自交労働者No.672、2006年7月15日

組織の違い越え共同行動を

運転者資格導入めざして

グリーンキャブ三労組が学習会


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運転者資格制度導入にむけ行われた学習会のようす=7月10日、東京・新宿スポーツセンター
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団結がんばろうで意思統一を行う参加者
 【東京】一致する要求での共同行動を――7月10日、東京・新宿スポーツセンターで、グリーンキャブ三労組(グリーンキャブ江戸川労組、グリーン新町労組、グリーンキャブ労組)による「今後の展望と新たな運転資格者制度」と題して、一致する要求での組織の枠を越えてのタクシー政策学習会がひらかれ、150人を超える参加者が集まりました。

 この学習会は6月20日の交政審報告を受けて、今後の展望と新たな運転者資格制度の導入にむけて、お互い情勢認識を深める目的で開催され、来賓として交通労連=政栄p生事務局長、東京ハイタク労連=田島利晴委員長、自交総連=今村天次書記長、自交総連東京地連=鈴木勇書記長が出席しました。

 学習会では交通労連の政栄事務局長と自交総連の今村書記長がそれぞれ講演を行い、タクシー運転免許制度導入にむけての運動の強化を呼びかけました。

 また、今回の学習会について、自交総連グリーンキャブ労組の領家光徳委員長は「組織の違いを越えての学習会は、本来であれば、全国的に実施したいが、職場からとりくんでいることについても報告書の中身を実現させていくうえでは大変重要なことだ。今後も共同での運動を実現できればと思っている」と感想をのべました。



運転者の要件見直しを明記

交政審最終報告書 免許実現へ今後の運動重要

図 交通政策審議会・タクシーサービスの将来ビジョン小委員会の最終報告書が、7月7日に発表されました。

 報告書は、6月20日にひらかれた第8回小委員会の審議で出された意見を補強したものとなっています。

 補強されたポイントは、「国においては、各施策の実現に向けた作業を開始することが必要であり、特に、運転者の要件の見直し及び運転者登録制の導入については、早急に検討に着手し、実効性の高い仕組みを構築すべきである」ことを新たに挿入したことです。この「要件の見直し」は、運転者の資格要件の向上を指していることは間違いないと思われますが、今後の運動でタクシー運転免許制の導入につなげることが必要です。

 さらに、運賃制度について「労働力コストをはじめとする適正なコストに基づく運賃設定となっているかなど、不当競争の審査を厳正に行う」と明記。運転者の年齢制限については、個人タクシーの75歳で更新しないことを例にあげ、法人も年齢制限を設けることしていましたが、「早急に検討する」となりました。

 経営者には、「問題がある事業者の市場から退出を促進し、温存させない仕組みの構築が不可欠」と繰り返し強調しています。

 その他は、文書整理を行い、前号で報じた趣旨から大幅に変わっていません。今後は、法制化が必要な事項は国会審議となります。



労基法違反率は82%

改善基準違反率も4割超


グラフ
表
 タクシー・バスなど自動車運転者を使用する事業場に対する05年の監督結果がまとまりました。ハイタクの労働関係法違反率は82%、改善基準違反率は46%で依然高率ですが、監督実施数は911と前年の倍近くに増えました。

 この調査は、各地の労働基準監督署が監督に入って違反を見つけたものです。例年、法違反が8割以上に上っているのに監督の実施は400か所前後で8000社を超えるハイタク企業数に対して少なすぎました。

 規制緩和の失敗で最賃法違反や事故の増加が報道されるなか、昨年は国交省と厚労省の連絡調整会議がもたれ、監査・監督強化の方針が出されました。こうした事情で監督数が増えたものと思われますが、それでもまだ1割程度しか調べられないということで、調べればもっと違反が見つかるはずです。

 規制緩和後は事後チェックで安全や法令遵守を確保するというのが政府の考え方ですが、事後チェックだけでは違法状態の蔓延に追いついていかないという実態を示しています。



福島地連

いわき市で宣伝

対話形式での統一行動


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乗務員と対話しアンケートをとる統一行動参加者=7月10日、いわき市内
 【福島】7月10日、福島地連統一行動はいわき市で集中的に行われ、JR常磐線沿線を南北二手に分かれてお互いの仕事の現状を語りながらアンケートに答えてもらう対話形式で行い、約500枚のビラを配りました。

 いわき市にある常磐線8つの駅の内、いわき駅を除くところでは待機台数が常時2、3台程度。「電車発着時以外はタクシーの動きが少なく電話注文もあてにならない」、「県内有数の工業地帯ではあるが生産の落ち込み、工場閉鎖で出張族が減ってる」。また、週末以外では夜の人通りが少なく、運転代行が幅をきかせてるため待機場所やお客様の奪い合いとなっている実態や、運転代行の白タク行為や一部タクシー運転手によるダンピングが行われるため、日中よりも売上見通しがたたないなどの話が聞かれました。

 また、今回の宣伝行動で多く聞かれたことは、「年々売上が減っている」、「組合はあるがなにもしてくれない」、「自交総連さんでなんとかしてもらえませんか」、などあきらめの話ばかりで自分から職場を改善しようとする意欲が感じられませんでした。

