自交労働者No.891、2016年7月1日

白タク合法化阻止のとりくみ進む

職場要求など前進

16春闘 評価と今後の課題

3・8ハイタク労働者総決起集会
3・8ハイタク労働者総決起集会

 自交総連の16春闘は6月6日現在、要求提出率64%、回答率50%、解決率42%で集約されています。各地の仲間に、今春闘の評価と今後の課題について報告してもらいました。

政策合意・共同が進む

宮城地連書記長・石垣敦

石垣書記長
石垣書記長

 16年春闘要求の解決をめざすとりくみは、5月末現在7組合が了解もしくは妥結となりました。
 解決内容では、各労組とも政策合意がなされ、とりわけ白タク合法化阻止では、共同のとりくみを進めることが確認され、闘争カンパの拠出などが実施されました。賃金については、各社とも総営収が大幅に低下する中、現行維持となっています。若年労働者が入りやすくなるよう固定給の復活を追求しましたが、改善されませんでした。
 更に、それぞれの組合では決算手当の支給、福利厚生費の支給、養育手当の支給など、実利の確保もなされています。職場の改善要求についても、洗車機の買換えなど獲得しています。
 5月30日の全自交宮城地本と共催のシンポジウム成功に向け、宣伝強化や県内全タクシー経営者への案内など運動を拡げることができました。今後、未解決労組への支援を強めます。

初乗り短縮阻止へ運動強化

東京地連書記長・川崎一則

川崎書記長
川崎書記長

 東京地連の2016年春闘は、単組要求では期末手当支給、プール金廃止、足切り減額、無事故手当新設、帰路高速改善、がん検診補助等について前進させましたが、重点課題とした乗務員負担制度の撤廃と累進歩合制賃金の廃止において、若干の改善を勝ち取ったものの地域的一掃には至っていません。
 政策闘争では、地域協議会への発信を重視しながら、東京を特定地域に指定させるための運動を継続的に展開し、昨年発足させた在京労働8団体による「東京ハイタク労組代表者会議」とも連携しながら運動を進めています。
 そうした中で3月には南多摩交通圏が特定地域候補に指定され、地域協議会は特定地域指定に合意しました。
 引き続き労働条件改善にむけた取り組みと組織強化・拡大に奮闘するとともに白タク合法化阻止、初乗り距離短縮運賃導入阻止の運動を強化します。

全組合が要求書を提出

大阪地連書記長・庭和田裕之

庭和田書記長
庭和田書記長

 16年春闘を総括するにあたり特筆すべきは昨年に続き全組合(31組合)が統一要求書及び単組要求書を提出したことです。単組の力量とも関係する春闘は、従来から第一義に要求提出が一番の問題ですが、なかなか達成できないでいました。
 本部方針にありますが、「昨年実勢プラスα」「一職場一重点課題」の達成も体制を整えなくては闘えません。
 今春闘の妥結内容は、現行労働条件維持プラス正規・嘱託労働者の条件アップ、解決金(利益還元金)5千円〜3万円。厳しい社会情勢を鑑みても本部・大阪地連が掲げる闘争方針に合致した解決内容であると言えます。更には関中グループが、未解決の14〜15年春闘を解決し16春闘でも妥結に向けた合意など大きく前進しました。
 しかし、消費税、社会保険料の滞納問題から社長が失踪する問題が発生しました。
 現在雇用・労働条件確保に向け単組と解決に向け奮闘中です。

次につながる運動を構築

福岡地連書記長・内田大亮

内田書記長
内田書記長

 職場要求では、11単組中10単組が要求書を提出。妥結に至ったのは7単組でした。
 妥結した甘木観光労組では、全事業部のベースアップ1万円となり、地連で一番大きなベースアップでした。
 はかたタクシー労組は、長年にわたって足切り額を下げるよう求め続け42万円50%の足切りを2万円下げた40万50%で妥結。

福岡メーデー
福岡メーデー

 その他の組合では、賃上げにならない場合でも現行どおりの賃金にプラスαは勝ち取る構えが強く、職場の改善や福利厚生を勝ち取り妥結しています。
 白タク合法化阻止の運動では、九州ブロックで九州運輸局要請と楽天の三木谷社長に対する抗議宣伝行動にとりくみ、福岡地連は楽天福岡支社前で労働相談と白タク合法化阻止のビラ入りポケットティッシュ500枚をドライバーと市民に配り、抗議の訴えを行いました。
 16春闘は職場要求、制度政策要求でも次につながる運動を構築できました。

