自交労働者No.935、2020年1月15日

本年もよろしくお願いいたします

公共交通の優秀性高めよう

「日本のタクシー」を世界に発信

城委員長あいさつ

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  謹んで新春の喜びを申し上げます。
  安倍政権の政治の私物化は、森友・加計学園疑惑をはじめ「桜を見る会」でも際立っています。政治と金の疑惑で、相次いで閣僚が不祥事辞任したことに、安倍首相は「任命責任」は認める半面、忖度や情報隠蔽を横行させたことや閣僚に恥ずかしい答弁を強いた事に反省はありません。このような安倍首相が、「ライドシェア解禁の突破口」と竹中平蔵氏が主張する道路運送法の改悪を自ら指示しています。
  こうした政治を変えない限り、タクシーを中心とした地域公共交通の維持改善は図られず、業界の存続さえ危ぶまれます。道運法改悪阻止の為にも、早期に解散、総選挙へ追いこみ、法案提出を拒もうではありませんか。
  交政審の中で国交省は、「今回の改正は2点で、タクシー事業者の協力と来訪者も乗車できるようにする」と主張していますが、Crewのような運行形態を交通手段と位置付けていることから注視が必要です。
  白タク合法化阻止のためにも、我々は自交労働者として、日本の公共交通の優秀性をさらに高め、消費者から支持される「日本のタクシー」を、東京オリンピックを良い機会ととらえ、世界に発信していきましょう。



新年への抱負〜副委員長に聞く〜


大きな国の政策転換求められる

副委員長 石垣 敦

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  20年は、社会的にも地域の公共交通をめぐっても大きな岐路になる年といえます。
  東北では、11年の東日本大震災に続き、台風19号で大きな被害を受けました。漁業ではいままでとれていた魚が全然とれなくなっています。経営効率最優先の考え方を改めないと、地球の存続にかかわる問題になっていきます。
  原発や化石エネルギーを廃止したり、自家用車から公共交通優先の交通政策にきりかえたり、不用な開発にストップをかけたり、国の政策の転換が求められています。
  新自由主義や規制緩和路線は、もはや限界といわねばなりません。ライドシェアや白タクに反対する闘いは、環境を守る闘いに直結します。
  先が見えない時代に見えますが、新しい流れは確実に広がっています。確信をもってがんばりましょう。


目に見え、耳に聞こえる宣伝行動を

副委員長 庭和田 裕之

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  今年は東京オリンピック、パラリンピックが行われ、今まで以上に観光客が訪れます。世界でも秀逸と評される日本のタクシーを利用してもらい、「やっぱり安心・安全、快適なタクシーはいいな」と言って貰えるよう襟を正して営業しなければなりません。
  同時に白タク合法化阻止闘争が少しでも弱まると、一気呵成にライドシェア推進派が押し寄せます。直近の山場の闘いは、官邸の圧力から生じた自家用有償旅客運送の拡大・道路運送法の改正問題です。通常国会の予算審議が終わる4月頃に審議が行われる予定です。法案の内容如何では、緑ナンバーと白ナンバーの境がなくなることをしっかりと認識した闘いが必要です。
  地域公共交通を守るその担い手はバス・タクシーだということを利用者に理解して貰えるよう、目に見え、耳に聞こえる宣伝行動と周知活動を全力でともに成し遂げましょう。


関東ブロックの空白県を解消する決意

副委員長 舞弓 義隆

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  副委員長として2回目の新年を迎え、関東ブロックの組織強化・拡大が責務と痛感しております。
  昨年は、神奈川地本の箱根登山ハイヤー支部県労委係争事件への大きな支援、大変感謝しています。また、埼玉地連の飛鳥草加・八潮労組の不当解雇事件では、県労委への申し立てを背景にした団体交渉で自主解決をかちとり、大きな成果と評価しています。
  本年は、全力をあげて、ライドシェア解禁阻止の運動を強化する必要がありますが、関東ブロックとして組織空白県が存在し、力量が足りていないのが現状です。旺盛に宣伝行動や学習会を実施し、組織強化・拡大に奮闘する決意を誓いまして新年の挨拶とします。

1年半の熱きたたかいに勝利

良好な労使関係構築が課題

箱根登山ハイヤー支部争議

箱根登山ハイヤー祝勝会=12月23日、神奈川・小田原市民交流センター
箱根登山ハイヤー祝勝会=12月23日、神奈川・小田原市民交流センター

  【神奈川】箱根登山ハイヤー支部争議支援共闘は12月23日、小田原市民交流センターで「勝利報告会」を開催しました。
  神奈川地本各支部、神奈川労連関係組織など全体で63人が参加。城中央執行委員長も参加し、1年半にわたる熱きたたかいの勝利を祝いました。

