自交労働者No.877、2015年11月15日

危険な白タク ライドシェア

特区での導入検討

安倍首相が「活用」と発言

 安倍首相は10月20日の国家戦略特区諮問会議で「自家用車の活用を拡大する」などと述べ、ライドシェアの実施に踏み出す意向を示しました。
 ライドシェアは、ウーバーやリフトなどの企業が既に世界数十か国で事業を展開、自家用車と素人ドライバーを使った無許可のタクシー(白タク)行為として、さまざまな問題を引き起こしています。日本でもリフトに出資した楽天・三木谷社長が代表の新経済連盟がライドシェアの合法化を規制改革会議に提案していました。これに対し国土交通省は、安全の確保が図れないなどとして慎重な姿勢をみせていましたが、国家戦略特区で導入される危険性が高まっています。
 導入を検討しているのは、秋田県仙北市、京都府京丹後市、兵庫県養父市の3市。タクシー会社がない地域で観光客や高齢者らの輸送を想定しています。導入には、道路運送法改正が必要となり、国交省と内閣府の間で検討が行われることになります。
 安倍首相の無責任発言で、にわかに導入がすすめられそうなライドシェアは、以下のように大変危険な輸送方法で、世界各地で事故や事件が多発しています。過疎地で役立つなどとして特区を突破口に導入することは許されません。

ライドシェア これが危険

1 運転者は二種免許なし

 運転者は素人で、旅客を安全に輸送するために必要な二種免許を持っていません。運転技量や接客の知識があるかもわからない素人運転者に命を預けることになります。

2 過労・飲酒チェックなし

 タクシーでは義務付けられている運行管理である過労防止のための労働時間管理や乗車前の飲酒チェックが行われません。徹夜明けや直前まで別の仕事をしていたドライバーかもしれません。

3 車両の整備・点検が不明

 旅客を乗せる車両としてタクシーには、年1回の車検、毎月の定期点検、定期的な消毒など自家用車より厳しい規定があります。その整備・点検が行われているか不明確です。

4 事故の際の責任は誰?

 事故の発生時の責任は運転者個人が負うことになり、スマホで仲介する企業は責任を問われません。リスクは負わず儲けだけは手に入れる無責任な企業体制となります。

5 保険で補償されるか不明

 事故の際に運転者が入っている自家用自動車保険では、補償が行われるか不明です。自動車を業務用に使用していたとして保険金の支払いが拒否されることも考えられます。

表

富士急は団交に応じろ

山梨で石川タク労組支援

山梨の富士急本社前で抗議する石川タクシー労組の仲間 =11月6日、山梨県富士吉田市
山梨の富士急本社前で抗議する石川タクシー労組の仲間 =11月6日、山梨県富士吉田市

 会社廃業・全員解雇の暴挙と闘い続けている静岡・石川タクシー富士宮労組を支援して10月6日、山梨県富士吉田市の富士急本社に対する抗議行動がとりくまれました。
 当該の諏訪部みゆき委員長は、最高裁の不当決定に負けず、労働委員会で乱暴な解雇の実態を明らかにしてねばり強く闘い続けていると訴えました。
 富士急ハイランドをバックにした富士急本社前には静岡・東京・埼玉・神奈川・山梨などから80人が結集、労働者を紙屑のように使い捨てにする経営には未来がない、組合との話し合いに応じろと抗議し、シュプレヒコールをあげました。

交通で活性化に貢献

地域再生シンポで報告

 全労連主催の憲法をいかす地域再生を考えるシンポジウムが11月8日、都内で開かれ、山形地連の武田幸夫さん(ハイヤーセンター支部、同社社長)が報告しました。
 政府の地方創生の掛け声とは裏腹に地域崩壊がすすむ中、地域活性化をめざす運動を交流、武田さんは、山形県鶴岡市で自主経営会社を運営、地方自治体と協力して乗合タクシーやスクールバス、駅舎の管理などの業務を行い、地域住民の足を守っている経験を報告しました。
 報告の要旨は下記の通りです。

地域の生活と移動の自由を守りたい

安全を心がけ、行政と信頼関係築く

山形・ハイヤーセンター支部 武田幸夫

自主経営の出発

デマンドタクシーを利用して病院に通う利用者
デマンドタクシーを利用して病院に通う利用者

 1985年に3社が合併してハイヤーセンターが出発しましたが、年間売上げに匹敵する3億円超の負債があり、93年に経営陣は経営を断念するとして辞任してしまいました。
 残された組合員は、公共交通の責任を果たそうと立ち上がり、自主管理闘争へと入りました。その時に掲げた3つの基本姿勢は、(1)職場の確保(2)利用者の足の確保(3)ハイタク労働運動の拠点的役割を果たす、ということです。
 96年に全株を労組保有とし、企業経営と労働組合運動を両立させる自主経営闘争へと進んでいきました。

乗合タクを実現

デマンドタクシーを利用して病院に通う利用者
JRから管理委託されている藤島駅。右が駅、左が営業所

 鶴岡市の山沿いの集落などで路線バスが廃止されたり循環バスが不便だったことから、組合では97年以来、コストダウンになり玄関まで車がつける乗合タクシーの実現を訴え、粘り強く交渉してきました。ついに08年に、藤島東栄地区と三川町のデマンド交通が実現しました。
 無人のJR藤島駅では若者が集まって騒ぐなど住民から苦情が寄せられていました。駅前の治安を我々の手で守ろうと、近くにあった当社藤島営業所を駅舎に移転、駅窓口業務と管理を委託されています。
 さまざまな委託業務は会社の年間収入の12%を占めるようになっています。
 運行業務では安全が第一です。スクールバスでは「乗車人数だけ家族の愛情も同乗している」ということを心がけ、行政との信頼関係を築き、地域公共交通の責務を的確に遂行しています。
(全文は月報11・12月号に掲載)

