自交労働者No.791、2011年12月15日

実際に賃金が増えるまで減車を

減車は2万4000台超

タク活性化法で本格化

 タクシー活性化法による減車が本格化した今年、全国の減車は2万4000台に達しました。運転者の労働条件が改善に至るまで、さらに大幅な減車が必要です。

減車数・率にバラツキ

 11月4日現在の全国の156特定地域での減車数(休車含む、以下同じ)は2万4151台となり、今年5月9日段階の2万3504台から647台増えました。基準車両数からの削減率は12・6%となっています(数字は全タク連調べに一部運輸局集計を加味)。

 おもな政令指定都市の減車状況は表のとおりで、削減率にはバラツキがあります。

 東京特別区武三地区は削減率が18・3%に達し、大阪市域・京都市域では削減後の車両数が運輸局が提示した適正車両数の上限を下回りました。一方で、まだ数%の削減率にとどまっているところもあります。

営収は緩和前に達せず

 減車の結果、1台当たりの営業収入は十数年ぶりに増勢で推移しています。東京と大阪の1日1車当たり営収の前年同月比の傾向を示したのがグラフです。ともに3、4月は東日本大震災の影響でマイナスとなりましたが5月からはプラスに戻りました。しかし8月以降は伸率が縮小する傾向にあり、円高や欧州金融危機で景気が悪化している影響が現れています。

 実際の営収額では、東京が4・2万円、大阪が2・8万円程度で、規制緩和前の2001年の水準=東京5万円超、大阪3万円超にはまだまだ及びません。

労働条件改善まで運動

 減車が1台あたりの営収増に効果があることは実証されましたが、いまだ規制緩和前の水準にも達せず、運転者の労働条件改善という点では不十分なことも明らかです。

 タクシー活性化法の目的である運転者の労働条件改善が確実に達成されるまで減車をすすめるとともに、特定地域指定後3年の期間が満了する来年にむけ、効果の検証や再指定に向けて運動をすすめることが必要です。

表

グラフ


入構規制は現場の声聞いて

宣伝とアンケート

京都地連

乗り入れ規制の実験で乗車待ちのお客さんが長い列となってしまったタクシー乗場=11月、京都駅
乗り入れ規制の実験で乗車待ちのお客さんが長い列となってしまったタクシー乗場=11月、京都駅
 【京都】京都駅北口のタクシー乗場は、末尾奇数偶数の自主規制を行ってきましたが、入口交差点と付近道路に客待ちタクシーが慢性的に滞留する事態が続いていました。

 業界が対応を迫られる中、11月に乗場に入構できる車両を、(1)実車で入講した車両のみ(2)末尾で3分の1の車両のみ、という実験を各10日間行い、その結果(2)の方法の規制を現在も行っています。

 実験では、滞留状況は改善したものの、観光シーズンと重なったこともあり、逆に待機車両が不足して、お客さんが列をつくる事態が発生しました。

 京都地連では、この問題につき、乗務員アンケートと宣伝を実施、約千人から意見を集約し、(1)規制については現場の声を聞きながら進めること、(2)三分方式には基本的に賛成であるが、繁忙期と通常時で対応を変化させる具体的な対案や、入構をスムーズにするための工夫などを申し入れました。


時給400円未満の労働者も

県労連と合同で宣伝

高知

ビラを渡して対話をする高知地連、県労連の仲間=11月25日、高知駅前
ビラを渡して対話をする高知地連、県労連の仲間=11月25日、高知駅前

 【高知】高知地連は県労連と合同で11月25日、秋闘・統一行動の宣伝を行いました。

 午前9時〜12時まで高知駅やはりまや橋などの繁華街で、最低賃金との差額をかちとったさくらハイヤーのたたかいなどを紹介し、ビラをまいて対話。聞き取りでは実際の時給が400円に満たない人がいることも明らかになりました。