会社からは謝罪なし

  支部長への会社、過半数組合からの不当労働行為、暴言、暴力等の解決のため、箱根登山ハイヤー支部は神奈川県労働委員会に提訴しました。
  19年5月、支援共闘を立ち上げ、神奈川労連・自交総連等の力添えを得て、共に闘いました。本社前での宣伝行動、請願行動には多数の協力を、数回にわたる審問にも多数の傍聴支援をもらい、19年11月、神奈川県労働委員会から「和解協定書」が提示され、11月12日、正式に和解が成立しました。
  不当異動は解決し、11月25日に元の箱根エリアへ戻ることができました。
  しかしながら、会社側は、「労働委員会からの指示に従っただけ」との見解を示し、謝罪などは一切ありませんでした。当該支部は十数人の少数ですが、安心して働ける良好な労使関係を構築して行くことが今後の課題です。

那賀支部長のコメント

  私たちは、不当労働行為を繰り返す会社に何とか正しい株式会社になってほしいと努力してきました。
  でも会社は全く聞き入れない。それどころかさらに酷くなるばかりでした。仕方なく労働委員会に訴えることになり、弁護士さんの勧めもあって自交総連に加盟いたしました。
  労働委員会のFAXが壊れるほどのFAX攻撃! 炎天下、雨天時の宣伝行動! 皆様のご協力があって労働委員会の和解協定書には会社だけに対し「遺憾の意を表明する」という、組合勝利をかちとることができました。私たちだけでは無理だったと思います。マンパワーを実感しています。本当にありがとうございました。
  ですが会社は反省するのではなく、矛盾だらけ嘘の上塗りをするばかりで自分の非を認めようとしません。私たちの明るい職場を取り戻すには、まだ時間がかかりそうです。
  本当の意味での完全勝利!全面解決!のためにがんばりますので、今後もご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

山田みや子さんのコメント

  1年1か月振りに箱根山を走っています。会社から納得のいかない異動を命じられ、只々仕事をしていたいと思う私は命じられるままでした。
  たたかいが始まり、毎回応援の方達が大勢来てくださり本当に力強かったです。この皆様の後押しが、どんなにありがたかったか。只々感謝の一言です。ご支援、本当にありがとうございました。

成果に確信もち運動を

運賃改定に対応した要求提出を

第1回中執

  自交総連は12月18日、第1回中央執行委員会をひらき、中央委員会に提案する春闘方針案を確認するとともに早急にとりくむべき課題として「20春闘と道運法改悪阻止闘争の当面する対策」を決めました。
  自家用有償運送拡大、道運法改悪阻止のたたかいは、署名や宣伝など運動の広がりで、無限定な自家用有償運送の拡大には一定の歯止めをかけています。この成果に確信をもちつつ、油断をせずに、ライドシェアの突破口とさせないように運動をつよめる必要があり、1月から4月にかけての行動などを提起しました。
  春闘では運賃改定に対応したノースライド確認、労働条件改善を要求提出前からとりくむ必要があります。

最賃違反繰り返さぬよう指導

厚労省・経産省・国交省と交渉

交運共闘

厚労省と交渉する交運共闘のメンバー=19年12月10日、千代田区・厚生労働省内会議室
厚労省と交渉する交運共闘のメンバー=19年12月10日、千代田区・厚生労働省内会議室

  交運共闘は12月10日、11・7中央行動で提出した請願書にもとづき、厚生労働省、経済産業省、国土交通省と交渉しました。
  厚労省では、タクシーの最賃違反について、再発防止のためには賃金体系の見直しなどの指導が必要だと求めると、省側は、「賃率が不連続なもの、累進歩合で違反が発生するものについて、違反が繰り返さぬよう指導したい」としました。
  経産省では、グレーゾーン解消制度では安全性が考慮の外になっている実態が明らかになりました。
  国交省では、道路運送法の改定について、ライドシェアの合法化を容認せず、それにつながる自家用有償旅客運送の拡大をしないよう要請し、改正は、タクシー事業者の協力と来訪者も乗せられるようにするという2点について変えるという認識を確認しました。

※交渉内容の要旨はこちら

衝撃の「安全報告書」

2年間で性的暴行5981件、死亡19件

ウーバー社が報告書を公表

  ライドシェア大手の米ウーバーが、安全性に関する報告書を公表し、最近2年間で性的暴行被害が5981件、レイプ被害が464件、暴行による死亡19人に上っていることが明らかになりました。
  ライドシェアは、運転者がプラットホームに雇用されない働き方で、身元の確認も不十分なことから、安全性に問題があると以前から指摘されてきました。批判に押されて、報告書を公表せざるを得なくなったものですが、ウーバーは輸送回数当たりの発生率は減少しているなどと強弁しています。
  このニュースは国内でも大きく報道されました。被害の大きさに衝撃が広がっている今、ライドシェア解禁反対の運動をさらに強めていく必要があります。

※内容の詳細はこちら

不当配転の撤回かちとる

長期争議の紹介

長期争議組合の一覧

  自交総連の長期争議組合は昨年12月時点で4地方6組合でした。
  内容は、未払い賃金請求、不当解雇(定年後再雇用拒否)、不当配転・差別取扱いなどです。
  かちとった成果では、神奈川・箱根登山ハイヤー支部の不当配転、差別取扱い事件において、元のエリアへの無条件復帰をかちとった和解がありました。他にも、埼玉・飛鳥交通草加・八潮地区労組の不当解雇事件では、県労委への救済申し立ての姿勢を示したことで、団体交渉により解決することができました。
  自交総連では毎年、臨時徴収金から、解雇事件や重大事件に配分しています。