ハイヤーセンターの委託業務

 (1)藤島地域通園バス運行業務
 マイクロ3台
 (2)藤島地域小中学校スクールバス運行業務
 大型バス1台
 (3)羽黒地域小中学校スクールバス運行業務
 大型バス1台
 (4)加茂小学校通学用自動車借上げ運行業務
 ジャンボタクシー借上げ1台
 (5)鶴岡協立病院ジャンボタクシー貸切運行業務
 ジャンボタクシーで乗務員出向
 (6)藤島駅乗車券類販売運営業務
 窓口業務・駅全般管理

シンガポールのタクシー

需要が多いため緩和の弊害目立たず

(2)タクシーはリース制

最大手のタクシー会社コンフォート社を訪れた交運研の調査団=9月15日
最大手のタクシー会社コンフォート社を訪れた交運研の調査団=9月15日

 シンガポールのタクシーは、法人企業によるリース制で、運転者は企業と雇用関係はなく、車両をレンタルして営業する個人事業者です。
 5つの主要なタクシー企業が寡占状態で、タクシー台数は約2万9000台。タクシー運転免許の保有者は10万人程いますが、全員が運転者をしているわけではないそうです。
 リース料は燃料費込みで1日1人当たりで5000円前後、運送収入が1万5000円で収入は1万円ほどになるということです。

実車率は66% 電話予約も多い

 シンガポールでは1988年に台数や運賃の規制緩和が実施されました。
 一般に規制緩和が行われると、台数の急増や運賃値下げ競争が起こり、その結果1台あたりの収益が低下し、運転者の賃金の低下から様々な問題が発生します。ところがシンガポールでは、そうした混乱はさほど目立っていません。
 なぜかというと、タクシー市場における需要が多いのです。コンフォート社では「実車率66%」と聞いて耳を疑いましたが、同社については電話予約の比率も非常に高く、間違いないようです。この需要の多さが、規制緩和のマイナス面をかなりカバーしていると思われます。
 わが国では、タクシー需要が年々減退し、さらに経済的不況が深刻化する中で需給調整規制が撤廃されました。それで弊害も激烈だったわけですから、規制緩和してもうまくやれば大丈夫ということはできません。

増車は年1% 運賃は実質同一

 需要が多いのに台数が増えないのは、自動車の保有自体に対する規制が厳しく、タクシー企業も一定の条件を満たした場合に年1%の増車が認められるだけだからです。新規参入の最低車両数は800台となっていて、これも実質的な参入規制です。
 また、大手5社の寡占状態となっているためもあって、運賃には上限・下限の規制がないのに、実質的には各社同額となっていて、割増返上などの競争も起きていません。

シンガポールのタクシー運賃

◎メーター運賃
初乗 1km 3.20ドル/288円
加算 10kmまで400m毎0.22ドル/20円
    10km移行350m毎0.22ドル/20円
◎中心部サーチャージ
 17:00〜24:00 3.00ドル/270円
◎深夜割増 0:00〜5:59 50%増し
◎繁忙期割増
 平日  6:00〜 9:30 25%増し
 全日 18:00〜24:00 25%増し
◎特定地域 空港等からの乗車は割増
◎クレジットカード払い 手数料10%


新加盟のなかま  (833)福岡・北九タク労小倉支部

組合ないと解決できない

 福岡県北九州市で国際興業グループの数社に働く仲間が、タクシー乗り場などで起こっているさまざまな問題を解決しようと9月11日、自交総連北九州地区タクシー労組小倉支部(中村信廣委員長、4人)を結成しました。
 労働組合でなければ解決できない問題があると、罰金制度の廃止や労働条件の改善をめざして奮闘しています。


新加盟のなかま  (834)高知・土電ハイヤー労組

職場環境の改善へ

 高知県高知市の土電ハイヤーに働く仲間が9月30日、土電ハイヤー労組(片岡秀典委員長、4人)を結成しました。
 車庫の管理、客待ち問題などで従業員から不満が上がり、県労連・地連と相談、結成大会には県労連加盟組織も参加し激励を受けました。
 10月20日に団交を行い、組合員も増やしながらがんばっています。


新加盟のなかま  (835)東京・一越観光労組

未払い賃金の解決を

 東京都世田谷区の一越観光に働く仲間は10月2日、一越観光労組(小田桐洋委員長、10人)を結成しました。
 未払い賃金問題で有志が労基署に相談したところ、自交総連を紹介され、南部共闘会議の仲間と相談、組合結成と同時に自交総連に加盟し、すぐに結成通知、団交申入れ、上部団体加盟通知を会社に提出しました。


新加盟のなかま  (836)愛知・タクシー連絡会あいち一般

7年前のビラから結成

 愛知県名古屋市の複数の会社に働くタクシー労働者が10月23日、個人加盟のタクシー連絡会あいち一般労組(鎌田勝豊委員長)を作り、自交総連に加盟しました。
 7年前に全労連オルグの久賀さんが名古屋でまいたビラがきっかけで、劣悪な労働条件や会社から嫌がらせを受けているなどの労働者が集まり結成に至りました。