自交労働者No.887、2016年5月1日

市民に白タクの危険性宣伝

短距離の運収減で賃金低下に

東京の事業者

初乗り短縮運賃に反対する東京の仲間=3月17日
初乗り短縮運賃に反対する東京の仲間=3月17日

 東京特別区・武三地区でタクシー初乗り距離短縮運賃の申請(公定幅運賃の変更要請)が4月5日からはじまりました。19日までに104社、台数ベースで40%となってます。
 先頭を切った日本交通の申請は、初乗り1059m410円、加算237mごとに80円。同社の川鍋会長は「ちょっとそこまでの移動需要に対応できる。中長期的な需要喚起につながる」としています。
 申請に先立ち国交省は、値上げではなく運賃組み替えの申請については審査を簡略化しており、来年初め以降に認められる可能性があります。

図1

5kmを超えると高くなる

 【解説】日本交通の申請は図1のとおり、運賃の組み替えなので2kmでは現行と同じですが、それより距離が短い場合は運賃が安くなり、概ね5kmを超えると高くなります。
 短距離の運賃が安くなることから、ちょっとだけ乗るお客さんが増えるという想定ですが、根拠はありません。東京では1997年に初乗り2km660円を1km340円に変更、16社1893台が実施したことがありますが、乗客は増えず、2002年までに元に戻した経験があります。
 失敗の事例があるのに、今回またやろうというのは、タクシー活性化法改正をめぐって規制改革会議などから規制強化(減車)を攻撃されたことに対し、活性化(需要増加策)もやっているという姿勢をみせるアリバイづくりともいえます。
 乗客が初乗り2km以内で降りる回数は、郊外の昼間では35%もあります(東タク協調査)。これらの乗客の運賃は確実に下がるわけですから、営収は下がり、運転者の賃金も下がってしまうことになります。
 東京地連では、反対の運動をつよめています。事業者は安易に申請することなく、仮に初乗り短縮となる場合には、運転者の賃金が低下した場合に補填をするべきです。

図2

仕事奪われタクシー成り立たなくなる

市民・乗務員と対話

関西ブロック 白タク阻止宣伝

乗務員と宣伝隊=4月5日、京都・京丹後市
乗務員と宣伝隊=4月5日、京都・京丹後市

危機感を持って対処

 【大阪】自交総連関西ブロックが4月4〜6日、京都県京丹後市と兵庫県養父市を中心にとりくんだ「白タク合法化阻止市民宣伝」では、両市の市民や乗務員と対話しました。
 宣伝隊はまず京都市左京区の比叡山観光タクシーを訪ね、京都タクシー協会・安居早苗会長と懇談。安居会長は「白タク問題は労使とも大変な問題、一緒に阻止しなければならない。今は有償運送ということになったが、スマホを使った白タク行為はこれからやってくる。危機感を持って対処しなければ」と述べました。懇談の中で、自家用車有償運送問題は「安全面に問題があり、市民にそのことも含め宣伝しなければならない。共にがんばりましょう」とエール交換をしました。

市民に説明しない

 続いて京都府京丹後市と兵庫県養父市で両市民やタクシー・バス乗務員と対話し、「生の声」を聞きました。
 ウーバーアプリを利用したNPOによる自家用有償運送が始まる京丹後市。同市市会議員の平林智江美さんは宣伝隊のヒアリングに「NPOが動き出したのは急だった。ウーバーは表に出てこない」「自家用有償運送への期待度は高いが市民には何も見えない」と話しました。
 京丹後鉄道・峰山駅で峰山タクシーの乗務員と対話すると、「今はスマホでクレジット決済だと言っているが、実際始まると現金でも乗せることになる、私たちの仕事が奪われタクシーは成り立たなくなる」と吐き捨てるように述べていきました。
 JR養父市で対話した男性は、「企業が入ってきて、うまくいくのか分からへん。あんなもん金儲けで来るからな、失敗してでていかれた後がどうなるかという心配はしとる」と懸念を示しました。
 そしてライドシェアについては「あれはほんまに市長のチョイ走りでな、誰かがポッと言ったやつに市長が乗ったんじゃろうと思う。だから市の職員もまったく相談受けてへん」「(市民に)ひとつも説明せえへん。特区の説明はするんや。養父でなにするかは、“まだ緒についたばかり”以下、何も言えへん」と憤っていました。

地域の足を守る

スクールバスの運行を開始

大分地連 セキタクシー分会

スクールバスで児童たちの登下校を手伝う
スクールバスで児童たちの登下校を手伝う

 【大分】「セキタクシーさんに決まりました」落札。発表された時は少し疑いました。
 近くの小学校廃校を受け、児童送迎スクールバスの入札案内が3月に来ました。会議で数字を出し臨むと、競争相手はタクシー2社と大手バス1社でした。何より大手バス会社に勝ったのが嬉しかったと同分会の衞藤書記長は話しています。乗務員の賃金実態を一番知っている自交総連の功績ではないでしょうか。
 関アジ、関サバで有名な大分市佐賀関地区。人口流失がひどく1万人を切るほどで、2人に1人は高齢者です。この地に開業30年。厳しい中16人の組合員は皆必死に生きています。
 「地域の足を守る」とのスローガンで他社が20時に閉店する中24時間体制でがんばってきました。昨年から同地域でのスクールタクシーを他社と共同で運行しています。
 4月から運行開始したスクールバスは登下校をお手伝いする大事な仕事なので、安全を守って全力で成功させると奮闘しています。

