白タク合法化は規制崩壊
新年度方針を確立
第38回定期大会
自交総連は10月14〜15日、東京・全労連会館で第38回定期大会をひらき、146人が参加し新年度運動方針を確立しました。討論では総括討論を含む17人が発言。方針・予算などの議案が満場一致で採択されました。
新年度運動方針を確立した第38回定期大会=10月14〜15日、東京・全労連会館 |
城委員長あいさつ
城委員長 |
戦争法強行可決という国民無視、民主主義と憲法を破壊する安倍政権の暴挙への怒り冷めやまぬなかでの大会となりました。国民・労働者一体となった闘いをもりあげ、戦争法廃止と閣議決定を撤回に追い込むことが必要です。
安倍政権は、労働者からの搾取を強め、大企業には利益を、国民には格差と貧困を拡大させています。労働者派遣法を改悪し、労働者の低賃金化をさらに進めようとしています。タクシーの需要低迷の原因は、日本全体の労働者の低賃金であり、最低賃金の大幅引き上げを求めていくことが重要です。
安倍政権打倒を掲げ、主権者として来年の参院選挙に向けて断固たる決意で職場・地域から運動を巻き起こしていこうではありませんか。
白タク阻止を
大会には来賓、報道合わせて146人が参加 |
タクシー特定地域特措法が施行されて1年半になりますが、法改正の趣旨である労働条件の改善が骨抜きにされ、その限界が露呈されました。
そうした中、ウーバー、リフト、ヘイローなどの外資によるライドシェアと称した白タク行為を正当化しようとする動きが出ています。楽天の三木谷社長が代表理事を務める新経連が道路運送法の改正で白タク合法化を求め、国家戦略特区諮問会議で竹中平蔵氏らが過疎地での導入を提起しています。
これは規制緩和以上の「規制崩壊」ととらえて運動を強化していく必要があります。食品で例えると中国で起きた食品偽装問題を正当化するようなもので、利用者の安全が脅かされることは必至です。断固阻止しなくてはなりません。
今後、タクシー業界をどうしていくのかという点で、地域に貢献する公共交通機関として明確な方向性を打ち出し、利用者への理解も深め、タクシー運転免許実現へ接近していきましょう。
運動の前進には、組織の強化拡大が必要不可欠です。背水の陣をしいて組織後退に歯止めをかけ、要求実現のために、学習実践と組織の強化拡大の両輪で奮闘しようではありませんか。
タクシー運転免許を展望しよう
地域への貢献、組織拡大など 17人が発言、方針を補強
大会討論
自主経営で地域住民に貢献
(1)佐藤さん |
(1)山形・佐藤正人さん 経営者が投げ出した会社を、職場の確保、利用者の足の確保、ハイタク労働運動の拠点的役割を基本姿勢にして自主管理から自主経営へと進めてきた。自治体とも協力して乗合タクシーやスクールバス、JR駅の委託など地域密着の事業を進め、事業収入にも貢献している。安全な公共輸送の責務を遂行していきたい。
高齢化で若い人がこない
(2)藍原さん |
(2)福島・藍原茂夫さん 運転者登録制が実施されたが、試験がどこで行われるか、費用がどうなるかなどまだ決まっていない。最大の懸念は高齢化で若い人が入ってこないことだ。人が入ってくる魅力的な業界にするためにも、撤退するバスに代わってタクシーが住民の足となったり、災害時の搬送ができるようにする体制を整えていくことが必要だ。
組織拡大に1年間真剣勝負
(3)石野さん |
(3)埼玉・石野正英さん 2日前に地連の大会で委員長になった。戦争法は個人的にも絶対反対だ。戦争に出される自衛隊員の安全を誰が守るのか。白タクは、お客さんは不安だから安くても乗らないと言っている。危険な輸送だ。組織拡大では、4か年計画にも関わらず人数が減っている。1年間、真剣に勝負して増やしたい。
道交法闘争で組織の魅力を
(4)坪倉さん |