 労働組合に加盟して団体交渉をすることで、最低賃金・深夜割増・時間外割増賃金などの権利を確保できること、過去2年間分請求できることを訴えました。

 また、12月6日、7日には、県労連にて労働相談ホットラインを実施するので、気軽に相談してもらうようによびかけました。


組織拡大にはまず動く

労働学校に86人

東京 

全都労働学校で組織拡大の講義を聴く参加者=11月21〜22日、東京
全都労働学校で組織拡大の講義を聴く参加者=11月21〜22日、東京

 【東京】東京地連は11月21日、北とぴあ、22日、台東区生涯学習センターで秋の全都労働学校を開催。86人が参加しました。

 講師には自交総連本部・宮竹書記次長を招き「組織強化・拡大にむけて」をテーマに学習し、未組織労働者の組織化は、組織労働者の責任、義務だと言及し、「組織拡大にはまず動く。人間関係・信頼関係を作り、後継者をつくるのも重要な役割だ」と述べました。

 はじめて秋の労働学校に参加した、宮城交通労組・國分昌次さん(52)は「日頃から組織拡大に取り組んでいますが、なかなか組合員は増えません。学習したことを職場に持ち帰り、職場内未組織労働者を中心に拡大していきます」と、感想を話してくれました。


有期雇用対策学ぶ

幹部学校を毎月

宮城 

 【宮城】宮城地連の第1回幹部学校が、11月2日、6丁目コミニティーセンターで開催され、16人が参加しました。今回の学習会は、有期雇用をテーマに、石垣書記長が講師を務めました。

 最近、県内のタクシーや観光バスでは、定年前に有期雇用の形態を取り、嘱託で雇うケースが広がり、それを乱発した解雇問題が多発し、また、3か月雇用など、法違反に近いケースもあります。

 学習会では、有期雇用の法的根拠を学んだ上で職場での具体的な対策を検討しました。

 今後、幹部学習会は毎月行う予定です。


改善基準の改正、法制化

交通基本法の充実を

交運共闘が交渉

厚労省(上)、国交省(下)と交渉する交運共闘の仲間=11月22日、厚労省、国交省内
厚労省(上)、国交省(下)と交渉する交運共闘の仲間=11月22日、厚労省、国交省内
厚労省(上)、国交省(下)と交渉する交運共闘の仲間=11月22日、厚労省、国交省内

 交運共闘は11月22日、11・10中央行動で提出した請願書の内容について、藤好議長ら7人が参加して厚労省・国交省と交渉しました。

 厚労省では、自動車運転者の改善基準告示の改正と法制化について省側が「労使の共通認識の醸成が必要」などと回答したのに対し、自動車運転者の過労死認定が突出しているデータなどを示し、早急な改善が必要だと求めました。また、最低賃金の遵守で、最賃部分の固定給化を求めたのに対しては、「再発防止措置をとるよう指導票に書くのは現場の監督官の裁量でできる」と答えました。

 国交省では、交通基本法案の充実について、「誰でも移動できるというニーズがあることは認識している」と回答しました。


この成果を全国に

神奈川・生田交通支部

再雇用させ職場復帰

神奈川県労委 不当労働行為で和解

 神奈川地本生田交通支部は、会社の不当労働行為や組合員の中島さんが定年後の再雇用を拒否されていた事件で、9月28日、神奈川県労委で和解をかちとり、中島さんは職場に復帰しました。

 生田交通では、会社が前支部長と一緒になって組合に対する攻撃を強め、組合脱退を強要、ささいなことで「お座敷」と称する部屋に個別に組合員を呼びつけては、人格を否定するように罵倒し、組合を脱退すれば処分を免除するなどと攻撃し、配車差別などが繰り返えされました。このため組合員は53人から20人に激減を余儀なくされました。

 そして、定年後の定時制乗務員について74歳まで更新するという就業規則があるのに、65歳の中島さんの再雇用を昨年12月以降、拒否してきました。

 このため、今年4月に支部が神奈川県労働委員会に不当労働行為の救済を申立てていました。

 和解内容は、(1)労使対等の原則の下、労働条件(継続的安定雇用を含む)等について誠実に協議を行う、(2)労使間の協力関係と会社規律の遵守、(3)労働協約締結のための協議、(4)解決金の支払い――などとなっており、中島さんは9月から職場に復帰しています。


