自家用車運送、拡大のおそれ
参議院本会議 附帯決議の遵守が重要
本会議での採決(参院ネット中継から)=5月27日 |
国家戦略特区法改正案が5月27日、参議院本会議で可決、成立しました。自民・公明・おおさか維新が賛成、民進・共産・社民・生活は反対しました。
同法案は、海外からの旅行者の足にするとの名目で自家用有償旅客運送を特区内で拡大して運用しようというもので、これまでの審議で、一般ドライバーが運転し、旅行者に限らず誰でも乗せられ、適用地域は特区会議で決められるなど、自家用車による運送が無限定に拡大するおそれが明らかになっています。
現行の自家用有償旅客運送制度でも可能なものを、ことさら外国人旅行者対象などとして必要性もないのに行うことは、実績をつくって将来のライドシェア解禁へつなげる意図が想定されます。
参入のハードル低くなる
反対討論する山下芳生議員(参議院ネット中継から)=5月26日 |
26日の内閣委員会での討論で、民進党の風間直樹議員は、「運転者に二種免許が義務付けられないなど事故の危険性が増す。ライドシェア解禁につながり、バス・タクシーを衰退させ、公共交通に弊害が多い」と述べました。
日本共産党の山下芳生議員は、「ライドシェアは白タク行為として禁止されている。法改正は現行制度を拡大してライドシェア推進者の要求に応えるものになっている。外国人旅行者といいながら事実上、誰でも運送でき、運送地域も特区会議が決めるなど参入のハードルが低くなる」と述べました。
法案可決に際し、附帯決議が付されました。
今後の攻防が重要になる
小賀坂弁護士 |
【小賀坂徹弁護士の話】改正法が成立してしまったのは残念です。
ただ今回の改正法が直接白タクに繋がるものでないことも事実です。その意味で衆参の附帯決議を遵守させていくことが重要で、決議で端的にライドシェアは認めないとしている意味は小さくないと思います。
推進勢力は、ここを起点に更なる攻勢をかけてくることが予想されます。先日のニュースでも京丹後市でウーバーシステムが稼働したことが無批判に伝えられていました。これは既存の自家用有償運送にウーバーがシステムを提供するということで、白タクとは別ものですが、営利企業が採算度外視でシステムを提供すること自体、当然「魂胆」があるわけで、今後の攻防が重要になってくると思います。
スマホのアプリによる配車を、既存の事業者がどんどん実行してしまえば立法事実はなくなります。
ライドシェア導入の口実に使われそうな交通過疎地の対策を進めていくことも重要です。
国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
5月26日 参議院内閣委員会
政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。
一、二、三 (略、株式会社の農地所有関連)
四 国家戦略特別区域自家用有償観光旅客等運送事業については、公 共交通であるバス・タクシー等が極端に不足している地域におけ る観光客等の移動の利便性の確保が目的であることから、既存の一 般旅客自動車運送事業で対応可能な場合はこれを認めないこと。ま た、同制度の全国での実施や、いわゆる「ライドシェア」の導入は 認めないこと。
五 自家用自動車による有償運送において、観光客等を対象にする場 合には、運転手に第二種運転免許の取得者を充てるなど、タクシー 事業者に準じた安全対策を講ずること。
六 自家用有償旅客運送はあくまで特例であることに鑑み、公共交通 を維持・発展させるために、バス・タクシー等の一般旅客自動車運 送事業の振興や、それらへの公的補助、業務委託など、バス・タク シーの活用についても併せて取り組むこと。
七 (略、薬剤師の服薬遠隔指導関連)
ライドシェアの危険性を提言
宮城地連
全自交宮城地本と共催シンポ
ライドシェア反対を訴える=5月30日、仙台市 |
【宮城】宮城地連は5月30日、全自交宮城地本と共催で、「白タク合法化反対、安心・安全なタクシー活用を考えるシンポジウム」をイズミティ21・小ホールで開催し、200人が参加しました。