組合の興廃この一戦にあり
福岡地連 太宰府タクシー労働組合 中村朗執行委員長

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  私、太宰府タクシー労働組合執行委員長の中村朗は、就業規則・賃金規程・個人雇用契約・最低賃金などの矛盾点を追及してきたところ、回答期限春闘時の平成29年5月、苦情を名目に解雇、雇い止めになりました。
  会社は委員長がいないのを良いことに、組合が最低賃金を請求したら一時金は出ない、会社は潰れると風評を流し、組合員を大量脱退させるなどして組合弱体化を図りました。
  その後、福岡県労働委員会にて全面勝利となりましたが、太宰府タクシーは福岡地方裁判所に提訴し現在係争中です。
  会社は協定があるものでも労働条件を変更するうえ、変更されても非組合員は声を上げようとしません。その都度組合は是正を行っています。
  このまま闘い抜いて福岡地方裁判所でも勝利し、職場復帰を果たしたいです。
  そしてもう一度過半数組合に戻し、就業規則・賃金規程・個人雇用契約・最低賃金などの矛盾点の是正を行いたいです。
  労働条件改善に向け、組合の興廃この一戦にありと思って奮闘努力していきます。

自家用旅客運送の拡大阻止・地域公共交通の充実を求めて

全国各地で宣伝、要請行動あらゆる団体、個人へ協力を

〜各地連・地本の運動とりくみ状況1〜

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  自交総連では、当面の重点運動としてライドシェアへの突破口となりうる自家用有償旅客運送の拡大阻止、住民の移動を保障する地域公共交通の維持・充実を求める活動にとりくんでいます。

  地域交通でのタクシー活用への国の助成の大幅な拡充を求める署名や、広く市民を対象に、ライドシェアの危険性を訴える宣伝行動などを実施しています。
  中央では、全労連を通じて全単産・地方組織に署名の要請を送り、国民春闘共闘の春闘討論集会でも、参加者に署名用紙を配布して訴えを行いました。地方でも、全労連の友誼組合やタクシーの他産別組合などに署名を訴え、協力してもらっています。
  今後、その他の地方でも自治体要請等の計画を立てています(下参照)。

テンポあげとりくむ

  19年12月末までの署名の第1次集約結果は上表のとおりです。
  比較的集まりの早い神奈川地本では、10月の全県ハイタク労働組合の総会で、全自交や日産労連などに協力を求め、署名を集めています。
  最終集約の3月末までに、他労組、あらゆる団体・個人へ署名の重要性を訴え、テンポをあげてとりくみましょう。


各地連・地本の自家用有償運送拡大、ライドシェア反対のとりくみ

福島と仙台で市民向け宣伝(10月31日・11月1日、東北地連)
ライドシェア解禁の国家戦略特区の提案がされている滋賀県大津市を中心に宣伝行動を実施(10月17日・11月20日、12月12日、関西ブロック)
自家用有償運送拡大の審議がされている交通政策審議会地域公共交通部会の委員に、要請書と資料を送り、慎重な審議を求めた(11月、本部)
11・7中央行動
埼玉県庁交通政策課交渉(11月8日、埼玉地連)
交通政策審議会地域公共交通部会が開催される三田共用会議所前で宣伝と座り込みを実施(11月22日・12月24日、東京地連)
関東運輸局要請を実施(11月27日、東京地連)
中津、宇佐、豊後高田、別府、大分駅で宣伝行動(12月2〜3日、大分地連)
大津市役所労組へ署名の協力要請(12月12日、関西ブロック)
障都連へ署名申し入れ(12月23日、東京地連)
宮城県内35自治体、東北運輸局へ要請(予定、東北地連)
九州運輸局交渉(予定、九州ブロック)

運賃改定を労働条件改善につなげるために

運賃改定2月1日 増収分は賃金に充当

改定の趣旨から逸脱する場合は指導

  全国48地域のタクシーの運賃改定が、20年2月1日の実施となることが19年12月10日に公表されました。

  公表にあたり国交省は、タクシー運転者の労働条件の改善を図るため留意するよう事業者に指示する通達を12月10日付で出しました(下)。
  これを受けて、各運輸局は該当地域のタクシー運賃の改定(上限運賃)を12月13日に公示しました。
  例として、東京都多摩地区の査定をみていきます(下表)。この表の実績というのは17年度の実績で、19年度にはどうなるかを予想したのが査定です。査定の収支差のマイナスを埋めるために運賃改定が認められ、改定率が決まりました。
  重要となるのが、改定後の増減値です。運送収入が4・4%上昇するのに対し、運賃原価では直接運転者人件費が4・4%の上昇で、他の数値がほぼ横ばいとなっています。運賃改定による増収分は運転者の賃金に充当するものであることが示されています。
  通達にあるように、運賃改定の趣旨は、労働条件改善にあり、それを逸脱する場合は各運輸局から事業者へ指導をさせなければなりません。

表

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