タクシーめぐる背景問題を指摘国交省交政審中間整理まとめる
国交省の示した考え方では、「供給過剰の対策」について、「過剰な輸送力の供給は、タクシー事業の収益基盤の悪化、タクシー運転者の労働条件の悪化、違法・不適切な事業運営、道路混雑・環境・都市問題、さらには過度な運賃競争を通じた安全性等の低下の懸念など、タクシーをめぐる様々な問題の背景に存在する根本的な問題」と明確に指摘。考えられる具体策の例として、「特定地域に特例措置を導入」(参入・増車の要件の引き上げ等)、「特定地域に総合的計画制度の導入」(独占禁止法との調整を前提とした協調的減車措置等)をあげています。 「過度な運賃競争への対策」では、「過度な運賃競争が生じている地域にあっては、更なる労働条件の悪化や事業の収益基盤の悪化を防止することが必要」とし、下限割れ運賃についての実態把握及び認可等の運用の強化等を示しています。さらに、「悪質事業者対策」では、(必要な車両規模の設定など)参入・増車要件の厳格化等を明記しています。 タクシー問題についての現時点での考え方(概要)I タクシーの役割と検討の視点 II 現状の問題点 III 原因 IV 対策(下表参照)
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参入・増車要件の厳格化(経営者の法令知識確認の厳格化、適切な事業運営のための体制・設備の確保、そのために必要な車両規模の設定など) |
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参入・増車の手続きの厳格化(審査における現地確認の徹底、運輸開始時の確認など) |
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監査の強化、効果的な実施 |
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行政処分の強化(減車命令の制度化など) |
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運転者登録制度の拡充・強化 |
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利用者への情報提供の充実(ランク制度の充実など) |
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第一交通本社前で抗議する佐野南海交通労組の仲間とその支援者=6月26日、福岡市 |
行動は、5月1日の最高裁判所第1小法廷の「上告棄却」決定にもとづき、佐野南海労組争議の全面解決を求めて行ったもので、大阪地連・権田委員長をはじめ岡田副委員長と佐野南海労組、福岡と山口地連、九州交運共闘ら34人の参加で整然かつ精力的に行いました。本部から小林書記次長が全日程に参加しました。
前夜、大阪を出発し未明に小倉駅に到着した佐野南海労組の部隊は、7時45分から小倉駅前でタクシー労働者と市民に「日本最大のタクシー会社となった第一交通との争議で、最高裁判所は組合側に軍配をあげました。いまこそ全面解決にむけての御支援をお願いします」と訴える宣伝を開始しました。
株主総会会場となった本社前では、福岡地連等の仲間と合流し、宣伝カーから、佐野南海労組・堀川委員長らが次々に「田中亮一郎社長は誠実な団体交渉を開け」「全面解決の決断を株主総会で」など強く訴えました。
乗務員と対話する宣伝行動参加者=6月30日、群馬・太田駅前 |
関東ブロックは、6月29日から2日間の日程で、群馬県(一部栃木県含む)で「未組織の組織化にむけての宣伝キャラバン行動」を実施しました。
宣伝は、本部宣伝カーを使用し、高崎、前橋、藤岡、伊勢崎、桐生、太田、足利の各駅で実施。参加者は、鈴木事務局長(本部副委員長)川崎専従執行委員、池田執行委員、梅田春闘オルグと、本部の小林書記次長、加えて群馬地本からは小林委員長他1人の7人で行動しました。
各駅で、タクシーを取り巻く情勢と自交総連の闘いの経過を訴え、労働組合結成と自交総連への加盟を呼びかけました。
対話で「増収にならない」「職場は年寄りばかり」「タクシーではメシが喰えなくなった」と実情を話してくれました。また、太田駅で「ひとつの会社が初乗り590円を継続、その影響でこの地域全社が値上げ申請せず660円のままだ」「何とかならないか」タクシーを降りて訴えるように話してくれました。
全駅で、仲間は好意的に受け止めてくれました。
警察庁の見解を聞く東京地連の代表=7月2日、参議院会館 |
東京地連、東京地連弁護団、総連本部は、7月2日、参議院議員会館で道交法の運用に不当性があることについて、日本共産党の仁比聡平参議院議員を介して、警察庁と国土交通省の担当官との折衝を行いました。
問題は、(1)事故や違反の不起訴処分となっても運転免許証に入力された反則点数を抜かないこと、(2)警察官及び交通監視員による駐車違反の検挙で、介護輸送の迎えやトイレ使用時などで、不適切な取り締まりが横行していること、(3)個人タクシー申請時に点数が2点以上は申請拒否となることについてです。