(4)東京・坪倉秀樹さん 道交法対策部のとりくみを紹介する。道交法闘争は組織拡大の重要な役割を果たしていて、個人タクシー労組は道交法闘争を中心にすえて300人を超えるまでに拡大してきた。免許を守る闘いは魅力ある自交総連に欠かせない。自覚を高めるために安全運転中央研修所での研修にも16人を派遣してきた。
知恵を絞って機関紙を作成
(5)梅木さん |
(5)神奈川・梅木聡さん 地本で教宣活動を担当。写真や記事のやり取りに本部と共有サイトを活用、大容量のデータを管理している。パソコンを1台増やして、2人同時作業で効率が上がった。組合員から意見を聞いて知恵を絞って機関紙を作成している。市野前委員長が7月に亡くなった。追悼紙面をつくってご家族に送った。
バス部会発足しシンポ開催
(6)山本さん |
(6)大阪・山本雅弘さん 今年、全国バス部会を立ち上げ、3月17日にシンポジウムを開き、北陸道事故の検証をした。労使一体の労務管理、11日連続勤務の問題、ガイドと車掌の活用が必要などを提起した。現在の改善基準は過労死認定基準を上回る時間を容認しているのが問題だ。タクシーの仲間もバス労働者の結集を呼び掛けてほしい。
北九州小倉で組合を結成
(7)中村さん |
(7)福岡・中村朗さん 特定地域指定のための公聴会では内田書記長が公述人として積極的な提言を行った。事故、渋滞など改善しておらず、供給削減が必要だ。北九州で小倉支部が結成された。協会の罰金を乗務員の賃金から差し引いている会社が多く、是正を求め勇気を出して組合を結成した。
ウーバーの仕組み理解を
(8)月村さん |
(8)東京・月村隆浩さん ウーバーは世界に広がっている。なぜか。利用者からすると便利で、スマホアプリで行先を入れると事前に運賃が表示され、10分で来る。地方の過疎地で移動の権利が制約されているところでは広まりかねない。さらに、特区で道運法が及ばない地域をつくって導入される危険がある。仕組みを理解して反対していこう。
富士急の責任認めさせたい
(9)諏訪部さん |
(9)静岡・諏訪部みゆきさん 石川タクシー全員解雇から5年間の裁判闘争を経て7月に最高裁で上告が棄却されたが、納得できるものではなく、労働委員会で闘っている。世論を巻き込んで富士急の社会的責任を認めさせたい。どうせ生きるならかっこいい生き方をしたい。自交総連のみなさんと行動し生きることがかっこいい生き方につながると思う。
戦争法案阻止のデモに参加
(10)本山さん |
(10)福岡・本山幹雄さん ワーカーズコープ労組では戦争法案成立を阻止するために、平和行進や原水禁大会、何度もデモ行進に参加した。強行採決は悔しいが、孫たちのために廃止にむけて頑張りたい。タクシーの売上げは上がらず、自主経営の現状は厳しいが、組合員教育をし、地域に密着して活動を認めてもらえるようにみんなでとりくんでいく。
登録制の内容まだ不明確
(11)北井さん |
(11)鹿児島・北井良夫さん 運転者登録制で免許センターを立ち上げ、協会から労働者の代表として出てくれという話だったが、10月になってやっと発足。まだ内容が明らかでなく、運転者の地位向上などの趣旨が生かされていない。県内を宣伝して、意見の吸い上げなどをやっている。まだ組織の拡大にはならないが、がんばりたい。
連続して仲間が増えている
(12)横田さん |
(12)高知・横田春吉さん 2月に会社譲渡に伴い解雇された土電ハイヤーの労働者が相談に来て個人加盟した。3月には県交通北部交通の路線バス労働者5人が北部ユニオンを立ち上げ、団交で夏賞与も満額取った。6月にはセメント会社の運送部門の労働者が個人加盟。9月に土電ハイヤー新会社で試用期間が終わって正社員になった者が組合を結成、がんばっている。
特定地域でも減車は不十分
(13)吉田さん |
(13)長崎・吉田敏雄さん 組合員の減少に歯止めをかけ、組織拡大に何が有効かを検討してきた。新規加入の一本釣りもしたが、高齢者が多く、老親の介護をしないといけないとか、なかなか厳しい。ビラ配布も計画して重点的に行っている。長崎は特定地域になったが、減車は車検切れの車だけ。協議会で自交総連の方針を訴えていきたい。