知恵絞りプレゼン発表

全労連民間部会 非組合員どう加入させるか

民間部会合宿で班ごとに討論する参加者=6月18日、静岡・伊東市
民間部会合宿で班ごとに討論する参加者
 =6月18日、静岡・伊東市

 全労連民間部会の第2回パワーアップ合宿が6月18〜19日、伊東で行われ、全体で41人、自交総連から6人が参加しました。
 テーマは組織拡大で、参加者は班をつくって、職場内未組織労働者に労働組合加入を訴えるプレゼンテーションを行うという設定で、ポスターや説明の内容に知恵を絞り、2日目に発表しました。

参加者の感想

 東京・グリーンキャブ労組・竹内陽一さん(32)=自分たちで最初から最後まで作り上げるという学習は勉強になった。それぞれが発言するプレゼンは、まさにスキルアップだった。
 同・清水義一郎さん(42)=プレゼンは緊張したがチームでできてよかった。会社に戻ったら、これを武器にがんばります。
 東京・日の丸自交労組・関直人さん(30)=いろんな組合の人と交流できた。難しかったがやりがいがあった。説明がうまくできなかったので次はリベンジしたい。
 同・丸島晃さん (30)=プレゼン作成は楽しかった。非組合員をどのようにして加入させることができるかが学べた。
 同・増子充さん (44)=さまざまな業種の方の問題やとりくみが聞けてためになった。今後も組織拡大スキルアップは続けていってもらいたい。

白タク合法化阻止前面に

第5回常執 春闘総括、運動方針を議論

 自交総連は6月9日、第5回常任中央執行委員会をひらき、春闘総括と次年度運動方針を議論しました。
 春闘は6月6日現在、要求提出率64%、回答率50%、解決率42%となっており、タクシーの主なところでは、現行賃金体系維持のうえで職場要求や解決金を獲得して集約に向かっています。実働率低下の影響もあり、営収は微増で推移しています。
 拡大では、宣伝等を継続しているものの新規加入は少なく、高齢化の影響も深刻です。
 こうした状況をふまえて新年度方針では、白タク合法化阻止の闘いを前面に打ち出し、共同の広がりという条件も生かして、短期間で飛躍的な拡大の前進を図る方針を掲げるべきだとの意見が出されました。

全体件数は去年より減少

事業用自動車の重大事故発生状況

ドライバーの労働状況改善進めるべき

 2014年の事業用自動車重大事故の統計が公表されました。
 事故件数は5448件、車両故障を除いた事故は2973件、乗務員に起因する事故は1959件とすべて前年よりも減少しています(下表参照)。ここ数年の推移では上昇傾向にありましたが、今回は小康状態となりました。
 しかし16年には軽井沢スキーバス事故も起こっています。依然として高い水準にとどまっており、事故防止のためドライバーの労働状況改善などを進めることが必要です。

表

初乗り短縮運賃隣接県にも影響

 東京都特別区・武三地区の初乗り距離短縮運賃の組み替え申請の提出率が6月3日、法人タクシー台数ベースの7割を超えました。取り下げがなければ7月4日以降、関東運輸局が審査を行い、年末から来年初めには認可される可能性があります。
 申請運賃は、初乗り1・1キロ前後410円、加算80円となっています。東京の事業者は、「やってみなければわからない」という安易な考えで、もし営収減になってもドライバーへ差額は補償しないと明言しています。
 また8月には需要拡大効果を検証するため、都内3〜6か所の駅に専用乗り場を設けて利用者アンケートを取る、という実証実験が国交省により実施されます。
 東京地連では、初乗り短縮運賃を申請せず、すでに申請した場合は取り下げるよう求めた「要請書」を各事業者に提出しています。影響が及ぶ隣接県でも警戒が必要です。

つながり活かし入社呼びかけ

東北B・自主経営交流会議

労働者不足で将来不安

 【宮城】東北ブロックは6月21日から22日にかけ、山形県鶴岡市で、第5回自主経営交流会議を開催しました。
 この会議には、よこてタクシー、秋保交通、ハイヤーセンター、余目タクシーの自主経営4社の代表と、東北ブロック、本部から11人が参加。ほとんどの会社がこの間減収でしたが黒字になりました。また、深刻な労働者不足により将来不安が増大していると報告、つながりを活かした入社呼びかけなどの必要性が話されました。
 2日目は、(1)会社としての意志決定のあり方、(2)資金繰りについて、(3)新規労働者の確保策、(4)魅力ある職場づくり、(5)関係する自治体の公共交通の現状と住民の足を守るとりくみについて討論が行われました。

