自交労働者No.728、2009年2月15日

特定地域で減車計画、増車認可制

国交省

「タクシー活性化法案」を提出

 国土交通省は、供給過剰地域での減車や増車認可制を含む「タクシー適正化・活性化法案」をまとめ、2月10日の閣議決定を経て国会に提出しました。

 同法案は、昨年12月の交通政策審議会答申が、供給過剰により運転者の労働条件悪化など諸問題が発生していることを指摘したことを受けて、供給過剰地域で減車ができるしくみを整えるものです。

 国交相が指定した特定地域では、自治体、事業者、労働者、住民等の協議会を組織、そこで地域計画を定めることとあわせ、事業者は地域計画に即して減車を含む事業再構築のための特定事業計画を定めます。

 国交相が公正取引委員会と調整のうえで、この特定事業計画を認定すると、事業者が協調して減車を実施できることになります。

 特定地域では、増車は認可制となります。

 法案は、特定事業計画等の枠組みを定めたもので、その中身は今後の課題です。実際に減車がすすむ実効性のあるものになるかどうかは、運動の盛り上がりが左右します。

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力を合わせ減車実現を

2・1 全国で宣伝行動を展開

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タクシー乗務員にビラを手渡す大阪地連の仲間=2月3日、新大阪駅前
 力を合わせ減車を実現しよう――自交総連は2月1から2日にかけて全国で春闘総決起の呼びかけと規制緩和失敗を告発し、政府・行政の責任を問う2・1宣伝行動にとりくみました。

上限運賃の必要性を訴える

 【宮城】仙台駅前で宣伝行動を行い、16人が参加しました。宣伝カーから仙台市での減車の必要性や下限運賃の事業者を上限にもどすとりくみの必要性、交政審答申の実効性の確保などについて訴えると、車外に出て、訴えを聞き、ビラを見ていました。

全県でビラ2400枚配布

 【神奈川】横須賀市内4駅で190枚、大和駅周辺6駅で150枚、海老名駅で180枚など、自交総連のビラに神奈川県独自のビラを合わせて全県で2400枚を配布しました。今後さらに全県での定期的宣伝行動を定着させていこうと考えています。

減車枠組みの実効化を訴え

 【京都】京都地連では2月2日に、JR京都駅前と駅前タクシー乗場の2か所で約20人が参加し、「適正な台数と運賃を」「登録制度と新制度による減車の枠組みの実効化を」と労働者・市民に訴えました。運転手さんから激励とカンパもいただきました。

タク労働者の窮状を訴える

 【大阪】大阪では2月3日、「怒りの行動」として市民・利用者とタクシー乗務員に向けた宣伝行動後、137人が2班に分かれ、タクシー労働者の窮状を訴えるビラとティッシュを配布し運動への理解を求め、代わる代わる道行く人々に向けて「同一地域・同一運賃」「適正な車両数実現」への理解・賛同をアピールしました。


はたらくみんなの要求アンケート

「生活苦しい」が83%

 「はたらくみんなの要求アンケート」の集計結果がまとまり、回収枚数は23地方8406枚、回収率42・5%となっています。

高齢化がいっそう進んだ年齢構成

 平均年齢は前年より0・1歳伸びて54・9歳となりました。

 年齢構成でみると、60歳以上が3ポイント増えて36%となり3分の1を占め、50歳以上は40%です。40歳未満は全体の8%しかいません。

増加に転じた苦しい生活実感

 「かなり苦しい」と「やや苦しい」を合わせると83%(前年81%)になります。

 この数年間、年金併用者が増えていることから、生活実感が苦しいと答える人はわずかずつ減る傾向がありましたが、今年は増加に転じました。

物価上昇へ出費をきりつめ生活維持

 物価上昇への対応では、預金取り崩しが51%と過半数を占め、次いで支出切り詰めでしのいでいるのが30%。いまはいいが今後が不安という人を含めれば98%が影響を受けています。

 家計での負担では、(1)食費45%、(2)税・社会保険料42%、(3)住宅関連費41%が上位。節約している費目では、食費44%に続いて、水道光熱費39%、被服費39%、教養娯楽費32%が上位にきています。出費を減らして何とかやりくりして生活を維持しているようすがわかります。

前年より増えた賃上げ要求額

 3万円以上と答えた人が、52%、平均要求額は前年の3万3884円から今年は3万5133円へ上がりました。

長時間労働で安全運転ができず

 自分の労働時間について聞いたところ、非常に長いとやや長いを合わせて68%の人が長いと感じ、このままでは体がもたないと思う人は強く感じるとやや感じるを合わせて76%に達しています。

 また、最近の働きぶりが運転に及ぼす影響については、66%が交通違反、63%が交通事故を起こしてしまう不安を感じるとしています。長時間労働のため、安全運転ができなくなっているのが現実です。

今春闘要求では強盗対策が重要

 政府に対する要求の上位3つは、(1)物価対策、(2)最賃引き上げ、(3)年金改善となりました。

 職場での不満については、圧倒的な1位が「賃金が安い」、次いで「強盗等の不安」「有休取れない」となっています。

 前年に比べ「強盗等の不安」は1・5倍になり、年末年始にも強盗事件が続発するなど、春闘要求のなかでも重点として考慮する必要があります。

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「正社員」でも、とても生活できない低賃金

MKや第一交通など

大量雇用計画の実態

 自動車や電機などの大企業を先頭に派遣・期間工切りが相次ぐなか、昨年末に、MKタクシーが1万人、第一交通が6000人の雇用計画を打ち出し、大きく報道されました。また、国土交通省の規制緩和見直しを敵視する規制改革会議は、早速こうした動きを利用して規制緩和は雇用を増やした。規制強化や減車は雇用を失わせることになる≠ニ主張、規制緩和見直しを妨害する口実にしようとしています。MKや第一交通の雇用計画の実態を検証します。