宮城地連の本間委員長は主催者あいさつで「国が交通空白地の解消などと強弁し、白タクを合法化することは、02年の規制緩和の失敗を反省することなく、タクシー特措法やその後の改正特措法に対する規制緩和推進論者の巻き返しであり、そのつけをハイタク産業に押し付けるもの」として糾弾しました。
東北運輸局の大水課長は「ライドシェア運転者の事故時の責任や乗客の安全性を考えても、慎重に検討しなければならない」と報告。大妻女子大学の戸崎教授は、「ライドシェアを取り入れた外国では、乗客への暴力事件も起こり禁止になったところもある。乗客の安全確保ができるのか、乗務員の身分保障をどうするのか、問題が多い」と提言しました。
パネルディスカッションでは、交通空白地域でのタクシーの活用方法などについて討論しました。
適正な運賃水準考慮を
運賃WG
4種の運賃・料金を議論
「運賃制度に関するワーキンググループ(WG)」の第3回会合が5月24日、国交省会議室で開かれました。
今後の施策の検討材料とされる環境変化をふまえた運賃・料金の内容は、繁忙期割増運賃、事前確定運賃、定期券(乗り放題)タクシー、優先配車料金の4項目。国交省側からの「提案項目の効果及び課題」についての説明がなされたのを受けて、各界代表による意見交換が行われました。
この会合には今村書記長が委員として出席し、適正な運賃水準の設定と料金の関係や供給過剰是正との関連性などについても十分考慮し、検討する必要があること、また、02年の規制緩和実施後に生じた運賃多様化の調査結果(05年5月現在、下限割れ初乗運賃、営業割引、定額運賃など)をふまえ、今日現在どのようになっているのか再調査し検証すべきとの意見を述べました。
6・5総がかり大行動
政治を変える
4万人が集結し大行動
「政治を変える」と訴える=6月5日、霞が関かもめ広場 |
「明日を決めるのは私たち―政治を変えよう!6・5全国総がかり大行動」が6月5日、とりくまれました。戦争法に反対する団体でつくる「戦争させない 9条壊すな!総がかり実行委員会」が主催、全国でもデモや集会が行われました。
東京では、国会議事堂や霞が関周辺に3つのステージが設けられ、4万人が集結し、自交総連からも東京の仲間が参加しました。
14時からのステージでは、野党の代表や各分野の著名人がスピーチしました。広場にあふれんばかりの大勢の参加者が「政治を変える、市民が変える」と書いたフライヤーを掲げ、「参院選の勝利を」「9条守れ!」とシュプレヒコールをあげました。
白タク阻止宣伝
補助金の大幅拡充を
大阪地連
訴えかける大阪の仲間=5月18日、大阪市中央区 |
【大阪】大阪地連は5月18日、「白タク合法化阻止」宣伝行動にとりくみ、26人が参加しました。南海なんば〜堺東〜金剛〜富田林〜河内長野の各駅で市民や乗務員に向けて白タク・ライドシェアの危険性を知らせると共に運動への理解と協力を訴えました。
秋山委員長は、「白タク・ライドシェアはタクシー労使だけの問題ではない」と強調。公共交通の最大の価値である安心・安全を守る運動への理解と協力を呼びかけました。
続けて吉田副委員長はライドシェア導入の口実である交通空白地について、「平成の大合併から広域自治が進み、補助金でバス路線を維持してきた地域が切り捨てられた」と指摘。「国の補助金を大幅に拡充させることが必要」と訴えました。
「要請書受け取れ」とコール
富士急東京本社前で抗議
石川タク支援共闘
抗議のシュプレヒコール=5月27日、渋谷区 |
【静岡】石川タクシー富士宮労組闘争支援共闘会議は5月27日、争議総行動のなかで富士急東京本社への抗議要請行動を行いました。
自交総連の城委員長はあいさつで、「解決に向けての話が一向に進まないことに怒りを感じる。富士急のような横暴な企業の社会的責任を強く追及する必要がある」と訴えました。
関東の自交総連の仲間や他の争議行動参加者ら100人以上が歩道に並び、「要請書を受け取れ!」とコールすると、玄関から会社関係者が出てきて要請書を受け取りました。
約1割の過重労働
安全運転では家族養えない
2016年 安全運転実態調査
16年の安全運転実態調査の結果がまとまりました。4月中の1週間、3地方28組合のべ420台が労働時間を守って調査を実施しました。
テスト車の運送収入は、東京4万4577円、大阪3万3665円、宮城2万5880円でした。調査車両数が多い東京では、通常営業車と比較すると3485円も少なく、通常営業だと約1割のオーバー労働をしていることになります。
