自交労働者No.802、2012年6月15日

安全運転できる規制を

バス労働改善基準見直せ

厚労省 「真しに対応したい」

要請書を渡す飯沼委員長(左)=6月6日、東京・厚生労働省内
要請書を渡す飯沼委員長(左)=6月6日、東京・厚生労働省内
 自交総連は6月6日、高速ツアーバス事故で浮き彫りになった運転者の労働時間規制の不備などの問題について厚生労働省に申し入れ、交渉しました。飯沼委員長ら7人が参加。厚労省労働基準局監督課堀係長ら5人が応対しました。

 バス運転者の労働時間等の改善基準(改善基準)は、下表のとおりですが、もともと長時間労働を容認するもので、この時間にもとづいて国土交通省が交替運転者配置指針670キロを定めています。事故後に、緩い基準を放置していたとの批判が高まったことから、国交省では検討会を立ち上げて指針の改定等を検討しています。組合側は、国交省の指針の元になっている改善基準を変えなければ安全運転は確保できないとして、改正を迫りました。

 省側は、「国交省の検討会には労働基準局長が参加している。関係労使の議論を聞いたうえで対応したい」と答えましたが、組合側は、どういう方向で検討するのか、短くする方向で検討することが必要だ、と迫り、宮城・大阪から実情を説明しました。震災で線路が流れた鉄道の代替バスの運転者が20時間以上もの拘束時間で働かされている、バス運転者はサービスエリアでも乗客の対応に追われて休めない、現在の基準ではまた事故がおきかねない、などの追及に対し、省側は、「検討会では、生理学的に問題があるという点では専門家の意見も聞いて検討するとされている」「検討会の結果を踏まえて、厚労省としても真しに対応したい」としました。

 従来、厚労省は改善基準の改正については、労使の合意で決めたものだから経営側の意向もふまえる必要があるなどとして、検討自体を棚上げにする態度でしたが、今回の交渉で「真しな検討」を回答したのは一歩前進です。自交総連では引き続き、実効性のある改正を求めていくことにしています。

表


職場要求獲得で成果

春闘総括などを討議

第5回常執

春闘総括、運動方針骨子案などを討議した第5回常執=6月5日、東京・自交共済事務所
春闘総括、運動方針骨子案などを討議した第5回常執=6月5日、東京・自交共済事務所
 自交総連は6月5〜6日、東京で第5回常任中央執行委員会をひらき、春闘総括や来年度運動方針骨子案などを討議しました。

 春闘の解決状況は下表のとおりで、要求提出率・解決率は昨年とほぼ同率です。

 獲得内容では、▽賃金改善=賃上げ、解決金3800〜利益還元期末手当7万円、足切り引き下げ、累進歩合撤廃、最賃支払い改善など▽職場重点要求=乗務員負担改善、嘱託者・定時制の労働条件改善、定年延長、保障給制定、有休改善、車内カメラ設置などを引き出しています。

 タクシーでは、減車の効果で一定の営業収入の回復、賃金増額となっているところもありますが、「合理化」攻撃などもあり、納得のいく解決に向けひきつづきたたかい、早期決着をはかることにしました。

 組織拡大では、8地方8組合201人の新加盟を迎えています。既存の組合でも、青森で有休取得など権利を確保することで大きく組合員を増やしている例が報告されました。

 来年度運動方針骨子案では、生活危機突破をめざし、自交総連の本領発揮の闘いを、などの骨子に、討議で出された意見をふまえて肉付けしていくことになりました。

表


「技術を学べてよかった」

パソコンで編集作業

東京地連教宣学校

講義を受ける東京地連の仲間=5月27日、伊豆・日交伊東荘
講義を受ける東京地連の仲間=5月27日、伊豆・日交伊東荘
 【東京】東京地連は5月27〜28日、伊豆・日交伊東荘で泊り込み教宣学校を開催し、運営を含め15組合28人が参加しました。

 第1教科は、山本教育活動委員がiPadとプロジェクターを使用して「新聞づくりの基本」を講義。第2教科は、川崎書記次長が「文章作りのポイント」を解説。第3教科では、生徒2人に講師1人体制で新聞作成を開始。第4教科では、記事の取材対象として早川副委員長がミニ講演を行いました。

 その後、各部屋に移動して講師もつきっきりで、深夜までノートパソコンに向かい編集作業を行いました。2日目は実際に作った新聞の校正作業を行い、印刷した作品を生徒自身が解説。最後に講評を行いました。初めて参加したグリーンキャブ労組の入江さんは「いつもできる人に頼んでいたので、新聞作成の知識や技術を学べてよかった」と感想を話していました。


