自交労働者No.809、2012年10月15日

総営収 10年で23%減

消費税増税などもってのほか

タクシー活性化法3年

減車と景気回復が不可欠

タクシー台数がピークに達した2007年の鹿児島中央駅タクシープールの様子=2007年2月23日
タクシー台数がピークに達した2007年の鹿児島中央駅タクシープールの様子=2007年2月23日
 タクシー活性化法で再指定された特定地域では、これまでの実績を踏まえて改めて地域計画が立てられます。運転者の労働条件の改善という目的を達成するためには何が必要でしょうか。

 【解説】2002年の規制緩和後急増したタクシー台数はピーク時には22万台(法人のみ、07年)を超えました。そこから2万台以上が減車されて、総台数は規制緩和時を下回りましたが、1日1車あたり営収はわずかな回復にとどまり、規制緩和前の数字にはとても届かない実態です。

 その要因は、タクシーの需要そのものが大きく減少し、実現した減車の台数では追いつかないからです。

台あたり営収も減

 左の表は、法人タクシーの営業実績を、規制緩和前の00年度と10年度で比較したものです。全国の営収は、2兆565億円から1兆5755億円へ23%も減少しています。そのため、多少台数が減ったのに、1台あたりの営収は979万円から785万円と、規制緩和前の水準には戻っていません(通常は1台に2人以上の運転者が必要なので、1人あたりの営収はこの半分以下、賃金はさらにその半分程度です)。

 勤労者の所得が減り、日本経済自体が縮小してきた結果、タクシーに乗る人が少なくなってしまったということです。

景気の回復と適正な福祉政策を

 したがって、需要に見合ったいっそうの減車とともに、需要を増やすために国民のふところが豊かになる景気の回復が必要です。

 自分だけもうけを溜め込んでいる大企業に利益を還元させ、世の中にお金が回るようになることが重要で、景気を冷え込ませ、庶民の可処分所得が減る消費税増税などはもってのほかです。

 また、タクシーの潜在需要を掘り起こすうえで、障害者やお年寄りの移動にタクシーを役立てるため、福祉政策・運賃補助などの充実も不可欠です。

表


秋田・横手が外れ
千葉・南房が新規

142の特定地域を指定

 前号既報のとおり国交省は10月1日、タクシー活性化法にもとづく特定地域を再指定しました。

 当初は3年前に指定された142地域をすべて再指定する予定でしたが、前回、首長の要請により指定された秋田県・横手市は、今回は首長から要請がなかったため指定されませんでした。

 一方、千葉県・南房交通圏が、営業収入等の指標に合致したため新たに指定され、合計の特定地域は142地域で変りませんでした。


徹底的な指導が必要

下限割れ営業車を現地調査

大阪地連

交差点を占拠する形で違法営業するタクシー=堺市役所付近
交差点を占拠する形で違法営業するタクシー=堺市役所付近
 【大阪】大阪地連は、「堺駅の周辺で駐停車禁止の交差点や横断歩道上で違法営業しているタクシーがいる」という仲間からの情報を受け、9月19日深夜、同駅周辺での実態調査を行いました。

 この日は、ガス管の工事とタクシーセンター指導員の巡回が重なり、違法営業が行われているという場所に車は皆無でしたが、待機中の乗務員に聞き取りを行ったところ、普段は商店街入口の横断歩道をはさんだ前後に違法営業車の列ができるほか、別の車線でも下限割れのタクシーが正規の乗り場の手前に並んで乗客を奪っているとのことでした。

 乗務員は「もうあきらめている。乗り場の手前に安い車があったら(利用者は)乗るわ」と話し、「今日みたいに取り締まりをやってくれたらそういうことはなくなる」「やるなら徹底的にやってもらわんと真面目にやってるもんがバカを見る」といった不満も聞かれました。


次回からいよいよ証人尋問

突然の会社解散・全員解雇事件

静岡・石川タク富士宮労組

閉廷後に開かれた報告集会=9月12日、弁護士会館
閉廷後に開かれた報告集会=9月12日、弁護士会館
 【静岡】石川タクシー富士宮労組の組合員13人が、突然、解散・全員解雇した会社に対して、解雇の無効と未払い賃金請求や慰謝料を求めていた裁判は9月12日、静岡地裁で12回目の口頭弁論がひらかれ、48人分の傍聴席が原告と支援者ですべて埋まりました。

