自交労働者No.889、2016年6月1日

特区法改正の必要はない

乗合タクシーもっと根付かせて

参議院内閣委員会

 国家戦略特区法改正案を審議している参議院内閣委員会で5月19日、自交総連城委員長が参考人として意見陳述しました。

城委員長が意見陳述

意見陳述をする城委員長=5月19日
意見陳述をする城委員長=5月19日

 城委員長は意見陳述で、外国人観光客の輸送を名目にした自家用有償運送を拡大する法改正の必要はなく、危険なライドシェアに道をひらくものであることを述べました。さらに、改正タクシー特措法の例から、衆議院の審議で付された附帯決議が厳密に履行されるか疑問視しました。
 ライドシェアは、IT業者がマッチングするだけですべての責任をドライバー任せにする危険なものだと指摘。タクシー運転者は公共輸送を担う責任をもって仕事をしており、東日本大震災時に最後まで住民の足を守り続けた例を出し、ライドシェアのドライバーにそれができるのかと強調しました。
 労働者を代表する意見陳述は、内閣委員の日本共産党山下芳生議員の尽力で実現し、当日は自家用有償運送問題に限って山下議員に代わり辰已孝太郎議員が質問を行いました。

安全確認されねば認めない

辰已参院議員
辰已参院議員

 意見陳述を受け辰已議員は、規制緩和の失敗の反省からタクシー活性化法ができた経緯を示し、ライドシェア合法化などの規制緩和は許されず、安全を経済効率の犠牲にしてはならないのではと聞くと、石破地方創生担当大臣も「それで結構です」としました。ウーバなどが行うライドシェアで起こっている問題を紹介し、こうした危険なものを認めることはないですね、との確認に石破大臣は「乗客の安全が確認されないものを認めることはない」と答えました。
 辰已議員は、特区法改正で実施しようとしている自家用有償観光旅客等運送事業について、すでに現行法で緩和されてできることを、特区でやる立法事実はないと強調しました。

乗合タクシーへ支援拡充を

 辰已議員は、城参考人に地方ではタクシー事業者も努力している、と乗合タクシー等の事例を尋ねました。
 城参考人は「山形県の三川町では、コストダウンとフットワークの良さ、加えて車が玄関までつけるということで、タクシー会社が自治体と粘り強く交渉し、デマンド交通に切り替えたところもあります」と答えました。
 辰已議員は、住民の足を守るためにはタクシーをもっと根付かせることが必要だとし、デマンドタクシー等への国の支援をもっと拡充できないのかと質問。国交省の担当官は「平成27年度は33億円に増やした」としました。
 最後に辰已議員は、「質疑で特区法改正を行う立法事実はないことが明らかになり、石破大臣も安全が第一だと答弁された。だったら特区法改正やめるべきだ」と強調して質問を終わりました

特区法改正案 内閣委で可決

 同法案は5月26日、参議院内閣委員会で自民・公明・おおさか維新の賛成で可決されました。民進・共産・生活は反対しました。

白タク阻止の宣伝

楽天支社前でライドシェア反対

東北B 九州B

初乗り短縮で悪影響の声

 【宮城】東北ブロックは5月19日、白タク合法化阻止をめざし、盛岡市での宣伝行動を実施しました。
 この行動に、宮城地連から4人、山形地連から2人、福島地連から2人の計8人が参加し、150枚のビラを配布しました。
 午前中は、盛岡駅で実施しましたが、「2年前に初乗り520円になってから水揚げが上がらない」など初乗り短縮による影響の声が多く聞かれました。
 午後からは、駅西口や6か所のガススタンドで宣伝行動を実施しましたが「暇だ」という声だらけでした。

大好評の地連宣伝カー

タクシー乗務員と対話=5月23日、鹿児島市
タクシー乗務員と対話=5月23日、鹿児島市
新宣伝カーで訴え=5月23日、鹿児島市
新宣伝カーで訴え=5月23日、鹿児島市

 【福岡】九州ブロックは、5月18日から佐賀をスタートに「白タク・ライドシェア阻止組織拡大九州キャラバン」を開始しました。
 また、福岡地区労連から譲り受けた宣伝カーは、今月から本部宣伝カーと色や看板を揃え本格的に始動、各地連からも大好評です。
 今年の九州キャラバンは、ライドシェア阻止の世論を九州で高めるため乗務員と利用者向けのビラをポケットティッシュにセットし1500枚をまき切るまでとりくみました。
 宣伝は、駅、港、空港の他に楽天オーネット長崎支社前、楽天鹿児島支社前でも行いました。
 ライドシェアの内容をくわしく尋ねてくる乗務員さんも多く、継続的な情報提供が求められています。
 九州キャラバンは佐賀、長崎、鹿児島、大分、福岡の順番で回り、25日までに無事終了しました。