そもそもが荒唐無稽な計画

 MKは従業員3000人程度の会社です。1万人を採用するということはタクシー車両も5000台は増やさなければならないということになります。規制緩和後6年に全国で増えたタクシー台数は1万7000台、増えた運転者は7000人です。それでも過剰なタクシーが大問題をひきおこしているのに、1社で1万人、しかも1年でという計画にはまったく現実性がありません。

 MKも第一交通も、大量採用・大量退社を繰り返していることは業界では有名ですが、採用した人間がすぐに辞めることを前提にした計画であったとしても荒唐無稽としかいいようがありません。

 しかし、両社が数百人の規模での新規採用や増車を望んでいるのは事実でしょう。それは、社員を採用すればするほど儲かる両社の賃金のしくみに秘密があるからです。

社員がお客さんのリース制

 MKの賃金は自称「MKシステム」というリース制の賃金で、運転者から毎月一定のリース料=経費を徴収して、その残りが賃金になるしくみです。MKの場合、タクシー車両代や管理費などを固定経費、燃料代などを変動経費として徴収します。その額は月30〜40万円程度になります。しかも固定経費のなかには社会保険の会社負担分までちゃっかり算入されています。

 すべての経費を運転者に負担させているのですから、雇用を増やしても会社には何のリスクもありません。MKにとっては、運転者こそが毎月リース料を払ってくれるお客さんであり、新人採用自体が商売なのです。

低売上げでも儲かる累進歩合

 第一交通の賃金は、典型的な累進歩合制度の賃金です。売上げによって賃金計算の歩合率が変動し、より高い売上げには高い歩合率、低い売上げには低い歩合率が適用されるしくみです。しかも、一定の金額を足切りといって、売上げがその金額を下回った場合には極度に低い歩合率となります。

 この賃金だと、売上げが少なくても会社には常に一定の取り分が残ることになり、あまり売上げが見込めない新人でも、会社には利益が確保されます。

 このように、リース制や累進歩合賃金を採用しているタクシー企業の場合は、需要の有無に関係なく、運転者を採用してタクシーを稼動させるだけで会社には利益が転がり込みます。不況で乗客が少なくなっているのを承知の上で、大量雇用計画を打ち出している会社は、いずれも類似の賃金形態です。

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増車を許せば全体の賃金が低下

非常識計画利用する規制改革会議

 運転者大量雇用計画が、一部であれ実行された場合には、深刻な問題が生じます。

騙されたと退職する人続出

 採用された運転者は、「正社員」という呼称とあまりにかけ離れた労働条件を知り、大量の退職者が続出するでしょう。募集する会社は、売上げが50万円以上もあった場合を「賃金例」として掲げていますが、到底不可能な数字です。

 短期間で退職した場合には、数十万円の二種免許取得費用や養成費、支度金などはすべて運転者の「借金」となります。それが返せないと辞められない事態も予想されます。

ますますタクシー過剰に

 ただでさえ規制緩和と不況でタクシーが供給過剰となっているのに、増車や稼働率上昇で、1台当たりの売上げはますます低下してしまいます。

 政府の交通政策審議会が供給過剰を認め、国土交通省が減車をすすめる法案を出すなど、タクシーを減らさなければならないときに、逆に増やしたのでは、事態はますます深刻になってしまいます。

タクは失業対策事業でない

 雇用危機の責任を、この間、労働者派遣法の規制緩和を利用して非正規雇用を増やして大もうけしてきた大企業にではなく、規制緩和で苦しめられてきたタクシー業界に押し付けるというのは筋違いです。

 まして、雇用でもタクシーでも規制緩和の旗をふって今日の事態の原因をつくった規制改革会議が、非常識な雇用計画を利用して、規制緩和を続けろというのは許されません。

 国土交通省や厚生労働省・ハローワークは、雇用の中身をしっかり調べて、失業者がだまされないように、適切な対応をするべきです。


タクシーの未来へ向けて

東京地連青年部

旗開きと学習会ひらく

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タクシー事業形態などについて話す参加者=1月24日、日の丸足立営業所

 【東京】東京地連青年部は1月24日、旗開きと学習会を日の丸足立営業所新館3Fで開催しました。

 講師として自交総連本部の今村書記長を招き、「交政審ワーキンググループの報告とタクシーの展望」という題目で講演が行われました。

 今村書記長は交政審ワーキンググループの答申について一定の評価を示しながら、(1)タクシーの位置づけ、(2)規制緩和政策、(3)供給過剰対策、(4)タクシー運転免許構想実現へ向けてなどの改善点と問題点を示し、次代を担う若手幹部活動家に語りかけました。

 次に、タクシー運転免許構想のモデルケースとして、ロンドンタクシーの試験内容を自習し、タクシーとは何なのか、めざすべき事業形態などを講義し、参加者はタクシーの未来へ向けての思いを新たにしました。