 裁判では申請した5人の証人尋問について日時が決められ、20分ほどで終了。閉廷後は裁判所裏の弁護士会館で報告集会が行われました。

 集会で原島弁護士は、「会社解散までの労使間の経緯を年表にまとめた」と述べ、小賀坂弁護士が「会社が組合を嫌悪していたことを十分に裏づける資料になった」と付け加えました。最後に諏訪部委員長が「証人尋問では堂々と証言する」と決意を述べて集会は終了しました。


この成果を全国に

北海道・朝日交通労組

割増賃金支払いを命じる

完全歩合制の賃金 付加金も満額認容

未払い賃金などの支払い命令をかちとった北海道地連の仲間=9月28日、北海道地裁前
未払い賃金などの支払い命令をかちとった北海道地連の仲間=9月28日、北海道地裁前
 【北海道】朝日交通労組は、未払いの最低賃金と割増賃金の請求事件で9月28日、札幌地裁で支払い命令をかちとりました。

 会社の賃金体系は、割増賃金を含む完全歩合制で、営収が少ない月には最低賃金を下回ることもありました。また、15分以上の停車を休憩時間とみなすとの労使協定があり、会社は実労働時間は請求よりも短いとして反論していました。

 判決は「会社の賃金体系は時間外等の労働時間に関係ない完全歩合制であり、労基法等に従った時間外等の割増賃金の支払いを行わないものである」とし、休憩時間についても「15分以上の停車を休憩時間とみなすことは相当でない」として、組合側の請求額を全面的に認め、原告6人に対し約700万円を支払うよう会社に命じました。また、全国的に存在する同様の賃金体系による違反行為防止のためにも必要とし、同額の付加金の支払いを命じました。


各地の大会

100人以上組織へ回復を

山口第49回大会

 【山口】山口地連は9月24日、下関市内で第49回定期大会を開きました。大会では55歳という若さで亡くなったM村(はまむら)政幸書記長の志を受け継ぎ、自交労働者の利益と権利を守る運動の先頭に立ち奮闘すること、執行委員会で決めた宣伝行動を必ず実施し、100人以上組織勢力へ回復をはかることが確認されました。

 委員長=坂本一雄▽副委員長=守重正一(新)▽書記長=川端輝彦(新)

景気よくするとりくみ必要

神奈川第58回大会

未払い賃金などの支払い命令をかちとった北海道地連の仲間=9月28日、北海道地裁前
未払い賃金などの支払い命令をかちとった北海道地連の仲間=9月28日、北海道地裁前
 【神奈川】神奈川地本は9月25日、大和市内で第58回定期大会を開きました。

 市野委員長は、タク活性化法で指定地域が再指定された、改めて減車に集中したいと述べ、県労連の最賃裁判に組合員が原告で参加していることを紹介、景気をよくするとりくみも必要だと強調しました。組織・教宣・財政の三本柱の充実、若手幹部の育成などの方針を確立しました。

 委員長=市野隆▽副委員長=木下哲▽書記長=佐藤弘朗(新)

適正実車率で安心と安全を

東京第125回大会

東京地連第125回定期大会=9月26日、台東区民会館
東京地連第125回定期大会=9月26日、台東区民会館

 【東京】東京地連は9月26、27の両日、都内で第125回定期大会を開き「適正な実車率の実現で安心・安全輸送の確立をめざそう」をスローガンとする新年度運動方針を決めました。

 今大会で飯沼委員長、鈴木書記長らが退任、飯沼委員長は組織を増やそうと最後の檄を飛ばしました。

 委員長=城政利(新)▽副委員長=池田忠司(新)、舞弓義隆(新)、早川広之、吉田三男▽書記長=川崎一則(新)

10%増の組織拡大をめざす

大分第51回大会

大分地連第51回定期大会=9月27日、大分市豊の国健康ランド
大分地連第51回定期大会=9月27日、大分市豊の国健康ランド
 【大分】大分地連は9月27日、大分市内で第51回定期大会を開催しました。大会では水野書記長が労働条件改善と権利確保、10%増をめざす組織拡大方針などを提案。参加者全員の賛成で次年度方針が確認されました。大会終了後は、元本部委員長中山喜一郎氏、地連OBを招き、大分地連結成50周年記念集会を開催。参加者は闘いの歴史を振り返り、和やかに懇談しました。

