)のテーマでは、「公共交通機関としての安全・安心なサービスの提供」「多様化・高度化するニーズに対応したサービス提供の促進」「渋滞・環境問題への対応策」の3つが取り上げられています。

運転者の質の向上を提起

 具体的な施策では、運転者の質の確保・向上と問題のある事業者の市場からの退出促進が第1番目に提起され、運転者の要件の見直し(2種免許に加え事故歴や一定の講習の受講を要件化)や運転者登録制度の導入(登録制度の政令指定都市への拡大、地理試験の内容などの見直し等)が盛り込まれています。

タク免導入を明記すべき

 こうした骨子(案)に対し、専門委員として小委員会に参加している今村書記長は、公共交通機関としてタクシーを位置付けていることなどに一定の評価を行いつつも、「報告書の中に、『タクシー運転者資格制度の導入を検討する』との文言を明記すべき」との意見を述べ、「その方向性なくして輸送の安心・安全、運転者の誇りと働きがい、タクシーサービスを通じての地域貢献を将来的に担保する道はない。5年後、10年後のタクシー像を見据えた報告書であるべき」と強調。また、規制緩和によって生じた『市場の失敗』(タクシー労働者の貧困化や渋滞・環境問題)を解消する手立てはないと主張しました。

運動の成果が確実に反映

 小委員会審議はいよいよ最終局面に。6月20日には第8回小委員会がひらかれ、最終報告書を取りまとめる予定です。

 これまでの運動の反映として、成果は確実に上がっています。同時に、タクシー労働者にとっての最大の焦点は、何と言ってもタクシー運転免許の法制化及び緊急措置としてのタクシーセンターの改革の方向の取り扱いにかかっています。

 この面での主張を小委員会審議の最後の最後まで貫き通すとともに、より高い質の報告書として取りまとめさせ、その内容を次の段階では、政府・行政をして政策化させ、実行に移させる運動を継続する必要があります。

(施策案等は紙面の関係上一部省略してあります)



年収格差は251万円

04年労働条件比較 時間賃金は半分以下に


 2004年のタクシー労働者と男子常用労働者の労働条件比較がまとまりました。全国平均で、男子常用労働者の年収520万円に対し、タクシー労働者の年収は269万円、格差は前年より7万円ひらいて251万円に拡がりました。

 年間収入を年間労働時間で割った時間賃金では、タクシーが1099円、男子常用が2584円で、タクシーは半分以下の43%にしかなりません。

 地方ごとにみると、時間賃金でタクシーが男子常用の半分を超えたのは埼玉、千葉、富山、広島の4県のみ。格差が最大の徳島では、タクシーは男子常用の33%と3分の1ほどにしかならないひどい実態です。

 (注)この労働条件比較は、自交総連が継続的に行っているもので、全乗連や業界紙が計算し公表しているものとは数字が異なります。詳細は『月報』5・6月号に掲載しています。

グラフ

タクシー労働者と男子常用労働者の労働条件比較(2004年)
タクシー労働者 男子常用労働者
格 差
年間 時間 年間 時間 年間 時間 比率
地方名 収入 賃金 収入 賃金 収入 賃金
万円 万円 万円
北海道 241.63 1,043 490.98 2,438 249.35 1,395 43%
青森 225.59 878 461.46 2,233 235.87 1,355 39%
岩手 242.85 987 461.40 2,262 218.55 1,275 44%
宮城 242.06 1,051 527.44 2,662 285.38 1,611 39%
秋田 220.75 934 462.24 2,243 241.49 1,309 42%
山形 257.62 1,047 470.82 2,324 213.20 1,277 45%
福島 249.70 1,005 504.02 2,477 254.32 1,472 41%
茨城 316.84 1,245 588.77 2,933 271.93 1,688 42%
栃木 330.89 1,248 577.51 2,792 246.62 1,544 45%
群馬 266.92 959 536.50 2,645 269.58 1,686 36%
埼玉 292.41 1,346 507.67 2,594 215.26 1,248 52%
千葉 318.26 1,441 553.88 2,835 235.62 1,394 51%
東京 420.95 1,754 696.64 3,615 275.69 1,861 49%
神奈川 376.12 1,529 614.17 3,165 238.05 1,636 48%
新潟 262.86 1,058 504.26 2,494 241.40 1,436 42%
富山 329.51 1,283 501.67 2,459 172.16 1,176 52%
石川 257.95 1,257 511.17 2,516 253.22 1,259 50%
福井 267.10 1,091 521.72 2,568 254.62 1,477 42%
山梨 304.17 1,249 517.66 2,602 213.49 1,353 48%
長野 285.65 1,087 539.57 2,623 253.92 1,536 41%
岐阜 282.57 1,132 498.13 2,469 215.56 1,337 46%
静岡 308.13 1,240 542.25 2,620 234.12 1,380 47%
愛知 338.67 1,433 599.61 2,971 260.94 1,538 48%
三重 274.13 1,006 578.75 2,861 304.62 1,855 35%
滋賀 308.42 1,236 559.08 2,778 250.66 1,542 44%
京都 287.41 1,146 525.13 2,667 237.72 1,521 43%
大阪 307.98 1,330 614.19 3,106 306.21 1,776 43%
兵庫 287.86 1,243 564.54 2,870 276.68 1,627 43%
奈良 - - 555.85 2,764 - - -
和歌山 202.94 863 509.85 2,556 306.91 1,693 34%
鳥取 254.49 1,010 452.27 2,239 197.78 1,229 45%
島根 226.93 876 488.51 2,425 261.58 1,549 36%
岡山 268.97 1,186 530.57 2,596 261.60 1,410 46%
広島 306.55 1,366 545.62 2,697 239.07 1,331 51%
山口 234.74 993 542.89 2,668 308.15 1,675 37%
徳島 234.97 886 524.25 2,659 289.28 1,773 33%
香川 236.24 942 518.33 2,551 282.09 1,609 37%
愛媛 288.83 1,056 492.06 2,397 203.23 1,341 44%
高知 216.97 857 468.48 2,376 251.51 1,519 36%
福岡 268.93 1,047 536.98 2,683 268.05 1,636 39%
佐賀 227.49 898 460.43 2,229 232.94 1,331 40%
長崎 237.28 1,004 483.45 2,373 246.17 1,369 42%
熊本 212.26 846 466.26 2,302 254.00 1,456 37%
大分 228.43 810 492.30 2,399 263.87 1,589 34%
宮崎 218.85 811 453.12 2,198 234.27 1,387 37%
鹿児島 231.53 932 472.67 2,415 241.14 1,483 39%
沖縄 191.78 918 422.12 2,093 230.34 1,175 44%
平均 269.42 1,099 520.15 2,584 250.74 1,485 43%
資料:タクシー=「賃金センサス」企業規模10人以上
   男子常用=「毎月勤労統計要覧」企業規模30人以上
注:奈良のタクシーは2002年のデータがないため2001年の数字



