国交省に請願するために集まった参加者
運賃改定の社会的公約を守れ! タクシー労働者の労働条件改善、安心・安全な輸送確立を――自交総連は、11月16日、ノースライドプラス重点要求の実現、増車阻止、無駄な車両の減車などを求めて、11・16中央行動を実施し、500人の仲間が参加。朝から霞ヶ関周辺での宣伝行動、その後国土交通省へ個人請願行動。また午後からは代表が関係機関交渉(関係記事2面)を行いました。
霞ヶ関周辺でビラを配る参加者
100人でビラ 5000枚配布
朝8時30分から霞ヶ関周辺で宣伝行動を開始。宣伝カーから労働者の悲惨な実態を訴え、100人でビラ5000枚を配りました。
国交省に個人請願行動
請願書を読み上げ要請する菊池書記次長
宣伝行動後、国土交通省に個人請願を行い、事前に集めた8242筆も含め、運賃改定時のタクシー労働者の労働条件改善を強力に指導することなどを求める請願書を提出しました。
また、この請願行動には全労連・小田川事務局長が激励に駆けつけました。
参加者は「多すぎるタクシーを減らせ」などの一言を添えながら国交省の担当者に請願書を手渡ししました。
国交省、厚労省、全乗連と交渉
午後からは地方から参加の代表と本部役員が国交省、厚労省、全乗連と交渉を行い、運賃改定時のタクシー労働者の労働条件改善を指導することなどを要請しました。
各地で運賃値上げ認可・実施
労働条件改善へ確認書締結も
現在、各地では相次いでタクシー運賃値上げが認可・実施されています。
今回のタクシー運賃値上げは、規制緩和であまりにひどくなりすぎたタクシー運転者の労働条件を改善するために行われるもので、タクシー運転者の労働条件が実際に改善されるためには、(1)値上げ時に歩合給の支給条件(%)を変えずに増収が必ず賃金に反映するようにすること、(2)1台当たりの売上げが増えるように、増車をせずに減車することが不可欠です。
ところが、タクシー経営者の一部には、値上げ時に賃金の支給率を引き下げるスライド賃下げをしたり、この時期に増車をして抜け駆け的に利益を得ようとする動きがあります。このような身勝手な行動が横行すれば、値上げをしても運転者の労働条件は改善されず、逆にサービスが悪化するという悪循環になりかねません。
東京地連では、9月25日、東旅協と労働者の労働条件改善をめざした「確認書」を締結し、東旅協との確認書をもとに、個別労使の事前協定締結にむけとりくみを強化しています。
運賃改定の社会的公約守らせよ
国交省
「賃金下げた会社は厳しく監査」
国交省と交渉する自交総連の代表=11月
16日、国交省内
国土交通省との交渉は、飯沼委員長をはじめ本部3役を含め30人で行いました。対応したのは、自交局旅客課の安部竜矢=地域交通政策企画官ら7人でした。
運賃改定にかかわって「確実に労働条件につなげてもらうのが公約で、事業者(会社)の社会的責任だ」として、結果については、足切り上げや歩合率を下げる会社について「運転者人件費の割合を維持しないことは通達の趣旨に反する」「賃金を下げた会社は、厳しく監査をして違反があれば処分する」と解答。減車問題について、「新潟の例もあり、公取委の見解など、いま検討中だが預かり減車や監査対象なども視野にいれている」とし、増車や運賃値下げ問題や法違反についても「相互通報制度も活用して厳正にやっていく」ことを明らかにしました。
緊急調整措置の発動用件の見直し問題については、「適時適切に発動できるように、地域実情に合わせての運用を考えている」としました。
また、運転者登録制度は「来年の春頃の施行に向けて作業をすすめている。制度設定では、地域の実情を反映する」と約束しました。
法違反厳しく指導せよ
厚労省
「労働条件問題あれば指導」
厚労省と交渉する自交総連の代表=11月
16日、厚労省内
厚生労働省交渉は小林・菊池書記次長を含め16人が、川辺博之、片平寛士、佐藤加奈事務官の3人に要請。労働基準法など関係法律に違反する事業者に対して厳しく監査・指導を求める諸要求の回答を求めました。
運賃改定にかかわって足切り引き上げなど賃下げについて、「突然に給料を下げたら労基法24条違反になると考えられる。労働条件に問題があれば、法違反でなくても改善指導をさせてもらう」と明言しました。
また、監査・監督と国土交通省の運輸局及び支局との相互通報制度の実施状況をはじめて明らかにしました。おおざっぱな内容ですが、平成18年度は、自動車関係で4303事業場を監査し、労働関係法違反3388件、告示違反2375件で23件を書類送検。合同監査は109件で104件の法違反、74件が告示違反であったこと。相互通報は国交省へ734件通報し、国交省から311件受けているとしました。
観光バスについて、「告示は関係労使で合意形成したもので厳守を徹底していく。無理な日程を組む旅行業者への指導は都道府県ごとのバス業界からの要請に基づき考える」と回答しました。
通達遵守し労働条件改善せよ
全乗連
「国民への約束と認識」
全乗連交渉には飯沼委員長をはじめ、7人が参加し、全乗連からは、金子誠二労務委員長ほか2人が対応しました。
