自交労働者No.875、2015年10月15日

指定地域では試験合格が必要に

タクシー運転者登録制度

全国でスタート

 10月1日より、改正タクシー業務適正化特別措置法が施行され、従来、東京、大阪、名古屋、福岡など13の主要都市圏で実施されていたタクシー運転者登録制度が全国の地域に拡大されました。ハイヤー、福祉輸送限定事業を除く一般法人タクシーの運転者が対象。
 特定指定地域・指定地域において、新たに運転者になろうとする人は、講習の受講と試験に合格することが必要となります。変更内容は上表のとおりです。
 指定地域以外(単位地位)においても、講習と効果測定を受け、登録実施機関による登録を受ける必要があります。
 登録タクシー運転者が悪質な法令違反を行ったり重大事故を惹起したなどの場合は、登録が取り消され、一定期間、乗務ができなくなります。
 なお、既存ドライバーの登録については、来年3月末まで半年猶予されます。

タクシー業務適正化特別措置法(「タク特法」)(昭和45年法律第75号)の概要
(拡大する)

三陸の被災地・BRTを調査

公共交通の復旧は道半ば

大阪交運共闘

気仙沼線・大船渡線に導入されているBRT=8月26日
気仙沼線・大船渡線に導入されているBRT=8月26日
 【大阪】大阪交運共闘は8月25〜27日、東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県北部〜岩手県南部の沿岸地域において、公共交通復旧状況などの調査行動を実施しました。
 JR大船渡線の気仙沼〜盛と、気仙沼線の柳津〜気仙沼では、仮復旧としてBRT(バス高速輸送システム)が運行しています。車両はJR所有で、運行業務は地元の路線バス会社に委託されています。バス専用道を設けることで通常のバスより速く、定時運行もできるシステムです。
 沿線自治体によって鉄道に対する温度差があります。南三陸町は「これ以上復興・町づくりを遅らせるわけにはいかない」とBRTに前向きであるのに対し、気仙沼市の担当者は「鉄道が担ってきた役割、地域振興・観光振興についてJRから価値ある提案がないと市民は納得できない」と強調。「自治体によって考え方に違いはあるが、公共交通を担保してほしいという思いは同じ」と話しました。
 国労仙台地本でのヒアリングでは、交運共闘の仲間が「JR社員が動かしていた赤字路線がBRTに切り替わり中小の会社に委託されていく。長期的に路線が維持される担保もない。三陸BRTが成功例になれば全国的にその流れが強まるのではないか」との懸念を示しました。

シンガポールのタクシー

公共交通を優先 自動車流入に課金

(1)交通全般の状況

 交通運輸政策研究会のシンガポール交通事情調査(9月13〜18日)に参加して、シンガポール運輸省、タクシー会社のコンフォート社などを訪問しました。交通やタクシーの状況を報告します。

都心部にあるERPゲート。下を通るとカードから料金が引かれる
都心部にあるERPゲート。下を通るとカードから料金が引かれる

 シンガポールはマレー半島の先端、赤道のすぐ北に位置する島国で人口550万人、面積は東京23区よりやや大きい程度の都市国家です。国民は、中国系、インド系、マレーシア系など多民族で、今年はちょうど建国50周年でした。
 貿易を中心として経済発展しており、国民1人あたりのGDPはアジアで最も高く、米国や日本を上回っています。

鉄道とバスが中心

 公共交通機関としては、MRT(地下鉄)とLRT(路面電車)、路線バス、タクシーがあります。
 MRTはよく発達していて、現在総延長178km、30年には360kmになる計画で建設が進んでいます(東京の地下鉄総延長は301km)。LRTは郊外に3路線、総延長30km程です。
 路線バスは国内随所で350路線あり、中心部の道路にはバス専用レーンが設けられています。
 鉄道とバスは、インフラ(線路、設備、車両等)が国有で、運行が民間企業に委託される仕組みになっていて、よく連携しており、共通のタッチ式電子カードによる運賃支払いシステムにより、乗り継いでも運賃は通算されます。しかも運賃はきわめて安く、国内の東西幅いっぱいの40kmを鉄道とバスで乗り継ぎ移動しても3ドル(270円)以内です。運賃はコストではなく、国の政策によって決められているようです。

自家用車は制限

 自家用自動車は、規制によって通行や保有が厳しく制限されています。
 都心部への車両の流入を抑制するためにERPという課金システムがあり、中心部の周辺道路に自動料金徴収のゲートを通過すると車載器のカードから自動的に料金(1〜3ドル=90〜270円)が徴収されます。タクシーも課金され、料金は乗客に請求されます。
 自家用車を保有するためには、政府が割り当てる許可証を入札で取得することが必要で約500万円程度かかり、購入には価格と同額の登録税がかかるので、普通乗用車でも総額1000万円程度となります。それでもお金持ちは、ステータスシンボルとして自家用車を持ちたがると聞きました。
 このようにシンガポールでは、政府の主導によって、強力に自家用車抑制、公共交通優先の政策がとられているのが特徴で、これがタクシー事業にも影響を与えています。