 委員長=海老原昇▽副委員長=広田稔▽書記長=水野博

消費増税阻止を強く訴える

山梨第44回大会

山梨地連第44回定期大会=10月3日、甲府市勤労者福祉センター
山梨地連第44回定期大会=10月3日、甲府市勤労者福祉センター

 【山梨】山梨地連は10月3日、甲府市内で第44回定期大会を開きました。

 窪田委員長は、消費税が増税されればタクシーは死活問題だと増税実施の阻止を訴えました。8月に名鉄武田が第一交通に株式譲渡されたことへの対応などを意志統一し「原点を思い、毅然たる態度で闘っていこう」をスローガンとする運動方針を決めました。

 委員長=窪田靜雄▽副委員長=大原俊樹(新)▽書記長=佐々木靖弘(新)


団結強めさらなる発展を

50周年記念 懇親・交流会を開催

大分地連

大分地連第51回定期大会=9月27日、大分市豊の国健康ランド
大分地連第51回定期大会=9月27日、大分市豊の国健康ランド
 【大分】大分地連は今年の11月13日に50周年をむかえる節目にあたり、9月27日に大分市内でひらかれた定期大会の終了後に「50周年記念集会」と「懇親・交流会」を開催。42人が参加しました。

 集会には元自交総連本部委員長の中山喜一郎さんが参加。また、地連のOBや関係者からのメッセージも寄せられ大いに盛り上がりました。

あいさつする中山元委員長=9月27日
あいさつする中山元委員長=9月27日

 海老原昇委員長は「お集まりいただいたことを感謝するとともに、組合員一人一人が自覚をもってがんばることを誓い、団結を強めて大分地連の発展のためにがんばります」と話しました。


自交総連の基本政策

(4)社会的水準の労働条件の確立

賃率も営収もアップを各要素に対策が必要

 自交総連は結成以来、タクシー労働者の「社会的水準の労働条件の確立」を目標として掲げています。社会的水準との格差は、左の表のように年収で238万円もあります。

 これほどの格差を本当に縮めることができるでしょうか。

 99年に発表した「社会的水準の年収確立は、いかなる条件下で可能か」では、タクシー労働者の賃金の構造を分析して、実現する道筋を示しました。

 タクシーの賃金は基本的に歩合給であり、営業収入に強く影響されます。その構造を分解したのが左の図で、賃金は、走行キロ・実車率・運賃単価・賃率という要素で成り立っていることがわかります。経営者との関係で賃率アップだけでは限界がありますが、これらの要素をそれぞれアップしていくことで賃金を増やすことが可能になります。

 そのためには、社会的水準は当然だという権利要求を貫き、そこに近づくために産別組織に団結して、政府や行政とも政策闘争をたたかうことが重要です。


アメリカと財界の圧力で「原発ゼロ」腰砕け

政府の決断を求め意見広告のとりくみ

毎週金曜日夜に首相官邸・国会周辺で行われる抗議行動も半年を超えた
毎週金曜日夜に首相官邸・国会周辺で行われる抗議行動も半年を超えた
 「原発ゼロ」を決断できない野田内閣――政府のエネルギー・環境戦略会議は9月14日、2030年代に原発稼働ゼロを可能とするとの戦略を決定しましたが、アメリカや財界の圧力でたちまち後退してしまいました。

 そもそも、30年代では最長27年も原発を動かすことになるうえ、努力目標であるとか新規建設を続けるなどの発言が政府内から相次ぎ、戦略の実効性のなさは明白でした。

 その戦略でさえ、アメリカと財界は猛反発。経団連の米倉会長らの、たとえ掛け声だけでも原発ゼロは許さないとの圧力を受け、政府は予定を変えて原発ゼロ戦略の閣議決定を見送りました。

 【原発ゼロ意見広告を】全労連では、原発ゼロへ政府の決断を求める意見広告を全国紙と福島2紙に出す運動を呼びかけています。

 1口団体5000円、個人1000円▽郵便振替02290―8―119013