警察庁の運転免許課・田辺康弘警視は、加点入力について、「不可抗力と認められる場合は入力しない」としながらも、総合的判断で入力するとしました。不当なことは、事件捜査段階で事故原因が明確にならない場合、双方とも同罪にしていることです。警察庁57号通達(その後36号通達)の徹底については全国の会議等で説明していると回答しました。
個人タクシーの申請条件については、国土交通省は検討することを約束しました。
今年の安全運転実態調査がまとまりました。昨年、東京・神奈川・福岡では運賃改定が実施されたにもかかわらず、運送収入は東京・神奈川は横ばい、福岡では減少しています。
5地方平均の運収は、テスト車が3万1680円、通常営業が3万5570円でともに減少しています。とくに福岡ではテスト車18%、通常営業16%の大幅減となりました。
テスト車と通常営業の差は、平均で走行キロ18キロ、運収3890円で前年より広がりました。この分だけ通常営業は労働時間延長やスピードアップなど「無理」をしているということです。
都市別にみると、運送収入の最も高い東京と最低の福岡では倍以上の開きがあります。
調査結果から、運賃が改定されても増収効果がなく、改定されていない仙台・大阪でもひきつづき減収となっているという深刻な実態が明らかになりました。その原因は、需要に対して多すぎるタクシーということははっきりしています。多すぎるタクシーを減らす具体的な手立てが求められています。
今回から職業別、原因別の統計が公表されました。全体では年配者の自殺が多いこともあって健康問題が44%を占め、次が経済問題で22%です。運輸従事者に限ってみると、トップが経済問題(多重債務など)で41%、次が健康問題23%です。
日本の自殺者は先進国の中でも異例に多く、98年から高止まりしています。97年に消費税が5%に上がり、山一證券倒産など日本経済が長期不況に再突入した時期です。
不況と規制緩和で貧困と格差の拡大がすすんだために自殺者が増えたことは明白で、この面からも、政府・財界がすすめた構造改革路線の見直しが迫られています。
規制緩和で過当競争の犠牲はすべて労働者へ――タクシー運転者の年収は、91年の最高時から104万円も下がって278万円(06年)。男子常用労働者の平均と比べても241万円も低いのが現状です。
こんなに賃金が下がってしまったのは、長引く不況と02年の規制緩和により、タクシー台数が急増し、1台当たりの売上げが減ってしまったからです。
タクシー台数を増やせば1台当たりの営収は減り、普通なら会社の利益にならないはずです。しかしタクシーでは、1台当たりの売上げが下がっても、運転者の賃金は歩合給のため人件費も自動的に下がり、会社は常に一定の利益を確保できます。運賃を値下げした場合も同様です。経営者は1台当たりの売上げが減った分を増車で補おうとして増車するのです。
経営責任を労働者に押し付け
増車や値下げをする事業者は、法を守らず、労働者に長時間労働をさせたり、名義貸しや累進歩合制度を採用し、低賃金と経営責任を労働者に押し付け、自分の利益だけは確保しようとします。
また、タクシー運賃改定のたびに、経営者は「労働条件の改善」を理由に申請してきました。ところが経営者は、労働者が黙っていると、運賃改定時に足切額を引き上げたり歩合率を引き下げたりする「スライド賃下げ」をしたり、予想どおりの増収がないなどの口実をつけて、運賃改定による増収が労働者に渡らないようにし、労働条件の改善には知らん顔です。
黙っていては無権利状態に
経営者の目的は本来「もうけること」なのですから、労働者が団結し抵抗しなければ、賃金・労働条件はどんどん切り下げられ、無権利状態にされてしまいます。
労働者がみずから労働条件の改善を要求しないで、「会社に協力していれば、いつかはよくしてくれる」と、黙っておとなしくがまん≠オているだけでは、私たちの労働条件はますます悪くなるばかりです。
熱心に学習する参加者=6月22日、組合本部会議室 |
組合学校では小林議長が5ページのレジュメをもとに講演し、「法律には、刑事「免責」が明記されていて、組合活動も「業務―行為」として正当な運動に限って適用されると強調した上で、「民事免責」も保障されている。したがって、ストライキで損害を受けたとしても経営者は「損害賠償」請求はできない」と明快に強調。参加した幹部・活動家が熱心に学習し、参加者の大部分が確信を深めました。
また、不当労働行為に関して、さまざまな闘争経験から学び取ることを強調し、「近鉄タクシー(侘び料250万円及びボーナス減少額100万円の支払い)やビッグナラ(残業手当支払い、月額賃金1・5万円UP)事件の成果は、労組法を効果的に活用して勝ち取った成果だ」と強調しました。
なお、ストライキに関して「指導性が発揮できず」、組合員の感情まかせで失敗した経験も大胆に発表し、日常的な幹部教育が特に大事だと語りました。