高橋克幸



必要とされる限り走ります

山 口 今年で丸7年の乗合タクシー

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住民の足として活躍する乗合タクシー
 【山口】山口県周防大島町の大島観光タクシーでは、1999年10月に県下初の乗合タクシーを運行して今年で丸7年になります。

 周防大島町は高齢者が多く、バスの撤退後、生活交通として町からの委託で運行を始めました。利用者の多くが山間部に居住しているため住民の足として無くてはならない交通手段です。

 昨年4月には「町の少子高齢化」という題材で乗合タクシーがNHKの取材を受けテレビ放映されました。

 運行区間は、奥畑〜大畠町の10・7キロを7往復。年間輸送人員約1万3000人。運賃は1区160円で、始発から終点までは550円。ここ2〜3年は輸送人員の減少が見られるものの、まだまだ必要とする人たちがいる限り、がんばって走ります。



交政審報告は我々の主張をどこまで取り入れたか

第1回 規制緩和による「市場の失敗」は認める

 交政審タクシー小委員会報告は、不十分ながら、規制緩和万能論を見直し、自交総連の従来からの主張を反映したものになりました。

 政府は、かつてはどのように主張し規制緩和を推進してきたのか、それがいかに誤りであり、自交総連の主張がどこまで取り入れられたのか、小委員会報告の記述にそって、ポイントを連載で紹介します。

交政審タクシー小委員会報告の要点と自交総連の事前の指摘 (1)規制緩和についての基本認識
市場の失敗
今回の
小委員会報告
 (1)情報の非対称性、(2)利用者による選択可能性の低さ、(3)サービスの提供が1度のみの取引であることが多い、(4)運転者の賃金体系は歩合給が主流となっている、といったタクシーの特性を背景に、経済学で言ういわゆる「市場の失敗」が生じ、問題のある事業者が市場に温存されてしまうという状況が生じている。…低運賃競争に走り、安全確保に必要な措置を怠るなど、法令遵守意識の低下している事業者が散見されている。
 また、運転者側の状況を見ると、歩合給が主流となっているため、…経営者は運転者との関係で利益の追求を図ろうとし、利用者へのサービス提供や営業活動についてはほとんど運転者任せという、いわば「供給の二重構造」が存在している事業者が多い。経営者は、運転者に増車のリスクを転嫁することを前提に、営業収入が伸びない中で総収入を確保しようと増車を行うため、ただでさえ営業収入の低下により賃金の低下が進んでいる中で、さらに運転者の労働環境は悪化し、これがモラルの低下、…を招来しつつある。
 こうした状況は、最終的には輸送の安全と利用者利便の確保に支障を来し、利用者にしわ寄せがいくこととなってしまう。
 渋滞・環境問題といった外部不経済を引き起こしている地域もある。
従来の
政府の立場
 ◎需給調整規制を廃止し、競争を促進することが必要である。これにより、利用者にとって利用しやすいサービスが提供され、タクシーの利用が促進されることが期待される。(1999.4.9 運輸政策審議会自動車交通部会答申)
 ◎今後、規制緩和によって、経営者自らの責任において、おのずから減車されるものは減車されていきます。
 ◎労働力を必要とする最も重要なタクシーの事業でございますから、新しい事業が参入してくることは、労働者に対してもまた条件をさらによくしていく方向になっていく。
 ◎著しい供給過剰となりまして、輸送の安全や利用者の利便の確保が困難となるおそれが生ずる場合には、新規参入と増車を停止する緊急調整措置、これが発動できることにいたしております。
 これらの措置によりまして、需給調整規制の廃止後においても引き続き輸送の安全と利用者の利便を確保していく、そのようなことになっておることを申し添えておきます。(2000.4.21 衆院運輸委員会での二階運輸大臣答弁)
自交総連の
事前の指摘
 ◎消費者が十分な情報を持ち、自由に財・サービスを選択できる場合にのみ、市場競争の効果が公正に消費者にもたらされるのである。タクシーは、普通の商品と違って、供給者優位の財なのである。こうした財を完全に市場競争にゆだねた場合、利用者の利益が損なわれる。
 ◎流しを特徴とし、乗客はほとんどの場合、再び同一のタクシーを利用することのないタクシー事業にあっては、たとえ劣悪なサービスが提供されたとしても、悪質業者を排除する市場の力は弱い。
 ◎タクシー市場では、本来会社=経営者が行わなければならない市場競争が、歩合給中心の能率刺激的な賃金体系のもとで個々のドライバーに転嫁され、ドライバーの水揚げ(運賃収入)競争として現われる。 粗暴な運転や乗車拒否、労働基準法違反が根絶されないことの最も大きな理由もこの点にある。
 ◎需給調整規制が廃止され、免許制度が撤廃されたとしたら…ドライバーの労働条件水準を今以上に悪化させ、全体としてドライバーの質の低下を引き起こす可能性が高い。そのツケは、タクシーサービスの悪化となって、消費者に跳ね返ってこよう。(1998.1.28 規制緩和対策プロジェクト報告)
コメント  規制緩和で「バラ色の未来」になるかのような国会答弁が間違っていたことを現実が証明した。
 自交総連の事前の指摘は、その理論的根拠も含めて、今回の小委員会報告に取り入れられている。



自 交 総 連