運賃改定が行われる地域では、325号通達を遵守し、運転者の労働条件が改善されるよう要請するとし、「国民に対する約束であるという認識のもと、通達に則って引き続き会員に理解を求めていく。改善報告の内容をどうするかは現在検討中」としました。
また、経営の効率化のための自主的な減車については、「需給バランスの重要性は十分承知している。会長が『再規制』を提起しており、当面、新規参入に対する審査を厳格化する必要がある。最終的には運賃の制度を含め再規制が必要だ」と回答しました。
その他、利用者サービスの充実、規制緩和の見直しについては、「NPOによって、この分野でがんばってきた事業者が後退している。全乗連としては今後、ケアの特別委員会を通常の委員会に格上げしてとりくみを進めていく。また、再規制について何をどうするか、どうあるべきかという問題はあるが、社会的に認知される方向で労働側の協力も得たい」と答えました。
第1回常執
ノースラめざし奮闘を
運賃改定の動き分析
自交総連は11月15日、自交共済事務所で第1回常任中央執行委員会をひらきました。
当面する闘いでは、27地域(16日公示を合わせると36)で公示されているタクシー運賃改定の動きについて分析。すでに労使交渉でノースライド+αの確認書を交わしている組合がある一方、スライド賃下げを公言する経営も一部に存在していることから、交渉を強化しつつ、悪質経営を社会的に包囲するため、行政・世論への働きかけも強めることとしました。
同時に、増車や値下げ競争を阻止して、減車をさせない限り、確実な増収になる保障はないことから、自治体をまきこみ減車を促す工夫などの課題についても議論しました。
運転者登録制の実施では、地方ごとに具体的なやりかたで差異が生じる可能性があることが指摘され、実効ある制度にむけた地方ごとの対策の強化が求められました。
春闘方針案は、「団結と統一で要求実現、なくそう貧困と格差社会」と位置づけて、次回中執に提案することになりました。
組織の拡大強化を全力で
福岡第45回大会
福岡地連は11月11日、志免町・シーメイトで第45回定期大会をひらきました。
大会では、運賃改定にともなう労働条件の確実な改善と資質の向上、安心・安全確保のとりくみ強化や労働組合の原点に立ち返ることを重視。さらに組織の拡大強化をめざし全力で奮闘することを誓い合いました。
委員長=坪井洋司▽副委員長=田中健一、廣瀬早美(新)▽書記長=緒方満▽書記次長=宇野誠二、澤田昭雄(新)、内田大亮(新)
規制緩和でタク業界は乱れ
大阪第62回大会
【大阪】大阪地連は11月13〜14日、大阪・ホテルセイリュウで第62回定期大会をひらきました。
冒頭あいさつで権田委員長は、規制緩和による、大阪のタクシー業界の乱れや、貸切バス事業の過当競争によるルール崩壊にふれ、最後に組織の拡大・強化に熱いエネルギーをとあいさつしました。その後、07年度の運動を総括するとともに、新年度の運動方針を決定しました。
仙台市を緊急調整地域に指定
国交省
特別監視地域制度を見直し
国土交通省は11月20日、仙台市を緊急調整地域に指定するよう運輸審議会に諮問することを明らかにするとともに特別監視地域制度も見直すこととしました。
緊急調整地域の指定要件見直し
【解説】4割も増車となっているにもかかわらず、これまで仙台市が指定されなかったのは、事故や苦情の増加が足りないという理由でした。これでは、労働者が必死の努力で安全運転に努めていることが、かえって指定されない要因となるという矛盾を生じていたものです。
今回、事故等の要件については「総合的に判断する」と改正され、仙台が指定されることが確実になりました。これは遅きに失したとはいえ当然のことです。とくに宮城地連が国家賠償訴訟を提起するなど世論喚起に努めたことが大きな影響を与えました。
仙台では新規参入・増車は認められなくなります。
「特定特別監視地域」等の新設
特別監視地域については、今回新たに「特定特別監視地域」「準特定特別監視地域」が設けられました。
いずれも人口30万人以上の地域で、「特定」は、供給拡大により労働条件悪化を招く懸念がある地域、「準特定」は特別監視地域から解除された地域で同様の県がある地域が指定されます。
両地域とも、増車する事業者は労働条件に関する計画の提出が義務付けられ実績と計画に差がある場合は減車勧告がされます。「特定」では、増車は60日前までの届出となり、監査により違反があれば増車見合わせや減車が勧告されます。
規制緩和自体の見直しが必要
今回の措置は増車の弊害を訴え続けてきた自交総連の運動も反映したもので一歩前進とは言えますが、増車の一時停止や減車の勧告に留まるもので、増えすぎた車両を減らすものではありません。
事業者には自主的な減車努力、政府には規制緩和の見直しと新たな規制(タクシー運転免許等)の方策を探る努力が求められます。
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