若者が入ってくる業界にしよう

自交総連への加盟求める

関東B宣伝

宣伝に励む関東のなかま=5月12日、つくば市
宣伝に励む関東のなかま=5月12日、つくば市

 【東京】関東ブロックは5月12〜13日、茨城、栃木、群馬、埼玉の主要駅頭で組織拡大宣伝を実施しました。
 白タク合法化問題や東京で起きている初乗り距離短縮運賃の問題を宣伝し、自交総連への加盟を求めました。
 また、これまで起きている公共交通機関の大事故にふれ、規制緩和をすると競争原理によって利用者の「安心・安全」が脅かされてきた事実を市民に話しました。
 12日の午前8時には、松戸駅で千葉地本の小林委員長が宣伝カーから「運転手が高齢化しています。その原因は労働条件が悪いことです。若い人が入ってくる産業にしなくては、安全が守れない」と呼びかけました。

組織拡大へブロック宣伝

春闘最終決着の対策

第2回中闘

 自交総連は5月10日、東京で第2回中央闘争委員会(第4回常執)をひらき、春闘の最終決着にむけた対策を決めました。
 春闘は、主要な組合で、解決金支給、職場要求の実現などで決着に向かっていますが、まだ解決していないところでは、最終決着をめざし三つの解決基準を踏まえ個別対策を重視していくことにしました。
 衆院を通過した特区法改正の今後の対策を論議しました。
 組織拡大では、関西ブロックの京都・兵庫での白タク合法化阻止の宣伝、関東ブロックの神奈川・静岡・山梨宣伝の様子が報告され、多くの労働者が白タク問題も知らず、劣悪な労働条件におかれている実態が明らかになっています。
 5月には、東北、関東、九州ブロックの未組織宣伝が計画されています。

白タク合法化阻止へ

宣伝隊の感想

京丹後市・養父市

 自交総連関西ブロックが4月4〜6日、京都府京丹後市と兵庫県養父市を中心にとりくんだ白タク合法化阻止市民宣伝に参加した2人の感想を紹介します。

一致団結し行動を起こす

 東京・舞弓義隆さん
 京丹後市は京丹後鉄道が市を縦貫しており、路線とコミュニティバスが9路線走っている。乗合タクシー(デマンド)があり、一般タクシーは既存の峰山タクシーと、4月開設の近畿自動車の久美浜営業所、日本城タクシーの網野営業所である。
 交通空白地というのが白タク導入の動機であったはずだが交通空白地なのか大変疑問に思われる。交通難民・交通弱者という表現であればまだ理解できるのだが。いずれにしても交通難民と弱者は首都東京や大阪でも存在する。
 なぜ京丹後にライドシェアなのか。それは京丹後で実験されたものが国民・市民を抜きにして行政主導で絶賛され一気に大都市へ導入される。そこが規制緩和論者などの資本家の狙いなのだろうと容易に推察できる。
 タクシー産業で生計をたてるものとして経営者とか労働者とかを言っている現況ではない。白タク導入を阻止するため一致団結し行動を共に起こすことが重要である。その為にも自交総連は先頭に立ち、経営者と労働者にこの危機を知らせていくことが求められる。
 私も東京地連の先頭で奮闘していく決意を新たにした。

白タクは普通の「運転者」

ドライバーとの対話=4月5日、京都・京丹後市
ドライバーとの対話=4月5日、京都・京丹後市

 福岡・丸山善宏さん
 京丹後市で、市議の平林さんとの面談で京丹後のライドシェア、交通事情についてお話をうかがいました。京丹後では、市の上層部の一方的な考えで話が進んでいる様子でした。一般の市民の方々へ十分な説明もなく進んでおり、良い所だけ宣伝し、危険な部分は説明がなされていませんでした。
 京丹後では、市バスとバス業者への委託話がありましたが、時刻、路線配置がわるく利便性にかけており、私は平林市議に市バスの充実化をはかってほしいと強くお願いしました。
 市から路線委託を受けているバス会社の運転士さんと話すと、路線が片道のみの運行で復路はなく送ったお客さまを迎えに行くことができないとのことでした。この路線は総合病院行きとのことで、帰りの便がないことにおどろきました。私はこの状況に怒りを覚え、宣伝カーでの演説で市民の皆さんへ訴えました。
 私たちは「営業運転士」です。二種免許を持っています。白タクは、運転士ではなく普通の「運転者」です。大きく違います。今こそタクシー、バスドライバー運転士が手を結び、力を合わせライドシェアの阻止に向かってがんばりましょう。

白タク合法化阻止 危険な白タク ライドシェア

利用者が困ったときに高くなる「サージ・プライス」

災害時にはね上がるウーバーの運賃

 ライドシェアの運賃はタクシーより安いのが売り物で、米・サンフランシスコではウーバーの運賃はタクシーのほぼ半額です。安さでタクシーを駆逐し、昨年12月には当地で最大のタクシー会社イエローキャブが破産に追い込まれました。