最賃や有休を解決して拡大
(14)田中さん |
(14)青森・田中泰一さん 3年前9人だった組合員が67人になった。最初は勧誘しても組合費がもったいないと言われたが、非組合員に会社の不満を聞いていくと、最低賃金の支払い、有休がない、懲罰や事故負担がある、無理な勤務、社会保険がかけられていない、などたくさん出てきた。組合に入って解決しようと誘い、加入した人は安心して仕事ができている。
総括討論
タク免許に世論の支持を
(15)冨中さん |
(15)宮城 冨中有さん 特定地域になった仙台市で地域計画を年内にまとめようとしているが、運輸局が新免の最低車両数の40台以下のところは減車をしなくていいと言ったためまとまらなくなった。組合は、規制緩和前の最低車両数である10台以上の会社は減車しろと要求している。
改正法の限界が明らかになるなかで、今後、労働条件改善のためにはタクシー運転免許しかないでしょうとなっている。それを実現するために、世論の支持が必要で、運転者の意識も変えていかなければならない。
労働者犠牲の安売り反対
(16)運天さん |
(16)大阪・運天武史さん 公定幅運賃を不服としてエムケイやワンコインが裁判をしているが、彼らは会社が負担すべきコストを乗務員に転嫁して低額運賃を成り立たせている。2割程度の低額運賃の車のために運転者全体の賃金が低迷している。橋下市長の大阪市解体を住民投票で食い止めたのに、半年でまた都構想を言いだしている。ええ加減にせえ! と言いたい。
労働者を犠牲にした安売りは消費者、他産業の仲間と連帯しなければたたかえない。知事選、市長選、参院選で安心して暮らせる社会を実現するために奮闘したい。
拡大と次代の幹部育成を
(17)田村さん |
(17)東京・田村清隆さん 戦争法案反対の闘いで若者が、70年間戦争しなかったのは、お年寄りがたたかってきたからだ、ここで終わらせるわけにいかないと発言していた。賛成議員を落選させ、一点共同の輪を広げて新しい政治をつくることが必要だ。
地連では年間300人以上の拡大を目標に、隣の組合への声掛け、宣伝、アンケート、ビラ、未組織労働者との対話をしてきた。乗務員が減っているが、職場には未加盟労働者がまだ7000人いる。次代を担う活動家の育成とともに奮闘している。
安全、誇り、地域貢献
実利確保し組織拡大を
執行部まとめ
今村書記長 |
執行部答弁に立った今村書記長は、討論の中で明らかにされた教訓的事例や要望意見等をふまえ大会のまとめを行いました。
第1に、危機打開のキーワードは安心・安全、誇りと働きがい、そして地域貢献にあると述べ、この3つの視点でのとりくみ強化を強調しました。特に地域貢献では、デマンドタクシーや通園・スクールバス等の運行管理業務委託に対応している山形地連代表の報告を紹介しつつ、地域社会とのかかわりで、自治体や住民にとって “○○タクシーがあってよかった”というような存在感を示す真摯な態度が重要であると指摘しました。
第2に、「信頼と連帯、頼りがいある組織としての前進を」の課題について、道交法闘争や権利闘争による身近な実利・実益の確保、地方労連との連携、自交共済加入促進との結合等で拡大運動を日常化させ、具体的成果をあげていこうと訴えました。
第3には、戦争法廃止の政府をつくるための動きが国民の大きな共感を得ていることや、タクシー規制破壊への危険性を指摘し、これ以上の悪政推進を許さないことが重要と指摘。労働組合そのものの存在意義が問われる重大課題として、“憲法を守れ、平和と民主主義を守る国民的共同の先頭へ”と呼びかけました。
大会宣言
2015年10月15日 自交総連
大会宣言を読み上げる鹿児島・瀬戸山中央執行委員 |
自交総連第38回定期大会は、『タクシー運転免許を展望し、白タク合法化阻止 仲間を増やして、職場と地域の要求実現』をスローガンに掲げ、今後1年間のたたかう方針を確立した。