組合なく労働条件は劣悪

東北ブロック

青森で組織拡大宣伝を展開


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乗務員と対話する宣伝行動参加者=弘前駅前
 【宮城】東北ブロック協議会は5月29日〜6月1日の4日間、福島・山形・宮城の各地連の代表5人と青森地連の仲間が参加し、「組織拡大宣伝キャラバン」を実施しました。

 宣伝行動ではアンケートをとりながら実態調査を行い、乗務員さんに話を聞くと、ほとんどの仲間が未組織で組合はないと答え、労働環境は非常に悪く、最賃が補償される会社はあるものの、劣悪な状態でした。

 青森空港で元自交総連組合の書記長をしていた仲間と会うことができ、「組合がなくなってめちゃくちゃになった。若手に音頭をとる人がいれば」と話していました。

 最終日には、組合のある会社の経営者の方々と懇談を行い、弘前タクシー・桜交通・十五番タクシーの経営者に規制緩和反対の運動の協力とドライバー法実現に向けたとりくみの理解を求めました。




悪質違反への処分を強化

国交省

酒気帯びなど一回で事業停止へ


 国土交通省は5月26日、タクシー・バス・トラック会社について、酒気帯びや過労運転など悪質な違反を事業所ぐるみで行った場合には、一回で事業停止処分ができるように処分基準を強化する通達を出しました。8月から実施されます。

 《解説》違反事業者への処分は違反の内容に応じて車両停止○○日車などと決まっていて、点数が付与されます。現行では、その点数が累積して50点を超えて初めて事業の停止処分が行われますが、今後は悪質なものは一回の違反でも事業停止になるということです。

 悪質というのは、酒酔い・酒気帯び・過労運転などで、事業所ぐるみの場合7日、監督不十分の場合は3日の事業停止になります。

 このような処分強化は、規制緩和後の労働条件悪化と交通事故の増加に何らかの対処をせざるをえなくなったためです。昨年12月には抜き打ち監査など監査方針の強化、今年2月には厚労省との合同監査、最賃法違反の相互通報、そして今回の一発で業務停止など相次いで対策が出されました。

 処分強化自体は必要なことで、自交総連も従来から求めてきたことですが、めまぐるしく通達が改正されること自体が事後チェックの限界を示しているといえ、運転者の資格強化など根本的な対策の必要性を表わしています。


自動車運送事業者の悪質違反に対する行政処分の厳格化について

(2006.5.26 国交省自交局)

1.背  景

 昨今、運転者の酒気帯び運転や過労運転による重大事故や、運転者が酒気帯び運転を行っていたことを事業者が黙認している等極めて悪質な事案が後を絶たないことを踏まえ、重大事故や悪質違反の防止、悪質事業者の改善、さらには悪質事業者の市場からの排除について検討を行ってきた。本年2月には事故を効果的に防ぐため予防的監査の導入等監査手法の見直しを図り、また4月には、厚生労働省との連携強化等、順次強化を図ってきたところである。
 今回、更に法令遵守の徹底及び輸送の安全を図るため、以下のとおり行政処分の厳格化を行うこととした。

2.主な措置内容

(1) 事業者ぐるみで酒気帯び運転や過労運転等の悪質違反(注)を命じ又は容認した場合《当該営業所に対し7日間の事業停止処分》
(2) 悪質違反を伴う重大事故(注)を引き起こした事業者であって、当該違反を防止するための指導監督が不十分であった場合《当該営業所に対し3日間の事業停止処分》
(3) 重大事故を引き起こしていないものの、運転者が悪質違反を引き起こした場合《重大事故を引き起こした場合と同様に処分日車数を加重》
(注)悪質違反: 酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転、薬物等使用運転、無免許運転、無資格運転、過積載運行又は最高速度違反
重大事故:
死者又は重傷者を生じた事故

3.実施時期

 平成18年8月1日から実施する。



自 交 総 連