各地の大会

TPPの暴走とたたかおう

大阪地連第66回大会

TPP参加の暴走に警告を発した大阪地連第66回大会=11月15〜16日、大阪・池田市、不死王閣

TPP参加の暴走に警告を発した大阪地連第66回大会=11月15〜16日、大阪・池田市、不死王閣
TPP参加の暴走に警告を発した大阪地連第66回大会=11月15〜16日、大阪・池田市、不死王閣

 【大阪】大阪地連は11月15〜16日、『すべての自交労働者のもてる力を結集し、要求闘争の確かな前進、組織の強化拡大を』のスローガンのもと、第66回定期大会をひらき、新度運動方針などを決めました。

 あいさつで園田委員長は「国交省はタクシーの規制強化に転じたが、いま、私たちの運動の成果を根こそぎ流してしまうTPP参加の暴走が始まろうとしている」と指摘し、団結してたたかおうと呼びかけました。

新年度方針、新体制を確立

福岡地連第49回大会

新年度方針、新体制を確立した福岡地連第49回大会=11月20日、福岡・志免町、志免町民センター
新年度方針、新体制を確立した福岡地連第49回大会=11月20日、福岡・志免町、志免町民センター

 【福岡】福岡地連は11月20日、第49回定期大会をひらき、「職場の切実な要求を集約しながら組織の強化拡大を進める」などの運動方針を確立しました。

 中村新委員長は、所属する太宰府タクシー労組の組合員が職場の66%に達し、「全員でとりくんだ結果だ。経営者とも真摯に話し合うスタンスがととのった」と述べました。

 委員長=中村朗(新)▽副委員長=緒方満(再)、安武博子(新)▽書記長=内田大亮(再)▽書記次長=和田庄治(新)


消費税増税で収入ダウン、支出アップ

消費税と自交労働者

 野田首相は「社会保障と税の一体改革」と称して来年の通常国会に消費税の引き上げ法案を提出する準備を進めています。タクシー労働者にどんな影響があるのか検証します。


控除額が2倍に

 消費税は今でも運賃の中に含まれていますから、賃金計算をする場合には、総売上から5%分の消費税を控除した税抜きの売上に対して歩率をかけて賃金を計算しているはずです。

 もし消費税が5%から10%になったら、控除される額が倍になるということです。

 消費税が上がった場合には上限運賃も改定されると予想されますが、実際に売上が増える保障はまったくありません。売上が変わらない場合、左の表のように売上50万円として、いまは2万3810円だった控除額が4万5455円になり、賃金は1万円以上も下がってしまうことになります。

消費不況が深刻化

 消費税は、収入が少ない人にもかかる税金です。税率がアップすれば、国民の暮らしへの影響は甚大で、財布の紐が固くなり、真っ先に削られるのはタクシー代です。

 乗り控えがひどくなり、売上が下がった場合には、さらに大きな影響があります。

 タクシー労働者は、自分の支出はアップ、収入はダウンでダブルパンチです。

表・グラフ


『まちをはしる仲間』作詞者

城下さんを偲ぶ会ひらく

城下さんを偲ぶ会であいさつする子息の城下隆さん=11月26日、東京・渋谷フォーラムエイト
城下さんを偲ぶ会であいさつする子息の城下隆さん=11月26日、東京・渋谷フォーラムエイト

 自交総連の歌『まちをはしる仲間』の作詞者で、元本部常執、東京地連副委員長、東都労組委員長を務めた城下均さん(今年6月逝去、享年79歳)を偲ぶ会が11月26日に都内でひらかれ、自交総連OB、日本共産党東京都委員会などから72人が参加しました。

 城下さんは1953年21歳からタクシーに乗務、労働組合運動に献身し、東都労組の組織拡大に貢献。退職後は、日本共産党東京都委員会で宣伝カーの運転に大活躍しました。

 元参議院議員の緒方靖夫さん、自交総連元委員長の中山喜一郎さん、菅頭康夫さんらが故人の功績を称え、『まちをはしる仲間』を大合唱しました。