安倍首相は、「憲法守れ」の大多数の国民の声を無視し、集団的自衛権の行使容認を柱とする「戦争法案」を強行採決した。
世論と安倍政権の暴走がかつてなく矛盾を深めたいまこそ、労働組合が総決起して、悪政打倒の大運動をすすめるときである。
わたしたちは、憲法を生かす運動を軸に、戦争法の廃止を求め、暴走政治をストップさせるため、すべての国民・労働者とともにたたかう。
わたしたちの職場では、若い労働者の流入が極端に少なく、高齢化による退職により、組織減の流れに歯止めがかかっていない実情にある。
その最大の原因は、過酷な労働環境であるにもかかわらず、賃金は極端に低いという劣悪な労働条件にある。若者が希望をもって働ける環境をつくり、事業が持続していける将来展望を開くためには、抜本的な労働条件の改善が急務である。
わたしたちは、こうした現状を社会的に問題にし、世論を喚起して、労働条件改善のための環境整備を求めていく。減車による適正台数、上限運賃確保と合わせて、諸問題を根本的に解決しうる「タクシー運転免許制度」の実現などの政策を掲げてたたかう。
運動の前進には、組織の強化拡大が必要不可欠である。一人でも多くの仲間が労働組合に加入し、ともにたたかえるよう、「労働組合に入りたい、入ってよかった」と思えるとりくみが重要である。
わたしたちは、日常的な助け合いと生活相談、みんなの要望・期待に応える実利実益の確保を重視し、権利を守るための闘争を強化していく。たたかう労働組合の存在を多くの未組織労働者に知らせ、仲間に迎え入れる。
自交総連は、大会で報告された各地の運動の教訓と、決定した方針を確信に、組織の強化拡大、安心・安全、くらしと権利を守るため、組織の総力をあげてたたかいぬくことを宣言する。
白タク合法化を阻止する特別決議
議案を承認する参加者 |
いま世界各地で、ライドシェアと称してスマホ配車で旅客運送を行うウーバーやリフトなどの企業が急速にビジネスを拡大し、多くの国で摩擦と混乱を引き起こしている。
日本でも、ウーバーが今年2月に福岡で社会実験を試みたのに続き、楽天がリフトに370億円の出資を行い、三木谷社長が代表を務める新経済連盟が規制改革会議などに働きかけて、ライドシェアの合法化を提案している。
ライドシェアは、スマホ配車企業に登録した二種免許を持たない素人が自家用車を運転して他人を輸送するもので、道路運送法違反の白タクに他ならない。こうした行為は、利用者の安心・安全を何ら担保しない無責任なものであるとともに、タクシーの需要を奪い、労働条件のさらなる悪化をもたらすものである。
ウーバーなどが進出した世界の都市では、事故の賠償や運転者による乗客への暴行などの問題が噴出し、欧州、米国、インド、韓国などでサービス停止の判決や命令が出されているが、これを不服として企業が国や自治体を訴えるという例も発生している。
もしTPPにわが国が参加する事態になれば、「投資家と国の紛争解決条項」をつかって、道路運送法の規制が非関税障壁であり、投資家の利益を不当に侵害しているとして国が訴えられ、米国にある仲裁裁判所の判決で白タクが合法化されてしまう危険性もある。
タクシー事業は、規制緩和によって供給過剰が進み、運転者の労働条件は大幅に低下した。それを改善するはずだった改正特定地域特措法は実効が上がらず、運転者の労働条件改善は進んでいない。そこに白タク合法化が行われれば、労働条件はいっそう低下し、壊滅的な打撃を受ける。
自交総連は、日本のタクシーの再生、運転者の労働条件改善のためには規制強化とタクシー運転免許の法制化こそが必要であることを訴えてきた。白タク合法化は、それとはまったく逆の規制破壊であり、タクシー事業の基盤を根底から崩壊させるものである。
自交総連は、白タク合法化を阻止するために、すべての労働者・労働組合、事業者、利用者・国民と協力して、全力で奮闘するものである。