組合に加入し現状打破を

未組織宣伝行動を実施

佐賀、長崎、大分

雨の中でビラを配る大分地連の仲間=6月5日、大分市内
雨の中でビラを配る大分地連の仲間=6月5日、大分市内
 【佐賀・長崎・大分】九州ブロックの未組織宣伝行動が鹿児島につづき、5月21〜25日佐賀、27〜6月1日長崎、4〜6日大分で行われました。

 佐賀では、21日の唐津市を皮切りに鳥栖、佐賀、有田市など全県を回りました。最低賃金を切っている人が多く、休憩時間を増やして最低賃金違反を逃れている状況で、ビラや新聞には興味を示して読んでいました。

 長崎では、参加者15人でタクシー労働者に「減車が進んでいない。労働組合に加入して大運動をしよう」と訴え、6日間で長崎の中心部を465キロ走って宣伝、長崎市では会社倒産の相談もあるなど厳しい生活を強いられていることがわかりました。

 大分では、海老原委員長を責任者として3日間県内を回りました。大分市では県労連の応援も得て宣伝しました。


テスト車と通常の差は10%

運送収入 残業・過密労働で確保

12年 安全運転実態調査

 今年の安全運転実態調査がまとまりました。この調査は、残業をしないで所定労働時間を守って運行するテスト車と通常の営業を比較することで、通常営業がどの程度加重になっているかを確かめるもので、自交総連が毎年4月に実施しています。

表

 今年の結果は、上表のとおりで、通常営業は1割程度オーバー労働あるいは過密労働をしているという結果になりました(詳細は『自交労働者月報』7・8号に掲載)。

減車の効果も

 【解説】昨年の調査は、3月の東日本大震災で大きな影響を受け、仙台は震災特需で運送収入が急増、東京は自粛の影響で急減という結果でした。今年は、東京が回復し、仙台は特需が終わり減少。大阪・福岡では運送収入が伸びていて、減車の効果が現れているようです。

 通常営業とテスト車の運送収入の差は、5987〜887円で、率では25〜4%、平均3009円、10%でした。この差は、通常営業の場合は残業をしたり、休憩を削ったりして稼ぎ出しているということです。

生活保護以下

 テスト車の結果から、労働時間を守った場合の推定年収を計算すると、上のグラフのようになります。仙台から福岡まですべての地方で推定年収が4人家族の生活保護基準を下回るという結果になりました。

 労働時間を守ったら生活できないということで、これでは、安全の確保はできません。

グラフ


8割以上が違反の実態

監督実施数の大幅増加を

労基法・改善基準違反率

 厚生労働省の11年度の監査結果がまとまりました。労働関係法違反が見つかった事業所は、タクシー・ハイヤー業が86・7%、バス業が79・4%でした。

 【解説】ハイタク業は監督実施事業場数639社に対して違反554社、バス業は214社に対して違反170社と、監督が入った大半の事業場が法律に違反していました(図1)。監督が入りさえすれば違反が見つかるという状況で、監督実施数を大幅に増やすことが求められています。

 ところが、図2のグラフのように監督実施数は依然として不十分であり、政府の方針で公務員の定員削減が進められているなかで、労働基準監督官の人員確保が難しいのが現状です。また、政府が計画している「地域主権改革」では労働基準監督署も対象となっており、機関が地方に移管されれば人手不足の地方において、ますますまともな監督ができなくなる恐れがあります。

図1

図2


新加盟のなかま  (816)青森・前田タクシー労組

加盟して解雇撤回

 【青森】弘前にある前田タクシーで前田タクシー労働組合(澤田秀徳委員長、3人)が2010年8月3日に結成され自交総連に加盟、この程公表しました。

 同社では、不当解雇が予想されたことなどから相談があり、中弘南黒労連の協力を得て労働組合を結成しました。

 団体交渉をねばり強く行い、澤田委員長の解雇を撤回させ、団交の相手方であった社長と労務担当は更迭されました。


職場権利の点検(8)

「改善基準」は守られていますか

 労働基準法では、労働時間は1週40時間、1日8時間以内と定められています。ただし労使で時間外労働の協定(36協定)を結べば、上限なしで残業が可能です。

 自動車運転者の場合は特別に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準)という厚生労働省の告示が定められていて、36協定を結んでも、これを超えた労働はできません。

違反には行政処分

 この基準自体が緩すぎるという問題はありますが、実際にはこの改善基準さえ守られていない場合が多くあります。

 厚生労働省の改善基準自体に罰則はありませんが、これと同じ内容が国土交通省の告示ともなっていて、違反すれば会社が道路運送法違反で行政処分されます。

 自分の職場で、改善基準が守られているか、36協定や勤務ダイヤと照らし合わせて点検してみてください。

表