安全運転から得られる運収から年収を推定すると、東京297万円、大阪224万円、宮城173万円となり、いずれもその地方の4人家族の生活保護基準(310〜340万円)を大幅に下回ります。安全運転では満足に家族を養えないという結果が出ました。
白タク合法化阻止
危険な白タク ライドシェア
じわじわ進出 ウーバーの戦略
自家用有償運送にアプリ提供、トヨタと提携
国家戦略特区法改正案が参議院内閣委員会を通過した5月26日、トヨタがウーバーと提携という報道がありました。
いまのところ提携は日本国内ではなく、アメリカでトヨタ車をウーバーのドライバーにリースするということですが、車が売れるなら安全や公共交通破壊のライドシェア企業とも手を組むトヨタの商売には強い疑問を抱かせます。
同日には、京都・京丹後市で、自家用有償運送で住民以外の来訪者なども乗せる「ささえ合い交通」の運行が始まりました。運行にはウーバーのスマホ・アプリのシステムを使用しています。
これは、特区法改正が成立する以前の枠組みで実施するものですが、改正特区法を使えば運行区域などが拡大されるおそれがあります。
全国どこでも
「儲かる」仕事ではない京丹後市の自家用有償運送にシステムを提供したウーバーが善意だけでやっているとは誰も思わないでしょう。
ウーバージャパンの橋正巳社長は日本でのビジネスについて次のように語っています。
「都市部では、インバウンド促進の観点からも、便利で安価な交通オプションを提供すべきだ」「東京オリンピックに向けて、ITを駆使し、フレキシブルでお手頃な交通オプションをつくる必要がある」「今後もさまざまな活動を通じて、日本での事業の可能性を探っていく。日本全国どこでもウーバーが使えるようにしていきたい」(『経済界電子版』15年11月9日)
自家用車タクシー発進
(京都新聞16.5.27付より)自家用車をタクシーに見立てて住民や観光客を有償運送する「ささえ合い交通」の運行が26日、タクシー空白地の京丹後市丹後町で始まった。地元のNPO法人が運行主体となり、情報通信技術を活用して配車などを行う取り組み。
同町の住民18人がドライバーとなり、年中無休で午前8時〜午後8時に自家用車をタクシーのように走らせる。運行管理やクレジットカード自動決済などは米国・ウーバー社のシステムを活用。乗車地は丹後町、降車地は京丹後市内に限る。
トヨタ、ウーバーに出資
(朝日新聞16.5.26付より)(24日、トヨタ・ウーバー)両社が発表した資本・業務提携の中心は、一般ドライバーが自家用車などで他人を運んで収入を得るライドシェア事業の強化だ。海外でウーバーの運転手にトヨタ車をリースで貸し、運転手が収入からリース料を払う仕組みをつくるほか、車載アプリも共同開発する。資本面でもトヨタの子会社などがウーバーに出資し、関係を強める。
日本ではライドシェアは「白タク」として禁じられていることもあり、提携に伴う新サービスの予定はないという。
労働者のための政治か企業のための政治か
参議院選挙と自交労働者(3)
財界の要望で労働
法制の大改革計画
労働者のくらしは、国の労働行政、政策によって大きく左右されます。経営者の方を向いた政治か、労働者の底上げをめざすのか、選択が問われます。
◎
安倍首相は「世界一企業が活動しやすい国にする」と言っていますが、それは賃金コストが安上がりな国ということで、労働者が豊かになり働きやすい国とは正反対です。
アベノミクスで労働者の賃金が上がらないことに危機感を持った安倍首相は「最低賃金を上げる」と言いだしました。しかし、実際にやっていることは、労働者派遣法の改悪、残業代ゼロや解雇の自由化など、低賃金・不安定雇用労働者を増やす政策です。
これらは財界の要望を反映したもので、政治献金によって操られる政治を変えなければストップできません。
労働者派遣法改悪の歴史
労働者派遣法は▽85年に制定され▽96年に対象業種を拡大▽99年には原則禁止から原則自由・例外禁止へ大改悪▽03年に製造業派遣も認められました。
▽12年に無期雇用への転換努力義務などが入った改正がされましたが、この実行期限直前の▽15年に再び改悪されました(左表)。