短縮運賃、動向注視すべき

埼玉・第48回中央委員会

特定地域の動きも報告

 【埼玉】6月13日、第48回埼玉地連中央委員会がウェスタ川越で開催されました。
 執行部から16春闘を総括する提案が出され満場一致で確認されました。累進歩合制度の廃止に伴い細部について協議中の単組もあり、合意に至らなかった単組では秋闘及び17春闘で要求実現に結び付けられるよう今後の課題を提案しました。
 自交総連今村書記長から白タク問題が提起され、また東京交通圏で短縮運賃申請率が7割を超え、運用開始の場合は隣接する埼玉交通圏では必ず影響が出ることを考慮し、県内事業者の動向を注視していくように話しました。特定地域に指定された県南中央圏の減車方法について、今後の協議会において提案していくとの報告が出されました。

白タク合法化阻止

危険な白タク ライドシェア

ライドシェアドライバーの労働者性

権利も保障もない働き方が蔓延のおそれ

 ライドシェアの危険性は、そこで働く労働者の権利が失われ、低賃金で無権利な働き方が社会に広がってしまうという点にもあります。

自由な自営業者?

 ライドシェアのドライバーは、雇用された労働者ではなく、仕事を請け負う個人事業者・自営業者とされています。
 自営といっても企業から仲介された乗客を乗せる以外に仕事はできません。その一方で、労働者に保障されている権利や法的な保護は一切なくなってしまいます。左図のように、最賃も有休も社会保障もなく、労働時間規制もありません。
 企業の側は、社会保障費も経費もすべて労働者負担にして、雇用に関わるコストを負担する必要がなくなります。

労働者性で訴訟

 ライドシェアがタクシーを駆逐した米カリフォルニアでは、多くの元タクシードライバーもライドシェアで働いています。当初こそタクシー以上の高収入が得られたといいますが、その後、収入は激減、しかし労働者ではないので権利も保護もないため、多くのドライバーが自らの「労働者性」を認め経費を償還するようライドシェア企業相手に訴訟を起こしています。
 実際にドライバーは、運賃も自分で決められず、企業からの仲介を拒否したり、乗客からの評価が低ければ契約を解除されるなど、自由はなく、企業に管理されて仕事をしなければなりません。
 このような働き方、働かせ方が広がれば、労働者の権利が奪われ、貧困化、格差が広がり、社会的に多くの問題が生ずると懸念されています。

表


ウーバー集団訴訟全米に拡大

(「交通界ファックスプレス」16・6・15より)
 ウーバーをめぐって、ドライバーが従業員に当たるのか、請負事業者なのかが争点となったカリフォルニア州・マサチューセッツ州の集団訴訟は4月末に和解で解決。司法判断は「ドライバーは請負事業者であって、従業員ではない」とする一方、ウーバーが38・5万人の原告団に1億ドルの和解金を支払うというものだった。
 5月には、新たな集団訴訟がイリノイ州で提訴され、原告は全米に広がり、10万人単位に膨れ上がるとの見方も出ている。原告側の主張は、従業員であることの確認を求め、「未払い給与、補償の支払い」「未払い経費の精算」「本来もらえるはずのチップの支払い」を求めている。

ドライバーも車もレンタル?

事実上の白タク行為「ジャスタビ」とは

 5月23日、沖縄本島にてレンタカーを使い観光客と登録ドライバーを仲介するウェブサイト「ジャスタビ」がオープンし、ドライバーの募集を始めました。
 これは、第二種免許の有無にかかわらず誰でもサイト上でドライバー登録でき、観光客が登録者の中から選んだ人を観光ドライバーとして委託契約し、レンタカーで運送提供を受けるものです。

責任を負わない

 ジャスタビ社が個人間のマッチング・システムを提供し、二種免許を持たないドライバーが旅客を運送する行為で報酬を得ることになります。利用者がレンタカー会社と契約し車を用意、直接ドライバーへ現金で報酬を支払います。ドライバーの健康状態チェックや事故の責任は会社は一切負いません。
 同社はサイト上で「レンタカーを借り受けた利用者が運転を他者に委託するのは、自身の自由な行為として従来から一般的に認められている」とし、白タク行為にはあたらないとしています。

道運法に抵触

 しかしジャスタビ社は、旅行代理店エイチ・アイ・エスと地元レンタカー会社が出資して設立した合弁会社であり、当初の業務内容はレンタカーも斡旋するものでしたが、国交省の指摘によりドライバーの紹介のみになりました。
 国交省は、道運法に抵触する可能性が高いと指摘、「ジャスタビはレンタカー会社との合弁」「違法の可能性が高いと話したのに、ドライバーを募集しているのは不適切」(「東京交通新聞」16・6・13より)と問題視しており、県ハイタク協会も「事実上の白タク行為だ」と猛反発しています。

図