白タク合法化阻止を宣伝

神奈川と宮城で自動車デモ

小雨の降りしきる中宣伝にとりくむ=3月6日、神奈川
小雨の降りしきる中宣伝にとりくむ=3月6日、神奈川
無事に実施できた=3月6日、神奈川
無事に実施できた=3月6日、神奈川

1時間の行程無事に実施

 【神奈川】小雨の降りしきる3月6日、神奈川交運共闘自動車パレードが開催されました。
 タクシー30台と建交労のトラック、ダンプ、海コン車両等が参加し、山下埠頭を出発しみなとみらい〜桜木町を経由し総数50台でドライバーの現状を訴え、白タク合法化阻止に向けて運動することを宣伝しました。
 1時間程の行程でしたが、無事に実施できました。

白タク阻止へ共同強める

ずらりと並ぶ車両=4月10日、宮城
ずらりと並ぶ車両=4月10日、宮城
共同闘争を強めることを力強くアピール=4月10日、宮城
共同闘争を強めることを力強くアピール=4月10日、宮城

 【宮城】4月10日、宮城交運共闘の車両デモが開催されました。タクシー18台、トラック4台、ダンプ9台、バス1台、宣伝カー3台の合計35台の車両と60人の仲間が参加しました。
 今年のデモは、「戦争法廃止、安倍政権NO! 暮らしと職場の危機突破」をメインスローガンに実施され、「安全破壊の白タク合法化阻止」を宣伝しました。
 デモ出発後の決起集会で、本間議長は、「安倍政権は憲法を守らない独裁政治をしいている。あらゆる分野で規制緩和を強行し、安心・安全を破壊している。国民の審判を下そう」と訴えました。
 激励のあいさつに、春闘共闘の鎌内事務局長、桜井充参議院議員の秘書・叶裕美子さんがかけつけました。
 決起集会で、仙台タクシー労組の高橋委員長は「白タク合法化を阻止するため、経営者やすべての労組との共同闘争を強める」と力強くアピールしました。

法令違反は35.5%

検討委が中間報告

軽井沢スキーバス事故後の街頭監査

 1月に起こった軽井沢スキーバス事故後、国土交通省は検討委員会を設置し、3月には再発防止策の中間報告がまとめられました。
 また1月21日から3月下旬にかけて、抜き打ちで実施した街頭監査の結果が発表されました。これは、全国の貸切バス乗り場等のべ38か所において出発前の貸切バス(計242台)に立ち入り、運転者の健康状態、交換運転者の配置状況、運行指示書の作成状況等について確認を行ったものです。
 その結果、242台中86台(35・5%)の車両に法令違反を確認しました。2月3日に、法令違反事項をリスト化したチェックシートを全事業者へ配布し、運行前に事業者自らが最終確認を行う等法令順守の徹底を通達したところ、法令違反指摘率は通達前は46・2%、通達後は23・2%となりました。
 国交省は街頭監査で法令違反が確認された事業者に、監査実施日から原則30日以内に呼出監査を実施し、違反事項が改善されたことを確認しました。街頭監査は、今後も連休等の多客期に引き続き行うこととしています。

軽井沢スキーバス事故
対策検討委員会 中間報告の概要

(1)貸切バス事業者に対する事前 及び事後の安全性チェックの強化
  ・悪質事業者の許可の取り消し
  ・事業許可の再取得要件の厳格化
  ・監査後に違反事項が改善したかを速やかに確認
  ・事業許可の更新制の導入
(2)旅行業者等との取引環境の適正化、利用者への安全性の可視化
  ・利用者へ貸切バス事業者名提供
  ・運賃や料金情報に関する通報窓口の設置
  ・旅行業者への行政処分等の強化
(3)運転者の技量チェックの強化
  ・新たに雇用したすべての運転者への適性診断の義務化
(4)ハード面の安全対策の充実
  ・ドライブレコーダーによる車内外の映像の記録・保存
  ・シートベルトの着用徹底

表

白タク合法化阻止 危険な白タク ライドシェア

特区法改正で白タク運行するより
住民の移動に貢献する乗合タクへの補助充実

山形県三川町の委託を受け、ハイヤーセンター(自交総連山形地連同支部、鶴岡市)が運行しているデマンドタクシー「でんでん号」
山形県三川町の委託を受け、ハイヤーセンター(自交総連山形地連同支部、鶴岡市)が運行しているデマンドタクシー「でんでん号」

 旅行客の運送に自家用車を活用するという国家戦略特区法改正は、公共交通空白地域での住民要求に応えるかのように装い、白タク運行の実績をつくり、合法化へつなげる意図がみえます。

各地で乗合タク

 過疎地域の交通は切実な問題で、住民の願いに添って移動の自由を確保することが必要ですが、営業車を使った乗合タクシーはすでに全国で運行されており(一部左表)、自家用にはない安全性、安定性を持つタクシーの活用をもっと進めていくべきです。
 運行しているところでは、▽公共交通がなくならなかったことが一番良かった(羽後町)▽高齢者や運転できない人の行動範囲が広がった(三川町)▽タクシーより利用者の経済的負担が軽減された(村上市)などの声が出ています。
 一方で、「利用者の減少に伴い町の補助金が増加しつつある」(世羅町)など、財政上は困難もあります。現在の国の補助制度をもっと充実させることが必要で、そうすれば白タクに頼る必要もなくなります。

表