運賃4倍に急騰

 タクシーと違って運賃の規制がないため、ウーバーでは、普段は安い運賃が需要が急増すると自動的に高くなる「サージ・プライス」(Surge Price)という仕組みが採用されています。ウーバーのアプリでは、需要急増時には2・0×(2倍)などの表示が現れ、通常の数倍の運賃が適用されます。
 14年12月11日、暴風雨がサンフランシスコを襲い、電車やバスなど公共交通機関がストップしたとき、ウーバーの運賃は通常の3・8倍に急騰しました。その4日後、同じシステムを使ったオーストラリアのウーバーでは、シドニーで起きた人質立てこもり事件の現場周辺地区の運賃が4倍になりました。天災や事故、事件のたびにウーバーの運賃は何倍にも上がります。
 ウーバーの言い分は、需要が多い時には運賃を高くして運転者の報酬を引き上げ、稼働車両を増やすためだということです。

公共交通といえず

 しかし、他の交通機関が動かずに利用者が困っている時に、その足元を見て運賃を値上げするやり方は、火事場泥棒のようなものだと批判があります。
 タクシーは認可運賃ですから、運賃が日々変わるということはありません。公共交通機関として、災害時にも運転者が使命感をもって運行を確保しています。
 ライドシェアは、公共交通機関とは相容れない公共性・安定性を欠くものであることがよくわかります。

ウーバーの『サージ・プライス』需要急増時に運賃が数倍にはねあがる!


 ウーバーに批判殺到―シドニーの人質事件に乗じ料金引き上げ(ウォール・ストリート・ジャーナル14・12・16より)
 配車アプリ「ウーバー」を手がける米ウーバー・テクノロジーズの評判に、また傷が付いたようだ。シドニーで発生した人質立てこもり事件の最中に、配車サービスの料金が急上昇したのだ。
 同社は現地時間15日早朝にシドニー中心部への配車サービス料金が値上がりしたことを認めた。当時、市の中心部では銃を持った男がカフェの客らを人質にとり、立てこもり事件を起こしていた。

白タク合法化を阻止できる国会議員を選ぼう

安倍政権が財界と一体になり規制緩和を推進

参議院選挙と自交労働者(2)

 自交労働者に直接かかわる参議院選挙の焦点は白タク合法化の行方です。推進か反対か、各党の姿勢を見極めることが大切です。

 昨年来、にわかに進行した白タク合法化=ライドシェア解禁の動きは、下表のように、リフトに3億ドルを出資した楽天の三木谷社長の提案に始まり、国交省がいったん拒否しても、やり方を変え、ついに国家戦略特区での部分的な解禁に道を開きました。
 白タク合法化は、安倍内閣がすすめる「三本の矢」のひとつ、構造改革=規制緩和の一環です。

白タク合法化に関連する動き

規制打破のドリル

 安倍首相は13年10月、APECの首脳会議で「岩盤規制を打ち破るドリルの刃となる」として規制改革への決意を表し、国家戦略特区を新設したのをはじめ、規制改革会議や産業競争力会議に自身に近い規制緩和論者を集めて、規制緩和の政策を推し進めています(下図)。
 自らがライドシェア企業の取締役であり、産業競争力会議の委員に名を連ねる三木谷浩史氏が規制改革会議にライドシェア解禁を提案、同じく産業競争力会議委員の竹中平蔵氏らが国家戦略特区諮問会議で特区法改正を提案して閣議決定、与党の自民・公明とおおさか維新の賛成で法案が可決されるという流れです。
 公共交通を破壊して国民を危険にさらし、タクシー事業を崩壊させ、タクシー労働者から仕事を奪うライドシェア解禁への流れを止める選択が求められています。

規制緩和推進の政府・財界ぐるみの委員会

1200万の署名を提出

 戦争法廃止の統一署名が1200万人分を突破し5月19日、国会で民進・共産・生活・社民の4野党に提出されました。署名は引き続き6月末まで継続して集めています。

学んだこと職場で活用

パソコン集中講座、開催

盛況に終わったパソコン教室=5月21日、台東区
盛況に終わったパソコン教室=5月21日、台東区

 【東京】教育活動委員会は5月21日、上野区民館でパソコン集中講座「フリーの会計ソフトを使ってみよう」を開催しました。
 主催者を代表して池田教育活動委員長が「組合員にわかりやすい会計を示すことが団結につながる」とあいさつ、単式・複式簿記による仕訳、現金出納帳、貸借対照表と損益計算書―などを学習しました。
 参加者からは「学んだことを職場で活用していく」など感想が寄せられました。